とりつくしま (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.50
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本棚登録 : 492
レビュー : 138
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804075

感想・レビュー・書評

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  • この世に心残りがある死者の前に現れる"とりつくしま係"。
    この"とりつくしま係"と契約すると、この世にあるモノを1つ選んでとりつくことができるのです。
    本書は死後に何かのモノにとりついた10人の物語を収めた短編集です。

    歌人としても活躍されている東さんの小説は初めて読みました。
    1つ1つは短いのに、1編読み終えるごとに2時間ドラマを1本観たかのような、鮮やかな印象を残します。
    遺された人々を見守る視点で進む物語は、温かい中に絶妙な淋しさや切なさが効いてくる読後感。
    個人的には「白檀」「名前」「マッサージ」「レンズ」が好みでした。

    もし自分だったら何にとりつくだろう…。
    遺した家族をずっと見守っていたいような、新たな生活を送っている姿を見届けられたら去りたいような…。

  • 歌人として一語一語と真摯に向き合う日々を送られているからか、
    物語の中にふと出てくる単語が切り取る風景や情感が
    ハッとするほど鮮やかな作品です。

    心残りを抱えて亡くなった人に、「モノ」にとりつくことで
    現世に戻るチャンスを与えてくれる「とりつくしま係」。

    中学最後の試合にピッチャーとして登板する息子の姿を
    なんとしても見守りたい母は、ロージンバッグの中の粉に。

    流浪の生活の末、図書カードも作れないのに
    図書館に入り浸ってうたたねするのが日課だった老人は、
    嫌な顔ひとつせずに接してくれた受付の女性の名札に。

    自分の価値観を振りかざし、娘の言葉など聞く耳持たなかった母に
    一度でいいから素直に耳を傾けてほしい娘は、母の補聴器に。

    片想いの先輩に告白することもなく世を去った少女は、
    女性としても憧れていた、先輩の彼女のリップクリームに。

    。。。というふうに、「とりつくしま」として選ばれるモノに
    東さん独特のセンスが感じられて、
    短歌の中の一語を味わうようにイメージがふくらみます。

    特に、高校生の頃から三十代で亡くなるまで、密かに想い続けた
    書道の先生に贈った、白檀の扇子として甦る女性を描いた『白檀』。

    夏が訪れるのを引き出しの中でじっと待ち、
    先生の手で開かれ、その声を間近で聞き、
    白い首すじに流れる汗を見つめながら風をつくる。。。
    その描写が醸し出す官能の濃密さに、息が詰まります。

    「夏がくるたびに、わたしを開いてくださいね。」

    • まろんさん
      ずっと誰かのそばで使ってもらえるモノにとりつく人もいれば
      未練がふっ切れるように、やがては消えてしまうものにとりつく人もいて
      いろいろ考えさ...
      ずっと誰かのそばで使ってもらえるモノにとりつく人もいれば
      未練がふっ切れるように、やがては消えてしまうものにとりつく人もいて
      いろいろ考えさせられる本でした(*^_^*)

      私は「白檀」と「名札」の2作がお気に入りよ♪
      2012/07/17
    • 円軌道の外さん

      こんにちは!
      世間の黄金週間も終わり
      やっとこさ休みにありつけてます(笑)(^O^)

      まろんさんはお変わりないですか?

      ...

      こんにちは!
      世間の黄金週間も終わり
      やっとこさ休みにありつけてます(笑)(^O^)

      まろんさんはお変わりないですか?


      自分も不思議で
      切ないお話がいっぱい詰まった連作短編集『さようなら窓』で
      東 直子さんにハマりました(^O^)


      歌人だけに
      独特のリズムで進む文章が妙に心地いいし、
      切なく胸を打つセツナ成分を
      かなり多く含んでいて
      ツボやったんですよね。

      しかし短歌や詩の世界の人たちって
      感性が研ぎ澄まされてて
      羨ましいです(>_<)


      思いを削って削って
      言葉を吟味して
      規制の枠内に収めなアカンし、
      言葉のチョイスにも
      ハッとさせられるし。

      「とりつくしま係」っていう発想がまた
      楽しいし(笑)


      東さんの官能的な文章も
      是非とも読んでみたいので
      この作品も近々チェックしてみます!(^_^)v

      2013/05/08
    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      こんにちは!
      円軌道の外さんは、今やっとお休みが取れたんですね、お疲れさまです(*^_^*)
      私は親戚関係で、ちょっと北...
      円軌道の外さん☆

      こんにちは!
      円軌道の外さんは、今やっとお休みが取れたんですね、お疲れさまです(*^_^*)
      私は親戚関係で、ちょっと北九州まで出向かなければいけなくなって
      4日ぶりに家に帰ってきたところなのです。
      というわけで、お返事が遅くなってしまってごめんなさい!

