星間商事株式会社社史編纂室

  • 筑摩書房 (2009年7月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480804204

みんなの感想まとめ

会社の過去を暴くために集まった社史編纂室のメンバーが織りなす物語は、コメディ要素満載で、思わず笑ってしまう場面が多いです。筋金入りの腐女子である川田幸代をはじめとする個性豊かなキャラクターたちが、社史...

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、会社でどんな仕事をされていますか?

    ブクログのユーザーはどういった属性の方が多いのだろう?と時々思う時があります。年齢層も幅広いと思われるユーザーの皆さん。学生さんも一定数いらっしゃるのかな?とも思いますが、恐らくは”会社員です”、という方が一番多いのではないかと勝手に予想しています。ただ、”会社員”と一言でいってもその仕事内容は千差万別だと思います。営業、企画、人事、経理…と会社にも色んな部門があり、そこに働く人たちがいます。そんな人たちの活躍を小説で描いたもの、それが”お仕事小説”です。そんな”お仕事小説”には、宮下奈都さん「羊と鋼の森」、原田マハさん「本日はお日柄もよく」、そして三浦しをんさん「舟を編む」…と名作が山のように連なります。普段光の当たることのない”お仕事”に光を当てる”お仕事小説”。社会の歯車としてそれぞれの分野で、裏方として懸命に働く無数の人たちの存在がそんな中に浮かび上がります。自分と同じように裏方に働く人たちの、地味だけれど確かな”お仕事”の存在を思う時、”お仕事小説”というものが注目を浴びるのもなるほどな、と思います。

    さて、そんな”お仕事小説”の筆頭格、「舟を編む」で私たちに圧倒的な感動を与えてくれた三浦しをんさんには、もう一つ”本を作る”人たちの姿を描いた”お仕事小説”があります。それは「舟を編む」とは似ても似つかない、とってもコミカルな物語。言葉の海を渡るための舟=辞書作りに情熱を注いだ人たちとは違い、『「そういえば、我が社には社史がないぞ」と社長が言ったのかどうか知らないが「社史を編むべ」となった』ことがきっかけで集められた五人の精鋭?たちがそんな社史の編纂に取り組む物語。それは、これも”お仕事小説!?”と、読者が戸惑いを隠せなくなるかっ飛んだ物語です。

    『星間商事株式会社社史編纂室の朝は、八時十五分に本社ビル全体に流れるラジオ体操の音楽とともにはじまる』という音楽に合わせて飛び跳ねる後輩のみっこを横目に、寝不足で『机につっぷしてい』るのは、主人公の川田幸代(かわだ さちよ)。『先輩、元気とやる気がないですよー』と言われるものの『床は剥がれかけ、天井は配管がむきだしで、空気はいつもほんのりと黴くさい』という『社史編纂室に配属されて、覇気があるほうがおかしい』と思います。『あと一年で定年なのをいいことに今朝も遅刻』の本間課長、『社編に飛ばされたのも、専務の愛人だった秘書に手を出したから』と噂され『ヤリチン』と呼ばれる矢田信平、そして『これまでだれも姿を見たことがなく、名前さえよくわからない』ため『幽霊部長』と揶揄される室長の五人で組織される『社史編纂室』。そんな『編纂室』は『一九四六年に創立した中規模商社』である『星間商事株式会社』で『そういえば、我が社には社史がないぞ』と『社長が言ったのかどうか知らないが』社史を編纂するために組織されました。かつて企画部で『手腕を見込まれた幸代』でしたが、『プライベートの時間を持てないのは絶対』嫌と上司に伝えたところ『ぴったりの部署がある』と『編纂室』に配属されたという経緯。『みっこちゃんがお菓子を食べる音と矢田のいびきが響』くというその職場を『ほんっとうに最低最悪の職場』と思うも『ゆるゆるの職場なだけに、だれも幸代の趣味に勘づかない』ことを喜び、誰もいなくなった『編纂室』で、『黙々と同人誌作製に勤し』みます。『高校時代からの友人同士で、楽しく同人誌を作っている』という幸代は、その『サークル「月間企画」』で『「月間商事株式会社」を舞台に、サラリーマンが男同士で恋をするストーリーの同人誌を出しまくってい』ました。そして、コピー機の『紙詰まりの解消に躍起』になっていた幸代は『視界に埃っぽい黒い革靴』が現れて焦ります。拾った紙を見て『川田くん。きみ、小説を書いているのか』と問うのは本間課長でした。焦る幸代に『会社のコピー機を使うのはほどほどにしときなさい。そこにあるぶんは、今回は目をつぶる』と立ち去った本間課長に安堵する幸代。しかし、翌朝珍しく定時に出勤した本間課長は同人誌についてインターネットで色々調べたと語り出しました。そして、『わたしも若いころの情熱が蘇った』、『社史編纂室でも、同人誌を作ろう!』と叫び自身が書いているという『自分史』を見せる本間課長。そして始まった『編纂室』の同人誌作り。一方で、本来手がける社史の編纂の中で会社の高度経済成長期に隠されたまさかの黒歴史の闇に行き当たります。『これ以上、嗅ぎまわるのはやめておけ』という脅迫状が届く事態。そんな中で進む社史と裏社史の編集作業の中で幸代たち主人公の悲喜こもごものドタバタ劇が繰り広げられていきます。

