ピスタチオ

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 1149
レビュー : 216
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804280

感想・レビュー・書評

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  • 【内容】
     ケニアに数ヶ月いた縁からか,山本翠,ペンネーム:棚のところにアフリカ ウガンダの取材企画が来る.
     ちょうどアフリカに関する本を読んでいたことやその本の著者がケニアで知り合った片山海里であったこと,彼がすでにこの世に居ないと知り,彼の遺作を通して死因にも興味が出たことから,企画を受け,並行して彼の足跡をたどろうとする.

    【感想】
     物語がアップダウンなく,トントン拍子で進んでいくところ,最初から神妙な気持ちで読んでしまいました.

     最後に棚が言った,「死んでから,本当に始まる「何か」がある気がする.別の次元の「つきあい」が始まるのね,きっと.」という言葉が印象的でした.
     死者の物語…鎮魂曲であったり,考古学的に足跡をたどることだったりと,故人と生きている自分の関わり方が出てくるのは後半からですが,この関係は過去から流れてきた伏流水だと考えれば,前半からすでにこの神妙な感じがにじみ出ていて,影響されてしまったのかなと思いました.

     誰のレビューか忘れてしまいましたが,「沼地のある森を抜けて」が生の物語で「ピスタチオ」は死の物語,という感想があって,そういう対比も面白いなあと思いました.

  • 一日の終わりに、今日は何度空を見上げたかな、と思う。
    空を見上げて、風の方向を感じる。
    風が強くても弱くても、空気の流れを感じるのが好きだ。
    雲に閉ざされることがあっても、その向こうにある光を感じるのが好きだ。
    そうして、緑が萌えたり大気が入れ替わるのを肌で感じるのが好きだ。

    梨木さんの作品は、新しくページをめくるたびに不思議な懐かしさにあふれている。
    そのことにいつも、驚かずにはいられない。
    自分が語っているわけでもないのに、まるで自分がそこにいるかのように錯覚してしまう。
    「棚」というペンネームを持つ主人公が、まるで導かれるようにアフリカにたどり着き、そしてまた水が流れるようにごく自然に人に会い、語り合い、その中で自分の役割に目覚めていく。
    「符号」という言葉で作品のなかでは表現しているけれど、それって本当にあるものだ。

    わたしが思いあぐねていたことや、何となく感じてはいるけれど言葉に表せなかったことなどが、見事に符号してこの作品のなかにある。
    こんなにもシンパシーを感じて読める作家さんには、今後出会えないかも知れない。

    「ピスタチオ」というのは、「棚」がアフリカで得た体験から生まれた、小さな物語のタイトル。
    その物語の主人公の名前でもある。
    最後に登場するこの物語が何故生まれたのか、きっと読み手は引き込まれて読むことになるだろう。
    霊的な出会い、とでも言うような静かな感動が、読後に待ち構えている。
    そしてそのときから自然に、目が樹木に向いてしまうだろう。
    木に止まる鳥のさえずりに、耳を傾けてしまうだろう。
    繰り返し読むことが決定してしまった、そんな一冊。

  • アフリカと死者のはなし。

    「ピスタチオ」がどう関わってくるのかと思ったら、
    ドラマチックな結末が待っていました。

    作品中に出てくる民話みたいにメッセージ性はなかった。
    と、思う。
    全てが、何か大きなもの(ジンナジュ?)の存在に動かされた経過の記録でした。

    「ゲド戦記」と「ガダラの豚」を足して、
    男くささとエンタメを引いた世界観。

  • そんな準備もせずに、なんとはなく読んでいるうちに、気がついたら随分深いところへ分け入ってきてしまった。そんな感じの小説。結構前に読んだ、「沼地のある森を抜けて」も同じような感じだった。主人公が旅するアフリカの地で、人間の原点ともいうべき何かに触れる。科学とか知識だとかそういったものとは真逆の、太古からある生命の根源のようなものになんだか迫っているような気になった。特に激しい展開があるわけではない。あえて言えば、少し途中にミステリータッチの雰囲気があるけど、そこじゃない。この小説の良いところはそこじゃない。少し、難解なところもあるが、読み終えたあとについこの小説は何をテーマにしていたのかとじっくり考えてしまう、力を持った物語だった。

