島暮らしの記録

  • 筑摩書房 (1999年7月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (172ページ) / ISBN・EAN: 9784480837059

作品紹介・あらすじ

ヤンソン作品の多くが生み出されたフィンランドの孤島での日々の暮らしを、親友トゥーリッキのイラストと共に描く。厳しくも悠々とした自然との豊かな対話。作者とその実母ハム、そして親友のトゥーリッキと猫のプシプシーナ。トーベあるいはムーミン物語の読者におなじみのそれぞれが、四方に水平線しかない小さな離れ孤島で、悠々とマイペースに、気ままな自然の魅力とともに暮らす。通算80年にわたる島暮らしのプロフェッショナルみずからが描く、作家の知られざる日常。

感想・レビュー・書評

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  • 私の感性が鈍いのか、本文よりもあとがきで理解度が高まりました

    トーベ、お母さんのハム、友達のトゥーリッキは3人とも芸術家
    島暮らしをした日々のエッセイ、生活記録です

    途中で写真があってイメージが湧きました
    島で暮らすなんて、すごく大変そうだけど、不自由さや不便さも楽しんで暮らしているのを感じました

    自然の凄さも感じました!

  • 冨原眞弓さんのあとがきが素晴らしい。
    トーべの人となりや、フィンランドの人々の気質を伝えてくれるお陰で、『島暮らしの記録』がさらに魅力を増している。
    島の写真が見れるのも嬉しい。家族アルバムから借りたという、猫のプシプシーナを抱く母親ハムの笑顔がいい。

    そしてトーべ達女性三人による島暮らしの、なんとも自由闊達なこと!
    嵐が来ても竜巻が通り過ぎても、大切なボートさえ陸に引き上げておけば、あとは楽しむべし。
    いたずらっ子が遊んでいるようで、一方で本当にかいがいしく働く。
    笑いとばしているけれど、夏とはいえども海に囲まれた小さな島で暮らしていくのは、なかなかにハード。労働を楽しめないと無理だよね。

    さらっとした日々の生活のエッセイの中に、幸福を噛み締めたくなる大切な瞬間、瞬間がある。
    思い出すだけでいつでも新鮮な気持ちに戻れる素晴らしい一日の記憶や悦びが詰まっていて、読んでいて嬉しくなった。


  • 私にとってムーミンシリーズは特別な作品だ。
    幼稚園の頃、朝起きて遅刻ぎりぎりまで観たアニメ。
    高校生か、大学生だか、10代の後半に読んだ講談社文庫の小説群。
    建造物や、海や、島や、冒険が好きな私の嗜好のすべてのポイントを押してくる万能感。
    そして知った、作者の風変わりな人となり。

    小説作品と、映像作品と
    世界観に、生き方、哲学。

    人生を通じて付き合える世界と、しかるべき人生のタイミングで出会えた幸運に、感謝を。

  • 北欧の多くの人は夏休みには海辺の別荘とか小屋で休暇を過ごすのだそうだ。今もこの習慣は残っているのだろうか?1960年代の作者の、島に小屋を建てるところから始まり、飽きて去るまでの島暮らしを綴ったエッセイ。島といっても大きさはほぼ暗礁といっていいくらいの岩のかたまりで、荒れた日には波がかぶるだろうくらいの大きさだ。しかも5月にも流氷のかけらが流れてくるくらいの北の海。なかなかにアドベンチャーな人だ。その上ありのままを綴った記録かといえばそうでもなく、一緒に島暮らしした友人からは「一度ぐらいはあんまり事実を曲げないでほしいのよ。暴風雨を秋の夜とやらに設定せずに、ありのままを書きなさい。」と言われるしまつ。ヤンソン油断できないな。
    海辺の暮らしいいね。昨年夏に海が見える部屋を借りて北海道でのダイビング・ガイド暮らしを始めた身にとっては「わかるわかる」ポイントがたくさんある。この筋金入りのマイペースさはお手本ですね。すごいね。

  • 1964年、フィンランド。トーベは恋人のトゥリッキと共に、岩礁でできた無人の小島に自分たちと母が暮らすための住まいを建てると決める。小屋ができあがるまでのてんやわんやの日々、島の先住民である海鳥たちとの闘い、荒々しい海とボートと漁、女三人と猫の生活をさらりと書き上げたエッセイ。


