とりつくしま (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804075

感想・レビュー・書評

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  • 死んだ人は一度だけ、モノに憑りつくことができる。
    この世に未練がある人たちのために、とりつくしま係が願いを叶えてくれる短編集。

    20ページほどの短いお話が10編と、番外編が収録されている。
    掘り下げれば重く深くなりそうなテーマだが、ページ数が少ないので、かなりあっさりと書かれており、個人的には物足りない印象。
    妻の日記をとりつくしまにした夫の話、『日記』が一番きれいで切なかった。
    動くことも喋ることもできない状態で蘇るのは、はたして幸福なのか否か。
    ずっと見ているって、とてもつらいことなんじゃないかと思う。

    <収録作品>
    ロージン/トリケラトプス/青いの/白檀/名前/ささやき/日記/マッサージ/くちびる/レンズ/番外編 びわの樹の下の娘

  • 死んだあと心残りがあったら、命のない物に取り付けます。そんな死後のルールは初めてですが、さてこのシステムは必要だろうか?自分の死後の世界を、ずっと見続けるのは辛い気がします。また残された者も、視られていることを知ったら少し気おくれしてしまう。そういう意味で、あっさりと失われやすいものに取り付いた「ロージン」や「くちびる」は潔く美しく感じました。釈然としない死後のシステムに少々悶々と読んでいましたが、「マッサージ」のラストには泣かされました。私はずっと残る物にはなりたくないな。

  • 面白かったです。亡くなった人が、いろいろなものにとりついて感じた様々なものがたり。ふわふわと幸せなものから、ぴりっと切なくなるものまで。補聴器のお話がダークだったな…。とりついたものを、大切にする人と、すぐに手放してしまう人の違いもシビアでした。でも、大切な人が近くにいてくれるってなんだかいいな。

  • この世に思いを残して死んだ人が、何かモノにとりつくことができるという話。
    生きているものはダメで(すでに魂があるから)あくまでも『モノ』に限るので、息子がピッチャーの試合で使用するロージンバッグになる母親や、家族が使用してくれるであろう自分が最後に購入したマッサージチェアになる父親、ずっと恋い焦がれていた人が夏だけに使用する白檀の香りの扇子になる女性など、とりつくものはさまざま。
    どの話も切なく、悲しい中にも少し救いが見えるような話だったけど、どの話も短すぎると言うか…。この短さが絶妙なのかもしれないけど、もう少し一つ一つを掘り下げて長くしてシリーズ化するくらいが良かったのでは?…みたいな余計なお世話(笑)

  • あらすじに惹かれて!
    「とりつく係」じゃなく「とりつくしま係」なのも、なんかいい。
    最初のと白檀がお気に入り。

    ただ、正直もっと泣けるかな、感動するかな、切なくなるかなと思ったのが感想です。
    短すぎたのか、感情が乗る前に終わってしまった話が多い印象。

  • 短編集。温かな話から苦しい話、哀しい話までさまざま。生活するということの光と影。

  • 自分の死後、見届けたい人はいるだろうか。
    もちろん、大事な人、愛する人であればあるほど自分の死後もそばにいたいという気持ちは強いと思うのだけれど、気持ちが強いほど、その人が辛い時に生前と同じように支えてあげられない無力感の方が激しいのではないかと思う。
    この短編集では、みじかなひとのものに取り付き葛藤や辛さを感じる故人と気持ちの折り合いをつけてとりつくしまを終える故人、また、それまで距離があった人にものとして側にいることを選んだ故人がいる。

    三つ目のような故人の話が前向きな気分になれて好きです。
    自分の死後、変わって行く大事な人をただ見続けるのは、こわい。

  • 読み終えて、改めて思うことは
    生きてる時間を大事にしたいということ。
    そう思っていても、実際は結構テキトーに生きてしまうということ。
    大事に生きたつもりでも、きっと気がかりは残るということ。

    都合よく思い出し、都合よく忘れる。人間てそんなものだ。
    だから生きていけるし、みんな勝手で、無常で、それがいいし、
    そうなってしまうのだから、受け入れて、できることなら楽しもう。

  • 魂のゆくえ。 僕ならどうするかな。 ちょっといつもと違う目で、身の回りの物を観察してしまいそう。

  • 思わず自分なら死後何にとりつくか考えてしまう。とりつくって、おどろおどろしい感じがするが、さらっと爽やかに描いていて、読みやすい。

著者プロフィール

歌人、作家。第7回歌壇賞、第31回坪田譲治文学賞(『いとの森の家』)を受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説に『とりつくしま』『ひとっこひとり』、エッセイ集に『一緒に生きる』『レモン石鹼泡立てる』、歌書に『短歌の時間』『現代短歌版百人一首』、絵本に『わたしのマントはぼうしつき』(絵・町田尚子)などがある。「東京新聞」などの選歌欄担当。近刊にくどうれいんとの共著『水歌通信』がある。鳥好き。

「2023年 『朝、空が見えます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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