僕の明日を照らして

著者 :
  • 筑摩書房
3.62
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レビュー : 273
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804259

感想・レビュー・書評

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  • 母子家庭だった僕の家に、新しい父親の優ちゃんがやってくる。
    一人の孤独な夜を過ごさなくてよくなり大歓迎の僕だったけれど、
    優ちゃんには困ったところがあった。
    いきなりスイッチが入ったように切れて、僕に暴力をふるうのだ。
    暴力をふるった後の優ちゃんは別人のようにしょげ返って謝る。
    虐待をなくすために、二人はいろんな作戦をたてる。

    テーマは重いけれど、いつものように淡々と進む。
    瀬尾さんの作品は、日常を描きながら何となくリアリティがなくて、
    そこがほっとさせてくれたりもするのだけれど、今回は
    「うーん。この中学生は…!?この二人の関係は…!?」と悩み、
    いつもよりも距離を感じてしまった。

    毎日の虐待日記、絵本作戦、カルシウム作戦。
    新しく父となったとはいえ、10年以上別々に暮らし、血もつながっていない人。
    それも、自分に暴力をふるう人を、どうしてこんなに受け入れることができるんだろう?
    優ちゃんもわからない。
    大事だと思っている子に、なぜ理性をぶっとばして暴力振るえるのだろう?
    私はお気楽に育ちすぎたのかもしれないけれど、大人の子どもに対する
    一方的な暴力なんてただ醜いだけで、一緒に寄り添って治すという発想は
    どうしても湧いてこなくて。

    「今まで知らなかったくせに」と息子に罵られても、
    暴力をふるった新しい夫が許せなくて、別れを決意するしかなかった母の
    気持ちの方がずっとわかってしまった。
    瀬尾さんが伝えたかったこと、きっと私には伝わらなかったんだと思った。

  • 虐待する者=強者、虐待される者=弱者という図式を
    かるがると飛び越えてみせた、瀬尾さんの名作です。

    普段は優しすぎるほどの好青年なのに、
    ふとしたきっかけで豹変する義父、優の虐待を受ける隼太。

    でも、目を覆いたくなるような暴力がひとたび止むと、
    自己嫌悪に陥って謝り続ける優に、隼太は
    「殴るだけ殴って、自分の都合で出て行くとか、最低だよ。
    そんなこと僕は絶対に許さない」と言い放ち、完全に優位に立っている。

    昏倒するほどの暴力よりも隼太が怖れるものはただひとつ、
    ひとりっきりで過ごす夜の闇。

    「初めて自分以外の誰かが息づく家の中で過ごす夜」を
    連れてきてくれた優を手放さないために、虐待から立ち直らせる術を
    あらゆる方向にアンテナを張って模索する隼太。

    ふたり頭を並べて読む心理学の本や絵本、
    ふたりで毎日あれこれ会話しながら書く「虐待日記」、
    ふたりで仲良く作る、イライラ予防のカルシウム補給用ひじきの煮物。

    誰かに切実に必要とされている実感がどうしても持てない優と
    「女手ひとつ」の言葉に縛られ、学校でも母親にも弱音を吐けない隼太が
    不思議な明るさの中で手を取り合って虐待を乗り越え、
    心をより深く通わせていく過程に心打たれます。

    事態が好転し始めたところで、
    知人すら察していたほどの虐待に全く気付かず、
    見たいものしか見ようとしない母親に
    ふたりがいとも簡単に引き裂かれるシーンには賛否両論あるだろうけど、

    ずっと隼太にリードされるがままだった優が
    初めて自ら積極的に立ち直るためのアクションを起こし、
    「女手ひとつで育てられているのに、感心な子」であり続けた隼太が
    「終わってから割り込んできて、今更母親らしいこと言うなって」と
    幼子のように泣き叫んだ挙句に選んだ「いったんちゃんと終わらせよう」は、
    決して悲しい結末ではないと信じたい。

    だって、人生はまだまだ続いていくのです。
    ひとりひとりが、誰かの明日を照らせるくらい、つよくなるまで。

    • まろんさん
      そんな過去があったからこそ、
      円軌道の外さんは、
      「円軌道の外」に飛び出す勇気を自らに課して
      今みたいな素敵な大人になられたんですね!
      守り...
      そんな過去があったからこそ、
      円軌道の外さんは、
      「円軌道の外」に飛び出す勇気を自らに課して
      今みたいな素敵な大人になられたんですね!
      守り続けてきた弟さんにとっては、
      きっとヒーローみたいな存在ですね!!

