RPGのつくりかた 橋野桂と『メタファー:リファンタジオ』 (単行本)

  • 筑摩書房 (2025年2月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784480818614

作品紹介・あらすじ

JRPGを牽引する、アトラスのゲームクリエイター橋野桂。最新作であり集大成となる『メタファー』開発の軌跡が、この1冊に。

キャラクター、シナリオ、バトル、日常、UI担当者の証言や、貴重資料を多数収録。ものづくりに関わるすべてのひとに贈る、傑作ノンフィクション。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

ゲーム開発の裏側を深く知ることができるこの書籍は、最新作『メタファー』の制作過程を時系列で追いながら、クリエイターたちの視点からその魅力を明らかにします。インタビュー形式で構成されており、開発チームが...

感想・レビュー・書評

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  • 8月最後の読了本。

    おまえはどこのゲームが好きかと問われたら、私は真っ先に「ATLUS」と答えるだろう。ゲーム歴も大概長くなったが、ここのゲームが出るとなると、胸が躍る。

    その「ATLUS」のゲーム開発者、橋野桂氏のインタビューを、あの筑摩書房が出したという。読まずにいられるわけもない。「メタファー・リファンタジオ」というゲームの開発中に、さやわか氏がインタビューを敢行し、それをまとめたものである。

    「ATLUS」って何作ってるの?と聞かれたら、「真・女神転生」であり、「ペルソナ」シリーズであり、「十三機兵防衛圏」とお答えしたら、会社名はピンとこなくても、あれか!と合点してくださる方は、いっぱいいらっしゃると思う。

    「メタファー・リファンタジオ」は、2024年の10月に、既に発売されている。私はちょうど大学の卒業研究の提出一ヶ月前で、ゲームをプレイする余裕は微塵もなく、これを仕上げたら、絶対に買ってプレイする!と決めていた。

    で、実際にはまだ、これと、前後して出た、同社の「ユニコーン・オーバーロード」を自分に対してお預けを食わせて、この4月から9月までを過ごした。

    ぼんやりしていたかった。濃密なものに触れたいのに、学究と、もう一つ、何か…何がしたいのか、敢えてぼうっとして、ゴトゴト自分の中で動き出すのを待ちたくて。

    この本のことを知って、そして、ぼうっとするのも大概飽きて、独りに慣れすぎて……ついに自分の背中を、蹴り飛ばした。

    読む前から、「今だ」と思い、他の本も手につかず、ずっと自分の頭に、何か空想でも、渇望でも、焦りでも。
    湧かせるのに任せ、行動し始めて。

    引き寄せられるように、この本がやってきた。

    で、本を眼の前にして、驚いた。分厚い。
    インタビュー形式であるから、さらりと読めると思ったら大間違い。読みでがあって、ゲームのプログラミング等について素人の私でも、グイグイと読ませる。

    私自身が、創作でモノを書くことに、楽しくも苦しく、変な立ち止まり方をしていたので、一流のクリエイターさんが、何を感じ、何を大事にして、例えば「ペルソナ5」を作ったのか。

    全く毛色の違う、「メタファー・リファンタジオ」を、ATLASでないと作れない、王道のRPGとして、世に問うたのか。…しかも、ATLASにしかないエッジをきっちり残して…。

    知りたかった。自分の血肉にしたかった。
    そして、ひとりのゲームプレイヤーとしても、喉から手が出るほど、その魅力を掴みたかった。

    驚いたことに、本作のテーマは「選挙」が一つの柱であるという。ハイティーンから、大人、ミドルエイジまでが幅広くATLASのファンである。何なら、更に上のプレイヤーだっている。

    だが、メインはやはり高校から青年層であろうと予想する。そのターゲット層に対し、「選挙」をドラマの柱にして、どう面白さを担保するのか?

    このようなテーマを出すのは、結構難しい。

    お説教じゃなく、政治的偏向や、妙な色もなく、どう制作するのか。誤解を恐れずに言うが、ゲームは、一つの「経験」である。まして、薄っぺらい読み捨ての時間泥棒でもない。

    善いものも、優しさも、葛藤も、泥臭さも。
    いろいろなものが詰まっている。

    逃避と暴力と軽薄さを是とするものでは、ないのだ、

    ATLASのゲームだけではないが、良作には、作品を裏付けるための知性と、作り手の熱がこもっている。

    「選挙」という、おおよそゲームになじまないものを、持ってきてもいいのか!という新鮮な驚きがあった。

    茶化すような意図で組み込まれた要素では、決してない。

    橋野氏はくり返し言う。

    「作品中に現れる、すべての物事、世界の細部に至るまで、「きちんと筋が通っていなくてはならない」と。

    よくわからないけれども、(RPGの既知感としてこんな感じだから、ないしは、ヒットした前作でこんな感じでウケたから)これでいいんじゃないか、というのは、ダメなのだと。