    画家であり作家のトーベ、グラフィックアーティストのトゥーティ(トゥリッキ)、挿絵画家だったトーベの母ハム。全員アーティストの女三人が、部屋の仕切りが一つもないほど小さな家で同居する。しかも外は無人の岩礁、屋根には騒音を立てる鷗の大群。それらをぐるっと取り囲む海。
    ちょっと気がおかしくなりそうではあるが、女二人が無人島に自分たちのための家を建てるというのがまずワクワク。ちなみに海面が凍る冬のあいだは基本的に街に戻るのだが、一回だけ冬に島を訪れた際の記憶もしるされている。海面の氷が溶けだすときってそんなに一瞬なんだ。
    小屋の建設過程を綴るトーベの筆致は簡素ながら、実作業を担った大工のブルンストレムの手記と並べられることで当時のはしゃいだ気持ちが伝わってくる。他にもさりげなくハムの手帳やトゥーティの荷造りメモなどが巧みにテクストに混ぜ込められ、実際には島を離れたあとに書かれた回想であるにもかかわらず、現在形かのようにみずみずしい語りで荒涼とした、けれど魅力的な島の暮らしが描きだされる。トゥーティが岩礁や海の風景を描いた挿絵と、ハムがファンタジックに描いた島の地図もすばらしい。この小さな本は三人の合作なのだ。
    トーベとトゥーティは91年まで島にいた。そのあいだに二人は話題もなくなり口数が減っていったが、「ふと考えた。島のそばを通りかかった人が、灯のともった窓を見て、島に上陸し、岩山を登り、ノックの前に窓から室内をのぞくのは非礼と知りつつ、ついのぞいてしまう。すると、二人の人間がランプのある机を挟んで向かいあい、言葉をかわす必要もなく、それぞれが自分の仕事に専念する、そんなのどかな情景を眼にするのだ」と、トーベは俯瞰で自分たちの幸せを噛み締める。
    海鳥たちの攻撃性や島のハマムギを根絶やしにした自分たちのおこないを振り返る語り口はユーモラスで、老いて島を離れるにいたってさえトーベとトゥーティは次に小屋を使う人のために遊びを仕込んでおく茶目っ気を忘れない。訳者あとがきに添付された写真を見ても、二人は島で遊ぶ夏休みの子どものように見える。
    30年近い日々を描くには短すぎるこの「記録」が、どこまでリアルでどこまでフィクションなのかはわからない。しかも作中、トゥーティが過去のトーベ作品の記述を修正してほしいと言い募る箇所があり、これを詳細に書き留めたトーベはこの本も嘘だらけだと舌をだしているようにも思える。
    でもそんなことはどうでもいい。二人が最後にあげた凧のように、ふわりと飛んでいこうとする記憶の糸をたぐりよせる手つきの、この軽さがいいのだ。これだけでいい、と言い切れる荷物の少なさに憧れずにいられない。

  • 『クンメル岩礁(シェール)の灯台守になろうと決意したとき、わたしは小さな子どもだった。じっさいには細く長い光を発するだけの灯台しかなかったので、もっと大きな灯台を、フィンランド湾東部をくまなく見渡して睨みをきかす立派な灯台を建てようと計画を練った――つまり、大きくなって金持ちになったらである』

    「クルーヴ島(ハル)」という島が実在の島なのか、グーグルマップで「クルーヴハル フィンランド」と検索してみても出てこない。天邪鬼な作家の創作に担がれたのかと一瞬思うのだが、「自伝」とされる本書に登場する人物は皆実在の人々である。そこでウィキペディアの英語サイトでトーベ・ヤンソンを検索すると、確かに「klovharu」という小島で過ごす習慣があったとある。早速、klovharu islandで検索すると、想像をはるかに超えた小さな島に行き当たる。航空写真で見てみると、何とも頼りなさげな小さな小屋が島とも呼べないような岩礁の上にぽつんと建っている。ここを、80歳になるまで棲み処の一つと定めて、漁をしながら暮らしていたとはムーミンの作者の頑固ぶりは大したものだなと改めて感心する。