      いつもの瀬尾さん作品とは
      ちょっとだけ毛色が違うかもしれないけど、
      かなり激しい虐待を扱っていながら
      根底にはやっぱり瀬尾さんらしい温かさがあってとても好きな作品になりました(*^_^*)

      お時間があったら、ぜひぜひ♪
      2012/05/30
    • ねこにごはんさん
      お邪魔します。私、この作品★2つだったんです。気を悪くされたらごめんなさい。
      でもまろんさんのレビューを読んで
      そうか!そういう捉え方もある...
      お邪魔します。私、この作品★2つだったんです。気を悪くされたらごめんなさい。
      でもまろんさんのレビューを読んで
      そうか!そういう捉え方もあるんだなって思いました。
      一つの作品にもいろんな方の受け取り方があって興味深いです。
      2013/01/18
    • まろんさん
      hitujiさん☆

      いえいえ、気を悪くするなんて、とんでもない!
      人によっていろんな読み方ができることが読書の奥深さだと思うので
      違う読み...
      hitujiさん☆

      いえいえ、気を悪くするなんて、とんでもない!
      人によっていろんな読み方ができることが読書の奥深さだと思うので
      違う読み方をしました、と、わざわざコメントをくださったこと、本当にうれしいです♪
      この本は、瀬尾さんの数ある作品の中でも、かなり異色の存在ですものね。

      私は好きな作家さんとなると、ついつい評価が甘めになってしまいがちなので
      他の作品も、またぜひ感想を聞かせてください(*^_^*)
      2013/01/19
  • ナニカガ、チガウ。

    カッとなると自分をコントロール出来ず、義理の息子である隼太を殴ってしまう優ちゃん。
    でも、そんな優ちゃんを決して離そうとはしない、隼太が最初はひたすら怖かった。

    いつ降るか分からない危機を前に、その人を好ましく思える気持ちが、理解出来なかった。

    優ちゃんに対しての行動とは裏腹に、他人の感情よりも合理的解決を優先する隼太がますます分からなかった。

    どうして、そんな風に出来るのか。
    そうまでして守りたいものは何なのか。
    隼太は第二の優ちゃんにならないか。

    ぐるぐる、ぐるぐると考える頭の中、母親が気付くシーンだけは、グッときた。
    そうだ、貴方には、残念ながら何も言う権利はない。

    そうか、私にも、何も言う権利はない。

    二人が、二人で築き上げてきた跡を、私は理解することが出来なかった。
    良かった、と言いにくい話。
    けれど、隼太にとっての結末を叶えてあげることが、良いことになるんだと思った。

    哀しくて、怖い話。
    けれど、いたいけで、優しくもある話。
    私は分からなくてもいい。誰かはこの話を分かるのかもしれない、と思っただけで、いい。

  • 物語の始まりは、主人公が暴力を受けていることから始まったので、暗い内容が続くのかと心配しながら読み進んでいくと、どう行動すれば暴力から開放されるのか?幸せを逃さないでいられるのか?自分らしく過ごせるのか?主人公が壁にぶつかりながら成長する姿が前向きで最終的には気持ちよく読むことができました。

  • 新しいお父さんと息子の間だけの秘密。
    虐待。
    虐待しながら泣いているお父さん。
    虐待されながらもお父さんを失いたくない息子。
    誰にも知られちゃいけない。お母さんにも。
    そんな2人が歩んでいくお話。
    ---

    苦しめたくないのに苦しめてしまう病気。
    他人には普通の人には理解できないスイッチがある。
    本人が一番苦しい。
    苦しめる方も苦しめられる方も一緒に一生懸命に
    克服しようとする描写に心を痛めた。

    誰にも言えなかった日々。
    なんとか治そうと調べ、考え、説得し、行動しても、
    それでも悪くなる一方。

    苦しめあいたくなかった。。。

    でもね、

     「終わりなんか来るわけもなく、終わりの兆候なんてどこにも見えなかった。
      でも、終わりはちゃんとやってきて、新しい光をつれてきてくれる。」

    光は温かいです。

    瀬尾まいこさんの小説の結びにはいつも「希望」がある。
    とても好きです。

  • 中学生の「僕」は母親の再婚相手、優ちゃんに虐待されている。
    それは日常的ではない。優ちゃんはふとした瞬間にキレてしまうのだ。
    キレた優ちゃんは「僕」を殴る。殴ったあと、いつも「僕」に謝り、自己批判を繰り返す。

