- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480804440
作品紹介・あらすじ
ほんとうに仲よし?ご近所さん、同級生、同僚-。物心ついたころから、「おともだち」はむずかしい。微妙な距離感を描いた8つの物語。
感想・レビュー・書評
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タイトル通り「少しだけ、おともだち」な存在って、確かに一定数いるものだ。学校でも、職場でも、子供を通じた保護者付き合いでも、御近所付き合いでも。距離が縮まるわけでもなく、特別な共通の話題が多いわけでもなく、親しくプライベートな時間を共有したいと思えるほどではないのに、切るに切れない。文句垂れつつも、その後の相手の動向や暮らしぶりなどが気になる関係。
で、そんな微妙な関係をテーマにしたこの短編集も、読後感が決していいわけではなく、もやっとしたものが残ったり、自分にも思い当たることがあるようなブラックな感情を描いていたり…なのに、ぐいぐい読み進めてしまった。一作目はちょっと好みが分かれるかな、下手すりゃここで挫折しかねないかな、とも思ったけど、二作目以降の女性主人公らの微妙な「ワケアリ」っぷり!皆、自分の立ち位置を確かなものにするために、心の中で様々に軌道修正するわけだよね、その方法が正しいかどうかなんて…どれが主観で客観なのかもわからなくなってくる。
二転三転する構成が巧い!と思ったのは「チェーンウォレット」かな。独特の余韻を残す「仔猫の目」も何度も読み返した。
人との関係なんて、裏表、表裏、出したり引っ込めたりしながら築くもの。何故だか縁が続いてしまう関係も、好き嫌いだけじゃ語れないよなと、いい大人になったからこそしみじみ思うのであった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
女の友情ってコワい・・とはよく言われることだけど、
うん、幼稚園児だろうが職場内だろうが主婦仲間だろうが、
そこにヒエラルキーが存在しちゃうことは多い・・・と思う。
自分がそれぞれの集団内で一番楽な位置にいられて、
その人たちが好き&おしゃべりが楽しいならいいはずなんだけど、
そこが難しい、というか、
自分が常に「上」でいたいと思ったり、そう思う人が存在したりするとそれもちょっとしんどいかな。
“親友”という言葉にこだわりたいタイプだと尚更ね。
そんな友だち関係を、重箱の隅を突っつくみたいに(これは褒めてるんですよ。ホントです。(*^_^*))あれこれディテイルにこだわって読ませてくれる短編集・「少しだけ、おともだち」。
前半は、負荷のようにチリっとくる友だちとのやりとりが痛くて、
それだったらつきあわなきゃいいんじゃないの?と言いたくなるけど
そんな相手に、どこか引っ張られる自分がいたり、
なぜか相手から好かれちゃってたり(組み易しと思われてたり、なんて言うと、私の性格が悪いのがバレてしまうけど)
狭い空間内で一緒にいれば話もするよね、という間柄もあって、
一概に、ばっさり切ってしhまえばいいよ、と言えないお話になっているのが
朝倉さんの上手いところ、なんでしょう。
ただ、じゃあ、好きな話か?と言われると、
そのチリチリ感は結構苦手だったりするのだけど、
後半に出てきた「C女魂」が実に面白いんですよ!