      「とりつくしま係」って、すごいですよね(笑)
      他の作家さんだったら、ぜったい違うネーミングを考えそう。
      東直子さんならではの、ユーモアもせつなさも織り交ぜた感覚が素敵ですよね♪

      亡くなった母がずっと短歌を勉強していたので
      私も短歌にはなんだか思い入れがあったりして
      東直子さんは、特に気になる存在です。
      『白檀』は、本当にドキドキするくらい官能的で
      香りも湿度も息づかいも、すべて感じられるような名作ですよ(*'-')フフ♪
      2013/05/12
  • 死んでしまってから「とりつくしま科」で希望する人の希望するものに「とりつき」が出来るという連載短編集。

    最初は本当に短くて、物足りなく感じましたが中盤の「白檀」と「日記」が印象深かったです。物足りなさは仕方がないけど、もっと一話ずつ掘り下げられていたら楽しみが増したと思います。

  • 取り憑く、と書き換えればおどろおどろしいけれど、全体的にはふわりと軽くあたたかい持ち味のお話が多いです。

    死者の魂が形を変えて現世に舞い戻るお話では浅田次郎さんの「椿山課長の7日間」がマイベストですが、この作品のルールは命あるものはとりつくしまには選べません。

    ロージン、マグカップのトリケラトプス、ジャングルジム、扇子、名札、補聴器、日記帳、マッサージ椅子、リップクリーム、カメラのレンズ。

    それぞれ想いを胸に大切な人の身近なものにとりついています。
    「白檀」「マッサージ」「くちびる」「レンズ」が特に好きかなぁ。
    表紙の蝶々のような、よく見れば何かの妖精のようなイラストがシュール。魂なのかな…?

    装幀 池田進吾(67)
    カッコ内は年齢?なんでこの人だけ年齢表示?私、気になります!

    • まろんさん
      「もの」に取り憑く、というという切口が新鮮な本ですよね。
      私も「白檀」の、風情のある官能性がとても好きでした。

      装幀の方の(67)、私も実...
      「もの」に取り憑く、というという切口が新鮮な本ですよね。
      私も「白檀」の、風情のある官能性がとても好きでした。

      装幀の方の(67)、私も実は気になっていたのですが
      年齢なのか、それとも装幀を手掛けた数なのか、謎ですね!
      もし他の本にもこの方のお名前があって、そこの数字が67以外だったりしたら。。。
      と思うと、ワクワクします(笑)
      ちなみに、もし見かけたときは、ぜったいにhetarebooksさんに報告しますね(*'-')フフ♪
      2012/10/09
    • hetarebooksさん
      まろんさん❤
      まろんさんのレビューに惹かれて借りてみました♪香りの記憶ってすごく印象に残りますよね。なんとも大人っぽいお話でした。

      ...
      まろんさん❤
      まろんさんのレビューに惹かれて借りてみました♪香りの記憶ってすごく印象に残りますよね。なんとも大人っぽいお話でした。

      フフフ♪67が年齢だとしたら刊行年ごとに変わっていくのかしら。。。あぁ気になる!
      ご報告お待ちしております♪(^^ゞ
      2012/10/11
  • 図書館で借りたもの。
    死んで心残りがある人は、この世の何かを「とりつくしま」にできる。妻は夫のマグカップに、母は息子のロージンに。切なくてちょっぴり苦い、不思議な10の物語。

