名前も呼べない (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.09
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本棚登録 : 392
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804617

作品紹介・あらすじ

元職場の女子会で恵那は恋人に娘ができたことを知る。世間の“正しさ”の前でもがく人々を描いた、第31回太宰治賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 表題と『お気に召すまま』の二編からなる中編小説集。ほかの読書家さん同様、表題作は何だか読み辛く、物語に入り込むことができなかった。ただ、終わりの方で"どんでん返し(?)"的な場面があり、そこが一番印象に残った。それに比べれば、二編目の作品はずいぶん読みやすかった。

  • 予想外のトリック的なところもあり、オ!!っと思わせられる部分もありました。
    全滝的に重くて、暗い気持ちになりながら読んでいました。正直読んでいて愉快な本でもないし、カタルシスも何も無いのです。どんより系と勝手に名付けたくなるような小説でした。

  • 太宰治賞の表題作も書き下ろしの併録作も非常に上手い。むしろ上手すぎるほど、描写にも構成にも隙がない。それだけにしんどい。こんなものばかり読んでいたら女性として生きることがとてつもない苦行に思えてきそうで困惑する。

  • 第31回太宰治賞受賞作。

    表題作は、所謂、不倫小説なのだが、読み進めていくうちに最初に戻って読み返したくなる著者のトリックにまんまと引っかかった。
    読み返してみると、著者は何も「嘘」をついていないことがわかり、ズブズブと物語にのめりこんでいってしまう。

    書き下ろしの2作目も、著者特有の女性主人公があまり明るくない過去の体験をベースに、「いま」を見つめていくお話なのだが、どこか品があって、どこか救いがあるところがいいな、とおもった。

    たまたまかもしれないが、『名前も呼べない』『お気に召すまま』両作品とも、どこか欠落した部分を抱え、「わたしなんて…」思考の強い主人公なのだ。わたしはこういう受け身の人間があまり好きではない。だが、その主人公に喝を入れる脇役がちゃんといるので、作品としてのモヤモヤ、苛立のようなものが、ちゃんと回収される。
    『名前も呼べない』ではメリッサという親友が本当に素敵なキャラクターだった。主人公と仲良くなるエピソードは、メリッサが「それ」とわかっていても惚れてしまう。
    『お気に召すまま』では、主人公自らが怒りを表現するシーンがよかった。
    それも、女子高生の文乃が居たからこそ。

    お風呂やベットがすこしの光をくれる。
    これらのアイテムを使って、行動にうつしていく主人公の気持ちがなんとなく嬉しいというか、踏ん切りがつく。
    どこかで経験のある感情たちなのだとおもう。

    この小説は、映画のようにあまり予告編を吟味しないで、物語に飛び込んで味わってもらいたい。

    それにしても、『こちらあみ子(今村夏子)』、『君は永遠にそいつらより若い(津村記久子)』といい、太宰治賞は骨のある女流作家を輩出するなあ。

  • 女性センターのおすすめ図書に飾ってあって、朝井リョウさんの帯コメントと表紙の写真の綺麗さで借りてみました。結果は◎、とても読みやすく内容も面白かったです!

    名前も呼べない、の方はトリックにまんまとハマってしまいました笑。読み返してみると会話や表現の端々に、彼女の恋人が妻の方だとわかるようになっていますね。完全に「不倫は男女」という自分の思い込みを利用されました。

    主人公の恵那ちゃんが痛々しくて、本当に可哀想になる。何でこんなひどい生い立ちの人を選んで優しくしたんだろう、亮子さんの気持ちがまったく理解できん。母性?何にしても関係の断ち切り方、最後の電話の対応が冷たすぎてびっくりした。でも不倫を仕掛ける人ってこんなもんかもなーとも思ったり。今の夫婦関係のうまくいってない部分の捌け口としてしか相手を認識してない的な。

