- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480818508
作品紹介・あらすじ
道路沿いにひっそりと佇むドライブイン。クルマ社会、外食産業の激変の荒波を受けながら、ドライバーたちに食事を提供し続けた人々の人生と思いに迫る傑作ルポ。
感想・レビュー・書評
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橋本さんが「マツコの知らない世界」に登場して、俄然興味を持って本書を紐解いた。橋本さんがドライブインに興味を持ったのは、10年前と最近だ。この間に200軒のドライブインを訪問し、記事を書くためには、印象深かった店を再訪し 、一日ゆっくりと顔を覚えてもらって、そこで記事化の許可をもらい、やっと後日足を運んで取材する。典型的なノンフィクション作家なのである。
よって、昭和回顧的な軽い読み物ではない。「マツコ」で指摘している通り、「ドライブインには家族の歴史が詰まっている」それは即ち、昭和の側面史にもなる。当然、ドライブインが作られる地域独自の背景(ハイウェイ時代、米国統治、瀬戸大橋時代等々)も詳しく調べられ描写される。また、「明日からやるぞ」と言われて夫について行く妻や、強かに生きる女の一生も描かれる。
私は当初、「平田食事センター」が出てくるのではないか、と期待していた。岡山県からは二軒も扱われているのに、2つとも既に閉店しているのに、数年前に閉店したこの超有名トラックドライブインが扱われないのは、おそらく何かの事情があるのだろう。出来たら、次回本では、その事情含めて扱って欲しい。最後の一カ月前の写真ならば、私は持っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
TBSラジオのアフター6ジャンクションで紹介されて興味を持ち、読んでみました。
各地のドライブインをめぐり、そのお店の方と交流した記録。ドライブイン自体がなくなっていく中での探訪だが、単になくなっていくというところだけでなく、地元に根付いたり、新たな特色を出したりと、様々な様子が伺える。
本の中でも語られるように、人の人生を聞くことにより、様々な物語が見えてくるのが、こない本の良さだと思う。インタビュアーもドライブインに来る人とも語らったりもしながら、適度な距離を持っているところがあり、それが良さに結びついていると思える。
本当に思った以上によかった本です。 -
合計3回はドライブインを訪れる。単なるガイドブックではなく、上質なルポルタージュ。店主の人生まで深く追った大作。
どこか懐かしさ、昭和の臭いを感じるドライブイン。高速道路の発展と観光バスから個人旅行への移行などにより、一般国道沿いのドライブインの多くは廃業。それでもなお全国各地に残るドライブインのルポルタージュ。
いきなり取材に入るのではなくぶらり訪れ、気に入ったドライブイン。2回目の訪問で打ち解けて初めて取材のアポを取りそしてあらためて取材に訪問するという。
ドライブインの数だけ経営する方々数世代のドラマがある。
本書に登場するドライブインいずれにも共通しているのは、景気変動の影響の大きな観光客だけでなく、多くのトラックドライバーや地元の常連客の存在。それによりかろうじて生き残る。
旅先での数多くの出会い。「鶴瓶の家族に乾杯」や最近なら「サンドのお風呂いただきます」のような、家族の歴史に踏み込んだ取材が見ものである。
チェーン店の増加、高速道の開通、経済効率最優先の今の世であるからこそ、人と人のつながりが重要であり、本書のようなルポに価値がある。
題名から写真中心のガイドブックをイメージしていたが、実に骨太な本格ルポであった。思いのほか大作。
数年後ちくま文庫のラインアップに加わることは間違いないだろう。それまでいくつの店が残っていることやら。 -
高度経済成長期に進んだ自動車の普及と道路の整備。それに合わせて全国各地にできた家族経営のドライブイン22店を丹念に取材した一冊。
意外にも、割と安易な発想と言うか、思いつきで始めた店が今も固定客をつかんで離さず、繁盛している例が少なくない。飲食業未経験の夫が突然ドライブイン経営を言い出し、妻が慌てて料理を習いに行ったり…そんな顛末を経て開業した店が人気をつかむ。ファミレス・チェーンの拡大で味やサービスの均一化が進む中、こんな思いつきで始まった店が今も繁盛しているのはなんだか痛快。 -
全国のドライブインを訪ねその歩みを聞き取りまとめたもの。戦後の生活史の一面を切り取っている。
ドライブインという視点はユニークだが、今は下火になっている各お店のこれまでを丁寧に追っているので、たしかに昭和時代の匂いや空気、その時の生活を感じ取ることができる。