    きちんと作品世界の理に則って、登場人物がリアリティを持って動けるか。

    もう一つの作品の柱である「旅」を、プレイヤーがどう楽しんで体験し、没入感を持てるか。

    そして、現実に立ち戻った時に、この作品から「何かを変えるちからやエネルギー」を感じてくれるか…。

    を、ずっと追求している。そんな様が見て取れた。

    あ、すごい。これ、イラストでも小説でも、ゲームでも。みんなそうなんだ……。

    多くのスタッフが、同じ目標に対し、それぞれの専門分野において技能と知恵を尽くして、働く様子も伝わって、
    いやが上にもプレイしたい気持ちは募る。

    プレイヤーに如何に楽しく、格好良く、しかしながら同時に、葛藤もし、気持ちを動かしてもらうのか。

    誰もが目指すだろう。それぞれの解。

    字書きの端くれとしての私は、やはり大きなヒントも得た。

    まず、ジャンプの編集長から、橋野氏が聞いた言葉。

    「いいキャラクターは、いい物語である」

    『ロードス島戦記』の作者、水野良氏から聞いたという

    「(メッセージは)一切考えていないし、キャラが居れば、いいと思ってる。キャラをつくって、声に耳を傾けて、こいつがもっと暴れたいと思えば暴れさせる」

    という言葉。

    そして、このゲームのスタッフがインタビューで発した

    「プレイヤーが、「死ぬかも」と思ってて、殺されないのが一番なんですよ。」

    ……私達は、物語の説明が読みたいんじゃない。

    心の動きと、その思いの発する熱量を読みたいのだ。

    ゲームも文字も、方法は関係ないんだ。

    霧が晴れたように、肩が軽くなった。

    そして、未プレイのATLAS作品、2つの体験版をダウンロード。矢も盾もたまらずオープニングを見たくなる。

    本は最終部が途中だった。すごい勢いで読み、とにかく遊ぶ時に集中できるように、したかった。

    早くやってみたい!!!!

    転がるように猛暑の中、図書館に本を返しに行った。

    つい、クレープ屋さんの美味に負けて、ふわふわの生クリームと香ばしい焼き立ての皮を食べながら、思った。

    自分の書くもの。その続きも、書けそうだな。

    頭の中では、登場人物たちのおしゃべりが、急に賑やかになった。

    早く、書こう。

    夕方の残暑の空は、それでも明るく、光に溢れていた。

    今日までは、夏。そうだよね。

  • アトラスが手掛けた名作ファンタジー『メタファー』の制作秘話。いわゆるインタビュー集に近いかな。

    『ペルソナ』シリーズ自体が割とRPGとして完成されているので、『メタファー』を作り上げるうえで何を捨てて何を引き継ぐのかって部分が面白かったかな。
    特にプレイしていて違和感はなかったんだけど、確かに今までの学園ジュブナイルから純ファンタジーに移行する上で世界観ってのは構成しなくちゃならない。貨幣とか言語とか建物とかね。
    現実とは違ってファンタジーとはその背景すら曖昧だからこそ一つの世界観を不整合なく作り上げることが難しい。ここらへんは言われるまで気付かなかったなぁ。今までプレイしてきた作品がいかに作り込まれていたか、というか…。

    あと『メタファー』をプレイしたあとに「旅」という感想は僕の中で出てこなかったけど、言われると確かに。今作のテーマは「旅」なのか。

  • 珍しく小説じゃないものを読んでみました。
    昨年プレイしたゲーム「メタファー」が製作されるさまが時系列でいろいろ語られる。とても、非常に興味深かったです。何気なくプレイしてるゲームもこうやって作られてるんだなあ・・・と月並みな感想。プレイしてる側はなかなかに気づかない細かなこだわりや調整。こういうのは橋野桂さん独自のものなのか?それともゲームを制作する人共通のものなのか?他の人の「つくりかた」も見てみたいです。
    いやもうホントに「大変そうだなあ・・・」の連続。それでも泣き言いわずに・・・まあインタビューだから言ってないだけかもしれませんが、必死に取り組む姿は読んでいて心に響くものがあります。それだけに「大変そうな姿」だけじゃなくて、完成して、あるいはその後受賞とかして努力が報われる喜んでいる姿もちょっとみたかった。

  • ゲーム開発の流れがインタビューからわかる。
    インタビュー形式というのも素晴らしい。
    客観的な時系列や質問でドキュメントといった印象。

    個々の機能開発というよりは、
    プロデュース、プロジェクトマネージメントの視点で
    個人的には教科書にすべきと思うくらい、素晴らしい本。

    広く売るために最初からプロモーションの視点があり、
    コストコントロールするために開発の進捗にとても敏感になり、
    そして遊びやすさのために徹底的にUIや機能をフレンドリーにしている。

    この本をやる前にメタファーは少し遊んでいて、
    とても遊びやすくしている印象だったが、
    本当にそう意図して作っていたんだと感動した。

    ゲーム開発に携わる人はコンソール、ライブサービス問わず
    おすすめしたい。

  • 背ラベル:798.5-サ

  • 『メタファーリファンタジオ』こと『PROJECT:Re FANTASY』が動き出して完成するまでの軌跡を追うノンフィクション。好きなゲームがどうやって生まれたのか、半年〜1年ごとに追っていく話が読める夢のような本。今まで現代劇を作ってきたチームが考える「ファンタジーとは何か」。そして『ペルソナシリーズ』との開発の違いが面白い。アクションゲームが主流となってきている今、JRPGの存在感をさらに強めた今作で考える「JRPG3.0」も興味深い話だった。

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著者プロフィール

さやわか:1974年生まれ。文筆業。著作に、『世界を物語として生きるために』『僕たちのゲーム史』『文学の読み方』、漫画原作に『ヘルマンさんかく語りき』『永守くんが一途すぎて困る。』『キューティーミューティー』など多数。

「2025年 『RPGのつくりかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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