学校が教えないほんとうの政治の話 (ちくまプリマー新書)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689665

感想・レビュー・書評

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  • 前から一度読みたかった斎藤美奈子さんの最新著、偶然に本屋で見かけて購入しました。
    野球になぞらえて、「ひいきの政治チーム」を読者に考えてもらうための実践的政治入門書。するどい切り口と表現、歴史的な経過もたどることができる中身。新聞のコラムで読んでいた斎藤さんと長く会話ができたようで、とてもよかったです。

    「政治を考えるのに中立はない」、「メディアの役目は中立公正、不偏不党ではなく権力の監視」。それがもっと常識になる必要がありますね。政治に対する怒りは、「何でこんな目にあうの」「あの人が何でこんな境遇に置かれているの」という私憤・義憤から始まるという指摘は、その通りだと思います。そんな材料は周りにたくさんあり、そのことを多くの人に伝えていくことが必要ですね。常に自分の立ち位置を、しっかり確認していきたいと思います。

    おすすめの一冊です。

  • 中高生対象の新書ではあるが大人が読んでも十分読み応えがある。
    政治に中立はあり得ない、同感。
    若者だけでなく、政治になんて興味ない、と言ってる人には是非読んでほしい。
    ちょっと過激かな、と思える意見もあるが私は基本的に著者と同じ考え方。
    政治なんて自分には関係ない、なんてぼんやりしていると取り返しのつかないところまで日本の政治は来ていると思う。
    この本が書かれた時から4年ほど経っている。
    状況は余計に悪くなっていると思う。
    将来を担う中高生には是非読んでほしい。
    政治に無関心な大人にも。

  • 本当に文才ある人なんだと思う。
    ただ、第五章からけっこうな反体制派っぷりが出てくるので、賛同できない部分も出てくるだろう。著者はどちらかというと共産党推しなのかな?自民党推しでないことは明言されている。


    右とか左の話において「中立」は無い。
    党派性をもたずに政治参加は無理。そのための地図がいる。

    私憤と義憤と二人連れならおもしろいほどパワーが出る。すべてのスタートは「こんちくしょう」です。あなたの行く道が見えたなら、この地図は破り捨ててもかまいません。

    第一章
    体制派と反体制派
    ひいきのチームがなければスポーツも政治も興味が持てないのは当たり前。党派性とは、自民党とか共産党という具体的な既成政党のことでなく、政治的な立ち位置のこと。その時その時代を支配する側を支持するなら体制派。それを変えたいと思うなら反体制派。どちらでもない、なんてことはあり得ないので、ゆる体制派だったり、かくれ反体制派であるはず。

    寺請制度
    宗門人別改帳

    体制派と反体制派が入れ替わり、また別の反体制派とやりとりが発生するのが世の流れ。
    倒幕→薩長土肥での新政府が制度設計して旧士族を鎮圧(西郷さん反乱)→土肥中心で自由民権運動で薩長メンバーに民主化運動→国会開設と憲法制定で妥協しつつ、言論弾圧で運動関係者を処分処分。

    足尾鉱毒事件

    米騒動
    韓国の光州事件
    中国の天安門事件
    →すべて、体制派の治安出動

    体制派としては、みんなに政治音痴の「ゆる体制派」でいてほしい。政治のことなんて、若者には考えてもらいたくない。アホでいてほしい。大丈夫、ちゃんとそこそこ暮らしていけるように維持するから。

    第二章
    資本家と労働者

    イギリス清教徒革命
    アメリカ独立戦争
    フランス革命
    →すべてブルジョア革命。封建制度からの脱却。

    資本家=経済を支配している人、労働者=経済に支配されている人。経営者、従業員、ではない。
    利潤を追求する経済の支配者は、できるだけ低賃金で長時間働いてもらいたい。

    プロレタリア=労働者

    労働組合法
    労働関係調整法
    労働基準法

    資本主義経済社会において、政府は主役である資本家と手を結ぶのが当たり前。資本家にとって有益な制度設計や人民管理が行われる。スポンサーは誰か?それを考えれば当然。

    社会主義が発展した形態が共産主義。

    マルクス「資本家ぶっころして、労働者の国をつくろうぜ!キャッホーイ!」
    レーニン→ロマノフ王朝ぶっころし(ロシア革命)
    毛沢東→清王朝ぶっころし(辛亥革命)

