子は親を救うために「心の病」になる

著者 :
  • 筑摩書房
4.11
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本棚登録 : 212
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480842923

作品紹介・あらすじ

親のために、引きこもった男の子。摂食障害になった女の子。善悪が逆転した感覚を持ち、「虐待の連鎖」に悩む子育てママ。親とのつながりを持てずに育った女性の、「異邦人」のような存在感の希薄さ…。様々な症例を基に解明される、親子という「生きづらさ」の原点と、その解決。

感想・レビュー・書評

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  • 最近心理学に興味があり、書店で見つけて気になっていた一冊。

    タイトルだけ見ると、子どもの精神病や、親子関係の問題についての内容かなと思うが、本書はそういった専門的内容だけでなく、生きづらさを感じる全ての人が読んでも理解・共感できるような普遍的な内容が記されている(特に最終章)

    親子関係の内容については、他の書籍では、
    ・子どもの精神的病は親子関係に起因する
     →親は子供に〜のように接すべき(対処法)
    と言う構成が多い中、本書は親子関係を3つに分類し、子どもの心の病の原因について淡々と考察されている。短絡的な対処法は記載されていない。だからこそ、押し付けられるような感じがなく、自己分析の為の材料感覚で読み進めることができると思う。

    また、タイトルは一見すると親に責任があるかのように捉えられるが、親を責めた内容とは対極にあると感じた。(多分誤解する人多いと思う。)
    どちらかというと、「子ども」の病より、寧ろその問題の根源にある「親自身」の育った環境や問題に焦点が当てられている。つまり、親もまた人の子であり、その関係性の中で人格が形成され、知らず知らずのうちに子どもへの接し方に影響を及ぼしていた、ということがカウンセリングを通して明かされていく形で、どちらかというと親に対して寄り添い方だなと感じた。

    「宇宙期」というワードは、一見非現実的で飛躍したものに見えるが、順を追って読んでいくと、腑に落ちていく。しかも、大切な人を亡くすという経験は、多くの人が一度は体験することだと思うが、いざ直面した時に、自分の心をどう捉え、どう向き合えばいいかが見えてくると思う。個人的には、"ただ「ある」"という考え方は取り入れたいなと思った。

    生い立ちや家族との関係性に対して疑問を持ったことがない人でも、"自分が何者であるか"を構造的・客観的に知る上では手がかりになると思う。また、人との関係にストレスや義務感を感じでいる人にとっても、自己啓発本とは違う、心理学的視点(専門的・学術的視点)で対人方法や心の在り方のヒントを提示してくれているので、広く一般的におすすめしたい一冊。

  • 著者が患者さんから教わったカウンセリングの本質は、ただ聞くだけでいいということと、理論は通用しないということ。
    その二つの説明を読んで、とても深いなとかんじました。

    カウンセリングは悩みを聞くのではなく、『存在』感をきく、『存在』を確認するものである。
    人と人が向き合って、この『存在』を確認し合う作業がカウンセリングの本質であると。

    また読み直したい本の、1冊です。

  • 人生に投げやりなのは、自分の存在感がないから。

    第五章の、宇宙期に達した人のモデルになった人、ずるいと思った。奥さんが亡くなったりいろいろあったんだろうけど、機能する健全な家庭に生まれ育って、それなりに安定した社会的地位も手に入れて、その上心の平安まで手に入れたと!?ずるいんだぞ。その恵まれてる感自重しろ!ちょっとこっちに回せ!

  • エピローグの、
    カウンセリングはただ「聞く」という作業
    カウンセリングに「理論」は通用しないということ

    これに尽きますな。



  • 普通の親子関係と特殊の親子関係について具体的の親のカウンセリングについて書かれた本。


    普通の親子関係とは、
    人との付き合い方、人生観、善悪を判断する
    倫理機能などが、親子で共通
    社会とも共通と言うこと。

    一方で
    特殊な親子関係とは、
    普通の世界の人とは異なった理解を持ち、
    世界を全く違う視点から見ており、
    人生観や善悪の感じ方も異なっている。


    なぜ
    感じ方が逆になってるかと言うと、
    普通の人が当たり前のように思っている良いことが、
    虐待を受けてる人にとっては
    悪いことであり、
    普通の人が「なんでそんな馬鹿なことやってんの!」と思うことが
    虐待を受けていふ人とっては善い生き方になっている。