    一編が短くさらっと読めた。
    「ロージン」「日記」は泣けた。家族が絡むとすぐ泣けるわ…。
    私だったら何をとりつくしまにするかなぁと考えてみた。
    家族のことが気になるけど、あんまり盗み見みたいなことはしたくなくて…。
    靴箱がいいかな。プライベートな所は見れないけど、ほぼ毎日顔を見ることができるし。そう簡単にはなくならないし。
    臭いが心配だけど(笑)

  • 面白いなと思った本が他の場所でも評価されていると嬉しい。

    この本を読んだ後、あまり行かない家の近くの本屋に行くとこの本が、棚の上で広いスペースを使いアピールされているのを見て「そーだよなーいいよねー」とこの本屋の好感度もアップ。

    表紙の絵は少し気持ち悪く、少し読むのをためらったが、読み進むとしみじみいいねと思う。母へのプレゼント本の一冊にしようと思う。

    死んだ人が、思いを残す人の周りの物に「とりつく」話。短編でシーンを変えて語られる。死んだらこういう事が出来たらいいなと思ったり、大切な人を失ってもこういう風に考えられれば少し救われるかもと思う。

  • 死んでしまった後、この世に未練を残した魂は、何かに取り付いて、心を残したもののそばにいることができる。それが「とりつくしま」
    いろんな人が、いろんな想いで、何かに取り付いて、心残りの人のそばにそっといる。そんな話。

  • 現世に未練を残して死んでしまった人が、モノにとりついて現世に戻れるというお話。

    とり憑くって聞くと怖いけど、本書は何だかほわほわさせられます☆

    表紙に描かれてるのがとりつくしま係かな?
    ちょっと可愛いかも…^^

    ばりばりサラリーマンがマッサージ器にとりつく「マッサージ」
    浮浪者が図書館のお姉さんの名札にとりつく「名前」
    女子高生が憧れの先輩のリップクリームにとりつく「くちびる」
    が好きです♪

    逆に、
    娘が母親の補聴器にとりつく「ささやき」はやるせなくて、
    奥さんが旦那さんのマグカップにとりつく「トリケラトプス」はぞっとしたり、色んなお話があって色々と考えさせられました。

    捨てられたら嫌やし、かと言ってずっと見てるだけも嫌だなー何にとりついたらいいん!?

    と、ついつい真剣に考えてしまったり、

    「これにも誰かがとりついてるかも…!?」と、妙に大事に扱ってみたり、かなり影響されてますね。

    (中央図書館1/21~22)

  • この世に未練を残し死んだ人の魂を、望む「モノ」になってもとの世界に戻してくれる「とりつくしま係」。
    愛する人のいる世界へ戻った魂たちの短編集。
    どれも短いながら優しく深い、時に考えさせられる話。

    中学生の息子が登板する最後の公式戦を見守るため、ロージンバックとなってとりつく母を描いた『ロージン』、
    片思いする書道家の扇子となった『白檀』、
    働き盛りで突然死したサラリーマンがマッサージ器となる『マッサージ』
    が特に良かった。

    わがままな母の補聴器となる『ささやき』は唯一苦しい展開で、
    アクセントにはなっている。けれど気持ちは重い。

    死は非日常だけど、だからこそずっとそれに縛られて生きることはできないということが切なくもあり、私はどんなに未練があってもとりつきたくないなあと思った。

  • いやー予想以上によかった・・・。
    最初の「ロージン」でいきなり号泣。ページ濡らさないようにするのが一苦労。
    短編集で、どの話も短いのにすごく印象に残る。そして後味はなんというかやわらかい。補聴器の話は切なかったけど・・・。
    言葉の使い方にリズムがあって、女子高生とか老人とか、それぞれの主人公がそれぞれのキャラクターにあった美しい日本語を使っている。
    ちゃんと小説なのにどこか詩的。と思ったらやっぱり本職は短歌のほうの人だったのですね。
    うーんいい本読んだ。

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著者プロフィール

1963年広島生まれ。歌人、小説家。絵本や童話、イラストレーションも手がける。「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、『いとの森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集に『十階』、小説に『水銀灯が消えるまで』『とりつくしま』『さようなら窓』『薬屋のタバサ』『晴れ女の耳』、エッセイ集に『短歌の不思議』など。穂村弘との共著に『回転ドアは、順番に』がある。

「2019年 『しびれる短歌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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