東京の生活史 (単行本)

制作 : 岸 政彦 
  • 筑摩書房
3.87
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本棚登録 : 1208
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (1216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480816832

作品紹介・あらすじ

150人が語り、150人が聞いた、東京の人生。
いまを生きるひとびとの膨大な語りを一冊に収録した、かつてないスケールで編まれたインタビュー集。

……人生とは、あるいは生活史とは、要するにそれはそのつどの行為選択の連鎖である。そのつどその場所で私たちは、なんとかしてより良く生きようと、懸命になって選択を続ける。ひとつの行為は次の行為を生み、ひとつの選択は次の選択に結びついていく。こうしてひとつの、必然としか言いようのない、「人生」というものが連なっていくのだ。
(……)
そしてまた、都市というもの自体も、偶然と必然のあいだで存在している。たったいまちょうどここで出会い、すれ違い、行き交う人びとは、おたがい何の関係もない。その出会いには必然性もなく、意味もない。私たちはこの街に、ただの偶然で、一時的に集まっているにすぎない。しかしその一人ひとりが居ることには意味があり、必然性がある。ひとつの電車の車両の、ひとつのシートに隣り合うということには何の意味もないが、しかしその一人ひとりは、どこから来てどこへ行くのか、すべてに理由があり、動機があり、そして目的がある。いまこの瞬間のこの場所に居合わせるということの、無意味な偶然と、固有の必然。確率と秩序。
本書もまた、このようにして完成した。たまたま集まった聞き手の方が、たまたまひとりの知り合いに声をかけ、その生活史を聞く。それを持ち寄って、一冊の本にする。ここに並んでいるのは、ただの偶然で集められた、それぞれに必然的な語りだ。
だからこの本は、都市を、あるいは東京を、遂行的に再現する作品である。本書の成り立ち自体が、東京の成り立ちを再現しているのである。それは東京の「代表」でもなければ「縮図」でもない。それは、東京のあらゆる人びとの交わりと集まりを縮小コピーした模型ではないのだ。ただ本書は、偶然と必然によって集められた語りが並んでいる。そして、その、偶然と必然によって人びとが隣り合っている、ということそのものが、「東京」を再現しているのである。
(岸政彦「偶然と必然のあいだで」より抜粋)

感想・レビュー・書評

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  • 150人のロングインタビューで「誰も最後まで読み通せない本」を作る | 文春オンライン
    https://bunshun.jp/articles/-/40057

    「東京の生活史」プロジェクト 岸政彦さん監修、東京暮らし経験者150人の人生をきく|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13692926

    筑摩書房 岸政彦監修 『東京の生活史』プロジェクト
    https://www.chikumashobo.co.jp/special/tokyo_project/

    東京の生活史 岸 政彦(編集) - 筑摩書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480816832

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ◆多様な生語る150人の肉声 [評]重里徹也(聖徳大教授・文芸評論家)
      東京の生活史 岸政彦編 :東京新聞 TOKYO Web
      https:...
      ◆多様な生語る150人の肉声 [評]重里徹也(聖徳大教授・文芸評論家)
      東京の生活史 岸政彦編 :東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/141234?rct=shohyo
      2021/11/11
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      岸政彦さん監修『大阪の生活史』 | 筑摩書房
      https://www.chikumashobo.co.jp/special/osaka_pr...
      岸政彦さん監修『大阪の生活史』 | 筑摩書房
      https://www.chikumashobo.co.jp/special/osaka_project/
      2022/11/13
  • 買ってしまった。予想以上に分厚い。
    毎日眠る前に少しずつ読んでる。

    東京に暮らす人たちがどのようにして地方から東京に流れ着いたのか。
    あるいは、どうやって東京で生まれ育ったのか。
    チャンスあらば人からその話を聞かせてもらうのがほんとうに好きで、だから自分にとっては安い買い物だ。

    読み進めるのがもったいないくらい。
    本の中身が定期的にアップデートされないかな、と勝手なことを考えている。

  • 150人の人が、その人と何らかのかかわりのある人に、人生についてインタビューした記録集。2段組1,200ページのボリュームで、読むのに1年近くかかった。
    聞き手、語り手の年齢やバックグラウンド、関係性もわからないので、いつのこと、何のことを語っているのかわかりにくいところもあるが、祖母の子どもの頃だったり、同僚の知り合う前の話しだったり、同級生の卒業してからの経験だったり、読み進めるうちに少しずつわかってくる。病気、犯罪、ビジネス的成功や失敗、離婚、貧困、戦争体験、政治、人との出会いや別れなど、話の内容は極めて雑多であり、普通に暮らしている一人一人の人生があまりにも異なること、どんな体験をしてきたにせよどれも大切なものであることに、いまさらながら気付かされた。
    喫茶店かどこかで隣で話している2人の会話に思わず聞き耳を立てるような読書体験だった。

  • 家、ついて行ってイイですか?みたいな本。

    1,200ページあり、二段書きなので読み応え十分。

    書き出しを読んで斜め読みで終わらせるストーリーと、じっくり読んじゃうストーリーと、色々あった。

    太平洋戦争を挟んだ話や、在日、LGBT、風俗、生活保護、どら息子、男女雇用機会均等法、バブル、東日本大震災、、、
    色々あって、今がある。

    なんとなく道ですれ違った人にも、こんなストーリーがあるのかな??

