とりつくしま (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.50
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本棚登録 : 493
レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804075

感想・レビュー・書評

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  • この世に心残りがある死者の前に現れる"とりつくしま係"。
    この"とりつくしま係"と契約すると、この世にあるモノを1つ選んでとりつくことができるのです。
    本書は死後に何かのモノにとりついた10人の物語を収めた短編集です。

    歌人としても活躍されている東さんの小説は初めて読みました。
    1つ1つは短いのに、1編読み終えるごとに2時間ドラマを1本観たかのような、鮮やかな印象を残します。
    遺された人々を見守る視点で進む物語は、温かい中に絶妙な淋しさや切なさが効いてくる読後感。
    個人的には「白檀」「名前」「マッサージ」「レンズ」が好みでした。

    もし自分だったら何にとりつくだろう…。
    遺した家族をずっと見守っていたいような、新たな生活を送っている姿を見届けられたら去りたいような…。

  • 図書館で借りたもの。
    死んで心残りがある人は、この世の何かを「とりつくしま」にできる。妻は夫のマグカップに、母は息子のロージンに。切なくてちょっぴり苦い、不思議な10の物語。

    一編が短くさらっと読めた。
    「ロージン」「日記」は泣けた。家族が絡むとすぐ泣けるわ…。
    私だったら何をとりつくしまにするかなぁと考えてみた。
    家族のことが気になるけど、あんまり盗み見みたいなことはしたくなくて…。
    靴箱がいいかな。プライベートな所は見れないけど、ほぼ毎日顔を見ることができるし。そう簡単にはなくならないし。
    臭いが心配だけど(笑)

  • 面白いなと思った本が他の場所でも評価されていると嬉しい。

    この本を読んだ後、あまり行かない家の近くの本屋に行くとこの本が、棚の上で広いスペースを使いアピールされているのを見て「そーだよなーいいよねー」とこの本屋の好感度もアップ。

    表紙の絵は少し気持ち悪く、少し読むのをためらったが、読み進むとしみじみいいねと思う。母へのプレゼント本の一冊にしようと思う。

    死んだ人が、思いを残す人の周りの物に「とりつく」話。短編でシーンを変えて語られる。死んだらこういう事が出来たらいいなと思ったり、大切な人を失ってもこういう風に考えられれば少し救われるかもと思う。

  • 現世に未練を残して死んでしまった人が、モノにとりついて現世に戻れるというお話。

    とり憑くって聞くと怖いけど、本書は何だかほわほわさせられます☆

    表紙に描かれてるのがとりつくしま係かな?
    ちょっと可愛いかも…^^

    ばりばりサラリーマンがマッサージ器にとりつく「マッサージ」
    浮浪者が図書館のお姉さんの名札にとりつく「名前」
    女子高生が憧れの先輩のリップクリームにとりつく「くちびる」
    が好きです♪

    逆に、
    娘が母親の補聴器にとりつく「ささやき」はやるせなくて、
    奥さんが旦那さんのマグカップにとりつく「トリケラトプス」はぞっとしたり、色んなお話があって色々と考えさせられました。

    捨てられたら嫌やし、かと言ってずっと見てるだけも嫌だなー何にとりついたらいいん!?

    と、ついつい真剣に考えてしまったり、

    「これにも誰かがとりついてるかも…!?」と、妙に大事に扱ってみたり、かなり影響されてますね。

    (中央図書館1/21~22)

  • この世に未練を残し死んだ人の魂を、望む「モノ」になってもとの世界に戻してくれる「とりつくしま係」。
    愛する人のいる世界へ戻った魂たちの短編集。
    どれも短いながら優しく深い、時に考えさせられる話。

    中学生の息子が登板する最後の公式戦を見守るため、ロージンバックとなってとりつく母を描いた『ロージン』、
    片思いする書道家の扇子となった『白檀』、
    働き盛りで突然死したサラリーマンがマッサージ器となる『マッサージ』
    が特に良かった。

    わがままな母の補聴器となる『ささやき』は唯一苦しい展開で、
    アクセントにはなっている。けれど気持ちは重い。

    死は非日常だけど、だからこそずっとそれに縛られて生きることはできないということが切なくもあり、私はどんなに未練があってもとりつきたくないなあと思った。

  • 不思議な世界観の小説でした。
    さらりと読めちゃうんだけど、奥が深い・・・
    自分が死んだら何にとりつくだろう??
    でも、何も出来ずに見てるだけってのは思いのほかツライだろうな・・

  • 初めて読んだ東さんの小説が結構シュールだったので、この作品は評判いいけどどうなんだろう〜と迷い続けて今まで来てしまった。
    これもある意味シュールではあるけど(死んでから身近な人の物にとりつく話だから)初めの数篇を読んでかなり泣きそうになった。
    泣きそう、で留まってくれてよかったな。私は結構本に泣かされる方なので…あまりセンチになられると読むのが辛くなってしまうから、寸前で感傷的になりすぎずにうまくストーリーを着地させていたのがうまかったなと。だって現世に未練があるからこその物へのとりつきでしょ、とりついたところで、身近だった愛する人のその後の生活を見守ることには辛さも付きまとう。
    「自分」を失ったことで、悲しみを乗り越え新しいスタートをきる人もいる。そんな姿を、もし私だったら黙って見ているしか出来ないのはあまりにも辛い。
    切なく悲しいものもあるけど、ちょっとユーモラスに描いているのもあり、愛憎入り乱れなものもあり、様々な人の「その後」の世界。私はとても面白く読んだ。

  • ショートストーリー
    それぞれにある「思い残した事」それをとりつくしま係がとりつくしまに取り憑かせてくれる事で見届ける。
    スッパリこの世と離れるのもいいが、こんな微かな繋がりでもこの世に残る事で慰められるものいいかなと全編通して思った。

  • 切ない

  • 「とりつく」というととても怖いもののように感じるが…
    あの世へ行くと「とりつくしま係」が説明と段取りをしてくれる、という所がユーモアだ。
    しかし、そうは言っても、様々な思いを残して亡くなった人たち…
    そんな形でもう一度「この世」に戻してあげるのは却って残酷なのではないだろうか…
    などと思いながら読み始めた。

    「とりつく」魂は、年齢も性別もさまざま。
    考えた末に、やはり大切だった人の近くにいられるものにとりつく。
    その気持ちは変わらないが…
    すっきり思いを果たすものもいれば、切ない話もあり、ちょっと残酷な寂しさや…
    なんと、ほのぼのするものまであった。
    こわい話は一つだけだった。
    東さんのやさしい気持がわかる本だった。


    ロージン/トリケラトプス/青いの/白檀/名前/ささやき/日記/マッサージ/くちびる/レンズ/(番外編)びわの樹の下の娘/

著者プロフィール

1963年、広島生まれ。歌人、小説家。絵本や童話、イラストレーションも手がける。歌壇、角川短歌賞選考委員。東京新聞歌壇選者。「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、『いとも森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集に『十階』、小説に『水銀灯が消えるまで』『とりつくしま』『さようなら窓』、エッセイ集に『短歌の不思議』、穂村弘との共著『回転ドアは、順番に』『しびれる短歌』がある。

「2019年 『春原さんのリコーダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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