- Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480837059
作品紹介・あらすじ
作者とその実母ハム、そして親友のトゥーリッキと猫のプシプシーナ。トーベあるいはムーミン物語の読者におなじみのそれぞれが、四方に水平線しかない小さな離れ孤島で、悠々とマイペースに、気ままな自然の魅力とともに暮らす。通算80年にわたる島暮らしのプロフェッショナルみずからが描く、作家の知られざる日常。
感想・レビュー・書評
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私にとってムーミンシリーズは特別な作品だ。
幼稚園の頃、朝起きて遅刻ぎりぎりまで観たアニメ。
高校生か、大学生だか、10代の後半に読んだ講談社文庫の小説群。
建造物や、海や、島や、冒険が好きな私の嗜好のすべてのポイントを押してくる万能感。
そして知った、作者の風変わりな人となり。
小説作品と、映像作品と
世界観に、生き方、哲学。
人生を通じて付き合える世界と、しかるべき人生のタイミングで出会えた幸運に、感謝を。
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北欧の多くの人は夏休みには海辺の別荘とか小屋で休暇を過ごすのだそうだ。今もこの習慣は残っているのだろうか?1960年代の作者の、島に小屋を建てるところから始まり、飽きて去るまでの島暮らしを綴ったエッセイ。島といっても大きさはほぼ暗礁といっていいくらいの岩のかたまりで、荒れた日には波がかぶるだろうくらいの大きさだ。しかも5月にも流氷のかけらが流れてくるくらいの北の海。なかなかにアドベンチャーな人だ。その上ありのままを綴った記録かといえばそうでもなく、一緒に島暮らしした友人からは「一度ぐらいはあんまり事実を曲げないでほしいのよ。暴風雨を秋の夜とやらに設定せずに、ありのままを書きなさい。」と言われるしまつ。ヤンソン油断できないな。
海辺の暮らしいいね。昨年夏に海が見える部屋を借りて北海道でのダイビング・ガイド暮らしを始めた身にとっては「わかるわかる」ポイントがたくさんある。この筋金入りのマイペースさはお手本ですね。すごいね。 -
『クンメル岩礁(シェール)の灯台守になろうと決意したとき、わたしは小さな子どもだった。じっさいには細く長い光を発するだけの灯台しかなかったので、もっと大きな灯台を、フィンランド湾東部をくまなく見渡して睨みをきかす立派な灯台を建てようと計画を練った――つまり、大きくなって金持ちになったらである』
「クルーヴ島(ハル)」という島が実在の島なのか、グーグルマップで「クルーヴハル フィンランド」と検索してみても出てこない。天邪鬼な作家の創作に担がれたのかと一瞬思うのだが、「自伝」とされる本書に登場する人物は皆実在の人々である。そこでウィキペディアの英語サイトでトーベ・ヤンソンを検索すると、確かに「klovharu」という小島で過ごす習慣があったとある。早速、klovharu islandで検索すると、想像をはるかに超えた小さな島に行き当たる。航空写真で見てみると、何とも頼りなさげな小さな小屋が島とも呼べないような岩礁の上にぽつんと建っている。ここを、80歳になるまで棲み処の一つと定めて、漁をしながら暮らしていたとはムーミンの作者の頑固ぶりは大したものだなと改めて感心する。
ムーミンの最初のアニメーション放送は小学生の頃。キャラクターの中では「ミー」が一番好きだが、後知恵で考えるとこの登場人物には原作者の投影がちらほらと伺える気がする。岸田今日子の印象的な声が、原作のちょっとおどろおどろしい雰囲気を伝えていることに気付いたのは、家にあった翻訳書を読んでから。その挿絵の雰囲気が、ほんわかとしたアニメとは全く異なる雰囲気だったので驚いたことは覚えている。トーベ・ヤンソンがこのシリーズに不満を抱いていたことなどは大人になってから知ったけれど、例えば「誠実な詐欺師」などを読むと、このシリーズは確かに原作者の世界観とは異なるものだなと思うし、作者がこういう頑固な天邪鬼的な人であることを制作側もよく解っていなかったのかも知れないなとは思う。蛇足だけど、個人的にはこのシリーズのスナフキンの歌う「おさびし山のうた」が好きだった。
『それからついに運が向いてトゥーティはヤマハと遭遇した。ヤマハは美しく、電気系統でスタートする。ヤマハはトゥーティの指令にすみやかに従い、天候を選ばない』