偏差値的には市内でかなり低めのC女子高の2年松組に、
ボランティア同好会が創設され、中心となる活動はなんと「ベルマーク運動」という…。
うん、これはかなりの波乱含みだよ、と
血が騒いでしまったのだけど
同じ2年生のクラスである竹組との格差の話(同じ学年には2クラスしかないという設定)が、妙にリアリティがあり、これはもしかしたら笑うところなのかもしれないけど、同性としてはそれよりも、うんうん、わかるよ、という切なさが迫ってきて、でも、やっぱり可笑しかったりもするところが面白かったです。
つまり、お勉強が上手ではない、という点では同じ苦い思いをしてきた彼女たちなのに、なまじ、学校が進学に色気を出したものだから、松組はその中では真面目に勉強する子、竹組は“私生活をエンジョイする”子、つまり地味組と派手組、モテない組とモテる組、という意味合い。
それが来年から男女共学になる、ということでまたまた偏差値アップを図る学校。
それに対しての二つの組の反応が実に面白哀しいのだけど、松組は
「うちらがだめだから、と反射的に思った。うちらがだめだから、学校はいろいろ方策を講じるのだ。
それまでの努力を否定された気がした。とくに努力をしてきたわけでもないのにそう感じた。」なんてあたりが、コツンと胸に来たんだよね。
そして、そこからなんでベルマーク??となるわけなのだけど、
先生や竹組、他学年まで巻き込んでのうねりとなっていく様が非常に上手い!!これ以上書くとネタバレになる&ちょっと長くなって息切れしたのでここでやめますが、とっても好きなお話でした。(*^_^*) -
親友ではないけれど、ただのクラスメイトや同僚、顔見知り、おとなりさんよりはもう一歩距離の近い女同士をテーマとした短編集。
それぞれ30ページ程度ながら、密度が濃い。
『たからばこ』
幼稚園児のうてなが初めてみちるちゃんの家に遊びに行って家に帰るまでの短い話である。
この作品は限りなくうてなの一人称に近い三人称で書かれ、朝倉さんの作品でよく採用されている視点だけれど、うてなの母と義母のささやかな綱の引き合いや幼稚園児の間でも存在する微妙な力関係をうまく描いていて、短い物語ながらかなり含むものが多い作品である。
最後に用意された展開がなんとも後味悪い。これは必要だったのかよくわからない。
うてなの弟が生まれた日の描写や、死んだ母方の祖母の話など時間軸が行ったり来たりしてページ数の割にちゃんと読もうとすると時間がかかる。
そして朝倉さんの作品はちゃんと読まないと全く面白さがわからない。
その象徴的な作品が巻頭を飾り、これがうまく飲み込めないならたぶんこの一冊は合わないです。
『グリーティングカード』
珠美という友人との小学生から50歳になる現在になるまでの付き合いを、手紙をテーマにして綴った一篇。
主人公のまり子の存在とキャラクターが限りなく希釈されて読者と同化しているのが最後に効いていると思う。
珠美みたいな子、いたわ、というのが一番強い感情。
いたし、いる、こういう子。
『生方家の奥さん』
ほかの作品よりも友達という存在が薄い作品。
主人公は会社の金を使い込んでいて、それが同僚にバレ、これからどうしようかと途方に暮れている。
こういう破産系の話は本当に恐ろしい。
あちら側へ踏み込んでしまうのは、そういう機会があったかどうかだけで分かれるとしたら、いつ自分も落とし穴にハマるかわからない。
でも主人公が会社の金を使って買い物をする思考回路の描写は好き。
『チェーンウォレット』
駅構内にある菓子屋とかばん屋と人形屋に勤める3人がカラオケで語る。
会話を中心とした構成で終盤まで三人の心理描写は出てこない、そこがレトリックでオチになっている。
物語自体を楽しむよりも、なぜ三人はそれぞれにあんな会話を行ったのかと考えてみると、別の味がしてくるかも。
『ほうぼう』
新婚夫婦の話だと思って読んでいたらなんだかおかしい、と思い、何度か行きつ戻りつしてようやく趣旨がわかった。
このもやもやした感じが恐ろしさに変わると面白いのか、も。
『仔猫の目』
マンモスマンションに一人で住むバツイチの主人公が、結婚から離婚に至るまでの出来事や子供の頃の思い出を振り返る話。
『C女魂』