    レーニン後継者のスターリン=「動物農場」参照

    「体制は反体制派を全力でたたきつぶす」という法則。
    反体制派が共産主義国家を樹立した瞬間、体制派となり、反体制派を弾圧するんだぜ。結果を見よう。

    スターリンの大粛清
    毛沢東の文化大革命
    →「ラストエンペラー」映画おもろかった

    ソ連は解体。
    中国は共産主義国家だけど、改革開放政策で実質的に資本主義経済路線をとっている。
    ゆえに、共産主義などあくまで理想に過ぎない。

    終戦時は日本の民主化政策の一環として組合運動を後押ししていたGHQだが、共産主義化を警戒して1950年前後から掌を返して組合運動を抑圧した。

    55年体制

    与党・自民党の支持母体は経団連、経済同友会、日本商工会議所、農協、日本医師会という経済支配者層。
    野党・社会党の支持母体は労組、総評(自治労、日教組、国鉄労組)という労働者層。

    社会主義的な資本主義
    1.終身雇用制度
    2.年功序列型賃金
    3.企業別労働組合

    毎年春の労働運動は「春闘」として賃上げ交渉セレモニーとなり、仲良くやって行こうという流れになった。高度経済成長期のお約束。資本家と労働者の共存が成り立っていた世界。

    ケインズ経済学の大きな政府は積極的に政府が市場に介入するが、所詮人なので、特定業界や業者に利権をもたらすことになる。大きな政府でなくてもそうだろうが。

    新自由主義=小さな政府
    公営団体の民営化と規制緩和を進める。
    しかし、緊縮財政により福祉政策が後退し、貧困層ほど社会保障費減の煽りを喰らう。
    アメリカだと共和党
    イギリスだと保守党
    日本だと自民党(小泉政権以降)

    社会民主主義=大きな政府に近い
    所得再配分を重視。平等。スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど。
    日本では共産党や社民党?反日とは区別したいところ。

    しかしながら、政府と国民の間に信頼関係が成り立っていないので、社民民主主義は実現に至らない。たくさん稼いでたくさん納税しても、正しく再配分されずに上層部でわけわけみんなニッコリしているなら、そんな大金を預けるようなことはしたくない。

    とりあえず、今の自分の「階級」はどこにあるのか見定めて、スタンスを決めましょう。

    第三者
    右翼と左翼
    本来、どちらも反体制派。
    右翼→戦争勝ったしもう一回やろうぜ!天皇崇拝するぜ!西洋化なんて糞食らえ!
    左翼→戦争はやめよう!平等なんだから天皇制は廃止で!今の仕組みは糞だからぶっこわせ!

    戦前の日本政府にとっては、左翼の反体制派が一番やっかいだった。言い換えれば、頭のおかしい右翼の国だった。国民統治のため天皇を神格化(現人神)し、国家神道を徹底し(伊勢神宮を頂点に!)、皇国史観教育を実施した。でも、そんな状況でもガチ右翼は満足せず、体制側であるエリート青年将校が血盟団事件を起こしたりする。
    五・一五事件、二・二六事件へとつながる。決起した青年将校らは、右翼クラスターの中では英雄扱いとなる。

    大アジア主義
    大東亜共栄圏

    左翼
    天皇制打倒、労働者による平等な国を作る
    右翼
    天皇中心の神の国をつくる、アジアを日本の支配下に置く

    体制は右翼寄りだったので、左翼を弾圧し、政府方針として右翼思想を採用。結果、カルト宗教国家に。
    やっぱりいろんな意見交換ができる社会じゃないとね、という話。

    戦後
    日本とGHQで取引があった。天皇制残すし天皇処刑はなしで、代わりにA級戦犯の処刑で手打ちしてよ。天皇処刑しちゃうと国民統治が難しくなるし。→マッカーサー「おけおけ」

    自衛隊
    GHQ都合で軍隊がない日本に自衛隊が組織された。朝鮮戦争のため。警察予備隊→自衛隊。
    左翼はこれに怒った。戦争放棄を謳う憲法9条違反ではないか!しかし、微妙に違うスタンス。社民党「非武装中立論てわ、裸になろうぜ!」共産党「いつか革命起こすから軍備は否定しないけど、自衛隊っていうのは即時廃止で!」

