彼女の名前は (単行本)

  • 筑摩書房
3.95
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本棚登録 : 739
感想 : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480832153

作品紹介・あらすじ

韓国で130万部、映画化された『82年生まれ、キム・ジヨン』著者の次作短編集。「次の人」のために立ち上がる女性たち。解説=成川彩 帯文=伊藤詩織、王谷晶

感想・レビュー・書評

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  • もともとは2017年の1年間、京郷新聞に連載された記事だったが、ノンフィクションの色合いの強いそれらの掌編を小説に再構成したそうだ。

    実際に訳者あとがきで、元の記事と小説の同じ部分が比較されているが、小説の方がグッと言葉や情景が読者に迫ってくる。

    一番最初の短編が、セクシャルハラスメントを訴えた女性の話でとても重い内容だが、それは作者がこの本が直視するのが辛いほどの現実が目の前に広がる本なのだ、ということを伝えたかったからだという。

    しかし、韓国でこの本が出版された2018年を境に、当地ではMe,too運動が盛んになり、女性の地位向上が促進された。だから、現在の韓国の状況とこの本に出てくる状況は少しタイムラグを感じさせるものかもしれない。

    「82年生まれキムジヨン」がベストセラーとなった日本でも、同じような苛立ちや不条理を抱えている女性は多いだろうが、Me,too運動は国民に広がることはなく、部分的なもので終わった。
    それはこの本を読むと感じることだが、家長制度や、世代間の価値観の違い、ソウル周辺の驚くほどの地価高騰…などのようなことが日本では、あからさまな社会問題となっていないこと…多くの人にとってなんとなくやり過ごせてしまう程度のものであるか、若しくは、被害者となっている人は声を上げることもできないほど疲弊しているか、孤独であるかなのだと思う。

    お隣の国のジェンダーギャップに激する声たちに、私たちは声なく肯首するだけなのだろうか…と思っていたが、最近はコロナの影響でネット署名などが盛んになり、少しずつ動いているのかな…と感じられる。

    2021.5.15

  • 韓国のベストセラー作家による注目の新刊! 現代社会の不条理と闘う女性たちの「強さ」に励まされる短編小説集『彼女の名前は』(2020/11/03 17:00)|サイゾーウーマン
    https://www.cyzowoman.com/2020/11/post_310164_1.html

    「次の人」のために。28編の希望 対談=小山内園子×すんみ
    読書人WEB
    https://dokushojin.com/reading.html?id=7714

    筑摩書房 彼女の名前は / チョ ナムジュ 著, 小山内 園子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480832153/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ニュースの主体だった女性たちを忘れまい 作家チョ・ナムジュさん:朝日新聞GLOBE+
      https://globe.asahi.com/art...
      ニュースの主体だった女性たちを忘れまい 作家チョ・ナムジュさん:朝日新聞GLOBE+
      https://globe.asahi.com/article/13831117
      2021/07/28
  • 友人からお借りしました。
    ありがとう!
     
    82年生まれキムジオン からの流れで。
    実際の声を聴く。

  • 韓国の女性一人当たりの出産数が0.8人でOECD諸国で最低値だと報道されていた。新聞では主な要因は教育熱の高まりから子育てにお金がかかることだと書いていたけれど、最近立て続けに韓国の本を読んだせいか、背景にはフェミニズム運動の高まりがあるのではないかと私には感じられた。そういう数値出るよなあと、小説の世界と実際の韓国がピッタリ一致したニュースだった。

    この本は「82年生まれキムジオン」の作者が、その後に出した本。同作でジオン氏は声を上げず内に内にとストレスを溜め込んでしまうが、こちらに出てくる女性はもっと強くてたくましい。

    正直、ボロボロになりながら戦い続ける女性たちの姿は痛々しくて、面白いのだけど気が重くなる本でもある。戦う相手も、男尊女卑を強いる親世代や配偶者だけではない。セクハラを隠蔽しようとする会社や、掃除人や給食のおばさん、鉄道の乗務員といった非正規の女性社員の立場を軽視する会社であったり、さらには当時の朴政権であったりする。その中で、高校生、大学生から社会人までそれぞれがそれぞれの想いを抱いてデモやストライキに参加する姿に、韓国社会の中のうねりの波を感じる。

