続 明暗

著者 :
  • 筑摩書房
3.63
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本棚登録 : 35
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480802941

作品紹介・あらすじ

漱石没後七十余年。その死によって中絶した遺作『明暗』を、漱石の諸作品からの引用をちりばめながら、漱石そっくりの文体、言い廻し、用語を駆使して完結させる。そんな無謀な試みを現代の女性が天衣無縫に実行してしまった。平成のまどろみを揺り動かすこれは事件だ。

感想・レビュー・書評

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  • (2016.08.06読了)(2016.08.04借入)(1990.10.30・第4刷)
    『續明暗』が出版されてから、いつか読んでみたいものと思っていたのですが、そのためには、『明暗』を読み直さないといけないというのが、ネックになってなかなか読む機会がめぐってきませんでした。『明暗』を読んだのは、『續明暗』が出版される20数年前だったので。
    今回やっとその機会がやってきて、『明暗』を読み、『續明暗』を読む事が出来ました。
    それにしても、『續明暗』が出版されてからすでに26年も経過していたとは、気がつきませんでした。まったく、気の長い読書をしているもんだ、と思います。

    『明暗』の語り手は、津田由雄とその妻延子です。『續明暗』でもそれは変わりません。
    『續明暗』の始めに、『明暗』のあらすじでも紹介してあってから始められるのかな、と思って読み始めたのですが、【登場人物紹介】はあるけど、あらすじはありませんでした。
    188節からはじまっていますが、この部分は、漱石の書いた最後の部分でした。189節からが、水村さんの創作部分ですが、ごく自然に続けられています。
    (読む前の予測)
    津田は、理由もわからず、清子さんに振られてしまったので、その理由を聞きたいし、できればよりを戻したいのでしょうけど。津田と関さんは、どういう関係なのでしょう。
    結末は、津田は、清子さんとよりは戻せず、延子さんとも別れることになる?津田に救いはあるのか?
    (読み終わった後の感想)
    思いもかけない、結末に呆然としています。
    旧漢字を使い、漱石の文体もよくまねていると思います。文章の所どころに、これは女性の文章だな、と思わせるところがありますが、ちょっと本物の著者が顔をだすということで、許せる気がします。
    読み終わって、「続々明暗」を誰か書いて~、または、「続明暗」のアナザーストーリーが欲しいという感じです。
    十分楽しませてもらいました。

    ●手術(14頁)
    「手術をなさったそうですね」
    「腸の奥の辺です」
    ●教育的目的(108頁)
    貴女は他の女の捨てたものを後生大事に拾ったんですよ、と嗤われたようであった。
    意外な事実にお延の身体から急に力が抜けて行った。夫人はその変化をめざとく捉えた。此所でお延に帰られたりしては夫人の云う教育的目的は半分しか達成されずに終わって仕舞うのであった。
    ●津田がお延を選んだ理由(116頁)
    「津田さんにはちゃんと夫なりのお考えがあったという事ですよ。なにしろ岡本さんが御実家代わりの方を貰おうというんですからね」
    「好いた女に振られて仕舞った後はもう惚れた腫れたではなく、―なんと申しましょう、何だか身も蓋もない云い方になっちまうわね。要するに、頭でちゃんと筋道を立てて結婚しようという……」
    ●社会の制裁(118頁)
    そもそも清子と一緒になった所で津田が今迄通りに食べて行ける筈はない。自分も結婚している上に人妻を相手に事を起こして、社会の制裁を受けずに済まされる筈はないからである。職も危うくなるだろうし、また、職が危うくなったからといってあの厳格な京都の方が手を差し伸べて呉れる事もないだろう。
    ●別れた理由(260頁)
    「貴方は最後の所で信用できないんですもの」
    「夫が理由で僕が嫌になったんですか」
    ●自分を捨てる(264頁)
    「自分を捨てるっていうことがおありじゃないから些とも本物じゃないんです。」
    ●万が一の奇跡(352頁)
    夫の元へと一心に駆けつけたのは、わが眼で己の不幸を確かめたかったからであり、それは同時に万が一の奇跡を知らず知らずのうちに願っていたからでもあった。
    ●結び(373頁)
    お延は、一体これから何處へ行くべきだろうかと、自分の行先を問うように、細い眼を上げた。―お延の上には、地を離れ、人を離れ、古今の世を離れた万里の天があるだけだった。