    日米安保条約
    共産陣営の目の前に軍配置しておきたいアメリカは、「日本攻撃されたら米軍がやっちゃうyo」という条件で、基地をそのまま維持した。現在に至る。

    戦後のスタンス
    右翼→反共産主義(ソ連の脅威やばい)
    左翼→反アメリカ(アメリカの横暴けしからん)

    60年安保闘争
    1950年の安保条約は10年ごとに見直し、ということで1960年に見直した内容が実質軍事同盟であったことから、左翼陣営や労組、学生団体、市民団体、大学教授などの知識層から大反発。安保反対デモが拡大。そんな状況で岸信介首相は強行採決で条約を締結。これにブチギレた反体制派は6/15に国会議事堂前で警察やヤクザと激突。

    高度経済成長期により、国民所得があがることで、反体制派の大多数は「ゆる反体制派」に転向し、大人しくなった。がしかし、右翼ガチ勢の若者が社会党の浅沼稲次郎を暗殺したり、中央公論社の社長宅に侵入して殺人やったりと、テロをやったことで日本のマスメディアでの皇室批判はタブーとなった。
    右翼ガチ勢の三島由紀夫は自衛隊を正式な国軍にすることを意図してか、市ヶ谷で自衛隊に演説したあとに集団切腹した。

    左翼側は、血の気の多い若者が日本共産党派と反日本共産党派に分かれ、たくさんの派閥ができた。やがて、各組織にうんざりした学生たちがゆるめの全学共闘会議を構成。しかし、その全共闘は東大安田講堂を占拠。大学は機動隊を投入して。1969年の入試は中止に。

    さらに学生運動が下火になっても、生き残った左翼ガチ勢が、よど号ハイジャック事件やあさま山荘事件や連合赤軍事件やテルアビブ空港銃乱射事件を起こす。この辺でガチ勢だった人らはテロリストなので、指名手配されている。

    60年代は政治的ポーズをとることが流行だった。
    ベトナム反戦運動
    成田空港建設反対運動

    大四章
    国家と個人
    国家は三つの要素でできている。
    1.国民
    2.国土
    3.国家権力

    成田空港建設反対運動
    →良い事例。しかし、反対運動した団体が予定地ミスって買い上げてた説もあるとか?

    諫早湾干拓
    →一度走り出した公共事業は止まらないという事例。

    普天間基地移転
    →一番ホットなやつ。これって解決しないような?そして、もっとも国防としてややこしいので、純粋に辺野古移設反対を謳っている日本人がどれくらいいるのかやっぱり不安。加えて普天間基地として維持したい人たち…

    国益優先派=全体主義
    人権優先派=個人主義<>利己主義

    公害における裁判は、同じようなことが起きないためにも戦い続けた本来の「全体主義」ではないだろうか。もう一つは、自分の権利は自分で主張すべき、という教訓。黙って耐えても誰も何も助けてくれない。我慢して自殺するくらいなら相手をぶっ殺したほうがマシ(エキサイト!)

    民主主義とは個人主義に基づく制度。

    既存の右翼・左翼はおおざっぱに言えば以下。
    全体主義・個人主義
    軍隊組織!・最低限の国防
    各武装!・交渉による外交
    経済は自己責任・再配分政策大事
    福祉も軽めに・貧困対策も学費無料も!

    戦後の体制とは自民党政治であり、政府を支える官僚・財界・マスメディアを含めた巨大なシステム。

    意外にも、戦後は左派、つまり個人主義こそが体制派だった。

    第五章
    保守とリベラル
    現在2016年時点では、左派(戦後民主主義体制)から右派(個人の自由が制限される方向)へシフトしているように思える。

    右派は保守
    左派はリベラル(反日とは区別)

    自民党憲法改正草案>緊急事態条項

    経済悪化とナショナリズムは連動する。景気が良ければ他者にも寛大であれるが、景気が悪いと守りの姿勢になる。守りの姿勢は他者攻撃につながる。生活に不満が出れば政治に関心を持つようになる。60年代ならマルクス主義に向かったが、今なら右翼思想に向かうようにコントロールされている。右翼「自虐史観だ!」左翼「歴史修正主義だ!」