    お気に召すまま、はもう少し救いがありますね。洋食屋でお父さんが美波に謝るシーンはウルっときてしまいました。

    人物描写がとても的を得ていて、特に強者男性への嫌悪感みたいなのが、うまいですね。女性センターに置いてあったの納得〜。


  • 第31回太宰治賞受賞作品。

    表題作『名前も呼べない』ほか、書下ろし短編『お気に召すまま』も収録されている。
    どちらも子ども時代に負った傷を身の内に宿したまま大人になった女性が、自らの罪と対峙するというモチーフが織り込まれている物語だった。傷を負った場面の状況は詳細に描写されていない。ただその時や現在の主人公の感情が、日常生活の合間にふと現れ痛切に語られる。だから読んでいる途中相当心抉られたのだが、でも最終的には癒しの物語だと思う。
    次回作も楽しみ。これは波長が合う人にはとことん合う系統の小説だと思う。孤独な女性の、生臭くない透明なリアリティがある。


    以下重要な部分のネタバレ含みます。
    『名前も呼べない』の方で、
    「宝田主任がどうこうじゃない。みんなが当たり前みたいに、男と女は結婚して子ども作るのが当然で、結婚してる男と女が近づいたら不倫で、父親の死に目にも遭わない結婚しない娘は親不孝で何かがあって、そんな目でしか物事をみないで、見るだけならまだしも当たり前みたいに圧しつけてきて、そんな中で生きなきゃいけないのが最悪って言ってるの」(p138)
    主人公のこの台詞、自分に投げつけられたような気がしてはっとした。だって、主人公の「恋人」は明示されるまでずっと宝田主任の方だと思っていたから。自分より背が小さいとか、回想での「恋人」の口調とか、あからさますぎる程本当の「恋人」は宝田主任の「妻」の方だと示されていたのに。当たり前のように「男と女が近づいたら不倫」だと思い込んで、些細な違和感を流していた。これはけっこう、かなり読者に対する強烈なパンチだと思う。衝撃を受けた。
    こんなんじゃ確かに生きにくいよね、ごめんなさい。

  • 本当に求めていたのはずっと隣にいて、無条件に自分を受け入れてくれる絶対的な信頼関係。
    それは家族から与えられるはずだったのにそれが無かったからこそ、自分の歪さを埋めてくれる「家族」を亮子さんに求め、
    勝手にそれを自分に関係が無いところで作られたことで裏切りを感じたんだと思う。
    恵那は母親からの愛情を求めていて、だから義父を恨むのではなく母からの罰を待ち望んでいるような危うさがある。
    しかし、メリッサ・林くんからの真正面からの怒りや悲しみで家族じゃなくても繋がれる可能性を感じて救いを感じた。
    恵那も美波も母親からの無条件な愛情を求めている。自分の中の母親の不在が大きければ大きいほど存在感が大きくなっていく。

  • 不倫していた主人公の本妻に対する迷惑電話(?)にびっくりした。

  • 伊藤朱里さんは「クライマックスの会話シーン」がいい。この作品もそうだった。
    表題作のほかに「お気に召すまま」という書き下ろしが収録されている。こちらの作品の方が好きだった。ベッドの下に隠れるエピソードが印象的で、最後の会話シーンは力強かった。

  • 恋人と過ごした不貞の日々。
    世間の外側で生きる、ただ一人の親友。
    毎週、同じ時間にかかってくる母親の電話。
    ちらつく父親の記憶。
    知らない誰かが奏でるピアノの音。
    ―すべてが澱のように、少しずつ心に沈殿してゆく。
    「ねえ、私、どうしたらよかったんだろう?」
    (アマゾンより引用)

    この恋人、嫌いだわー。
    林くん、めっちゃ良い人。

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著者プロフィール

1986年、静岡県生まれ。2015年、「変わらざる喜び」(「名前も呼べない」に改題)で、第31回太宰治賞を受賞。他の著書に『稽古とプラリネ』『緑の花と赤い芝生』『きみはだれかのどうでもいい人』『ピンク色なんてこわくない』がある。

「2022年 『名前も呼べない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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