    「星間商事株式会社社史編纂室」というなんだかやけに堅苦しい書名が付けられたこの作品。思った以上に凝った作りがなされています。四つの側面に分けて見ていきたいと思います。

    まず一つ目。それは”お仕事小説”という側面です。この作品は2009年に発表されています。三浦さんの”お仕事小説”というと2011年に発表された「舟を編む」がなんといっても有名です。あの作品は13年という途方もない時間をかけて辞書の編纂に挑む人たちの情熱に魅せられた作品でした。一方でこの作品は『社史編纂室がどう遠慮がちに言っても「左遷先」以外のなにものでもない』という部門に配属された五人が社史の編纂に挑んでいくという物語です。そんな部門に配属されてやる気が起きる方がある意味凄いことだと思います。実際、『あと一年で定年なのをいいことに今朝も遅刻』の本間課長を筆頭に、さもなんというやる気のなさを感じさせる社員たちの描写は、一方で暗さを通り越してある意味で吹っ切れた生命力を感じさせるのがまた不思議です。どこの会社にも多かれ少なかれこういった部門というのは存在するのではないかと思いますが、そんな部門に配属された社員たちの大逆襲物語は会社の事情で貶められた事情が見えてくるとそこには一発逆転劇的なに痛快さも感じさせます。そして、この物語が”お仕事小説”であることを、感じさせるのが『おまえらが派閥に疎すぎんだよ』とこちらも多くの会社に存在するであろう社内の『派閥』の胡散臭さや、『うちの会社は基本的に、営業畑と総務・人事畑から、交互に社長になる傾向にある』と、こちらもどこかリアルな会社組織の内情など”お仕事小説”としてのリアルさを上手く演出しているように感じました。

    二つ目。そんな”お仕事小説”は、基本的には「舟を編む」のようなシリアスな物語構成が似合いそうです。しかし、この作品で三浦さんは徹底的にコミカルな方向へと舵を切ります。『あんまりそういうこと言わないほうがいいよ』と幸代がみっこに注意する『ヤリチン』という言葉。先輩格の矢田を指すものですが、そんな矢田の設定は『専務の愛人だった秘書に手を出した』というもの。そんなみっこと『うるせえ、みっこ。乳揉むぞ、おら』、『ヤリチン先輩、セクハラー』とやり合う場面など、この作品が発表された2009年という時代でも、三浦さんやりすぎです!と指摘したくなるような側面も見せます。そんな三浦さんは主人公・幸代を『サラリーマンが男同士で恋をするストーリーの同人誌』を出しまくっている『オタク』女子という位置付けにします。その裏の顔を『だれに知ってほしいとも思わない。同人誌を作ってイベントに参加するのは、ひそかな楽しみとして』生活に組み込まれてきたという幸代。そんな幸代に『おまえのオタク能力を活かすのは、いまだ!いましかない!』と、幸代の裏の顔を力に盛り上がりを見せる物語は、エッセイの世界でBLへの思いを熱く語り、ディープ過ぎる『オタク』世界を熱く語る極めて三浦さんらしいかっ飛びぶりの延長線上にある世界観だと思いました。この辺り、ブクログのレビューを読んでいても、恐らく三浦さんがエッセイで見せる顔をご存知ないんだろうな、という方もいらして、ある意味読む人を選ぶ作品かもしれないとは思いました。

