ちよう、はたり

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480814487

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  • 糸を染め、機を織る。
    その日々の中にある、宗教だったり、日本人の心に流れる美の意識だったり、その歴史だったりを、繊細に掬いだして文字に落とす。
    日々は生活であり、学習でもある。
    禁欲的な中に、魂の震えが感じられる。

    こういうふうに年を重ねたいんだ。
    でも私には美的センスもなければ、細かな作業のできる指先もない。
    …というような言い訳を許さない、厳しさ。

    それでも最近、本を読みながら無性に感じる手先の疼き。
    インプットだけではなく、何かを作り出したい、アウトプットしたい思い。

    歳をとることは生活をシンプルにすることだ。
    そう思ってきたけれど、いまだくすぶり続ける何かを残したい気持ち。

    著者も、一人自分と向き合いながら日々を過ごそうと山奥に小屋を建てたあとに、海外旅行へ行く機会が増えたという。
    歳をとることは縮小していくことだけではないのかもしれない。
    歳をとったからこそ広がる世界があるのかもしれない。

    今から染色家として人間国宝になることはもちろんできないが、自分の老後をどう過ごすか、何度も自問しながら読みました。

  • 染織家にして人間国宝でもある著者のエッセイ集。
    ちよう、はたり-著名にもなっているこのフレーズは、織物を織る機の音を表現しています。

    仕事に対する姿勢や、染織家として影響を受けた人や物を、万葉集の歌などを引用しながら静謐な言葉で綴られています。静寂のなかにも染織家としての強い志しが垣間見え、その堅実な姿勢に思わず襟を正したくなります。

    美しい日本語と、鮮やかな色彩に溢れた1冊でした。

  • エッセイ集。
    ご本人の本職であられる織りや染めとその材料を賜る自然以外にも、社会情勢(同時多発テロ、水俣病 etc.)や、絵画や詩や小説とそれを作った画家や詩人や小説家(特にドストイエフスキがお好きなようでした)などに真正面から向き合っていると感じられました。

    「緑」という色に関する記述は一読の価値ありです。
    道を究めようとする人には多方面から知識が集まってくるのか、本人が集めようとするのかと思い、自分の寡聞ぶりを恥じました。

    途中、白洲正子さんや石牟礼道子さんも登場します。
    激しく生きる女性は、皆、私にトーベ・ヤンソンさんを思い出させます。

  • ゆっくりと読み終えた。日々、決意しては前に進むことを自分に課している人の強さを感じる。弱い、弱いと言いつつ、この人は強い。
    文章ではいろんな人に助けられて、ようやくこれだけのことができた、まだ道は遠い、ということになっているが、この人の織り上げた作品を見る限りそんなことはない。相当な深みに達していると思う。それでなお、こうまで自分は足りていないと考えるのはもう、執念に近いものすら感じる。
    そこでふと自分のことを思う。なんだか恥ずかしくなってくる。世の中にはこんなに精進している人がいるのに、自分ときたら…。叱咤激励される本だ。

  • 志村ふくみさん

  • 表紙に惹かれて購入。

    今まで考えたこともない、染色&機織りという視点から見た世界、というものの一片を知ることが出来た気がする。
    素敵な生き方に憧れる。

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著者プロフィール

1924年滋賀県近江八幡生まれ。55年植物染料による染色を始め、57年第四回日本伝統工芸展に初出品で入選。83年『一色一生』で大佛次郎賞受賞。86年紫綬褒章受賞。90年国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される。93年『語りかける花』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書に『色を奏でる』『小裂帖』『ちよう、はたり』『つむぎおり』など。

「2018年 『遺言 対談と往復書簡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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