    ムーミンの最初のアニメーション放送は小学生の頃。キャラクターの中では「ミー」が一番好きだが、後知恵で考えるとこの登場人物には原作者の投影がちらほらと伺える気がする。岸田今日子の印象的な声が、原作のちょっとおどろおどろしい雰囲気を伝えていることに気付いたのは、家にあった翻訳書を読んでから。その挿絵の雰囲気が、ほんわかとしたアニメとは全く異なる雰囲気だったので驚いたことは覚えている。トーベ・ヤンソンがこのシリーズに不満を抱いていたことなどは大人になってから知ったけれど、例えば「誠実な詐欺師」などを読むと、このシリーズは確かに原作者の世界観とは異なるものだなと思うし、作者がこういう頑固な天邪鬼的な人であることを制作側もよく解っていなかったのかも知れないなとは思う。蛇足だけど、個人的にはこのシリーズのスナフキンの歌う「おさびし山のうた」が好きだった。

    『それからついに運が向いてトゥーティはヤマハと遭遇した。ヤマハは美しく、電気系統でスタートする。ヤマハはトゥーティの指令にすみやかに従い、天候を選ばない』

    トーベ・ヤンソンの性格の根幹は、フィンランドという土地に根付くものがあるのだろう。シベリウスのフィンランディアを持ち出すまでもなく、スオミの人々がスウェーデンやロシアの圧政に耐えてきた歴史が「北欧」という風土以上に人々の性格を形成しているようにも思う。自然の厳しさを受け止め、現実的に対処する。ナイーヴな感傷に流されない。そうでなければ、外周数百メートル程の岩礁に夏の数か月とは言え暮らし続けることは出来ないだろう。その暮らしとて、毎度毎度自然や空き巣に翻弄されるものだったことが本書で、多分脚色を交えて、紹介されているのを読むと、この作家の芯の強さが見えて来る。やはりこの芸術家は、アニメーションのムーミン谷のようなオアシス的逃避行先を求めるような人ではなく大地にしっかりと立つ強さを持った人だったのだ。それがよく判る「自伝」だと思う。

  • 島暮らしの記録
    著作者:トーベ・ヤンソン
    発行者:筑摩書房
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    大自然の中を生きるといううこと。

  • トーベ・ヤンソンの島暮らしの日記を読みながら、私はまるで彼女の暮らすフィンランドの小島に一緒に滞在しているような気持ちになった。自然の音、風の匂い、季節の移ろいが静かに、しかし鮮やかに綴られており、読み進めるうちに現代の喧騒から少し離れた時間を味わえた。日記の中に登場する習慣や文化、植物や建物の描写にはフィンランド独特の世界が広がっており、私はその背景を調べながら読むことで、より一層深く作品に浸ることができた。

    「日記」という形式のせいか、話題はときに飛び、ある日は嵐について、またある日は家族とのやりとりについて、気ままに筆が進む。だがその自由さこそが、かえってリアルで、心に残る。筋書きのない日常の断片が、ヤンソンの繊細な観察眼とユーモアを通して並べられていくことで、むしろ一つの確かな世界観が浮かび上がってくるようだった。

    この日記が書かれたのは50年以上も前だが、そこに描かれた自然との関わり方や、季節に寄り添って暮らす姿勢は、今の私たちがすっかり忘れてしまった「人間も自然の一部である」という感覚を呼び覚ましてくれる。便利さや効率を求めて生きる現代とは対照的に、風や光、静けさと共に生きる島での時間が、人間の根源的な営みを思い出させてくれた。

    この作品は、単なる田舎暮らしの記録ではない。むしろ、自然と共にある暮らしのなかで、自分自身を見つめ直すヒントに満ちている。静かで、素朴で、しかしどこか深い余韻を残すこの日記は、今を生きる私たちにとってこそ必要な一冊かもしれないと感じた。

  • 本は脳を育てる:https://www.lib.hokudai.ac.jp/book/index_detail.php?SSID=690
    推薦者 : 水本 秀明 所属 : 外国語教育センター

    ムーミンシリーズばかりが取り上げられることの多いトーベ・ヤンソンですが、優れた短編小説や随筆もたくさん執筆しており、多くが和訳されています。ムーミンの世界がどのように生まれたか、この本の中にヒントがあるかもしれません。