    三つ目は、作品の構成です。この作品は小説内小説が登場する作品でもあります。三浦さんの同様な作品というと、『これはもう翻訳じゃない。完全に私の創作物になっている』というロマンス小説の翻訳が小説内に展開する「ロマンス小説の七日間」が有名です。そして、この作品で三浦さんはさらに高度なことをやってのけます。それは、小説内に、なんと二つの異なる小説を展開させるという大胆な試みでした。それは、幸代たちを模したキャラクターが登場する本間課長の小説と、『俺が知りたいのは、いまのあんたの気持ちだ、野宮さん』と展開する、幸代が書くBL小説です。その両者とも本編である外側の小説の内容と密接に関連を持ちながら全編に渡って少しづつ展開していきます。私はBL小説を読んだことはありませんが、こういう感じがBL小説なんだ!とある意味での新鮮さを感じました。また、内側二つ、外側一つの三つの小説を同時に読める!なんとも贅沢な作品!そんな印象も持ちました。

    そして、最後に四つ目ですが、それはこの作品自体のストーリーの面白さです。色んな要素が織り交ぜられた作品ですが、その芯にあるのは『「そういえば、我が社には社史がないぞ」と社長が言ったのかどうか知らないが、「社史を編むべ」となった』という展開からスタートした『星間商事株式会社』の社史の編纂です。そんな社史の編纂作業の中で退職者にインタビューを繰り返していく幸代。そんな幸代は一九五〇年代後半の時期の話を聞こうとすると一様に『老人たちが口ごも』ってしまうことに気付きます。『幸代は独自に「高度経済成長期の穴」と呼ぶことにした』というミステリーの登場。さらには、この謎を突き止めようとすると『これ以上、嗅ぎまわるのはやめておけ』という脅迫状まで届くという事態。いったいそこにはどんな謎が秘められているのか?、高度経済成長期に星間商事に何があったのか!、一見おふざけな物語が極めてシリアスなミステリーと隣り合わせに展開していきます。おふざけが過ぎれば過ぎるほどに、シリアス度がどんどん高まるというその両極端さを際立たせることで両者の持ち味を相互に高めるという物語展開は、三浦さんのお得意とするところです。一見軽そうに見えて、それでいてとても読み応えのある物語として読者をとても楽しませてくれるエンタメ性の高い作品だと思いました。

    『一丸となって同人誌を作ることで活力を高め、その活力を社史編纂作業に注ごうじゃないか』と、会社の表と裏の顔をきちんと歴史に残すべく社史と裏社史の編纂に邁進していく主人公たちの姿をコミカルに、そしてシリアスに描いたこの作品。一つの小説内に二つの小説が展開するなど非常に凝った作りのこの作品。「舟を編む」とも一味違う、それでいて三浦さんらしさを強く感じるとても意欲的な作品だと思いました。

  • 会社での島流しのような社史編纂室
    社史を作っているうちに会社の過去の悪事に気付き
    真相を突き止める編纂室のメンバー達…

    コメディです笑
    裏三浦しをん(オタク)炸裂⁈

    社史編纂室の川田幸代29歳
    筋金入りの腐女子である笑

    三浦しをんが好きなものを詰め込んだ内容ですが
    さすが直木賞作家、ラストまで読ませます笑

    編纂室メンバー最高に楽しかった(๑˃̵ᴗ˂̵)

  • 『24人のビリー・ミリガン』じゃないけれど
    エッセイと小説では完全に別人格の、
    「2人のしをんちゃん?!」かと思ってしまうほど作風の違うしをんちゃん!

    ついにこの作品で人格統合を果たしたというか、
    趣味と実益を兼ねたというか、
    とにかく楽しげに作品を書き上げています♪

    薄暗い室内に、やる気の「や」の字も見当たらなかった
    社史編纂室の面々が、
    後ろ暗い匂いの漂う「高度成長期の穴」の取材に
    上層部からの圧力がかかったのをきっかけに
    一丸となって会社の暗黒時代を暴くために立ち上がる!

