近代ヤクザ肯定論: 山口組の90年

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480818287

作品紹介・あらすじ

史上最大のヤクザ組織、山口組の歴史と実態に迫る!神戸の沖仲仕の群れから生まれた小さな組が、4万人の巨大軍団へと変貌をとげた、その原動力とは。

感想・レビュー・書評

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  • 労作であり、傑作である。少々分析用語が古くても対象に近寄り、近代日本の変遷の中で、やくざという存在が如何に生起し、勃興し、そして衰亡していったのかを丹念に描く。社会に差別(けぢめ)がなくなり、あらゆる事柄がニュートラル(と見せかけた偽善)としてフラット化する中で、生息基盤と存在価値を失っていき、ならず者、やくざとしての振る舞いが空無化するというのが著者の論。堅気の小悪が一般化する中で、やくざの存立基盤が揺らぐという皮肉な命運を、これでもかと確めながら記す筆者の筆は矢張り哀惜のものだ。しかし、最後に展望される「ポスト」近代のやくざの姿は、なかなか興味深い。香港のならず者と尖閣諸島で一騎打ちせんとするような、やくざ者が現れれば…と思う。

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  • 「暴力団」ではなく「ヤクザ」のことが知りたくて購入。要領よく生きていくことができない人たちの共同体として、それなりに機能していたものがヤクザなのかなと。つまり、ヤクザ以外の何者にもなれない(わけはないと思うんだが)者たち+求心力のあるボス=組 という構図。言い方が難しいけど、まあ、古き良き時代ってやつですか。仁侠映画でも観てみようかな、という気になってきた。それにしても宮崎学の文章の読みづらいこと。膨大な知識の中から思うままに文字を連ねている感じで、ついていくのがたいへんです。いっそ誰かに聞き書きしてもらった方がいいんではないかな。

  • 深いなぁ・・・迂闊に書いたら消されちゃうかも知れない。でも『暴力団』はまごうことなき違法集団です。

  • 淡路島の漁師だった山口春吉が、日清・日露戦争後の工業化の進展、アジア貿易の拡大で急伸張する神戸に一旗あげるために出てきて人足部屋に入り港湾荷役の仕事に通いはじめ、彼を慕う人足たちをまとめて仲士の集団として山口組を興したのが1915年ごろ。下層労働者を統括し、下層・周縁社会とそのほかの世界との仲介者としての役割から出発したヤクザが、その基盤が消滅し、別種の集団・マフィアに変貌するまでの約90年の歴史を細かに書いている。●戦前  非熟練下層労働者を束ね、労働力供給業と芸能興行の2つの事業で組の財政を支えて成長していった。 ● 戦中  日雇い労働者の需給調整、就労統制も行政が行ったため、港湾における山口組の機能は一時中断。 全体としては、土建系の組は軍関係土木工事、港湾荷役系・運輸系の組は兵站、遊郭系は慰安施設、興行系は将兵慰問、廃品回収系は金属、繊維原料調達というふうに専門語とに特化して分業的に軍に協力。●終戦直後  祖国が解放された?第三国人?が、闇市を主要な舞台とし、一部武装集団化したのを取り締まるために警察がヤクザの武装を黙認するだけでなく、ヤクザ(特に山口組)の実力に頼った。ただ、民族的な対立というより個人の生存競争であり、その後対立していたはずの?第三国人?の先鋭分子が次々に日本人の組に加わってきた。韓録春、原田幸一など。在日愚連隊の取り込み。三代目田岡一雄襲名。46年株式会社山口組設立。(事業目的:土木建設請負業) ●  GHQは港湾運送業における前近代的な労働関係(親方・子方制)の解体を試みるが、港湾運送会社各社は闇で下請けを雇い、親方制の日雇い労働(アンコ)を活用するようになったので失敗。朝鮮戦争がはじまると、それに拍車がかかった。日雇いアンコの労働組合(神港労連)を指導したのが山口組。 ●  高度成長期の生産過程の合理化で内部請負制といわれるような労働組織がすたれ、経営組織が労働を一元的に支配できるようになると、臨時労働者をヤクザがプールして需要に応じて管理する必要がなくなり、それまでの山口組の役割は基本的には終焉した。土建業界などのトラブル処理による報酬、?守り料?により収入などに移行。企業社会の負のサービス業請負。民事介入暴力。 ●  日韓条約以後、強制送還の恐れが解消した在日ヤクザの組内での地位向上。●  暴対法→ヤクザのマフィア化促進。 暴対法違憲訴訟。 ● 全体として山口組はほかの組よりも常に国家権力からは距離を置いてきた。 

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著者プロフィール

写真家。1949年長野県生まれ。精密機械会社勤務を経て、1972年、プロ写真家として独立。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会賞年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。2013年IZU PHOTO MUSEUMにて「宮崎学 自然の鉛筆」展を開催。2016年パリ・カルティエ現代美術財団に招かれ、グループ展に参加。著書に『アニマルアイズ・動物の目で環境を見る』(全5巻)『カラスのお宅拝見!』『となりのツキノワグマ』『イマドキの野生動物』他多数。

「2021年 『【新装版】森の探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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