凍土二人行黒スープ付き (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
4.03
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本棚登録 : 207
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804655

感想・レビュー・書評

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  • 透明感のある、澄んだ文章。きんと張りつめた空気が和らぐ過程がとても素敵な、4編のSF。
    とあるアンソロジーで出会った「二人への旅」という短編で雪舟さんを初体験し、その世界観に魅了された。その短編に登場する、イエヨミのシガとクローンのナガノ。彼らの登場作品が他にもあると知り、嬉しくて飛び付いたのが本作だ。
    カシワイさんのイラストがイメージにぴったり!ゆらぐ性の描写が印象的で、SFという形をとっているからこそ、互いを慈しむ関係がリアルに伝わってくる。
    黒スープというコーヒーのような飲み物も効果的に使われる。フード描写がとにかく秀逸で、架空の食べ物なんだがすごく美味しそうでそそられるのだ。
    リリカルで、時に切なくて、でもほんのり心があたたまる。静かに寄り添ってくれる、その距離感が心地よくて、安心できる。孤独や不安に苛まれたときにそばに置きたい一冊だ。

  • SF風味のファンタジー、短編集。素敵な世界観だった。

    一人で生きてきた人が、誰かと出会い、孤独だったと気付く。でも、好きでもない人とつるむくらいなら孤独を選びそうだと感じられる登場人物たちが良かった。特にナガノの近すぎず、遠すぎない距離感がすごく好き。他人に興味はもつけど、深入りはせず、自己開示が苦手な少し不器用なところが良い。

  • とても寒い星で
    優しくて、最後の方泣いた。
    これほどまでに、押し付けがましさが一切なく、さりげなく自然に優しさが描けるものなのか。決してしっとりしない。だけど登場人物 ( 特にシガ ) の言外の優しさに、溢れている。久しぶりに幸せで大満足の読書体験。
    1日に1話ずつ、大切に読もう。

    徐華のわかれ
    徐華とは?と思ったけれど、雪舟さん独自の季節をあらわす言葉で、おそらく初夏のことである。リョクは「緑と盾」の緑で、盾と出会うんだろうという予感によって物語は終わる。空想的な植物や食べ物が、ありありと本物みたいに描写されるさまは、読んでいてうっとりするほど心地よく、長野まゆみさんのやり方にも少し似ていて、懐かしくなる。

  • 世界観が独特で素敵。あまり温度感の無い文章も好きです。
    ただキャラの行動が納得いかないと思う事が多かったのと、恋愛的な欲望が前面に出ているのがちょっと嫌だなと思ったので評価は下げてます。

  • Twitterの名言bot的なやつで流れてきて知った雪舟えまさん。良い意味で、意味がわからなくてとてもすきとおもった。漢字と平仮名の使い方がとくにすき。自分を大切にすることのたいせつさを伝えているような気がした

  • 漢字のひらきかたが独特で優しい

  • 雪舟先生の十八番のこれまた地球とは違う惑星を舞台にした近未来の愛の物語。
    さびしくないよ、君がいる。
    「とても寒い星で」家読みという不思議な仕事人シガと大量生産クローンのナガノ。ずっとひとりぼっちだった二人が、”ふたり”になった話のはじまり。
    「徐華のわかれ」収録作のみどたて枠。『恋シタイヨウ系』リョクとターの馴れ初めがまさか読めるなんて思わないじゃないですか…。
    「シールの素晴らしいアイデア」シールとサバ…まさか雪舟先生半陰陽も嗜むのか…。性別を、性別という概念をも超えて愛し合う二人…。
    「銀河ボタン」シガの鈍感!!!!!!!!!!もう知らない!!!!!!!!!!!!!!ずっとナガノと一緒にいて!!!!!!!!!!!!!!!!

  • S(少し)F(不思議)な物語。個人的にシールとサバのお話が最高。もちろんナリタとシガの絆も素敵。ところでサバの世界の性別概念、いったいぜんたいどうなってるんだ……??

  • 好きな世界です。ひんやりとして硬質でつるんとしてて、でも黒スープ(たぶん珈琲だとおもってる)の温かさ馨しさを感じます。
    人々の交流も描かれるけど、適度な距離が保たれてるのが良い感じ。新しいのか旧いのか、不思議。
    雪舟えまさんは歌人なので独特な言葉の選択、漢字の開き方も好みでした。世界観にぴったり。“イエヨミ”という仕事、謎の動植物…登場人物たちの年齢層が上がった長野まゆみ作品のような趣。好きなはずです。
    カシワイさんの装画や挿絵も素敵でした。うっとりする本です。装幀、クラフト・エヴィング商會なのか…それは間違いなくうっとりです。手元に置きたい。単行本でも良いけど、文庫にもならないんだろうか……?遠出するときに連れて行きたいお話でした。カシワイさんは絵を紙で見たい画家さんのひとりです。

  • 近未来なのかなんなのかの、浮遊感漂うSFちっくな世界。家読みのシガは逃亡クローンのナガノに出会う。リョクはキンに出会い、シールはサバに出会う。ひとりが誰かと出会ってふたりになる。人間、クローン、性別も超えて。かけがえのない偶然。孤独も違いも飛び越えて大きな優しさに包まれるような物語。

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著者プロフィール

雪舟えま(ゆきふね・えま)
1974年札幌市生まれ。作家、歌人。著書に歌集『たんぽるぽる』『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』、小説『タラチネ・ドリーム・マイン』『プラトニック・プラネッツ』『恋シタイヨウ系』『パラダイスィー8』ほか。2017年より男性カップル「緑と楯」シリーズの執筆をメインの活動としている。

「2018年 『BL古典セレクション① 竹取物語 伊勢物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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