さようなら、オレンジ (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 317
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804488

感想・レビュー・書評

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  • 外国から移住してきた3人の女性の話。言葉の壁、そして異国での孤独感‥‥読んでいて苦しかったです。初めは相容れなかった3人が最後には友情を感じ、お互い助け合っていく、現地の人たちからも受け入れられていく、そういうラストで良かった!
    余韻に浸れる、良い作品でした。

  • 2014本屋大賞4位と表紙に惹かれて手にしてみました。

    この年の本屋大賞は「村上海賊の女」和田竜(未読)、第2位は木皿泉「昨日のカレー、明日のパン」(読了☆3)、第3位は辻村深月「島はぼくらと」(未読)...

    本屋大賞受賞作には大好きな作品が多いのですが、この年の受賞作はあまり相性がよくないのかな。

    本作の主人公はアフリカ出身の難民でオーストラリアに辿り着いたサリマ。

    生きていく為にはお金が必要で、お金を稼ぐ為には働くのが普通の考え方。

    しかし、母語の読み書きすらおぼつかない彼女は当然英語なんて話せる訳もない。

    生きていく為に英語を学び、通い始めた学校、勤め始めた精肉作業場での出会いと彼女の成長の物語。

    残念ながら私にはまだ本作を読み込む力が不足しているようです。



    説明
    内容紹介
    第8回大江健三郎賞受賞
    2014年本屋大賞4位
    第150回芥川賞候補
    第29回太宰治賞受賞

    「私は生きるために、この異国にやってきた。
    ここが今を生きる、自分のすべてなのだ。」

    ■各所から絶賛の嵐!

    「言葉とは何かという問いをたどってゆくと、その先に必ず物語が隠れている」 ―小川洋子

    「読んでいて何度も強く心を揺さぶられ、こみあげるものがあった」 ―三浦しをん
    出版社からのコメント
    異郷で言葉が伝わること―
    それは生きる術を獲得すること。
    人間としての尊厳を取り戻すこと。

    オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。
    母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
    そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。
    内容(「BOOK」データベースより)
    オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。第29回太宰治賞受賞作。
    著者について
    岩城けい(いわき・けい):大学卒業後、単身渡豪。
    SW TAFE ヴィジュアルアート科ディプロマ修了。
    社内業務翻訳業経験ののち、結婚。
    在豪二十年。
    太宰治賞受賞時の「KSイワキ」から改名。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    岩城/けい
    大阪生まれ。大学卒業後、単身渡豪。社内業務翻訳業経験ののち、結婚。在豪二十年。『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 異国の地オーストラリアで移民として暮らさざるを得ない状況に置かれたアフリカ人女性サリマ、アジア人女性ハリネズミ(サユリ)を中心に、言語の壁、人種の壁、性別の壁を越えて彼女たちが力強く生きていく様子を描く。

    物語は、サリマの視点から語られるパートと、サユリが恩師のジョーンズ先生宛に送る手紙のパートからなり、二つを交互に読んでいくことで、二人を取り巻く環境が少しずつわかってくるような仕組みになっている。

    サリマは、祖国の内戦から逃れ、家族と共にオーストラリアに渡ってきた。夫はサリマと二人の子供を置いて出ていき、彼女は生活のためにスーパーの生鮮食品加工の仕事を黙々と続けている。
    サリマはこれまで教育を受けたことがほとんどないが、ただ暮らしていける、というだけの日々の生活に、心の中で「違う、違う」と繰り返してきた。そんな彼女が英語教室で出会ったのがアジア人女性の「ハリネズミ」。彼女は自分と違い大学も出ているし、大学教員の夫と生まれたばかりの赤ちゃんもいる。それなのになぜ自分と同じ英語教室に通うのか。初めは距離を置いていたサリマだが、とある出来事をきっかけに二人は心を許し合うようになる。

    物語を読んでいる間、登場人物の女性たちの「違う、違う」という心の叫びがずっと聞こえてくるような気がした。どうして女性は、自分の意志とは無関係に環境が変わることを受け入れないといけないのか。異国の地で言葉を奪われた自分の存在とは何なのか。
    それでも、彼女たちは自分の中の違和感にしっかりと向き合い、傷つきながらも新しい国の言葉で気持ちを表現していく。彼女たちが少しずつ自分の人生を切り開いていく様子に、強い感動と勇気をもらった。

  • アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマは、1人でこどもを養い語学研修所で英語を習う。そこには赤ちゃんを抱いて参加している日本人「ハリネズミ」がいた。
    本作はサリマの目線とハリネズミの恩師への手紙によって交互に書かれる。

    サリマの話を追いながら何度も目頭があつくなった。祖国を失い異国で居場所を求める、その苦難や悲しみだけでなく勇気や幸福にも。

    ハリネズミが書くジョーンズ先生への手紙は英語だろうか?だとしたら、これだけライティングができても異国では「言葉もわからず取り残される」気持ちでいるのだ。
    異国で居場所を見つけられず、子どもを生み育てることの孤独が伝わる。
    ハリネズミから終始伝わってくるのは強い焦り。したいことができない子育中の多くの女性が感じる焦りだ。
    ハリネズミの手紙から、母語の意味についても考えさせられた。

    ふたりは同じ語学研修所に通いながら境遇がまるで違う。相容れないと思っていたふたりが大切な友になっていく過程には、女性が知る哀しみの共感もあるのだろう。
    「シャーロットのおくりもの」を読み聞かせてもらっていた文盲のトラッキーの「女ってすげえ」の一言は深い。

  • アフリカ難民のサリマと日本人女性のハリネズミ。
    自分の生い立ちさえ振り返ることもなく流れ流れてきたサリマと、高学歴でありながらも異国で本来の自分を見失いつつあるハリネズミ。
    そんな二人の女性がオーストラリアで出会い、支えあい、そしてお互いが新しい一歩を踏み出していく物語。

