とりつくしま (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.50
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  • (19)
  • (4)
本棚登録 : 493
レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804075

感想・レビュー・書評

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  • 歌人として一語一語と真摯に向き合う日々を送られているからか、
    物語の中にふと出てくる単語が切り取る風景や情感が
    ハッとするほど鮮やかな作品です。

    心残りを抱えて亡くなった人に、「モノ」にとりつくことで
    現世に戻るチャンスを与えてくれる「とりつくしま係」。

    中学最後の試合にピッチャーとして登板する息子の姿を
    なんとしても見守りたい母は、ロージンバッグの中の粉に。

    流浪の生活の末、図書カードも作れないのに
    図書館に入り浸ってうたたねするのが日課だった老人は、
    嫌な顔ひとつせずに接してくれた受付の女性の名札に。

    自分の価値観を振りかざし、娘の言葉など聞く耳持たなかった母に
    一度でいいから素直に耳を傾けてほしい娘は、母の補聴器に。

    片想いの先輩に告白することもなく世を去った少女は、
    女性としても憧れていた、先輩の彼女のリップクリームに。

    。。。というふうに、「とりつくしま」として選ばれるモノに
    東さん独特のセンスが感じられて、
    短歌の中の一語を味わうようにイメージがふくらみます。

    特に、高校生の頃から三十代で亡くなるまで、密かに想い続けた
    書道の先生に贈った、白檀の扇子として甦る女性を描いた『白檀』。

    夏が訪れるのを引き出しの中でじっと待ち、
    先生の手で開かれ、その声を間近で聞き、
    白い首すじに流れる汗を見つめながら風をつくる。。。
    その描写が醸し出す官能の濃密さに、息が詰まります。

    「夏がくるたびに、わたしを開いてくださいね。」

    • まろんさん
      ずっと誰かのそばで使ってもらえるモノにとりつく人もいれば
      未練がふっ切れるように、やがては消えてしまうものにとりつく人もいて
      いろいろ考えさ...
      ずっと誰かのそばで使ってもらえるモノにとりつく人もいれば
      未練がふっ切れるように、やがては消えてしまうものにとりつく人もいて
      いろいろ考えさせられる本でした(*^_^*)

      私は「白檀」と「名札」の2作がお気に入りよ♪
      2012/07/17
    • 円軌道の外さん

      こんにちは!
      世間の黄金週間も終わり
      やっとこさ休みにありつけてます(笑)(^O^)

      まろんさんはお変わりないですか?

      ...

      こんにちは!
      世間の黄金週間も終わり
      やっとこさ休みにありつけてます(笑)(^O^)

      まろんさんはお変わりないですか?


      自分も不思議で
      切ないお話がいっぱい詰まった連作短編集『さようなら窓』で
      東 直子さんにハマりました(^O^)


      歌人だけに
      独特のリズムで進む文章が妙に心地いいし、
      切なく胸を打つセツナ成分を
      かなり多く含んでいて
      ツボやったんですよね。

      しかし短歌や詩の世界の人たちって
      感性が研ぎ澄まされてて
      羨ましいです(>_<)


      思いを削って削って
      言葉を吟味して
      規制の枠内に収めなアカンし、
      言葉のチョイスにも
      ハッとさせられるし。

      「とりつくしま係」っていう発想がまた
      楽しいし(笑)


      東さんの官能的な文章も
      是非とも読んでみたいので
      この作品も近々チェックしてみます!(^_^)v

      2013/05/08
    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      こんにちは!
      円軌道の外さんは、今やっとお休みが取れたんですね、お疲れさまです(*^_^*)
      私は親戚関係で、ちょっと北...
      円軌道の外さん☆

      こんにちは!
      円軌道の外さんは、今やっとお休みが取れたんですね、お疲れさまです(*^_^*)
      私は親戚関係で、ちょっと北九州まで出向かなければいけなくなって
      4日ぶりに家に帰ってきたところなのです。
      というわけで、お返事が遅くなってしまってごめんなさい!

      「とりつくしま係」って、すごいですよね(笑)
      他の作家さんだったら、ぜったい違うネーミングを考えそう。
      東直子さんならではの、ユーモアもせつなさも織り交ぜた感覚が素敵ですよね♪

      亡くなった母がずっと短歌を勉強していたので
      私も短歌にはなんだか思い入れがあったりして
      東直子さんは、特に気になる存在です。
      『白檀』は、本当にドキドキするくらい官能的で
      香りも湿度も息づかいも、すべて感じられるような名作ですよ(*'-')フフ♪
      2013/05/12
  • いやー予想以上によかった・・・。
    最初の「ロージン」でいきなり号泣。ページ濡らさないようにするのが一苦労。
    短編集で、どの話も短いのにすごく印象に残る。そして後味はなんというかやわらかい。補聴器の話は切なかったけど・・・。
    言葉の使い方にリズムがあって、女子高生とか老人とか、それぞれの主人公がそれぞれのキャラクターにあった美しい日本語を使っている。
    ちゃんと小説なのにどこか詩的。と思ったらやっぱり本職は短歌のほうの人だったのですね。
    うーんいい本読んだ。

