僕の明日を照らして

著者 :
  • 筑摩書房
3.60
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本棚登録 : 1803
感想 : 320
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804259

感想・レビュー・書評

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  • ☆3.8

    優ちゃんは、ときどきキレて、僕を殴る。
    でも僕は優ちゃんを失いたくないんだ。
    隼太の闘いの日々が始まる。

    瀬尾さんの作品は、どの作品を読んでいてもいつもそう思うのですが、今作でも文章がとても読みやすかったです❁⃘*.゚
    ただ…虐待を受ける場面は、読んでいて辛いものがありました。
    それでも優ちゃんを失いたくない一心で、色々な方法を考えて乗り越えようとする隼太の思いに胸がいっぱいになりました。

  • 優ちゃんは、ときどきキレて、僕を殴る。でも僕は優ちゃんを失いたくないんだ。隼太の闘いの日々が始まる…
    重い内容だけど、殴らないように父子で工夫をする姿は不思議と可笑しみがある。父親を必死に求める隼太が切なく抱きしめたくなるようなお話でした。

  • 虐待する者=強者、虐待される者=弱者という図式を
    かるがると飛び越えてみせた、瀬尾さんの名作です。

    普段は優しすぎるほどの好青年なのに、
    ふとしたきっかけで豹変する義父、優の虐待を受ける隼太。

    でも、目を覆いたくなるような暴力がひとたび止むと、
    自己嫌悪に陥って謝り続ける優に、隼太は
    「殴るだけ殴って、自分の都合で出て行くとか、最低だよ。
    そんなこと僕は絶対に許さない」と言い放ち、完全に優位に立っている。

    昏倒するほどの暴力よりも隼太が怖れるものはただひとつ、
    ひとりっきりで過ごす夜の闇。

    「初めて自分以外の誰かが息づく家の中で過ごす夜」を
    連れてきてくれた優を手放さないために、虐待から立ち直らせる術を
    あらゆる方向にアンテナを張って模索する隼太。

    ふたり頭を並べて読む心理学の本や絵本、
    ふたりで毎日あれこれ会話しながら書く「虐待日記」、
    ふたりで仲良く作る、イライラ予防のカルシウム補給用ひじきの煮物。

    誰かに切実に必要とされている実感がどうしても持てない優と
    「女手ひとつ」の言葉に縛られ、学校でも母親にも弱音を吐けない隼太が
    不思議な明るさの中で手を取り合って虐待を乗り越え、
    心をより深く通わせていく過程に心打たれます。

    事態が好転し始めたところで、
    知人すら察していたほどの虐待に全く気付かず、
    見たいものしか見ようとしない母親に
    ふたりがいとも簡単に引き裂かれるシーンには賛否両論あるだろうけど、

    ずっと隼太にリードされるがままだった優が
    初めて自ら積極的に立ち直るためのアクションを起こし、
    「女手ひとつで育てられているのに、感心な子」であり続けた隼太が
    「終わってから割り込んできて、今更母親らしいこと言うなって」と
    幼子のように泣き叫んだ挙句に選んだ「いったんちゃんと終わらせよう」は、
    決して悲しい結末ではないと信じたい。

    だって、人生はまだまだ続いていくのです。
    ひとりひとりが、誰かの明日を照らせるくらい、つよくなるまで。

    • まろんさん
      そんな過去があったからこそ、
      円軌道の外さんは、
      「円軌道の外」に飛び出す勇気を自らに課して
      今みたいな素敵な大人になられたんですね!
      守り...
      そんな過去があったからこそ、
      円軌道の外さんは、
      「円軌道の外」に飛び出す勇気を自らに課して
      今みたいな素敵な大人になられたんですね!
      守り続けてきた弟さんにとっては、
      きっとヒーローみたいな存在ですね!!

      いつもの瀬尾さん作品とは
      ちょっとだけ毛色が違うかもしれないけど、
      かなり激しい虐待を扱っていながら
      根底にはやっぱり瀬尾さんらしい温かさがあってとても好きな作品になりました(*^_^*)

      お時間があったら、ぜひぜひ♪
      2012/05/30
    • ねこにごはんさん
      お邪魔します。私、この作品★2つだったんです。気を悪くされたらごめんなさい。
      でもまろんさんのレビューを読んで
      そうか!そういう捉え方もある...
      お邪魔します。私、この作品★2つだったんです。気を悪くされたらごめんなさい。
      でもまろんさんのレビューを読んで
      そうか!そういう捉え方もあるんだなって思いました。
      一つの作品にもいろんな方の受け取り方があって興味深いです。
      2013/01/18
    • まろんさん
      hitujiさん☆

      いえいえ、気を悪くするなんて、とんでもない!
      人によっていろんな読み方ができることが読書の奥深さだと思うので
      違う読み...
      hitujiさん☆

      いえいえ、気を悪くするなんて、とんでもない!
      人によっていろんな読み方ができることが読書の奥深さだと思うので
      違う読み方をしました、と、わざわざコメントをくださったこと、本当にうれしいです♪
      この本は、瀬尾さんの数ある作品の中でも、かなり異色の存在ですものね。

      私は好きな作家さんとなると、ついつい評価が甘めになってしまいがちなので
      他の作品も、またぜひ感想を聞かせてください(*^_^*)
      2013/01/19
  • ナニカガ、チガウ。

