ドライブイン探訪 (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房
4.50
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本棚登録 : 70
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480818508

作品紹介・あらすじ

道路沿いにひっそりと佇むドライブイン。クルマ社会、外食産業の激変の荒波を受けながら、ドライバーたちに食事を提供し続けた人々の人生と思いに迫る傑作ルポ。

感想・レビュー・書評

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  • ドライブイン1つを紐解いていくだけでこんなにも日本の文化の歴史が詰まっていたのかと内容の濃さに驚き。

  • 私の出身は札幌市だが、父親の実家が日本海沿いの田舎町であるということもあり、幼少の頃は自動車で3時間ほどかけて墓参りに行く習慣があった。当時、その道筋には何軒かのドライブインがあったと記憶している。その寂れた雰囲気とは裏腹に、日本海の新鮮な海産が食べれるドライブインは、一種の原体験として印象に残っている。

    本書は平成も終わる現代に消えつつあるドライブインを静かに訪問し、その成り立ちなどを丁寧に聞いて回ったルポルタージュである。登場するドライブインの多くは1960-70年代に創業された店が大多数を占める。それは、高度経済成長により道路インフラが投資され、国民にレジャーという娯楽が浸透した時期である。客数の減少に苦しみながらも地道に経営を続ける全国のドライブインの姿を通じて、我々はかつての日本社会の成長を辿ることができる。過度な物語性や装飾を排除しながら、ストーリーを紡ぐ著者の語り口も好意が持てる。

  • 高度経済成長、観光ブーム、『アメリカン・グラフィティ』、オートレストラン、『トラック野郎』、かつてあったはずの絢爛なリゾートの面影、津波や豪雨、戦争嫌いの軍事酒場……。
    「月刊ドライブイン」というリトルプレスをまとめたもので、登場するのはいずれもとっくにピークを過ぎたドライブイン。歴史と土地の要請を堅実にひも解きながら、何よりそこに携わる人々の語りに重きが置かれている。
    かつては賑わったドライブインも斜陽産業となり、そうなった今歳をとっても生業として続けていることがどういうことなのか。語り手に女性が多いことや、彼らの子供たちが跡を継がないことも無視できない。
    ここで紹介されるドライブインには著者は少なくとも三度訪れているそうで、その土地ごとの質感がリアリティを帯びている。交通の変化が残した光と陰。いま読んで良かったと心から思えた現代民俗学ルポ。

  • 昭和のドライブイン、廃墟のような所しか見たことがない
    が、様々な人々のドラマがあって、とても人情味溢れる話ばかり、昭和時代
    写真が少なく白黒で残念

  • 2019年2月読了。
    何というか非常に「味のある」一冊。
    交通事情やレジャー感の変化に伴う大きい国道のロードサイドにあるドライブインの栄枯盛衰を描いている。
    知識をひけらかしたり、正邪で誰かを論難したり、何かと他者に対して攻撃的になりがちな日常を送っていると、こんな一冊にもの凄く清涼感を覚える。
    チェーン系の、どこの地域でも同じ設えの店では味わえない雰囲気とその中の人の生活や、何故その場所でその業態の店を営むに至ったのかを、インタビューと資料を交えて描いている。
    そういえば自分も小さい頃こんな雰囲気の店に連れて行ってもらったよな、とか、その時の微妙な心の動き(自販機のトーストを食べてみたいなと思っていたけど買ってくれなかったなあ)とか、本書が紹介する店に行ったわけでもないのに何故か懐かしい感覚を覚えた。
    それにしてもこんなニッチな内容で300ページを超える内容、さらに全国各地のドライブインを紹介することから生まれるロードムービー感。スゴい本が出るものだなと感心してしまう。

  • 日本全国に点在するドライブインを巡りながら、著者は店主に店の成り立ちを淡々と聞いていく。かつて自動車、トラックが全国を駆け回っていたころのインフラとなっていたドライブインを巡ることで、日本戦後の一風景を確かなものとして書きとめた労作だ。

    著者はドライブインで家族経営する人々を、表現なしに、先入観なしに書き取っていく。というのも、「何より記録されるべきは、ドライブインという場所に流れてきた場所であり、店を営んできた方の人生」(p.311)なのだから。

    今や姿を次々と消していくドライブインの華やかなりし頃を、店主の記憶の通りに記していくこと。可能な限り無媒介に、けれども客観性を備えつつ、店主の記憶と人格に寄り添いつつも余分な解釈なしに言葉を記していくこと。これは誰にでもできる所作ではない。ことばに関わる暴力性から可能な限りの距離を取りながら、この本が目の前にある。

    結果として著者は、戦後に自らの持分の限りで生き抜いた人々の生、戦後昭和の活気と猥雑、そして平成に移り変わった後の何らかの残滓を示すことに成功している。むき出しの形で現れる戦後の断層が、まさに目の前で語られているのだとさえ思う。
    言ってしまえば、この本もまた、ありうべき戦後史の一偏差を示す本なのだ-けれどもこうした安易なラベリングについて何より自覚的に注意を続けているのも著者、橋本氏に他ならない。彼は戦後をしたたかに生き抜いてきた人々の、けれどもありきたりとも見える日常がここで営まれていることを忘れない。戦後から現在までの持続。『ドライブイン探訪』という著作が全体を通じて浮き彫りにしているのは、まさにこうした事態全体そのものなのだ。

    きっと日本の戦後史はあらゆる切り口で今後も示され続けるだろう-私たちにとっても、そして若い書き手たち当人にとっても。平成最後に読むに相応しい一冊だった。

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著者プロフィール

橋本 倫史(はしもと ともふみ)
1982年東広島市生まれのライター。『TV Bros.』『QuickJapan』『en-taxi』などで執筆・構成・インタビューを務める。
リトルプレス編集発行人として、多くの刊行物を発行。日本全国のドライブインを取材するルポ『月刊ドライブイン』が各所で話題になる。また、演劇団体「マームとジプシー」の密着取材ルポを多数刊行しており、『イタリア再訪日記』はピース・又吉直樹の推薦書としても話題になった。ほか、『HB』『hb paper』『cocoon no koe cocoon no oto』『手紙』など多くのリトルプレス・ドキュメントを発行。
2019年1月、『月刊ドライブイン』を単行本化した『ドライブイン探訪』を単行本で刊行。

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