    2016年に出された「キムジオン」を読んだ時は、男尊女卑文化、儒教文化がなんだか凄まじく、「日本も、ここまで口や態度に出さないけどこういう文化残ってるなあ」という感じだったのだが、それから少し進んだこの本の中の韓国社会は、社会運動のうねりという点であっという間に日本を追い越している。そして日本よりも出生数が少ないことが韓国人女性たちの強い抵抗と主張に感じられ、納得するのである。

  • “私だってそうだったんだよ。あたしたちの頃はもっとひどかったんだから。そんなことを言う先輩にはなるまいと、心に誓った。でもそれだけでは足りない。言ってはいけないことを言わない人で終わらず、言うべきことを言える人にならなければ。”(p.25)


    “娘であることが一体なんの関係があるのかと訊きたかった。でも訊かなかった。思いを晴らすべくとうとうと語り、切々と事情を打ち明け、私の許しを乞うチャンスを母に与えたくなかった。私は娘だ。だから、なんなのか。”(p.54)


    “「私は家事してないとでも思ってるの? あんたのすることになんか文句言った? 私がするのが当たり前で、あんたがすると何かすごい思いやりになるわけ?」”(p.67)


    “「空気を読まないでいられるのだって権力だよ」”(p.75)


    “もともと少ないおこづかいなのに、節約して節約してナプキンを買うたんびに、子宮なんか引っこ抜いてしまいたくなります。”(p.200)

  • ストライキをする理由が「あとであなたたちが、おばさんみたいに生きてほしくないから」であるように、
    自分の代で叶わなくても、後ろに続く人達に少しでも良いバトンを繋ぎたいって意思を一人一人から強く感じた。
    きっと他人からは平凡に見える人も多いのだろうけど、各々が抱えてる血の滲むような悔しさや怒り、後悔、疲労、そのほか色んなものを知ってしまったら、とても平凡とは思えない。

    社会が変わるかも、って期待じゃなくて、絶対に変えてやるという意地。
    そのパワーを分け与えてもらった心地がした。

  • 世代も立場も違う女性たちの、ごく短く綴られた物語たち。彼女たちの日常を、つぶやきを、思いをそっと掬い上げるような。一人一人の物語なのに、読み進むうち、韓国に限らない、女性の置かれている場所を俯瞰してみているような思いになる。そして、うねるような、韓国の姿が見える気がする。

  • 韓国と日本は、似ていないようで似ているし、似ているようで似ていない。
    キム・ジョンさんもそうだったが、この本で語りを披露しているたくさんの韓国の女性たちと日本の自分との絶妙な距離感が心地よい。そして日本と微妙に違う環境で立ち上がる彼女たちに勇気をもらう。女性なら読んで損はない。

  • この本に出てくる女性たちの物語を読んで、いかに自分が恵まれた環境にいるかが身に沁みた。現代の日本より韓国の方が遅れているというか生きていくのに厳しい社会なんだなと思った。読むと苦しい。苦しいけど目を背けてはいけない現実・ストーリーがここにある。

  • 「82年」で大感動したのでこちらも読んだ。女性の生き辛さは世界共通だろうが、韓国と日本はとても近い。世界的に女性の地位が低い東アジアで文化的な共通点が多いからだろう。
    結婚して育児や家族問題に悩み、仕事でのセクハラに悩み、一生独身で生きていく不安を抱え、家族に恵まれるように見える祖母は孫の世話に忙殺され個人の時間がないと振り返る。ナプキンを買えない貧困があり、若者は恋愛結婚出産キャリアマイホーム全てを諦める。結婚してもしなくても、若くても年老いても。
    ただ印象的なのは、韓国の女性達は声を上げていること。若者はデモに参加し、働く人はストライキをする。辛さを諦めない。先日の大統領選の投票率は8割近い。何しろ作家は「キム・ジヨンは自分で声を上げない。(中略)認識しているだけではだめだと感じた。」そしてこの本を書いたという。
    無関心で保守化していると言われる日本の若者たちはどう思うのだろうか。本書を読んで「韓国より日本のほうがまし」という感想を持てるだろうか?ジェンダーギャップ指数では日本は韓国以下である。若くない自分は、「あたしたちの頃はもっとひどかったんだから。そういうことを言う先輩にはなるまいと、心に誓った」「あとであなたたちが、おばさんみたいに生きてほしくないからだよ」という側だ。

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著者プロフィール

1978年ソウル生まれ。2011年に作家デビュー。17年『82年生まれ、キム・ジヨン』で今日の作家賞を受賞。同書は韓国で130万部、日本語版が23万部を超えるベストセラーに。近著に『サハマンション』。

「2022年 『あなたのことが知りたくて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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