トーベ・ヤンソンの性格の根幹は、フィンランドという土地に根付くものがあるのだろう。シベリウスのフィンランディアを持ち出すまでもなく、スオミの人々がスウェーデンやロシアの圧政に耐えてきた歴史が「北欧」という風土以上に人々の性格を形成しているようにも思う。自然の厳しさを受け止め、現実的に対処する。ナイーヴな感傷に流されない。そうでなければ、外周数百メートル程の岩礁に夏の数か月とは言え暮らし続けることは出来ないだろう。その暮らしとて、毎度毎度自然や空き巣に翻弄されるものだったことが本書で、多分脚色を交えて、紹介されているのを読むと、この作家の芯の強さが見えて来る。やはりこの芸術家は、アニメーションのムーミン谷のようなオアシス的逃避行先を求めるような人ではなく大地にしっかりと立つ強さを持った人だったのだ。それがよく判る「自伝」だと思う。 -
島暮らしの記録
著作者:トーベ・ヤンソン
発行者:筑摩書房
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
facecollabo home Booklog
https://facecollabo.jimdofree.com/
大自然の中を生きるといううこと。 -
孤島の小屋に生活し、執筆活動を続ける。
波の音、風の音、海鳥の声、窓を雨が打つ。
隔絶された孤島でトーベヤンソンが思った事を書き留めたエッセー集かと思っていました。読むまでは・・・。
小屋の建設許可を得る下りから、建設途中のエピソードも含め、生活のあれやこれやまで、いろいろな人が登場し、今読んでいるのは誰の文章なのか?良くわかりません。芸術新潮の『トーヴェ・ヤンソンの全て』と照らし合わせて、登場人物を整理し読むと何とか・・・・。
1964年当時のホンダやヤマハの発動機の様子も書かれており、小屋暮らしでの自足具合が良くわかります。結構、ハードな島暮らしが垣間見えました。
ヘンリーソロー『森の生活』のようなものを期待していたけれど、少しジャンル違いでした。 -
本は脳を育てる:https://www.lib.hokudai.ac.jp/book/index_detail.php?SSID=690
推薦者 : 水本 秀明 所属 : 外国語教育センター
ムーミンシリーズばかりが取り上げられることの多いトーベ・ヤンソンですが、優れた短編小説や随筆もたくさん執筆しており、多くが和訳されています。ムーミンの世界がどのように生まれたか、この本の中にヒントがあるかもしれません。 -
フィンランド ポルボー の 小さな島に、トーベ、パートナーのトゥーティ、母親のハム、猫プシプシーナと暮らした記録。本書を読む前は山だらけの日本の島を想像していたが、グーグルマップで調べてみると、本当に何もないただの平たい岩場のような場所だった。( https://goo.gl/maps/BsDL6jxoaaNCeejo9 )もう晩年だったのに手作業で小屋をつくり住み続けていたことに驚く。パートナーのトーティは「心のそこから機械が好き」らしく、ヤマハやホンダの名前がでてくるのがなんだか嬉しい。
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島暮らしのノンフィクションと思いきやフィクションも含まれているかもしれない、いずれにせよ文化の違いか?読みにくい。ムーミンの生みの親は不思議な人だった。
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ヤンソンが遊びながら仕事をするための隠れ家としてえらんだクルーヴ島(ハル)の暮らしの記録。
いーなー。 -
ムーミンの作者、トーベヤンソンが、母親、親友と島で暮らした記録。
島といっても、おそらく私たちの感覚では、少し大きな岩礁といった大きさ。
たまに魚を獲る以外、その島で自活することはできないような、少し大きめな岩礁。
その島の絵や、写真が何点か掲載されており、その小ささに驚く。
しかし、彼らは、その島に小さな小屋を作り、そこで暮らす。
そして、そこで、それぞれの創作活動を行う。
フィンランドが面する外洋は、北極の海。そこに襲う風はビューフォート風力階級もかなり上のほうのもの。
にも関わらず、彼らはそこに小屋を建て、サウナを作り、そして、それぞれが別々に捜索する。
彼らが吹かれる風は、おそらくスナフキンが一人でおさびし山に対峙して感じるときの風の強さ。
ムーミンパパの小説に描かれている、大嵐。
その圧倒的な自然のなかに、ムーミン一家の登場人物を置いてみる。
すると、緩い生活に浸っているように思える、彼らが、実は厳しい自然界のなかで、生き生きと生きられる存在であることに気が付く。
そんな彼らが生まれた背景が見えてくるような気がする。
著者プロフィール
トーベ・ヤンソンの作品