  • フィンランド ポルボー の 小さな島に、トーベ、パートナーのトゥーティ、母親のハム、猫プシプシーナと暮らした記録。本書を読む前は山だらけの日本の島を想像していたが、グーグルマップで調べてみると、本当に何もないただの平たい岩場のような場所だった。( https://goo.gl/maps/BsDL6jxoaaNCeejo9 )もう晩年だったのに手作業で小屋をつくり住み続けていたことに驚く。パートナーのトーティは「心のそこから機械が好き」らしく、ヤマハやホンダの名前がでてくるのがなんだか嬉しい。

  • 孤島の小屋に生活し、執筆活動を続ける。
    波の音、風の音、海鳥の声、窓を雨が打つ。
    隔絶された孤島でトーベヤンソンが思った事を書き留めたエッセー集かと思っていました。読むまでは・・・。

    小屋の建設許可を得る下りから、建設途中のエピソードも含め、生活のあれやこれやまで、いろいろな人が登場し、今読んでいるのは誰の文章なのか?良くわかりません。芸術新潮の『トーヴェ・ヤンソンの全て』と照らし合わせて、登場人物を整理し読むと何とか・・・・。
    1964年当時のホンダやヤマハの発動機の様子も書かれており、小屋暮らしでの自足具合が良くわかります。結構、ハードな島暮らしが垣間見えました。


    ヘンリーソロー『森の生活』のようなものを期待していたけれど、少しジャンル違いでした。

  • 島のルビがハルなのがすきだ 読んでるだけで寒さが感じられるけれどおだやかなきもちになる

  • なぜだか面白い

  • トーベとムーミン展にて購入
    ずっと知りたかったトーベの島暮らしについて、彼女自身の言葉で読むことができて大大大満足…!

    私はトーベやムーミン作品に対して、温もりや優しさよりも、孤独と静けさをより強く感じたし、見出したがっているタイプの読者なので、作中の氷解けの項でトーベとトゥーティが言葉すくなに、ひとりきりでいるかのように振る舞いながら、氷解けの瞬間を待つシーンがとても好きだった

    『だれともかかわらず、部外者を決め込み、なんにしろ良心の呵責はいっさい感じない。なぜかはわからないが、なにもかもが単純になり、ただしあわせだと感じるに任せる。』
    (P59)

  • ふむ

  • 島暮らしのノンフィクションと思いきやフィクションも含まれているかもしれない、いずれにせよ文化の違いか?読みにくい。ムーミンの生みの親は不思議な人だった。

  • ヤンソンが遊びながら仕事をするための隠れ家としてえらんだクルーヴ島(ハル)の暮らしの記録。
    いーなー。

  • ムーミンの作者、トーベヤンソンが、母親、親友と島で暮らした記録。
    島といっても、おそらく私たちの感覚では、少し大きな岩礁といった大きさ。
    たまに魚を獲る以外、その島で自活することはできないような、少し大きめな岩礁。
    その島の絵や、写真が何点か掲載されており、その小ささに驚く。
    しかし、彼らは、その島に小さな小屋を作り、そこで暮らす。
    そして、そこで、それぞれの創作活動を行う。
    フィンランドが面する外洋は、北極の海。そこに襲う風はビューフォート風力階級もかなり上のほうのもの。
    にも関わらず、彼らはそこに小屋を建て、サウナを作り、そして、それぞれが別々に捜索する。
    彼らが吹かれる風は、おそらくスナフキンが一人でおさびし山に対峙して感じるときの風の強さ。
    ムーミンパパの小説に描かれている、大嵐。
    その圧倒的な自然のなかに、ムーミン一家の登場人物を置いてみる。
    すると、緩い生活に浸っているように思える、彼らが、実は厳しい自然界のなかで、生き生きと生きられる存在であることに気が付く。
    そんな彼らが生まれた背景が見えてくるような気がする。

  • ヤンソンさんの島での暮らしの「記録」
    こんな風に日記(記録)を書けたら
    すうっとする気持ちになるだろうなあ。
    何月何日、の活字をみるだけでもわくわくする。

    海の力強さや空気が
    文章と共にヤンソンさんの絵でも
    ひきこまれて、
    またときどき読みたくなるだろうなあ。
    という1冊でした。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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