百年と一日 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
3.44
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本棚登録 : 1324
感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480815569

作品紹介・あらすじ

代々「正」の字を名に継ぐ銭湯の男たち、大根のない町で大根の物語を考える人、解体する建物で発見された謎の手記……時間と人と場所を新しい感覚で描く物語集。

感想・レビュー・書評

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  • そんな形もあるのだろうなという、どこかの誰かの時間に静かに触れる33の物語。

    こうやって誰かの人生や歴史を窺うと、何となく癒やされるのは何故だろう。
    もしかすると見方においては僕のも成立しているのかも知れないな、と受け入れられる気がするからか…

  • 名もない人、なんでもない場所にも、物語がある。
    周りの人達、周りの景色が愛おしくなる。
    そんな短編集。

  • +++
    学校、島、家、映画館、喫茶店、地下街の噴水広場、空港…… さまざまな場所で、人と人は人生のひとコマを共有し、別れ、別々の時間を生きる。 大根のない町で大根を育て大根の物語を考える人、屋上にある部屋ばかり探して住む男、 周囲の開発がつづいても残り続ける「未来軒」というラーメン屋、 大型フェリーの発着がなくなり打ち捨てられた後リゾートホテルが建った埠頭で宇宙へ行く新型航空機を眺める人々…… この星にあった、だれも知らない、だれかの物語33篇。作家生活20周年の新境地物語集。
    +++

    まず注目するのは目次である。ここだけで、すでに物語感満載で、ほとんどどんな物語なのか見当がつく。そして本編。見当をつけたとおりだったり、ちょっと予想を裏切られたりしながらも、そこでは人々が暮らし、出会い、別れ、再開したり、噂を耳にしたりしながら、時間が経過していく。ひとつずつは短い物語なのだが、その場所の歴史が濃密に詰まっているような充実感を味わえる。厳密にいえば違うのだが、ある意味定点観測のような、変わらなさと、変化の激しさのどちらもが、見事に両立している印象でもある。ただの記録のようでもあり、風景の写生のようでもあり、奥深い告白のようでもある。とても興味深い一冊である。

  • 【オンラインイベント】柴崎友香×小川さやか「人間と時間の不思議」:柴崎友香『百年と一日』(筑摩書房)刊行記念 | イベント | 梅田 蔦屋書店 | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
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    筑摩書房 百年と一日 柴崎友香
    http://www.chikumashobo.co.jp/special/hyakunen_to_ichinichi/

    筑摩書房 百年と一日 / 柴崎 友香 著
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480815569/

  • 再読。
    街の風景をモノクロ写真で切り取ったような、淡々とした短編が続く。当初はさほど感じなかったけど、読み進めていくうちにだんだん「この世界は今日もどこかで人と人が繋がっている」という安心感みたいなものがじわじわと胸に沸いてくる。
    自分の本棚でこの本をみかけるとなんだかほっとする、という不思議な存在感をもつ1冊になった。お気に入りの本。

  • 短い小説集なんですが、ショート・ショートともちょっと違う気がするんですよ。ショート・ショートの方はストンと腑に落ちる結末になるか、有り得ない~で終わるのです(私の認識では)。

    ところが、柴崎友香さんのは腑に落ちない、どこかで何かが曲がってしまって不安感が起こる、そうして読者が「こういう風になるのではないか」と結末を想像してしまえるようなのもある。

    たしかに人生百年時代、生まれて死ぬまで何が起こるかわかりませんよね。それを圧縮するとこのような小説ができるのでしょう。平凡な日常のようで、どこかでぽっかり穴が開く、しかし何事もなかったようにつづいていく。

    この長いタイトルのたくさんな短編の内容で、なんですか、何巻もの長編が書けそうな気がしてくる、読後感です。

  • どの短編も場所の描写が緻密で
    すぐに頭に思い浮かぶ。
    でも、話にオチがあるわけではなく、
    何か事件が起きるわけでもない。
    日々を描写してみると、こんなもんかもね…
    と思わせる、不思議な短編集。
    ここまで共感を拒絶する文体も
    めずらしいのかも…

  • たまたま会社や自宅を整理していて、50年も前の書類が出土してはびっくり!な時期にこの本を読んだのも何かの偶然か。
    時間も場所もするする移動しながら紡がれる物語。
    物忘れは激しいのに、過去のことならいくらでも語り続けられる88歳の義父も、この物語の中に住んでいそうな感じ。

  • 「小さな駅の近くの小さな家の前で、学校をさぼった中学生が三人、駅のほうを眺めていて、十年が経った」とか、「商店街のメニュー図解を並べた古びた喫茶店は、店主が学生時代に通ったジャズ喫茶を理想として開店し、三十年近く営業して閉店した」といった長~いタイトルがつけられた33の短~い物語。
    とても不思議な構成に読み始めてからしばらくは戸惑う。

    国も、地域も、時代も、年代も様々なそれらの物語は、たった3ページで100年が経っていたりする。時間は、場所にも人にも物にも平等に、容赦なく流れるが、そこにあるのはどれもがありふれた日常。一つ一つの話を読み終わっても、「それがどうした?」と言いたくなるような話ばかりだけど、読み進めるにつれて全体として描き出されてくるのは「人間の営み」そのもの。
    学校をさぼった中学生、路地に座り続けた老人、バブルに負けず営業を続けた「未来軒」の店主、30年営業したジャズ喫茶を閉店した店主・・・み~んな愛しく感じてしまう不思議な作品でした。

  • 様々な人々の人生がたんたんと少しずつ語られる、不思議な短編集。
    哀愁、郷愁、青春。
    少ししかわからない人たちのことが、なんだか少し
    うれしかったり、切なかったり。
    柴崎さんの文章は、すっ としていて気持ちが
    いい。

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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