つむじ風食堂の夜

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 625
レビュー : 126
  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480803696

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにしっとりして、心が静まる本に出会いました。
    この本を、ひと言で表現するなら『ノスタルジー』って感じかな。

    本屋でたまたま手にして、図書館で偶然見つけて
    これはもう出会いだな、と思いました。

    表紙が「つむじ風食堂」のメニューのようにシックで
    とても素敵。

    舞台は「月舟町」

    20代の頃、旅をした北海道・函館の十字街を思い出しちゃって
    My脳内ではここが舞台になりました。


    「星と唐辛子」では古本の話が面白くって、私も同じく
    果物屋のお兄ちゃんに200円渡すという行動取ってしまいそう。
    笑ってしまいました。

    あと「帽子と来客」のエスプレッソ・マシーンが
    「雨を降らせる機械」の描写とか、すごく素敵で
    物語の中にぐいぐい入り込んでしまって
    いま私の中にある疲れや悩みとか、すっかり忘れてしまって
    心地よかった。

    ここじゃないどこか、どこかにひっそりとある月舟町の
    「つむじ風食堂」
    きっとこの本の中で開店して、みんなを待っているんだね。

    いつまでも、一文字ずつかみしめるように
    ゆっくり読みたい、と感じたし、癒されるのでとても好きな本です。
    ほんとオススメです(*´ー`)

  • 「それからはスープ・・・」がよかったので、月舟三部作の第一部のこの本も是非と思い、図書館で借りて読む。

    「それからはスープ・・・」と同様さらさら読めて、穏やかな気持ちになれる内容だったけれど、こちらの本の方が哲学的。
    まるで月の光に照らされているかのように、心がしんとしてきて、「ここ」ってどこだろう、「受け継ぐ」ってどういうことなんだろう、と色々考える。考えながら身近にある幸せに気づき穏やかな気持ちになる。
    「星の王子様」を読んだ時の気分とちょっと似ている。

    オレンジの色や、部屋の電灯の色、食堂の壁の色なんかが頭の中に浮かんでくる色彩感のある小説で、上質な絵本を読んだときと同じ充実感が心を満たしてくれる。

    きっとまた読みたくなるんだろうな、この本。買っちゃおう。今度は、なんとなく眠れない冬の夜に、温かいものを飲みながらゆっくりと読み返してみたい。

  • 不思議な手触りのお話である。
    小さな町、月舟町。
    主人公の「私」は物書きである。
    六階建ての月舟アパートメントの七階もしくは屋根裏に住む。アパートにはエレベーターがない。階段は1階分が六段で、つまりよじ登らなければならないほど急である。
    「私」はこの町ではなぜだか「先生」と呼ばれている。
    「雨」に関する文化人類学的な研究をしたいのだが、いかんせん、それでは食べていけない。それで仕方なく雑文を書いて生計を立てている。
    月舟町には小さな安食堂があって、「私」はそこにしばしば通う。無口な店主にお手伝いのサエコさん、白黒猫のオセロがいる店には、常連客が集う。
    十字路に立つその店の暖簾には名は記されていない。けれども客たちは口をそろえて、<つむじ風食堂>と呼ぶ。東西南北から風のふきつのる十字路には、いつだってつむじ風がくるりと廻っているからだ。

    怪しげな品を売る「帽子屋」。
    ロバート・デ・ニーロを日本人の大工にしたような古本屋の親父。
    劇団女優の奈々津さん。
    ひょろりとした果物屋の青年。
    月舟町やつむじ風食堂に集う人たちは、みんなどこか変わっていて、でもどこにでもいそうでもある。
    「私」の回想に現れる「父」は、マジシャンのようにどこか捉えどころがない。

    お話はあわあわとふわふわと進む。
    「私」の雨の研究は進むだろうか?
    奈々津さんはいつか主演女優になれるだろうか?
    果物屋の青年がイルクーツクへ行く日は来るだろうか?

    どこかにある、どこにもない、その小さな町で。
    今日もつむじ風が1つ、くるりと廻る。


    *一度行ってみようと思っていた小さなブックカフェの本棚でこの本を見つけました。静かな店内で、カフェオレとサンドイッチを傍らに、1冊、読み終えました。もしかしたらあの店の十字路にもつむじ風が吹いていたのかもしれません。

    • yuu1960さん
      月舟町三部作の第2作「それからスープのことばかり考えて暮らした」は、サンドイッチの話です。そのブックカフェにあったら是非。
      月舟町三部作の第2作「それからスープのことばかり考えて暮らした」は、サンドイッチの話です。そのブックカフェにあったら是非。
      2019/04/27
    • ぽんきちさん
      yuu1960さん

      ありがとうございます(^^)。
      サンドイッチもおいしそう。機会があったら読んでみます~。
      yuu1960さん

      ありがとうございます(^^)。
      サンドイッチもおいしそう。機会があったら読んでみます~。
      2019/04/27
  • 何故、この真っ黒な本の前で立ち止まったのだろう?
    何故、その本を開いてみようと思ったのだろう?

