トーベ・ヤンソン・コレクション 8 聴く女

  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480770189

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  • トーベ・ヤンソンは自分で書こうとしている人たちを、はっきりと思い描いている。そして彼らを描写するのに必要な言葉を過不足の無いように注意深く吟味した。

    美しい短編集だ。この短編集を読んで、トーベ・ヤンソンは画家から出発したことを改めて思い返した。

  • 「ムーミン」でおなじみの、トーベ・ヤンソンの短編集。絵画、連続した絵画(静止画像)のような短編。しかし表面的ということはなく、とても流麗な表現で内側も外側も描かれる。それが鼻につくひともいるだろうが、絵を描くひとならおよそ共感する要素に満ちている。


    【聴く女】: 痴呆、ボケが始まったような女性イェルダの状況。55歳からはじまるというのは若すぎ、若すぎてはじまると重いらしい。タイトルの「聴く女」とは、彼女の自分のための「内密の注釈」のことであろう。それはその注釈を要約する単語とともに地図のように描かれていくのだが、それは過去の出来事で現在に有用性はない。典型的な痴呆症の症状だろうが、主観的な視点から美しく描写される。ある種の幻想。


    【子どもを招く】:簡単なスケッチのようなはなし。子どもの描写はさすが。女性の兄弟同士?でどんなこころの交流があるかはうまく想像できない。


    【眠る男】:もうすぐ死にそうなように、苦しむように眠る35歳ぐらいの男のそばで、少年と少女がデートする。少年が少女を誘うのだが、曰く、「本気で」何かを二人でしたかったから。「ただ会ってるだけだろ。真剣さがない」かなりリアル。

    【黒と白ーエドワード・ゴーリーに捧ぐ】:彼(エドワード・ゴーリー?)と妻ステラの支え合いは創作するひとにとって理想的なものだろう。彼に「恐怖小説撰集」の挿絵の仕事が舞い込み、最初苦悩する彼をそっと導くステラはとても美しい。また、スランプ的な状態から抜け出すために環境を変えてみた結果、描く際におこる変化など、創作の状態がとてもリアルに追体験できる。ただ、もっと実際は地べたを這いずり回っているはずなのだが。美しく幻想的にそういう創作の状態そのものをモチーフにしている。


    【偶像への手紙】:ある作家にファンレター的な手紙を書く控えめな女性。その作家がスランプで何も書けないでいる時も手紙をおくりつづける。最初のうちは、返信できないように自分の住所を書かない(「考えずにはいられない見知らぬひと」になりたいから)。とうとう住所を書き、それから実際に会う。作家にとってこういう読者がいることがどれだけ幸福なことか。


    【愛の物語】:ある彫刻作品に魅せられ、どうしても欲しくなった画家は、そのことを彼女に話す。彼女は盗み出そう、と提案する。二人の価値観が重なり合っているか、彼を尊重するような姿勢がある彫刻作品をめぐってささやかに共有されるというモチーフが「愛の物語」なのだろう。


    【第二の男】:自分を傍らに、脇にみるという状態を<脇に寄る>と呼ぶという表現が非凡。一人で孤独に生活しているとき、こういうことは多かれ少なかれ経験する。まさにそれを適切で非凡な表現で定着させている。


    【春について】:男女のささやかなこころの交流のようなものが春の情景や日常に沿って描写される。


    【静かな部屋】:「そして二人は住居にあがった。警察はすでに引きあげていた。」で始まる。静けさの前に何かがあったということがより一層「手つかずの沈黙」を深める。

    【灰色の繻子(サテン)】:人の死期を予知できる能力(千里眼)を持つ女性マンダは、その能力のせいもあって孤独のなかで生きている。その反面に千里眼や刺繍の才能とともに生きているという感覚にはリアリティーがある。

    【狼】:ある女性が日本人の画家?シモムラと狼をみにいく。英語の意思疎通もまばらなので、日本人も猿や狼の側に含まれているような感じがする(「狼ともシモムラ氏ともかかわりたくない」[p141])

  • 「愛の物語」彼女の男気が素晴らしい。

  • トーベ・ヤンソンコレクション8。
    これで未読は7番目の『フェアプレイ』のみとなりました。

    短篇集です。
    子供を対象にした話がいくつかありました。
    ヤンソンさんが子供を書くと、得体の知れない生き物のように感じられます。

    一番記憶に残っているのは『第二の男』。
    男(レタリング職人)は、ある日突然、自分のそばにいるもう一人の自分に気付きます。
    最初は驚き、狼狽えていた男ですが、次第に〈かれ〉を待ち望むようになりました。
    朝から歩き回って〈かれ〉を捜したり、カフェではコーヒーを二つ注文して
    〈かれ〉を挑発したり。
    そして、遂に〈かれ〉と出会うのですが、そこで結局は自分はひとりの人間なのだと
    気付かされます。

    何だかむごいような気がしました。
    忌避しつつも待ち焦がれてしまう感覚に、何故か覚えがあるような。

    『リス』はクルーヴ・ハルが舞台なのだろうか。

  • 正直、読解不能。 はじめはやや難しい文章ながら魅力があると思って読み始めた。でも、意味が分からない。すごく頭のいい人や、センスのある人なら好きなのかな? こういう作品が好き。と言える自分になりたい。

  • 聴く女。

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