「本をつくる」という仕事 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 701
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815347

感想・レビュー・書評

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  • ○活字-秀英体を作った人 大日本印刷伊藤正樹さん
    ○ドイツで学んだ製本マイスター 松岳社青木英一さん
    ○活版印刷工房 FIRST UNIVERSAL PRESS溪山丈介さん
    ○校閲者の矜持 元新潮社矢彦孝彦さん
    ○本の紙 三菱製紙八戸工場日比野良彦さん
    ○装幀家 日下潤一さん
    ○翻訳本エージェント タトルモリ玉置真波さん
    ○絵本作家 角野英子さん

    筑摩書房 『ちくま』連載

  • 子どもの頃から本が大好きでずっとお世話になってきて、出版社でバイトしたこともある。だから本にかかわっている人たちのことは意識しているつもりだったけど、著者、編集者、校正、印刷、営業、くらいは意識していたけど、活字作成者、製紙業界のことなどはちょっと意識を向けてなかったかもしれない。本書で取り上げられるのは印刷会社の事業としての活字作成(違いが判ってなかった!)、製本マイスター(古本屋さんでこうしたことをしているところはあるけど、欧州のような本格的なものではない)、活版印刷(三日月堂!)、校閲(校閲と校正の違い!)、製紙業、装幀家、海外本のエージェント(翻訳もの好き!お世話になってます)、児童文学作家(角野栄子さん)の8つの分野の専門家から語られる本作り。どの方も自身の仕事へのプロ意識とそれでいて本に対する優しいまなざしがよい。この本の作り自体も丁寧な仕事だと感じた。

  • 本作りの過程に関わる様々な職種の方のインタビューから、本作りの近現代の歩みや現場の様子がうかがえる本。であるとともに、それぞれの方の仕事観や本への思いも感じられて面白かった。

    フォントや紙の作成、校閲や製本や装丁などのプロセス、どれも驚くほどのこだわりで行われている様子がわかる。少数でも必要とする人に届けるために活版印刷工房を営む方や海外作品の版権のエージェントの方、最後には角野栄子さんも登場し、もりだくさんな一冊だった。

  • フォント、紙、印刷、装丁、本を作るにはさまざまなプロフェッショナルのこだわりがあることがわかり、自分が電子書籍が苦手で紙の本が好きな理由がわかった気がした。特に新潮社は校閲に強いことがわかったことが興味深かった。

  • 一冊の本は「文字体」、「装丁」、「紙質」、「校閲」、「海外との販売代行」など様々な分野で様々な人が魂を掛けた芸術作品である。

    「文字体」はより読者の心を摑む文字にする為に数万文字を一文字ずつデザインし、指摘を受けつつも全てこなす。担当した人は文字の更新に7年の歳月を要したと言っていた。しかしまた充実した7年間であったとも言っている。今打っているこの文字も一文字一文字デザインしてくれた人達がいてこそである。さらに昔は手彫りで掘っていた時代もあり驚きである。
    「紙質」は昔酸性紙が主であった為長期保存が効かずボロボロになるものが多かった。長期保存する為に中性紙を使用しなければならないがコスト、時間が掛かり大変であった。また、「紙」は縦繊維と横繊維があり、ページをめくり易いのは縦繊維である。そうした読者への気配り、技術の進歩にも魂を賭けていた。
    「校閲」は菅田将暉、石原さとみ主演のドラマ「地味にすごい」で校閲部門の人々の仕事ぶりを描いていたが、校閲の人達は本当に命がけだと思った。校閲は原作者の作品を最初に見て誤字脱字、矛盾がないか添削するいわゆる赤ペン先生である。しかし、見落とし等の抜けがあり、間違ったまま出版すれば最悪絶版の危険性もある。地味な部署だが本当にすごい部署だと思った。
    「装丁」は本の表紙等のデザインで、本の顔だと思う。装丁する本を一読し、また取材をし、その本の魅力を最大限に引き出すデザインをする。技術、感性のスペシャリストと思った。
    「海外との販売代行」は「タトル・モリ」という会社が海外に出向き、日本人にウケそうな洋書を翻訳し、出版し、また日本作品を世界に輩出している。洋書で代表的なものは「フォレスト・ガンプ」「氷の微笑」「シックス・センス」等。こうした人達が居なければ海外の良い作品を見れず、また日本アニメのように日本の良さをアピール出来ない。