    。。。と、これだけでも普通におもしろくなりそうなのに
    その手段として登場するのが同人誌、というところに
    まさにしをんちゃんの真骨頂が発揮されるのです。

    作中にしばしば登場する同人誌掲載用の
    BL小説から怪しげな時代小説(?)、冒険小説も楽しく、
    「うん?しをんちゃんの本にしてはあっさりしたカバーイラスト。。。」
    と思ったら
    表はお偉いさんの目をくらますための「表社史」のそつのないカバー、
    カバーを外すと、同人誌に使用した「裏社史」用の写真が
    ちゃんと現れてくる装丁もサービス満点で、
    三浦しをんファンにはたまらない1冊になっています♪

    • 円軌道の外さん

      こんばんは(^O^)
      沢山コメントありがとうございました!

      東京出張から只今帰りました(^_^)v


      てか、装丁めっち...

      こんばんは(^O^)
      沢山コメントありがとうございました!

      東京出張から只今帰りました(^_^)v


      てか、装丁めっちゃ凝ってる本なんですね〜♪

      CDと同じく
      本も表紙や紙質や
      帯のキャッチコピーなど、
      すべてトータルして、
      ひとつの作品だと思ってるんで

      こだわりが感じられるものは
      それだけでかなり気になります!

      さらにトドメとなる
      「同人誌」なるキーワードで
      もうハート撃ち抜かれました(笑)


      昔、毎年10万人が集まる
      同人誌の祭典の
      アルバイトをしたことあるんやけど、
      ホンマディープな世界観に
      びっくら仰天でした(≧∇≦)

      同人誌なるものが
      あんなに自由で
      あんなにエッチで
      あんなに人気があるなんて
      思いもしなかったです(汗)


      しかし
      しをんさんてば
      守備範囲広いっスよね〜(笑)

      2012/06/13
    • まろんさん
      おお!東京にいらしてたんですか~!
      出張お疲れさまでした(*^_^*)

      この本、中身を読んでから装丁をもう一度見ると
      そのリンクぶりにぷぷ...
      おお!東京にいらしてたんですか~!
      出張お疲れさまでした(*^_^*)

      この本、中身を読んでから装丁をもう一度見ると
      そのリンクぶりにぷぷっと噴出すこと請け合いです!

      同人誌の祭典というと、この本にも登場するコミケでしょうか?!
      円軌道の外さんのバイト経験、
      ほんとにバラエティに富んでて、エッセイにして読ませてもらいたいです(笑)
      2012/06/13
    • まろんさん
      torachanさん♪

      ううん((-ω-。)(。-ω-))ううん
      「本を愛する私は、カバーの中まで傷がないか
      しっかり確かめないと買えない...
      torachanさん♪

      ううん((-ω-。)(。-ω-))ううん
      「本を愛する私は、カバーの中まで傷がないか
      しっかり確かめないと買えないわ!」
      という風情で、堂々とカバーを外すのよ!
      そして、
      「あら残念!1ミリほど傷がついていたわ!」と
      あの、何枚も重ねた布団の下の豆粒が気になった童話のお姫様のように
      その場を優雅に去ってくるのよ!
      ふぁいと♪
      2012/06/15
  • 社史を作るという左遷的な部署、星間商事株式会社社史編纂室で働く川田幸代(29)彼氏有り腐女子。星間商事の黒い歴史を暴くべく、裏社史なるものを作る羽目に。しかし、そこはオタク!オタクは極める力もあり、細かく調べるのが苦にならず、完璧主義。実は社史編纂に一番向いているであろう幸代なので、裏社史(勿論、表の社史も)を作りつつ、個人のサークル活動も手を抜かない。あまりの忙しさに裏社史の物語と同人誌の物語がこんがらがって混じってしまうのには思わずにんまりした。
    この話、実はしをんさんがサラリーマンBL(若手×熟年)を書きたかっただけじゃ?と秘かに疑ってみたりして…。

  • 趣味の同人誌作りがしたいがために、仕事が楽な社史編纂室に異動し、社史を編纂していくのだが、会社にはあまり知られたくない過去があり、それを暴くべく…。ざっくり書くとこんな内容。
    全然、ミステリーでもサスペンスでもなく、会社の過去を暴くって言ったって、そこまで衝撃な内容でもない。なのに、三浦しをんさんが書くと、どうしてこんなに面白いんでしょうか?

