彷徨う日々

制作 : Steve Erickson  越川 芳明 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 71
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480831736

感想・レビュー・書評

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  • なんて奇妙な物語なんだろう。
    自分は『ゼロヴィル』のあとにこれを読んだのだけれど、「サールの『マラーの死』」とだけ登場する映画がこれだけの物語を孕んでいたなんて、正に〈虚実〉のゆらぎを感じずにはいられない。D.W.グリフィス『国民の創生』がひとつのキーになっているところや、アドルフ・サールの「狂気じみた出し抜けの併置法」による編集術など、『ゼロヴィル』のヴィカーに共通するところも多くみられる。そういう意味では『ゼロヴィル』は“サール・サーガ”の一変種だと捉えることもできる。

    双子、吃音、親に先立って死ぬ子どもたち。奇妙な一致が具体的な意味を持たぬまま語られていく術は正に「狂気じみた出し抜けの併置法」によって編まれている。

    ゼロヴィルに比べると想像を超えすぎて頭のなかで映像化できないシーンもたくさんあったが、それこそが文学の歓びなのかもしれない。ミシェルとローレンが砂嵐の中愛し合うシーンはなんとなくカラックスの「ポーラX」を思い出したりした。

  • 文章が濃くて楽しい。大筋は、傷ついた女と記憶喪失の男とねじれを抱えた男の奇妙な三角関係、という印象。お昼のドラマ並にメロウなのが気にならないくらい文章が美しかった。そして、切ない。

    ロサンゼルスーパリーヴェニス、めくるめく幻想シーンに次ぐ幻想シーンに、次は何を見せてくれるんだろうとワクワクする。くらくら、ドキドキもする。低いのか高いのか分からない温度、モノトーンを思わせるけど光や音を感じたり溢れた言葉で満たされていくような世界に酔う。シラフに戻ると、ベルベル族の奴隷みたいにあなたに仕えたい。には、え?ってなったけど、そこかしこに驚きがあるし、おそらく作者の感性なんだろうなと思う部分に引き込まれるというか。陶然たる余韻。

  • 現実世界の物語のように始まりながら、突然堪え切れないように幻想があふれ出すのが独特で面白い。キーアイテムとして映画が出てくるけど、この本自体もとても映像的で、脳内再生しながら読む。というか、こちらの想像力を試されるような感覚がある。

    冒頭は羊男世界にいるような無音幻想系で、あの「世界に僕たち二人きり感」はなかなかよい。あれじゃあ恋に落ちるしかないだろう、と納得していたのだけれど、途中から女の人の描写にもやもや。男性側の切実さとか飢えはすごく伝わってくるんだけど、女性側は人物も状況もとっても都合のいい設定なのだ。

    ミシェルって、最初も再会時も、ローレンがすっごく弱っているときに目の前にいたってだけみたいで... その後もローレンに対して必死なのはわかるんだけれど、彼女が幸せになれるような行動を能動的に取る能力はない。むしろ記憶喪失でフラフラしているところが愛され理由という。そういう男に「そのままのあなたがいいの」って、そんな都合のいい展開あるかー。

    ミシェルが、自己評価がとても低くて女性の内面を推し量る能力に欠けている人物という設定なのか、エリクソンもミシェル視点で妄想を爆発させているのか、どちらなんだろう、といぶかしんでいたのだけれど、エンディングからするに、ぜんぶエリクソンの欲望に基づく妄想ドラマってことでいいですね、という気持ちになった。性交の一方通行な感じ(お互いが見えない体位とか、合意の元のはずなのに「凌辱」という言葉が使われるとか)に、ごく個人的な男のファンタジーなんだな、と。

    それならそれでいいです。鮮やかなたくさんの幻想シーンは本当に楽しめた。パリからの電車のシーンが特にすてきだった。

  • 2011/3/27購入

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著者プロフィール

1950年、米国カリフォルニア州生まれ。作家。『彷徨う日々』『ルビコン・ビーチ』『黒い時計の旅』『リープ・イヤー』『Xのアーチ』『アムニジアスコープ』『真夜中に海がやってきた』『エクスタシーの湖』『きみを夢みて』などの邦訳があり、数多の愛読者から熱狂的な支持を受けている。大学で映画論を修め、『LAウィークリー』や『ロサンゼルス・マガジン』で映画評を担当し、映画との関わりは長くて深い。本作は俳優のジェームズ・フランコの監督・主演で映画化が進行している。

「2016年 『ゼロヴィル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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