    安倍政権の政策方針として、法人税引き下げ、貧困対策の後退、労働派遣法改正で非正規を増やす、富裕層に優しく貧困層に厳しくする。野党よりは自民党がマシだ、という印象をもたせるために、野党をアホにみせるよう野党と共存する。アホな論争でメディアを埋めて、重要なところには目を向けさせない戦略。それもあっての支持率キープ。すごい。

    原発
    著者は原発反対派のよう。
    →代案とか全然ない。ちょっと路線がズレているような…。ただ、東電とか死ねっていうのはある程度理解できる。身内に東電がいたら絶対言わないけど。

  • よかった。歴史だいじ。ひいきのチームを見つける、というの、わかりやすい。あと中立とかねえよ、というのもいい。

  • 大学の講義で用いられた新書でした。

    政治に無頓着な若い世代が、政治的教養や政治への関心を持つきっかけとして、とても有用だと思われます。

    基礎的な知識について具体的な時事問題を絡めながら、非常に簡潔にわかりやすく書かれていました。筆者が本書の中で述べていたように、「中立はない」というのは確かにそうかもしれないと考えさせられました。

  • 今の中学生、高校生、それに政治の知識にうとい大人達に、ぜひ読んでもらいたい本。特に、選挙にも行かない今の大人達には、この本に書かれている基本的な教養すらない人がほとんどだろう。前半から日本で起きた歴史の出来事を軽く交えるなどして、政治の基本、考え方などから、「右翼・左翼」「保守・リベラル」など勘違いしている人が多い部分にも、しっかり触れていて、政治の教養がある人でも十分読める。
    すでにこれらの知識はあったものの、政治にうとい人にどのように説明していいか困る事も多かったため、「なるほど、確かにこういう言い回しをすれば理解してもらえるな」といった新しい気づきもあったため、個人的に文句なしの良書である。

  • この本を読み終わってから、統一地方議員選の様子をテレビで見ていたら、これまでより胸にせまるものが生まれた。ちょうど、地元の若手候補にオバチャンたちが「がんばれー」と声をかけている場面。これが、ごひいき筋ということで、これも選挙を活発にしてきたのだろうなあ。教科書の中に羅列された単語や数字だけではなくて、もう少し自分目線で社会を捉えるにはどうすればよいか、選挙を通して考え方の例を見せてくれた本だった。

  • 社会
    政治

  • 十代向けに書かれた現代政治の本。斉藤美奈子がこれほど左寄りだとは残念だった。
    文筆家に保守主義者が少ないから若者は左傾化するのかもしれない。
    ただ、政治的立場に中立はあり得ないというのは良い指摘。
    最近は右も左もそう指摘されることを嫌い、自分はあくまでも中立であって世の中や相手がが偏向しているのだと言いたがる風潮(ヘタレ右翼・左翼)があるというのも面白い。

  • 政治的な立場に中立なんて有り得ない。無関心は「ゆる体制派」から始まって、今(2016年当時)の日本の状況まで、実に分かりやすくまとめてあって、これなら小学校高学年あたりからでも理解出来ると思った。だった207ページの中に江戸時代の一揆から近代日本の黎明期、戦争論と戦前の言論弾圧、憲法について戦前・戦後の右翼と左翼、全体主義と個人主義…これだけ盛り込んであってもすいすいと読めると思う。書評家らしくゴーマニズム戦争論についてもちらっと触れている。ちょっと残念なのはタイトルかなぁ?もうちょっとインパクトのあるタイトルだったら良かったかも?

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著者プロフィール

【著者】斎藤美奈子 (さいとう・みなこ) │ 文芸評論家。1994年に文芸評論『妊娠小説』でデビュー。2002年『文章読本さん江』で、第1回小林秀雄賞受賞。軽妙な筆致で綴られるパンチの効いた書評や文芸評論は、幅広いファンをもつ。他の著書に、『文壇アイドル論』『紅一点論』『本の本』『日本の同時代小説』『文庫解説ワンダーランド』『名作うしろ読み』などがある。

「2020年 『中古典のすすめ(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤美奈子の作品

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