  • 楽しかった!文句なし

    三浦しをんの世界、やっぱりいいわぁ

    舟を編む程
    難解でもなく
    痛快!
    ラブコメ的なそして、会社のアクを暴く的な
    そしてコメ、同人誌
    オタクの世界を楽しんだ、また
    マイノリティの世界
    世界は色々と楽しいことがあるのだ。
    主人公のぽっと旅に出る彼氏とのこと
    まあーハッピーエンドで〜?
    ゾゾゾの世界ばかりにいると「読んでると」
    たまには文句なしに三浦しをんの世界は救われ、楽しい。

    本文よりー
    「なんかを好きだと思ったり、何かをせずにいられないと
    思ったりするのって
    人の心の一番大事な部分だろ。」

  • 久しぶりの再読。オタク臭がプンプンするところが面白さを醸し出している。こういう系の三浦しをん、とっても好き❤︎

  • ミステリー要素あり、作中作あり、腐女子ありの盛りだくさんでした。作中作がまた面白くて、吹き出した。皆小説書くとやたらロマンチックになる、ってのがたまらなかった。

  • クスッと笑える場面がちらほら。作中の腐女子の世界を楽しむうちに、日々のあれこれから現実逃避出来ます。

  • 図書館で借りたもの。
    川田幸代。29歳。会社員。腐女子。社の秘められた過去に挑む――。本間課長は言った。「社史編纂室でも、同人誌を作ろう!」その真意はいかに?

    本編の中に同人誌の物語もあって楽しい。
    面白かったんだけど、なんだか物足りないのは何でだろう。
    悪いやつが痛めつけられてないからかな?

  • つい手をのばしてしまう三浦しをん。作品によってほんとに雰囲気が違うなあと毎度思います。
    今回はシリアス3コメディ7って感じでしょうか。さらっとライトな読み心地でした。

    社史編纂室という弱小部署が、会社の後ろ暗い過去を社史という形で白日のもとに晒すストーリー。

    社史編纂室の面々が個性的で、いい意味でシリアスをシリアスにさせないというか。みっこちゃんみたいなバランスのとれたぶりっこは現実世界にはまあいない。だからカワイイ。

    一応大義があるものの、ライトな雰囲気であるがゆえに、読後の爽快感はちょい薄めでしょうか。

  • ずいぶん地味なタイトルだなぁと・・・
    だから、もっとおカタイ話かと思ってたけど、
    思いっきり裏切られた(笑)。
    それに何てのんびりとした職場。
    日陰な部署だけど居心地は悪くなさそう。

    血みどろな表現も暴力的でもなく、その辺は
    安心して読めましたが、BLを扱っているので、
    少しだけそういう類の表現がありましたが、
    まぁこれくらいは仕方がないですよね。

    コミケなんて行ったことないし、BL小説も
    コミックも無縁なもんで、少し新鮮な気分でした。
    今回は知らない世界の空気感を楽しみました。

    社史編纂室の皆さん、大仕事、お疲れ様でした。
    社史もちゃんと辿ってみれば、意外と面白いのかも。

  • 創立60周年を過ぎた星間商事の社史を作るべく、社史編纂室という部署に配属された人達のお話し。
    『舟を編む』にどことなく雰囲気が似ていましたがもっと軽い感じで、社史作りよりもそこでの人間関係に重きを置いた構成になっていました。

    川田幸代の趣味である同人誌創りと並行して話が進んでいきますが、時折挟まれる彼女の作品、いわゆるBLがさらにゆるい雰囲気に…。
    まあ話の内容はともかく、しをんさんの作品の登場人物は相変わらず魅力ある人物ばかりでみんな大好きでした。個々のやりとりも面白くて、心くすぐられてました。

    最後の終わり方もめちゃめちゃ爽やかでスッキリ。楽しい読書でした。

  • 舟を編むのベースっぽいおはなしでした。内容がすごく忠実すぎて心えぐられた笑 でも主人公の仕事とか趣味とか恋愛とかへの考え方がすきだなあと

  • 社史編纂というか社の過去のブラックな部分の調査と、
    意外にも同人誌(BL)とがミックスした話。

    社史を出したあとの後日談があったらよかったなと思いました。

  • おもしろくてグイグイ読めました。
    仕事よりも趣味が大切、という主人公が会社の過去の暗い闇をこっそり照らす、というお話です。
    告発!というような大々的なやり方ではありません。
    その「照らし方」が普通の人がやれる範囲内、なのが面白いです。
    これが本当の落としどころ、というのだと思います。
    同棲相手との日常も、本当に普通で面白いです。