    単なる友情の話ではない。
    小説の大きなテーマは言語だ。
    異国の地での言葉の壁はいかに高いことか。
    言葉を自由に話せないというだけで、人間の尊厳にまでかかわってくる。
    第二言語の習得が異邦人に徐々に徐々に自由を与えていくことになる。
    と、同時に母語への深い愛情がにじみ出ているのも確かだ。
    私たちは日ごろ母語をいかに粗末に扱っているんだろう。
    じっと考える。

    私には友人とまでは言えない外国人の知人がいる。
    今、彼女は大きなトラブルを抱えているようだ。
    彼女の日本語が拙いことを言い訳に、今まで親密度を今一歩踏み込めないでいた。
    要するに、面倒だったからだ。根気よく彼女の言葉を聞くのが。
    今、私は考える。言葉を超えて自分には何ができるだろう。
    異国の地で子供を抱え歯を食いしばっている彼女の助けになれるだろうか。
    この本を読んだせいか、いつも以上に感傷的になってしまった。

  • 故郷を追われ、生き延びるために他国に移住するアフリカ難民サリマと
    語学学校でクラスメイトになる日本女性『ハリネズミ』の物語。

    日本を離れて生活したことのない私には
    ああそうなんだと深く共感はできないのかもしれません。

    自分の土台を作った言葉、考え方、感じ方、大切なものが
    言語や文化の全く違う国に来て、揺るがされる危機感や圧迫感や疎外感などは。

    『違う』ということは本来は尊重されるべきものであっても
    生活をする時には、ネガティブな出来事の方が多く起こってしまう。
    好きではない英語を勉強し、仕事をし、生活の基盤を作りながら
    自分を押し殺し同化することをせず、ほんの僅かの日々の変化の中から
    違いすぎる今の場所に、自分を根付かせていきます。

    『ハリネズミ』が親愛なるジョーンズ先生に出す手紙が心に響きます。
    祖国や母語とは…こんなにも大切なものなのですね。

    実は私、オレンジ色が一番好きです。
    太陽の色だからなのでしょうか。
    日が出て、沈む。そして明日も同じ微かな希望がまた繰り返される。

    サリマのオレンジ、『ハリネズミ』のオレンジ。
    2人がこんな風にオレンジにさようならを言えたことが嬉しいです。

    ちょっと表現が難しく、1度読んだぐらいでは
    奥底に流れる深い意味が感じられないのですが…。
    『違う』ということを考える一冊です。

  • ワタシには文句無しの星5つです♪皆さんの評価が平均点あまり高くないので少し気になっていたけどいきなりガツンと来た!何なんだ?凄い迫り方で参りました!テーマは言語の可能性と限界ですけど、限界なんて実は無いのだよ と言われてしまった!
    舞台はオーストラリアでアフリカ難民で教育も受けられなかった女性と高い知的レベルだけど表情も会話も平板な日本人女性が英語教室で出会い無二の友になって行く。二人共に思わぬ辛苦が待ち受けていたが、徐々に徐々に克服していく。
    韓国語学習10年以上になるけどもう少し真剣に勉強してきたら、もっと自在にかの国の皆さんと色んな意見や心情を交換できたんだろうなぁ‼️でもまだ遅くない ですよね♪

  • アフリカからの難民としてオーストラリアにやってきたサリマを中心に描かれる。言葉も通じず、家族の理解もあまりなく、孤独な毎日の中でも黙々と仕事をし、英語の教室に通う姿は努力と忍耐の人。
    自分の置かれた境遇を嘆く事なく受け止め、生きていく強さを持ち合わせたサリマの姿に何度も涙が出そうになった。特に息子の教室で拙い英語でプレゼンをする件…。

    最後のハリネズミの手紙で少し私的には「なんだ、そういう事か」と冷めてしまった部分があり、☆4つになりました。

  • 国内で違う土地へ移り、生活をするということは大変だと思う。
    外国に住むということもやはり大変だ。
    旅をすることと住むことはまったく違う。
    これは国内での移動のほうがわたしは強く感じた。

    留学中、英語がほとんどわからないのに
    楽しく生活をしている日本人以外に何人も出会った。
    その人たちには同じ国出身の仲間がいた。
    助け合うことがあたりまえで、だからみんなギスギスしていなかった。

    読み進めながらそんなことを思い出した。
    そして心が痛かった。
    それは思い出していたことが入り込んだ心の位置とは重ならない部分。
    主人公はわたしの目のまえにいた。
    それぐらいの存在感があった。

  • 他の方の感想を読んで初めてオーストラリアに逃げてきた、と知った。読んでる天気予報がスカンジナビアンというので、北欧へ移民したのかと思っていた…

    アフリカへの勝手な偏見から、始まりの文章で血のついた作業着、という表現で最悪な仕事かと、これまた勘違い…日本人の移住者のさおりの手紙で段々と明かされていく。
    何人かの女性の生き様を、第二言語に悩むことを、また教育を受けたことのない人とで会った日本人女性の反応を、国力の違いをありのまま表現しているのはとてもよかった。

    短いながらに深い。
    薄く、文字も大きい本なのだが、内容は深く読ませる。とてもよかった。小学生の推薦図書にしたい一冊だ。

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著者プロフィール

大阪生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞し、デビュー。同作で第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。2015年刊行の『Masato』(集英社文庫)で第32回坪田譲治文学賞受賞。他、『ジャパン・トリップ』(角川文庫)、『Matt』(集英社)、『サンクチュアリ』(筑摩書房)の著作がある。

「2022年 『サウンド・ポスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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