    本は時代の現れでもあり芸術である。江戸時代の本棚、中世ヨーロッパの本棚、そして現代の本棚、それぞれの時代にそれぞれの技法で作られており、感じるものもまた違う。
    普段何気なく手に取る一冊の本、その本が本棚に並ぶことは多くの人達の歴史、努力の積み重ねであり、素晴らしい事である。「君達ほどう生きるか」の本を読んだ時に自分1人の存在は周りと切っても切り離せない存在だとあった。食べ物、着るもの、全てにおいて作る人、そして着る、食べる自分がいること、本についても同じで繋がっている。今回は本の制作過程を見たが、一冊の本の見方が変わり、より大切にしようと思った。

  • たしかに、またとない貴重なエピソードもある。
    しかし、この本の魅力はインタビュアーである著者の本を作る人への敬意にあり、そこから醸し出される、香り立つ文章が、なんともいえず、切ない、大切なものに出会ってしまった感情を呼び覚ますのだ。

    どの仕事人も素敵。何度もこみあげるものがあった。

  • 本をつくる人々をテーマとした本
    こちらの本、本好きとしてすごく面白かったです(*^^*)
    第一章は大日本印刷「秀英体開発室」に勤める伊藤正樹さんの話し
    二万三〇〇〇字に及ぶ文字の全ての基本として試作される漢字十二文字
    国 東 愛永 袋 霊 酬 今 力 鷹 三 鬱
    書道の世界にある「永字八法」という言葉
    「永」の字には点、横画、縦画、ハネ、左払い、右払いといった漢字の基本パーツが含まれている
    他の字も同じように書体を制作する際の基本形となる字
    第二章 製本マイスターさんのおはなし
    第三章 活版印刷屋さんのおはなし
    活字を拾う職人さんの凄さ
    第四章、新潮社の校閲部に定年まで勤めた矢彦孝彦さんのおはなし
    五味康祐、池波正太郎、松本清張、井上ひさし、司馬遼太郎など作家たちの原稿の直し方
    第五章 すべての本は紙だった
    三菱製紙 洋紙事業部 中村禎男さん
    『読者の方々はその本の中身を買っているわけで、書店で紙を買っているという意識はないでしょう。でも、彼らはみんな僕らがつくった紙を見ているんです』←単純にそうだよね!と感嘆!
    1980年代初頭、10年以上の歳月をかけて
    数十年という寿命しかなかった『酸性紙』から
    300年から500年という品質が保証された『中性紙』への転換を行った
    現在の紙の寿命は全然意識していなかった。改めてきくと凄い!
    第六章 装幀家さんのおはなし
    第七章 海外の本の架け橋
    『タトル・モリ エイジェンシー』とそこで働いているエージェントのおはなし
    第八章 『魔女の宅急便』の著者
    童話作家、絵本作家 角野栄子さんのおはなし

  • おもしろかった。
    本、特に自分は紙の本(電子ではなくて)が大好きな
    一人として本を作るためにかかわっている人が
    こんなにいることに、純粋に感動しました。
    活字を作る人。
    製本をする人。
    活版印刷の人。
    校閲者。
    紙を作る人。
    本の装幀、デザインをする人。
    海外と日本の架け橋になるエージェント
    著者。

    まだまだ、出版社、編集者、いろいろな作家
    本を作るという経済圏とその世界はなくなっては
    いけない世界だと思います。
    紙の本を選ぶときの感じ、開くときの感じ、読むのを
    やめていったん閉じるときの感じ、再開するときに
    しおりをたどって開くときの感じ、読み終えて本を
    閉じるときの感じ。
    それぞれの感じは、やっぱり幸せな感覚を持ちます。

  • 「本」を愛する人たちの、仕事に対する矜持が見える。小さいが希望の灯を消したくはない。

  • 少なくとも本には8種類もの職業があると言われパッと答えることが出来るだろうか。昔と今の本では様々な栄枯盛衰があり確かに変わっているのに大抵はそれに気づかず本を手に取り読む。黒子と呼ぶだけでは収まらない様々なプロフェッショナルのお話

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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