  • 梨木香歩『ピスタチオ』

    こんにちは、ずりえです。ピスタチオを読みました。
    愛犬の病気から、巡りめぐってアフリカへ。物語ることの大切さを身にしみて感じました。

    「見栄のためじゃない、死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ」

    人は死ぬまで、言葉の中でしか生きていけないのですね。意味、自分がなぜ生まれてきたのか、もしくは、死ななければならないのか。この小説の終盤で、主人公の棚はピスタチオの物語を書き上げますが、これは片山海里の物語かもしれないし、あるいは、ほかの誰か(小説の登場人物以外)の物語なのかもしれません。

    個人的な意見をひとつ。
    ピスタチオの物語のエピローグ、遺失物係の母が呟く言葉「ピスタチオ ピスタチオ いい一生を生きた 安心してお休み」にアタシは目頭が熱くなりました。死んでしまった人への慈しみに心揺さぶられます。救い、と言ってもいいでしょうか。「ぐるりのこと」では母性という言葉を使っています。愛ですね。これは、「沼地のある森をぬけて」のラスト、主人公の母がお腹の中にいる主人公に向かってささやく言葉「生まれておいで」を読んだ時に感じたものと同質のものでした。それぞれの言葉は、生まれる前の人と死を纏った人へという真逆のベクトルではありますが、根っこは同じなのですね。とても不思議だなと思いました。

    境界線について。本書で、西洋医学とアフリカの呪術医が、客観と主観の線引きで、対称的に取り上げられていました。医学は客観的に留まるのに対して、呪術医は自分の中に他人を呼び込むのです。呪術医は境界線の破壊とも言えますね。他の著書にも、たとえば、「西の魔女が死んだ」では、ニシノマジョカラヒガシノマジョヘ、という知恵の伝達が、境界を超える動きがあります。(ただ、境界が曖昧であることもあり、「からくりからくさ」の唐草模様の連続性は、時代の区分がはっきりしませんね)今回の作品の、自他の裂け目がない呪術医はとても面白い考察だと思います。自分と他人を超えた先にあるものって、愛かもしれません。

  • 地球レベルのとてつもなく大きな物事も
    個人レベルの小さな小さな物事も
    全てはつながっている

    ー死者は、物語を抱いて眠る
    「物語」抱くということが「癒し」につながる
    その「物語」は生きている人間のためにもきっと紡がれなければいけないのだろう。

    正直少しスピリチュアル感が全面に押しだされている感じが否めない。「物語を物語ることからの癒し」読み手の状況によって大きく変化するように感じた1冊。

  • 梨木さんらしい話でした
    いちばん印象に残ったのは胸に抱いて眠る物語
    わたしも欲しいと思いましたが、今は一緒に歩いて行く物語を考えよう

  • 難しくてよくわからない。
    だけど小説に出てくる言葉は好き。
    棚という変わったペンネーム、ピスタチオグリーン、ジンナジュ、ダバ。
    ジンナジュは狐憑きのキツネのようなもの。
    ダバは癌のようなもの。
    裏庭に引き続き二人で一人というような双子が出てきた。
    こういうの好きなんだね。

    飼い犬の介護のためにオムツをすることは、犬が嫌がらないのなら全然抵抗ないよ、私は。
    そんなことで悩むなんてしんどいね。

  • 主人公の職業はライター。ペンネームが棚。

    マースという犬とマンションで暮らしている。

    結婚はしていないが、パートナーはいる。

    マースが病気になり、手術をする事になる。と言うのが前半。

    後半は以前知り合いだった片山海里が亡くなった事を知り、研究していた

    アフリカの呪術医の文献を読み見えない引力にひかれる様に

    アフリカへ行く仕事が決まり、海里の足跡を辿る。

    その中では思いがけない事や、自分を待っていたという運命の人とも出会う。

    という、読んでいてこの本をどう捉えたら良いのか分からなくなった。

    空気感は好きな作品。でも、満足かと言われたらうなずけない。

    何を描きたかったのだろう。人間の繋がりなのかな。

    愛や性や生を描写しなくても繋がっている、引力なのかな。

    最後まで、うーん…と言い続けた作品でした。

  • なにか世界のもう一つの顔を見せてもらった気がした。
    やっぱり梨木さんは、魔女か妖精か、そんな生き物だと思う。
    こういう世界、とても好きだ。

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著者プロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれの小説家、児童文学作家、絵本作家。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞。映画化もされたこの受賞作が最も著名な代表作となる。
ほかに新美南吉児童文学賞、小学館文学賞を、『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門をそれぞれ受賞。
受賞作以外の代表作として、『家守綺譚』、『沼地のある森を抜けて』、『ぐるりのこと』などがある。

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