    カッとなると自分をコントロール出来ず、義理の息子である隼太を殴ってしまう優ちゃん。
    でも、そんな優ちゃんを決して離そうとはしない、隼太が最初はひたすら怖かった。

    いつ降るか分からない危機を前に、その人を好ましく思える気持ちが、理解出来なかった。

    優ちゃんに対しての行動とは裏腹に、他人の感情よりも合理的解決を優先する隼太がますます分からなかった。

    どうして、そんな風に出来るのか。
    そうまでして守りたいものは何なのか。
    隼太は第二の優ちゃんにならないか。

    ぐるぐる、ぐるぐると考える頭の中、母親が気付くシーンだけは、グッときた。
    そうだ、貴方には、残念ながら何も言う権利はない。

    そうか、私にも、何も言う権利はない。

    二人が、二人で築き上げてきた跡を、私は理解することが出来なかった。
    良かった、と言いにくい話。
    けれど、隼太にとっての結末を叶えてあげることが、良いことになるんだと思った。

    哀しくて、怖い話。
    けれど、いたいけで、優しくもある話。
    私は分からなくてもいい。誰かはこの話を分かるのかもしれない、と思っただけで、いい。

  • 義理の父親、優ちゃんに殴られている隼太

    でも優ちゃんにはいなくなってほしくなくて
    一人の夜に戻るのが嫌で
    どうにか優ちゃんを治すために
    二人で頑張っていく


    こんな関係ありえる?とは思うものの
    最後まで引き込まれて読んでしまった



    優ちゃん以外にも
    学校内で起こったいろいろに対して
    隼太は少しずつ成長しているような
    していないような

    その日々の積み重ねの感じもよかった


    しかし、最後はこうなってしまうのか…
    せっかくここまできたのに。

    って思ってしまってる自分も
    感覚が隼太によっていってしまってるのだろうか
    冷静に考えれば母親の言うことが普通だ。

    なのに息子にあんなことを言われて
    母親の気持ちを思うと辛い。


    にしてもスカッとして読み終わりたかったー

  • 母親の再婚によって優ちゃんという義父ができた隼太
    優ちゃんは、隼太と二人の時、突然キレて暴力をふるう

    しかし、隼太は必死に耐え、心で叫ぶ
    ーー心配しなくたって、僕はちゃんと弱い。僕はちゃんと優ちゃんの救いを必要としている。無理に手のひらの中に入れようとしなくたって、優ちゃんの助けを求めているんだよ。強引に僕を腕の中に従える必要なんかないんだーー

    そして、母親には、ひた隠しにし、なんとか優ちゃんがキレないように、二人で日記をつけたり、カルシウムの多い食事を作ったり、寝る前に絵本を読んだりして、キレるのを治そうと試みるのだが・・・

    小説とはいえ、なんかモヤモヤ、スッキリせず、共感できなかった

    虐待されている子供が中学生という設定ではあるが、こんなことある?
    自分より弱い無抵抗な者に暴力をふるうなんて、残虐で修羅場なのではないか?
    絶対に許されるべきものではない、断固として

    毎日のように報道される痛ましい幼児虐待の悲惨な事件と違いすぎて、こんな甘いものじゃないでしょうと思わざるを得なかった

  • 飄々としながらも、大切な人を失いたくない一心で解決策を見いだそうとする主人公が健気で泣きそうになる。だからこそ暴力シーンは読むの辛い…
    スラスラ読めるけど、若干腑に落ちない部分があってあまり入り込めなかった。

  • 物語の始まりは、主人公が暴力を受けていることから始まったので、暗い内容が続くのかと心配しながら読み進んでいくと、どう行動すれば暴力から開放されるのか?幸せを逃さないでいられるのか?自分らしく過ごせるのか?主人公が壁にぶつかりながら成長する姿が前向きで最終的には気持ちよく読むことができました。

  • 新しいお父さんと息子の間だけの秘密。
    虐待。
    虐待しながら泣いているお父さん。
    虐待されながらもお父さんを失いたくない息子。
    誰にも知られちゃいけない。お母さんにも。
    そんな2人が歩んでいくお話。
    ---

    苦しめたくないのに苦しめてしまう病気。
    他人には普通の人には理解できないスイッチがある。
    本人が一番苦しい。
    苦しめる方も苦しめられる方も一緒に一生懸命に
    克服しようとする描写に心を痛めた。

    誰にも言えなかった日々。
    なんとか治そうと調べ、考え、説得し、行動しても、
    それでも悪くなる一方。

    苦しめあいたくなかった。。。

    でもね、

     「終わりなんか来るわけもなく、終わりの兆候なんてどこにも見えなかった。
      でも、終わりはちゃんとやってきて、新しい光をつれてきてくれる。」

    光は温かいです。

    瀬尾まいこさんの小説の結びにはいつも「希望」がある。
    とても好きです。

  •  虐待してる人と虐待されてる子が協力して虐待しなくなるように試行錯誤してって話なんだけど、、、読んでて辛かった。とにかく病院行きなよって100回くらい思いながら読みました。

     なんでお母さん夜の仕事続けてるんだろう?経済的に頼り切りたくないから、夜の仕事だけ続けてるのかもしれないけど、収入減っても良いから夜は家にいてあげて欲しい。どうしてそこまで再婚相手を信じられるのか理解に苦しむ。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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