    そんな優ちゃんを「僕は」嫌いではない。
    生活を豊かにしてくれた優ちゃんに感謝しているし、「僕」は優ちゃんを必要としている。

    「僕」と優ちゃんは内緒で、優ちゃんのキレてしまうクセを治そうとする。
    母親にも、同級生たちや、ガールフレンドにも内緒で。

    ----------------------------------------------------------------

    すごく淡々と進んでいくけど、すごく異常な状態。

    自分を殴ってしまう母親の再婚相手をかわいそうだと思う中学生。
    再婚相手の子どもにしか暴力のはけ口がない歯科医師。
    家族の暴力に気付かない母親。

    内面だけで処理しようとしても結局は歪んでくる。
    中学生は部活で異常な行動を取り、教室で孤立してしまいそうになる。

    主人公の中学生にガールフレンドがいてすごく救われた。

    母親が再婚相手の虐待に気づき、家を出て行けというが主人公がかばうシーン。

    賛否両論分かれるところだと思う。
    家族愛が暴力を超えるのか、暴力は家族を飲み込むのか。
    考えさせられる小説だった。

    (なくなったiPodはどうなった?)

  • 虐待の話をこんなに奇妙なほど暖かく書けるひとをこの人以外に知らない。アンバランスなのにやっぱり整っている。ただ穏やかなふわふわした話とは全く違う。でもさすがに途中でぞくっときた。奇妙で暖かいんだけど、こわいおはなしでもある。

  • 中学2年生の隼太が母の再婚相手である 歯科医の優ちゃんに虐待をされ それを二人で試行錯誤しながら 問題解決していくという成長物語。 重たいテーマだけれども 隼太が絵本を読んだり 日記を書いたり 料理をしたりして なんとか 優ちゃんに立ち直ってもらおうとするところがすごい。でも なんだかリアリティがないような感じがしました。

  • ★★★☆☆
    失いたくないものを守る方法
    【内容】
    シングルマザーの息子で中学生の隼太。母親が再婚し歯科医の優ちゃんが父親になった。優しくてかっこいい優ちゃんを隼太は大好きだったが、優ちゃんはときどきキレて隼太を殴る……。でも絶対に優ちゃんを失いたくない。隼太の闘いが始まる。

    【感想】
    家庭内暴力というテーマを扱っているが、重いテーマを軽く描く。正直、隼太の戦い方は褒められるものではない。

    中学男子は中2病といわれるように、変にカッコつけたり、反抗したり、自尊心が育ち、恋愛にあこがれる。そんな中学生である主人公の成長を感じることのできた。
    この年代はあるキッカケがあれば加速度的に成長するよな、身長と同じように急速に。

    まぁ主人公の性格が若干良すぎる気もしないでもないけど、こんな子供だったら親は楽だな。

    個人的にはオチが納得いかない。急過ぎじゃんか。
    そこまで丁寧に描いていたのだから、伏線を貼るとかすればいいのにもったいない。

  • 普通におもしろかった。
    主人公の隼太のはっきり言うところは
    好きじゃないけど嫌いでもない。
    一見さばさばしてるのに
    心の中に闇があると言うか
    寂しくなる気持ちがあると言うか
    そういう人好きです。

    ぼや〜っと終わったけど
    最後の文の
    "静かで温かい夜を連れてくるために。"
    はよかった。

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著者プロフィール

瀬尾 まいこ(せお まいこ)
1974年生まれ。中学校国語講師を務めた後、2005年に教員採用試験合格、2011年に退職するまで中学校で国語教諭として勤務する傍らで執筆活動を行っていた。
2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、これが翌年単行本デビュー作となる。2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞をそれぞれ受賞。
これまでの著作で、代表作『幸福な食卓』、そして『天国はまだ遠く』『僕らのごはんは明日で待ってる』が映画化されている。近刊『そして、バトンは渡された』は第31回山本周五郎賞候補となり、2018年「本の雑誌が選ぶ上半期ベストテン」1位に。

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