  •  ヲタクだって腐女子だってみんなごく一般的な常識人なんだぜ!とさりげなく主張しているような気がするのは気のせい(笑)として、個性溢れる同僚に左遷部署のゆるさ、いや~楽しそうな職場だわ。
     会社の黒歴史はちょっと捻りすぎかな?とも感じたけれど、見事なチームワークで社史(裏も表も)を造り編纂してゆく過程がとても楽しく、お仕事小説としても見事。

  • 川田幸代は30歳を目前に控えた趣味に生きる女である。
    彼女はいわゆる”腐女子”であり、ボーイズラブ小説の執筆が生きがい。

    共通の嗜好を持つ友人、理解のある恋人、自由時間が多い会社で過ごす毎日に疑問を持ちながらも暮らしてきた。

    彼女の所属部署は社史編纂室。
    会社の歴史をまとめた本を作るのが仕事の部署だが、会社の裏の歴史を知ってしまった社史編纂室のメンバーは同人誌を作ることに決める。

    戦後の成長期を支えた2人の女性とロマンチックな社員たちのことを、
    彼女たちは隠しておけない。
    自身の正義感に対し、真摯なオタク魂。

    ------------------------------------------------------

    漫画『げんしけん』では、大学内サークルで共通の嗜好を持つ友人たちの濃厚な時間が描かれていた。
    彼ら彼女らは卒業後何年も経ったら、こういう感じになるのかなと思いながら読んだ。

    ただでさえ、オタクと言われる人々の身分は低い。
    きもちわるいイメージのせいだろうか。
    ボーイズラブや、ロリコン、ショタコン。アイドルオタクからコスプレオタク、エロゲー。擬人化、女体化。二次創作。受け、攻め、ヘタレに総受け。
    コミックマーケットと言われるイベントでは、いわゆる”薄い本”が売っており、そこでは何でもありだ。奥が深い世界。

    そんな世界の奥のほうから、会社の歴史を正しく伝えるべく立ち上がるオタクの姿は勇ましかった。
    オタクだってやるときはやるぜと言わんばかりの行動力。
    自身の同人誌作成もぬかりはない。
    オタクの鏡のような主人公だった。

    旅人にも、オタクにも、
    何十年か前に日本の発展のために海外へ行った女性にも、
    それぞれの人生があることを教えてくれた。

  • テンポ良し、人物良し、ストーリー良し、で面白かった〜

    閑職部署、社史編纂室に所属する隠れオタク(早々に漏洩するが)の幸代。
    会社での同人誌作りが課長に見つかったことから、裏社史作りも始動していく。

    ヲタを味方につけると強い!し、何より面白い世界が覗ける。愛すべきヲタ、うちの部署にもいないかな。

  • ずっと迷っていてようやく読んだ。
    BLが苦手なので、なんとなく手を出しかねていたのだ。しかし最近はエッセイにも慣れてきたので挑戦してみようと思って読んだのである。
    川田幸代の生真面目な腐女子ぶりが、なんとも切なく痛ましくかつ微笑ましかった。BLを書いているからといって性的に逸脱しているわけではなく、むしろ本人は必要以上に潔癖で、真面目なのではなかろうか、などと思ってしまう。
    課長のキャラクターが最後までわかりにくかったなあ。つい深読みしてしまって、「昼行灯を装う切れ者」なのではないかと思いながら読んでいたのだが、本作ではそういった「実は……」という設定はなかったようだ。これが「舟を編む」に至ると、ちゃらそうに見えて実は……みたいなふくらみを持たせるようになるんだな、と、そういう意味では三浦しをんの初期のころの作品なんだなと思った。
    表社史と同時に裏社史も作ってしまおう、というノリは楽しく、ちょっとした謎も散りばめられていて面白かった。
    作中作が傑作。特に課長の小説?はニヤニヤしながら読んでしまった。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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