    自分の人生は幸せなんだろうか??

    など、色々考えさせられる本。

  • 少しずつ読んで、読み終わってしまった。
    今年を生き抜くために買ったけど持ち運べないから部屋に爆弾抱えてる感覚だった
    大学生のうちに読めてよかった
    大阪の生活史も楽しみです 社会人になるからもっともっと時間はかかるだろうけど

  • 図書館で借りた。タイトルに惹かれて、予約殺到していたが、その行列に並んだ形。
    めっちゃ分厚くて重い本。辞書みたい。
    いきなりインタビューが前触れ無くはじまり、それが1000ページを超える。インタビューの対象がどんな人の説明はなく、あくまで会話の中に情報がある。
    読み応えはすごくある。監獄の中で読むならこんな本が楽しめるんだろうな、って思った。

    あとがきまで読んで、ようやく理解したが、最近twitterで募って「みなさんの東京の生活を教えてください」というインタビュー集らしい。
    タイトルから、私は「100年前明治時代の東京はどんな生活なんだろう」と思っていたが、上記背景なので、全く記載は無い。ギリギリ「戦争の記憶」があるくらいで、ほとんど現在のお話。"史"って要るかなぁ?

  • ※No.は便宜的にこちらでふりました。◆東京の縮図ではない、とあったけど、「東京にいる人、いた人、いたことのある人の話」(No.148)というテーマでつのったうちの150人の語り、人生。月並みだけど一読、嗚呼、人生って不公平。一族が築いた資産でガツガツ働かなくて生きていける人から、両親がいなくて養護施設に入れられて里親が引き取ってくれたと思ったら補助金で贅沢する目的で教育費生活費をほぼ渡さず抑圧してこきつかわれるだけみたいな人まで振れ幅大きく。これで全部「自己責任」とか「置かれた場所で咲きなさい」とか言われたら暴れたくなるわな。その環境を逍遥と受け入れる人から未だに納得いかなくて憤懣やるかたない人までさまざま。様々さを様々なまま、ただ読み、知り、受け入れ、といった読書体験でした。部分的に150人分の人生を追体験。読みやすさは千差万別だけど、おそらく編者の方針でだいぶ原型が残されてるのかと。ただ、ずっと「あははは(笑)」が連発されてる人の話は、内容に比して受け入れられ方で損してるなあと思った。◆一番理路整然とすっと入ってきたのは、話すプロだからなのか僧侶(No.30)。インプットがすべて法話というアウトプットに活かされ、固定的な自己なんてないみたいな東洋哲学の面白さを語り、生き方がそのまま教えに直結するシンプルさと怖さ(何かやらかすとお釈迦様の評価も下がっちゃう)、檀家制度が細る中でどう足場を固めていくか、みたいな話がおもしろく。◆一番ぶっとんでいたのは、No.112の、ADHDで苦しかったけど覚せい剤のおかげで生き延びられた、妻は抗うつ剤もい効かずに鬱で苦しんでいたが危険ドラッグのおかげで生き延びられた、という夫婦の話。いい薬効だけで悪い症状でてないんだ?それ話して大丈夫?今はどうなの?もっとヤバい話があるけどここでは語られてないってどういうこと?といくつもの疑問符重ねながら怒涛の語りに圧倒された他に以下の方、エピソードが印象に。◆◆◆◆◆ゴージャス松野のドキュメンタリーを撮った映像作家(No.10)◆芸大で声楽専攻を専攻し、BIGO LIVEて配信アプリなど駆使し、生計につなげていく話(No.28) ◆日本では中国人といわれ、アメリカでは中国人じゃない日本人だろといわれ、寄る辺なさを痛感した美術家のチョーヒカルさん(No.35)◆川崎市内のその街は庶民的、必要なもの全部ある、手ごろで便利なかんじを「その「ほろーん」っていう感じが好きだったんですよね」(No.39)と語った人。◆耳の聴こえない方の語る、"聞こえない人たちの世界って、その国々の小さくて密なコミュニティがある" "アメリカ手話やフランス手話など国によってもちがう" "「怒ることは大事だけど、怒ることは新しい分断を生むこともあるから、美しくないときもあるよ」ってことを教えてくれたシチリア島の人"(No.45)◆ジャズミュージシャンで、ドラムの先生が、「わかったんだったらいいよ。くだらないことをやってみて、くだらないってわかったらそれでいいんだ」と言ったというエピソード。