    虐待受けた子どもにとっては、
    目の前の悪い親に耐えることが善であり
    その逆に逃げることが悪となる。

    悪に親に耐えることが善で
    善を求めるのが悪である。
    こうして普通の人とは善悪が逆転する。



    虐待を受けている人は
    虐待の連鎖を止める必要ある。その方法は、
    自分を肯定できれば、子どもを否定する事は無い。子どもを肯定できれば、自分を否定することもない。




    カウンセリングは、
    ただ聞くだけで良い
    そして理論は通用しない


  • いや~~!衝撃的でした!自分にとって。

    私は、善悪が逆転していたんだとわかった。
    普通に育った人って、もっと楽に生きてるんだ~。と知った。
    まわりの友達にもすすめて、読んだ人はみんな面白かった!と言っていて、しかも、みんな善悪が逆転していた。

    この本を読んで、本当によかった!すごく楽になった!

  • この人のカウンセリングなら受けてみたいな、と思った。
    「普通の」親子関係で育った子、
    虐待を受けて育った子、
    特殊な親子関係を持った子、
    と分けて説明しているところが新鮮。

  • 虐待されていた人は、善悪の心理システムが逆になっているという。
    物事の判断の物差しが、独自になっているなって思うことがあり、なるほどなと思いました。
    あれ?って思うことからずれてるのが普通じゃなくて、普通って感覚は大事にしていいものだと思った。
    自分の意見を言って、感情を出して、時に揺れ動いて…、そんなこんなで、でもまぁいいか、って自己肯定できることが大事なんだと思いました。

    カウンセリングは問題を解決する作業ではない、自分を確認する作業だ、と最後に書いてありました。話を聞く時に、頭に置いておこうと思う。

  • カウンセリングは悩みを解決する作業ではない。自分を確認する作業である。そうすることで心は安定する。
    自分の心を聞いて自分の話をし、その時の自分を確認する。内容は何でもいい。語ることが話し手の存在を確かなものになる。

    親が子に期待するのは、自分が求めて得られなかった生き方である。
    子供は親の気持ちを読み取り、それに応えようとして生きる。特に親の可愛がり方には敏感で、子供はそれにぴったり合わせてくれる。それは親子で共有できる楽しい時間である。その時に子供は自分が親に愛されていると感じ、親に必要とされている自分を確認できる。

    心理発達段階
    乳幼児期→学童期→思春期→成人期
    思春期は成人型の準備段階である。その最大の課題は親からの精神的な自立である。自立がうまくいくかどうかは、それまでの13年間の親子関係。親の心の矛盾がそれほど大きくなければ親からの旅立ちは大きな混乱もなく進む。

    「無条件の存在感」→安心
    その次の段階が
    「社会的な存在感」→愛情、お金、賞賛

    子供はもちろん親に引っ張って欲しいがでも自分1人でもやってみたい、その両方があって初めて生き方を学びとっていける。引っ張ってもらった経験のある親は、子供が自分でやってみたいと思う気持ちが見えるから、子供のペースを見てその動きを待っていられる。でもその経験のない親は待てない。引っ張られすぎて「ちょっと待って」と思ったことがないからだ。こうして引っ張ってもらう側になった経験がないと引っ張ることばかりになってしまい、親子は一方通行になる。

    子供は母親を通じてこの世界を知り自分を知り人を知り、社会を知っていく。その最初の手がかりが小さい頃の母子関係の中にある。毎日子供は母親の反応みる。それを基準に自分を知る。自分がいい子であるか、悪い子であるか、そういう自分を知る。
    美味しいもの食べてお母さんと喜ぶという体験は人と共感する原点。それが人間関係を作る土台になる。つまり、美味しいものを食べると人は嬉しくなる。それを確認してくれる人がいると美味しい感覚が母親の感覚と繋がり、共感が生まれる。体が感じる感覚を他の個体である母親と共有し、繋がりができる。この生まれてから無数に繰り返された関係の先に多くの人々や社会がある。

  • ブクログやアマゾンでの評価が高かったので期待して読んだが…。
    エピローグのカウンセリングの本質に関する記述については全くその通りで異論の余地はないし、虐待における病理についても納得できる考察がされていると感じたが、それ以外では違和感の方が多い。特に第一章は、表面的な解釈に終始していて本質的なところは触れられていない感じ。
    全体を通して逐語でのやり取りが多く書かれているため、当事者の立場の人が読むと実際のカウンセリング的な効果があり、響くものがあるのかもしれないとは思った。
    2010年出版ということもあり、DVの捉え方や"軽度発達障害"という表現など少し情報が古いのはやむを得ないかな。
    残念ながら、私の期待値には届きませんでした。

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