- Amazon.co.jp ・本 (658ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480830685
感想・レビュー・書評
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旧約聖書に記載されているヨセフ物語を「あまりにも短くもっと細部まで描きたくなる」と語ったゲーテの遺志を汲んで、二十世紀のドイツの文豪トーマス・マンが十六年もの歳月をかけてつむぎ上げた大作。『ブッデンブローク家の人びと』や『魔の山』に較べると知名度は低いものの、両作品に優るとも劣らない一大叙事詩的傑作である。
第一巻である本書には第一部「ヤコブ物語」と第二部「若いヨセフ」が収められている。ヨセフの弟ベニヤミンの誕生とともに母ラケルが死ぬまでの顛末を語った第一部の主役は父ヤコブであるが、本作においてヤコブが演じる役割の重要性を思えばこの前置きは決して長くはない。訳者の小塩はラケルの死の場面を訳しながら涙を流したと述懐している。
第二部以降の主役ヨセフは異母十二人兄弟の下から二番目であるが、愛妻ラケルの年寄り子として父ヤコブから溺愛されている。一番下の弟ベニヤミンもラケルの子でありヨセフと仲がいいが、ベニヤミンの出産によってラケルが死んだこともあり父ヤコブの感情は複雑である。一方腹違いの兄たちは、父から一人だけかわいがられているヨセフのことが面白くない。そんな中、悪いタイミングも重なって、十人兄弟はヨセフを半殺しにし古井戸の中に捨ててしまう。
確かに長い作品ではある。そして高い価格。手を伸ばすには勇気が要る。しかしマンが作中で独白しているように、時間は必ず空間を征服する。とにかく面白い。読むのが楽しい。望月市恵・小塩節の師弟コンビによる、二世代にわたる翻訳苦労話は最終巻に詳しいが、襟を正して読まずにはいられない不朽の労作である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
朝の礼拝で紹介された本です。
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