    ぎっしりと並べられた本の中から、
    (この本を。)
    と、そう思った、スイッチはいつ、入ったのだろう?

    自分でさえわからない自分の心。
    すすっ、とたくさんの中からその一冊を取り出してみる。
    真っ黒な表紙に星がひとつ。

    タイトルは『つむじ風食堂の夜』
    あぁ、どこかで聞いたことがあるなぁ…
    いつか、誰かのレビューを読んだのだっけ?
    それとも、
    書評集の中で気になっていたのだったかな?

    そんな事はもうすっかり忘れてしまっていたけれど
    とにかく。

    この本の前で、私を止めた、そのスイッチを押した何かに感謝しよう。

    ポロポロと、溢れてくるようだ。
    止めども無く、
    体の一部にしてしまいたい様な言葉が、たくさん、とてもとてもたくさん。

    キラキラと流星の様に流れてはすぐに消えてしまわぬ様に、
    同じ箇所を何度も繰り返し読む。

    本を読む、と言う行為は、誰かが書いた文字の上をなぞるだけの行為だ…

    と、言っていたのは誰だったかな?

    まぁいいや。

    なぞりたいったらなぞりたい。

    よし、なぞってみよう。

    >代金を支払うとき、ちらりと彼の読みさしの本を覗き見たのだが、
    いくつかの言葉に挟まれ『星』と言う一文字が見えた。

    きゅうぅぅぅぅぅんである。

    それは、本当に夜空を仰ぎ見た時と同じ位に
    う~んと広がっていく、
    言葉の魔法みたいだ。

    こぼれ落ちてくる言葉を全て書いた栞を作って、
    私がサンタなら、今年は世界中にこの本をばらまきたい所だなぁ~

  • 不思議な世界観のお話。現実のような夢のようなという感じです。でも何か懐かしいような感じがします。
    ふんわかとした霧のようなものに包まれた気分で読んでしまいました。読後感は良いです。
    月舟町三部作ということなので、他の作品にも期待します。

  • 吉田篤弘氏の味わい深い小説『つむじ風食堂の夜』を読了。以前同タイトルの映画を見た後に原作を読もうと思い買ってあったがなぜだかずっと読まずにいたのを今日読み始め、いま読み終わったところだ。とてもほっとした気持ちになれる小説だった。おいしいお味噌汁を頂いたあとの何だがほこっとした気持ちといったものを感じた。ある架空の町にあるちょっと洒落っ気のある食堂に通い始めた雨を降らせる研究をしていると自称している物書きの青年とそのお店の常連達がさらっと語り合う会話が柔らかく楽しいし、また手品師であったかれの父親の回想とその思い出に強く結びついてい劇場の喫茶室の様子の描写が心にしみる。映画もおすすめだし、ほっとした気持ちになりたいときにはこの小説はおすすめです。

  • 主人公雨の先生とつむじ風食堂にやってくるお客さんたちの話
    すごく不思議な作品
    ファンタジーのようでどこか現実的、登場人物も風変わりでミステリアス
    言葉選びが素敵だなぁと思いました
    ただ少し読みにくかったです

  • 吉田篤弘さんの本がすきになったきっかけがこのお話。

    ほわんとしたお話自体も好きだけど、
    吉田さんが選ぶ言葉もすごく好き。

    つむじ風食堂のクロケット定食や古本屋のデ・ニーロの親方が甘辛く煮た油揚げの刻んだやつを食べたくなる。
    そして、タブラさんのエスプレーソをお父さんの手品を見ながら飲みたくなる。

    月船町は、つむじ風が吹いたら現れて
    またつむじ風が吹いたら
    もうたどり着けない場所にあるんじゃないかって思ってしまう。

    そんなお話。

  • しまった!もっとゆっくり読めばよかった。静かな夜に温かい飲みもの片手にページをめくれば疲れた心にじんわりと効きます。本を開いているあいだずっと、月舟町の空気を感じていたのは〈二重空間移動装置〉のなせるわざでしょうか。

  • 食堂は、十字路の角にぽつんとひとつ灯をともしていた。私がこの町に越してきてからずっとそのようにしてあり、今もそのようにしてある。十字路には、東西南北あちらこちらから風が吹きつのるので、いつでも、つむじ風がひとつ、くるりと廻っていた。くるりと廻って、都会の隅に吹きだまる砂粒を舞い上げ、そいつをまた、鋭くはじき返すようにして食堂の暖簾がはためいていた。暖簾に名はない。舞台は懐かしい町「月舟町」。

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著者プロフィール

吉田篤弘(よしだ・あつひろ)
1962年東京生まれ。作家。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作とデザインの仕事を続けている。著書に『フィンガーボウルの話のつづき』『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『木挽町月光夜咄』『電氣ホテル』『台所のラジオ』『金曜日の本』『神様のいる街』『あること、ないこと』『雲と鉛筆』『おやすみ、東京』など多数。

「2018年 『おるもすと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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