  • 死んだあとだけれど、モノとなってこの世に戻ることができる、と言われた死者たちの、それぞれのストーリー。
    どのお話にも、人間関係のあたたかさがあってよかった。
    自分がもし今死んでしまったら、何が未練になるだろう、と考えてみたりしました。

  • とりつくしまとは、亡くなる人が最後に心残りがないように、しばらくの間、何かに取り憑くことが出来るという設定。
    自分が死んだらしいと気づいた魂に「とりつくしま係」が声をかけてくるのだ。
    人に取り憑くことは出来ず、その後その物がどうなるかも保証されない。
    見守りたい人の今後を見守って安らかに逝けることもあれば、物が人手に渡ったりして皮肉な成り行きになることも…
    息子の中学校最後の野球の公式試合を見守りたいと願った母親は、ピッチャーが手につける白い粉になる。使われるときだけ周りが見え、粉が飛び散るに従って、だんだん意識も薄れる描写が上手い。
    交通事故で死んだ若い女性は、夫の愛用するマグカップに。夫が女性と付き合いだしたのを見てやきもきするが…
    恩師を密かに慕っていた女性は、先生が使う扇子に。夏の間だけ、少し開くだけでもいいのだ。
    わかりやすく、あっさりとした口当たり。
    なかなか。
    著者は1963年生まれ。歌人。2007年3月発行。

  • ☆☆☆☆☆
    短編集。
    自分の希望するモノにとりつくことを許された死者の物語。
    母は息子が使っているロージンバッグに、妻は夫が愛用するマグカップに、子供は公園のジャングルジムに・・・。
    切なさで胸が締め付けられるような作品が多くとても印象的だった。なお、冒頭の☆は評価欄の星だけでは足りないと思ったので、追加分として。

  • 私だったら何になるんだろう。久々に泣きながら読んだ。

  • 読んでいるうちに、ホントにあり得そうな気がしてくる。
    悲しいけれど優しい話。
    とりついても、永遠ではない方がいいのかもしれない。

  • 未練を残して死んだ者に、物へ取り憑くことで現世の様子を見る機会を与える“とりつくしま係”。
    ある者は恋人のマグカップに、ある者は恩師の扇子に、またある者は公園のジャングルジムに。


    残して来た人の身近な物に取り憑き、その人と日常を共にする。
    もちろん知って良かったことも、知らなければ良かったことも目にすることになる。
    この短編集に登場する11人の想いは人それぞれ。
    リップクリームの一瞬を選択する者もいれば、補聴器の生涯を選択する者もいる。
    自分がいなくなった後の世界、自分がいなくなった後の最愛の人。
    誰もが強く興味を持ち、出来るなら様子を窺ってみたいと願う。
    未練を残し突発的に死んだなら尚更。
    でもそれは興味と共に不安や恐怖を持ち合わせている。

    自分は好かれていたのだろうか。愛されていたのだろうか。

    11人の登場人物が、それでも信じて、もしくは信じるために現世に姿を変えて大切な人の傍へ降り立つ様子を歌人でもある東直子がやわらかく描いている。

    個人的に好きなのは「野球のロージンバック」
    息子の大事な野球の試合を見届けようと、ピッチャーが手の滑り止めに使う粉の入った袋へ取り憑く母親の話。
    散っていく粉と共に薄れていく意識。永遠ではなく一瞬を選んだ母親の愛情が伝わる一遍。

    もし今、自分が死んだら誰の傍で、何に取り憑くか。
    すぐに浮かばない自分が幸せなのか、そうではないのか考えてしまった。


    東直子、その他の著書

    ・今日のビタミン
    ・長崎くんの指
    ・回転ドアは、順番に(穂村弘共著)

    などなど。

  • 良かったです!
    泣きました。私だったら、何になろう。
    物一つ一つ、人一人一人大切にしたくなる作品です。

  • ラジオのNHK第一で昨年だったかなあ、ラジオドラマやラジオ文芸館などで取り上げられることの多かった作家さんです。この本もそのうちの一冊。死ぬとあの世とこの世の間で、この世に強い思いを残している人たちがとりつくしま係から憑りつくことを提案されるんですね。普通なら呪うとか、おどろおどろしい感じになるんでしょうが、これは違います^^ ほのぼのとしていてやさしい感じがするんですよね。愛情も感じられるあったかい本だと思います。

著者プロフィール

1963年、広島生まれ。歌人、小説家。絵本や童話、イラストレーションも手がける。歌壇、角川短歌賞選考委員。東京新聞歌壇選者。「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、『いとも森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集に『十階』、小説に『水銀灯が消えるまで』『とりつくしま』『さようなら窓』、エッセイ集に『短歌の不思議』、穂村弘との共著『回転ドアは、順番に』『しびれる短歌』がある。

「2019年 『春原さんのリコーダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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