    ☆関連書籍(既読)
    「三四郎」夏目漱石著、新潮文庫、1948.10.25
    「それから」夏目漱石著、新潮文庫、1948.11.30
    「門」夏目漱石著、新潮文庫、1948.11.25
    「坊ちゃん」夏目漱石著、新潮文庫、1950.01.31
    「明暗(上)」夏目漱石著、新潮文庫、1950.05.15
    「明暗(下)」夏目漱石著、新潮文庫、1950.05.20
    「明暗」夏目漱石著、岩波文庫、1990.04.16
    「虞美人草」夏目漱石著、新潮文庫、1951.10.25
    「道草」夏目漱石著、新潮文庫、1951.11.28
    「こころ」夏目漱石著、新潮文庫、1952.02.29
    「倫敦塔・幻影の盾」夏目漱石著、新潮文庫、1952.07.10
    「行人」夏目漱石著、新潮文庫、1952..
    「坑夫」夏目漱石著、角川文庫、1954.05.30
    「草枕・二百十日」夏目漱石著、角川文庫、1955.08.10
    「吾輩は猫である」夏目漱石著、旺文社文庫、1965.07.10
    「彼岸過迄」夏目漱石著、岩波文庫、1939.11.29
    「漱石先生の手紙」出久根達郎著、NHK人間講座、2000.04.01
    「夏目漱石『こころ』」姜尚中著、NHK出版、2013.04.01
    (「BOOK」データベースより)amazon
    漱石没後七十余年。その死によって中絶した遺作『明暗』を、漱石の諸作品からの引用をちりばめながら、漱石そっくりの文体、言い廻し、用語を駆使して完結させる。そんな無謀な試みを現代の女性が天衣無縫に実行してしまった。平成のまどろみを揺り動かすこれは事件だ。

  • 清子さんが津田を振った理由に、「そうですよね!!!」と全力で同意してしまった。お延は結婚前にそこを見抜けなかったばかりに苦しんでいるわけだし。津田は私の今までに読んだ漱石小説の中で嫌いな主人公ナンバーワンに躍り出た(今までは『それから』の代助だった)。
    小林は『明暗』の方ではひたすらイライラさせてくる嫌な奴だと思ったけど、続の方ではちょっと意外な一面が見られた。妹のお金さんのこととか、最後の方で津田にお延を「大切にしろよ」っていうところとか、この人の方が津田よりよっぽど人情がある、と思った。お延が最後に津田の言葉を思い出すところも印象に残った。
    うわべだけ取り繕って生きていけるほど世の中は甘くない。人生には明るい部分もあれば暗い部分もある、ということなのかな。津田もお延もこの先どうするのか…。

  • もともとの「明暗」も読んでないのに
    何も知らず手に取ってしまい
    難しい感じと読み方に四苦八苦しながらも
    慣れてくるとなんだか面白くなってきたが
    読み終わるのに時間を要した。
    それにしても、たった数日のことにこれだけの
    分量のページ数かけることに驚いた。

  • 漱石未完の作品の続きはどうなるはずだったのか。様々な論があるようだが、その見事な正解答案を、本編と続けて読んでほとんど違和感のない作品として示した、と言える。異論のある者は、同じように続編を書けばよいだろう。少し「正解すぎる」というか「うまく解釈しすぎている」という感じがしなくもないが、本編に続いて十分に作品世界に浸ることが出来たし、女性の心理描写については、本編より凄みが増しているようにも思える。

  • 国民作家の未完の遺作に、さらりと完結編を書いてくれたイェール大卒の才女の行動力が衝撃です。男の身勝手と保身は「近代の苦悩」のうち?

    大分大学 経済学部(分野 西欧中世社会経済史)
    教員 城戸 照子

  • 成る程、という感じでした。読んでいくうちに登場人物の考えがわかってくる気がします。信用できない人間という意味が解ります。

  • 漱石の絶筆『明暗』を書き継いだ作品。<br>
    漱石が明の部分を書いてるんだとすれば、こちらは終わり部分に向けて『明暗』よりも話が深刻になっていく「暗」なのでしょうか。最後は「則天去私」っていう感じだったのかな…と思いますがよくわかりません。

  • 夏目漱石晩年の未完作品「明暗」の続編。小林の変化っぷりにちょっと驚いた。

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