ささみみささめ (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.38
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本棚登録 : 422
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804495

感想・レビュー・書評

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  • 最後に「怖っ!」となるブラックジョークの短編集。少し前、坂木司さんのショートショートにも同じ事を思ったが、今回も長野さんってこんな作品も書くんだ~!と意外だった。
    そんな中にも長野さんの世界観みたいなものも感じられ、どの話も「怖っ!」と思いながらも楽しく読めた。やはり長野さんだからか、ほんのりBLを匂わせる雰囲気の話が特に良かった。この本の装丁装画がまた凄く好み。図書館で借りたけれど、買って手元に置いておきたい気分。

  • 山田博之さんの繊細なボタニカルイラストと、名久井直子さんのシンプルだけど美しい装丁にそそられて手に取ってみた。何か短編集が読みたいなと思ってのチョイスだが、長野まゆみさんの小説を読むのは十ウン年振り。ちょっと不思議な手触りのショートショート集、「長野さんってこういう話書くの!?」と言いたくなるような、シュールで怖く、だけど時にユーモラスな掌編のとりこになりました。
    初期の長野作品をかつて愛読しており、少年達を描いた幻想的で透明感を感じる当時の作品の印象がいまだに強いもので、読みながら「意外だなあ」と感じていたけれど…年配の男女が多く登場する、こういう「地に足ついた」長野さんもいいなと思えました。
    短い中に男女の愛憎をぎゅっと閉じ込め、それまでの時の流れがよくわかるような構成、そして「ひいっ」と叫びそうになる鮮やかなどんでん返しに度肝を抜かれる。悪い夢を見ているような、奇妙な結末のものもいくつもあるけど、胸やけするほどヘビーではなく、むしろ「怖いもの読みたさ」のような感覚で次々とページを繰ってしまう。絶妙なタイミングで「ふふっ」と笑いたくなるような展開や、ほろっときそうなストーリーもあり、巧いなあホント。
    中年~老年の男女の話が印象的だったけど、子供や女子高生の心理描写も見事で、それぞれの世代ならではのシニカルさが際立っていた。ああ、長い間長野作品から遠ざかっていたことが今更ながら悔やまれる。また少しずつ読んでいきたいな。

  • 「ささみみささめ」ひそやかなささやき声があちこちから聞こえているような響きだ。
    そして、平仮名で書かれたタイトルの文字は可愛らしくも不思議な雰囲気。
    開けてみたら、とんでもない魔女のささやきだった。

    10頁前後の短編が25編。
    それぞれにピリリと気の効いたオチがついている上、味も色もさまざま。
    短い話なのに、これだけの粒ぞろいは凄い。
    長野さんの好きな鉱物の標本のようだ。
    いや、宝石のように美しい高級チョコレートのアソートかも。
    長野魔女が「好きなだけ召し上がれ」と差し出すのだ。
    「いくつかには毒が入っているんですけれど」
    まあ、幾つ食べたら致死量なんでしょうか…?
    私は長野毒に耐性があるので大丈夫なんですけれど。

    ふとした気の迷いから思わぬ災難にあう話、複雑に組まれたミステリ、BLスパイス、年を経て妖怪のような老婦人、半分アチラに行ってしまっている老人の喜悲劇、懐かしい遠い日、怖い復讐…

    「きみは、もう若くない」希望のある良い話。
    「ウチに来る?」少し裏悲しく、とおりゃんせなど歌いたくなる。最後の小さな陽だまりがあたたかい。

  • 面白かった〜。
    「レモンタルト」と似通った設定の話が2つあったので、やはり「レモンタルト」はかなり気に入って書かれたんじゃないかな。ノリノリだったもんな。
    短編集で読みやすい。
    怖かったり心温まったり、不思議だったりする短編集。
    あえて一つテーマがあるとすれば「意外な結末」だろうか。
    わたしはそういうのがものすごく好きなのでそれはそれは楽しく読んだ。

    長野まゆみさんの特徴の文体として、起きたことを羅列しその余白は読者に委ねる、というところがあって、それがこの短編集のテーマに合っている気がした。

    特に気に入ったのは「ちらかしてるけど」「一生のお願い」「ドシラソファミレド」。

  • 不思議だったり、ほっこりなったり、気味が悪かったり。様々な話が入った短編集。老後、頭がおかしい、同性愛者、のネタが多かった。

  • この著者には珍しい、少年文学もBLも偏愛もない短編集。

    章題が物語の始まりを予感する一言なのが好き。
    生活の中にあるほんのちょっとした悪意、気づいていても気づかぬふりをしてもあるだろう先周りをしていてもちょっとだけ手でしまった悪意が、最後に予想以上の結果となって章題で閉じられる。
    ちらかしてるけど、行ってらっしゃい、名刺ください、一生のお願い、ウチうるさくないですか?どれも好き。特にというのを挙げて行った方が早い気がする。
    心が大きく動くものでもなく、気にしなければその辺の雑草も同じものが、年をとって見えてしまうものがあるとき。心も体も凪のようでいてこんな静かに笑えるだろうか。

  • 短編集。ちょうど一駅分くらいで読み終わる本当に短いお話。こんなに短いのに、やばい、ってなる。
    時折ホモな話も入りつつ。全体的にはずれなく、面白かったです。

  • 1番好きなのは「ウチに来る?」。事故に遭う直前の弟を見て未来を変えようと考える、雨が降るなか起きた不思議な体験。
    それ以外にも、裏切られたっとか、そうきたかっと思わせられる短編がいくつもあって、読み応えがある。

  • 学生時代以来、十数年ぶりに長野まゆみ著作に触れました。

    この作者の持ち味といえば新旧入り乱れた特殊な文体というイメージがあったのですが、これは近年発行されたためかその手法は全く改められており、仮に作者名を伏せられて読み始めたら気が付かないかもしれません。

    ひとつひとつが綿密で、かつ切り口のかども鮮やかに、登場人物たちの人生の濃厚な場面だけをそこに切り出したといわんばかりに存在感がある。
    そんな贅沢な掌編を集められた良作。

    最初はまるで違う作者の手だと思いながら読み進めていくうちに、納得。
    血の繋がりがあるのにも関わらず気の合わない親子。男性カップルの湿り気のある愛情。女性同士の熱のこもった情の引きずり、そして絡まり。そのほか。
    だれかと「私」との関係や経験が非常にくっきりと立ち上がるようでした。
    読者に登場人物たちのバックグランドやこれからを嫌が追うにも妄想させる筆力。

    ああ!長野まゆみだ!と、再会して結局夢中にさせられました。
    良い読書体験だった。

  • 他人に背骨を掻かれているような、ぞわぞわした感じのする短編集だった。たった10ページの中に起承転結を濃密に詰め込める作者の技量に感激。
    個人的にはブラック成分の少ない「きみは、もう若くない」と「あなたにあげる」が好き。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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