親世代が学生の頃からずっと偏差値が低く生徒の質もよくない高校だと定義されているC女で、7人の生徒がベルマーク運動を始める。
一体物語はどこへ流れているんだと思いながら読みすすめたけれど、最後は不覚にも泣けてきた。
だんだんひとつの方向へ収束していくという話はとても好きで、それをこの短い分量で書ききっているところがさすがである。
『今度、ゆっくり』
50代の司書二人が、音楽番組の観覧へ行くお話。
起伏の乏しい話しながら、締めにふさわしい温かな結末である。
たぶんこの「少しだけ友達」というのは女性独特の感覚ではないか。
各話の女同士の関係を表現するにはこれ以上ないタイトルではないかと読み終わってしみじみ思う。
http://www.horizon-t.net/?p=243 -
友達なのかな?と微妙な距離がある友達との短編8話
軽快でするすると読みやすい、でも深みもある。
最終話の[今度、ゆっくり]は50代の2人の女性の若い頃を思い出しながらの話。
子供の頃から不器用なんだからしょうがないのは自分も同じと共感した
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読み終わった後、モヤモヤする感じはあったけど、もう少し欲しかった。
最初の「たからばこ」はすごく気持ちの悪い話だった。嫌いなタイプの話。
「チェーンウォレット」が1番面白かった。
「今度、ゆっくり」は、リアルでいいお話だった。
「仔猫の目」で印象に残った言葉
「わたしのかなしい気持ちはジュースみたいなものだった。これでおかみさんを思い切れるというのと、これでおかみさんはもうだれのものでもないというのと、これでいつでも夫と別れられるという味とにおいがついていた。」 -
話によってはかなりコワイ。
鋭いところをついてくる作家さんだなあ、と思う。
「たからばこ」は最後に「アブナイと思ったけどやっぱり」な結末。
「グリーティングカード」は、もしや自分もそんな恥ずかしい文章を人に書き送っていたのでは・・・と心配になる。
「生方家の奥さん」は、使い込みが幸恵にバレたその後がどうなるのか、気になって仕方ない。
「ほうぼう」の妄想は悲しすぎ。
「C女魂」は女子の世界のヒエラルキーをうまいこと表現している点が秀逸だが、これだけは妙に読後感がいい。 -
連作短編集。タイトルの作品は別になくて、多分どの作品も微妙に人と距離をおいている(置かれている)人たちが出てくるからかな。1つめの「たからばこ」がほんとに後味悪くて、以前投げるように読むのをやめたのだった。でも2作目からは、大人が主人公で、違う意味での後味悪さや、ハッピーエンドじゃないところは、朝倉作品では想定内。むしろ2作目から統一感が出てると思う。
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(2016/5/30読了)
図書館の書架で見つけて借りた本。
お友達と言っていいのかわからない関係。最終話を除いて、後味はあまり良くない。それは多分、みんなの心の奥の言葉が飾ることなく丸裸で書かれているのが、自分にも覚えのある感情だからなんだと思う。特に年配の話はなんとも言えない気持ちになった。
知り合いと友達のラインって必要なのかなぁなんてことも考えた。今の時代は、SNSでの友達関係もあったり、リア友なんて言葉もあるようだから、曖昧でいいんじゃないかな。
(内容)
ほんとうに仲よし?ご近所さん、同級生、同僚―。物心ついたころから、「おともだち」はむずかしい。微妙な距離感を描いた8つの物語。
(目次)
たからばこ … 幼稚園児と見知らぬ男
グリーティングカード … 中学時代、同じく海外の人と文通をしていた女同士
生方家の奥さん … 元彼の会社で使い込みをしている女が昔のご近所さんと我が身を重ねて
チェーンウォレット … 商店街の各店でバイトをしている女同士、一人は金持ちだということを隠してる
ほうぼう … 妄想癖のある女と幼馴染
仔猫の目 … 同性愛者の女と同じマンションの若妻
C女魂 … レベルの低い女子校のベルマークに対する団結力
今度、ゆっくり … 同じ図書館で働く女性の年長者2人、懐メロの番組観覧