(No.58)◆元八百屋でいまはビッグイシューを売る人(No.70)◆脳梗塞でマヒが残った人の話(No.73)◆インドネシア出身で、敬虔じゃないムスリムだけど、トンカツを食べた際に雷おちてこないかとそっと天をうかがった話(No,77)◆占領下沖縄に暮らした人が感じた、沖縄人は食べるのに事欠いても、アメリカ人は食べ物を捨ててた、金網のなかだけ豊かなのが見て取れて違和感を感じた、という語り(No.86)◆主婦から区議になった人の「政治家の仕事は区民の代表として政策を決めることだと思ってたんですけど、そうではなくて、行政が決めたことを正当化するための調整をしなきゃいけない。これではまるで行政の代理人じゃないかと感じました」(No.88)◆フランスだけど、グアドループ出身。クレオール文化で育ち、フランスで教育受け、フランス語で話し、カスレ食べたことないけど、ブフ・ブルニギョンがなにかも知ってる。日本人がいわゆるフランス的体験を求めて近寄ってきても、その人たちが想像するフランスを私は与えられないと語る、安積遊歩さんのカイロ会議のスピーチに感銘を受けて研究テーマを決めた車椅子に乗るイヴァンカ・ギヨームさん。(No.90)彼女の研究にとても興味がわく◆お客さんに探りを入れながら、お客さんと一緒にカクテルをつくっていくかんじ(No.96)◆気志團のフェスなどをてがけた人(No.106)◆社会学科の卒論、登川って炭鉱は、坑夫たちが「友子」(ともこ)というヨーロッパでいうギルドみたいな、技術伝承機能、共済機能、親分子分ていう人間関係の機能ももっている、て話。「一番思い出したくないことを人間は忘却って形で忘れる」(No.113)◆愛人宅に押しかけ、帰宅する夫を出迎えたら、ぎゃっといって裸足で逃げ出すから、旦那の背中に靴を投げて「靴ぐらい履けっ」て。そういうドラマ?がありました、という出版社勤務の編集者。(No.120)◆「土地や人種に根付いたものがある人が自分の国を悪者として見るのは、もう不可能に近いんじゃない?」「アメリカは隣りの人は取り締まらない。ガバメントにさえ引っかからなければ大丈夫。」「日本の場合、法律を守るより、文化と今までやってきたことを守るっていうほうが強いのかもしれない。」と語るフォトグラファー(No.108)◆活版印刷の文選工の話。貴重な、本当に貴重な(No.124)◆ほぼ一〇年、医学部浪人した医学生(No.134)◆伊豆七島出身者の、「島に住んでると、誰のせいにもできないことってたくさんあって。天候であったり、飛行機が欠航して上京できない、予定が予定通りいかないとか、台風で家が壊れちゃったりとか。(略)運命を受け入れましょうっていう、という語り(No.143)◆残留孤児向けの介護をはじめた方(No.145)◆アイヌ民族として。「なんで国立民族博物館で、アイヌのこと紹介しなきゃいけないんですか。消えそうだからですよね。なぜ消えそうになるのかを、伝えなきゃいけないですよね。」(No.150)

  • 岸政彦さんが監修ということで期待して、楽しく読んだ。まさか「海をあげる」の上間陽子さんの聞き書きまで載ってるなんて… 素晴らしい。

  • 東京に住んだ/住んでいる多種多様な人に、生い立ちから東京での過去と現在の生活について聞く。しかも話を聞く人/聞かれる人も一般の人である。150人の聞く人と聞かれる人、私を含める読者と似ている点があると、感情移入してしまう。地方から近郊から、そして生まれながらの東京住人は日本人の縮図であり、社会人・生活者のサンプルでもある。

  • 様々なバックグラウンドを持つ人々が、聞き手との会話から自身の歴史を振り返っていく。1人1人の回顧にかかるページは少ないものの、本当に多くの人々がインタビューされており、1200ページを超える大作となっている。自分と比較しても、ここまで多くの人が出てくると「良い/悪い」ではなく、「違う」ということが強く印象に残るが、ただ「違う」ということを感じられるのがこの本のよさなのかもしれない。
    自分の人生や方向性に悩む人や、将来に悩む高校生・大学生には自分自身への安心感と刺激を同時に与えてくれる本だと思う。
    個人的には、割腹や飛び降りなど自殺を図ってきた人が生きることをあきらめたくないと語ったことと、「大学はステータスではなくセーフティーネット」という言葉が印象に残った。また、自分が仮にインタビューを受けたら同じように話せるのだろうかとも心配に感じた。

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