前書きで少し取材方法について触れられているが、お店を営む人やそれまでの歴史に対する取材の姿勢がとても真摯で、興味本位での浅い取材でないことがよくわかる。そしてそれが内容にも表れているように思う。
装丁もテーマにぴったりなものになっており、手に取っただけでこの本の良さが伝わってきた。 -
とても丁寧に、敬意をもってインタビューされているのが文章から感じられます。所々に入った写真からは歴史と人生というか、時の流れが感じられて、とても不思議な一冊でした。
誰かの人生を少し体験したような。一つ一つがそれほど長くない文章なのに。なんでだろう。凄く読んで良かった。 -
人に歴史ありというか。どのドライブインも高度経済成長期の頃は儲かったんですねー。瀬戸大橋タワーの対岸にラレインボーというタワーがあった、というのにビックリ。冒頭の北海道のミッキーハウスドライブインは何回か通りかかりましたが、今はもうやっていないような。こういうお店は気になったら即行かないとダメですねー。
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これほど濃厚な探訪記に出会えることは
なかなかありません。
「ドライブイン探訪」は
「月刊ドライブイン」全12号をもとに
加筆・再構成されたものですが、
もとになった「月刊ドライブイン」は
なんと著者が自費出版された小冊子です。
それが単行本化されたくだりは
あとがきで書かれています。
「探訪」とは実際にその場所を訪れて、
実情を探って明らかにしていくことです。
そのタイトルのとおり
著者は取材場所を複数回訪ね、
過去の書籍などから時代背景も探り、
1本1本の探訪記が書かれています。
ただドライブインを経営する人たちの
お話を並べるだけではなく、
そこに時代背景を
しっかり調べ加えていくことで
より深みのある記事になっています。
取材した人々の言葉は
とても温かみが感じられ、
淡々とした著者の文章のなかにあることで
より語ってくれた人のぬくもりが
伝わってきます。
最近の本は字が大きめですが
「ドライブイン探訪」は字が小さく、
行間もつまっています。
正直、開きはじめは「うっ、読みにくい」と
思ってしまうかもしれません。
ですがまずはゆっくりと
最初の1本を読んでみてください。
一気に読むよりも
何日かかけてじっくり1本ずつ読む…
そんな読み方ができる稀有な本、
それが「ドライブイン探訪」です。
わたしは1冊読みきるのに
2週間かかりました。
でもこの本は、それでいいんです。
それがいいんです。
読みやすい本を速くたくさん読む、という
いまの時代の流れのなかで、
ふと足をとめてじっくり味わうことも
いいもんだよ、と教えてくれる本に
出会えることはなかなかありません。
過去から今へと
ゆっくりと流れている時間と
そのなかで生きる人たちの人生を
じっくり感じられるオススメの1冊です。 -
星5つじゃ足りない。。
写真集にしたらすばらしいだとろうと思ったけれども、次の瞬間に、作者の目的はそこではないと思いました。
写真は記録として都度撮っていらっしゃるようです。それで編めばかなりおもしろい写真集になるはず。
ですがこの作品は、かなり緻密なリサーチと事前の丁寧なコンタクトによって取材出来たものです。
ふれあいをつなぐ場所、道路と道路の隙間をつなぐ場所だったのだと感じました。それは、写真を見て想像してくださいとはまとめにくい。やはり、エッセイだからこその秀作なんだと思いました。
言葉による考証を見せることが命題なんだろうと思いました。
繁盛していた頃と今の時代の比較考察が素晴らしいです(自動車社会の変貌が如実です) 加えて、各エピソードの最期の1文も素晴らしいです(熱っぽくなく、穏やかな思慕の締めです)
今も営業を続ける人々の思いの中に、人と人とのふれあいに臆病ではなかった時代を残そうとする意志も感じました。
アートも本も、大事なのは、目の前に見えるものを飛び越えた、視覚化しない己の感受性の言語化、および認識だと気付かされました。
写真で作品をまとめるためには、何をおいても、言葉を使っての思案が必要だと思いますが、最終的には、言葉から離れることが必要だなあ。
ただ、この本と同じくらい、かなり緻密なリサーチと、事前の丁寧なコンタクトがあるのとないのとでは、何事も深みがかわる気がします。
感じたことだけでまとめるには、なんとなく~~な感じというふわふわした作品に終わってしまうような気がしました(自戒(´༎ຶོρ༎ຶོ`))
エッセイで写真作品のことを教えられたような気がしました。
思案は一方的ではなく、いろんなチャネルから押したり引いたりしてやったほうがよいのかもしれない。
著者プロフィール
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