日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 102
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480857972

作品紹介・あらすじ

19世紀後半、私たちの先輩は、世界を航行するため「日本という樽の船」をつくった。それはよくできた「樽」だった。しかし、やがて日本人の「個人」を閉じ込める「檻」になりかわった。では、21世紀の海をゆく「船」は?3・11以後を私たちはどう生きるか-。

感想・レビュー・書評

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  • 凄い人、面白い人ですね。優等生ではない知識人。私の無教養と未熟さによりよく理解できないところも多かったですが。とりあえず読んでみようと思う本が増えました。

  • やはり鶴見さんはいい。(非常に上からの言葉ですが)
    かっこいいと思います。この感覚はもしかしたら
    私たちの世代の男性特有な感覚かもしれません。
    この本の内容が、関川さんとの、いい意味でも
    悪い意味でも、男性どおしの居酒屋での、会話のような
    感じがします。
    個人的に、鶴見さんは私自身の規範・模範であると
    思います。悪人であり、ただの人を貫く精神、
    はにかみ、醒めた感覚。でも中心のスジ。
    とにかくかっこいいと思います。

  •  東日本大震災から2年過ぎました。こういうひとつの区切りを契機に、改めて何かを考えてみる、考える材料を見つけるために手にとった本です。
     体裁は、鶴見俊輔氏と関川夏央氏お二人による年をあけた2回の対談を起こしたものです。
     評論家の鶴見俊輔氏は、外祖父はかの後藤新平、父は政治家鶴見祐輔という家に生まれながらも、厳格・苛烈な母親に反発して、若い頃はかなり危ない行動をとっていたようです。大衆文化への造詣も深く、漫画原作者としての経験もある関川氏との会話はなかなかいいノリで進んで行きます。
     興味深い指摘がお二人のやりとりの随所でみられましたし、特に“敗北力”というコンセプトは大震災後を考える上でとても重要な視点だと思いました。

  • 鶴見俊輔の独特の表現(「樽」、「スキンディープ」、「残像」など)が、なかなかおもしろかった。
    それにしても、その博覧強記ぶりには脱帽。
    こういう反権力の人って、いいなあ。

  • 「自分が悪人」と自覚し不良少年であった鶴見さんが、戦前の文化の厚みから近代の過ちまでを自在に語る。人間に価値を見出さず外部にそれを見る(「個人」を閉じ込める「檻」)--近代日本の歪んだ歩みと「一番病」の危うさを撃つ。

    推薦のことば「大切なものを捨ててはいまいか 中島岳志」http://bit.ly/pMb472 「われわれは本気で負けているだろうか。自己への問いのないところには、敗北も存在しない」。

    「いい人がいけない」。「真面目な人、いい人は困る」。「正義の人ははた迷惑だ」。鶴見節、炸裂です。関川夏央さんの引き出し方も凄すぎて……これはいいですよ。

  • 鶴見俊輔さんと関川夏央さんの、高級居酒屋トーク。あいつ感じ悪いよね、あいつ面白いよね、そういえばあいつ、こんなこと言ってたよ、みたいな風で。
    明治以降、日本という「樽」と個人が消えていったこと。そして近年に期待できる、知識的大衆への期待で結び。
    鶴見さんが我を忘れてひとつのポジションで読み通したものは、ツルゲーネフの「ルーディン」と、岩明均さんの「寄生獣」のふたつだけだということが、なんだか頭から離れない。

  •  戦後日本を代表する哲学者が、戦前の文化の厚みから近代の過ちまでを自在に語る。聞き手は戦後世代の評論家だ。

     「自分の仕事の根源にあるものは、自分が悪人であること」と鶴見はいう。ハーバード大卒の学歴をもつが、十代のころは不良少年で、学校を3度も退学になった。だからこそ、とにかく一番で東大にという「一番病」の危うさと、それに侵された国が見えるのだ。

     明治の最初の総理大臣、伊藤博文は、少年時代、肥溜めをかついで野菜を作っていた。その貧しさを忘れず、アーネスト・サトウが下関に来ると、自らが指揮して洋食を作り振る舞った。まさに、自由な精神を持つ個人だったのだ。しかし彼の作った社会の枠組みは、見識のない均質な大衆を生み出した。

     真面目な人は信用できない。武者小路実篤がそうで、「人間万歳」と唱えていたが、のちに「ルーズベルトと蒋介石とチャーチルは世界の三馬鹿」と話した。「いい人は世の中と一緒にぐらぐらと動いていく。……悪党はある種の法則性を持っている」から相入れるというのだ。

    (「週刊朝日」 2012/03/09 西條博子)

  • 小学校卒でハーバード大卒の鶴見さん.次から次と色々な人が出てくる.どんな頭をしているのか.すごい人だ.関川さんは小生と同世代だが,鶴見さんと丁々発止の論戦を展開する.この人もすごい.

  • 日本人の覚悟の頂点は、1905年、日露戦争であったか。個人ではなく、名刺で生きるようになってしまった日本人。先日、まさにこの話をしていたので、共時性を感じる。日本国としての組織の樽は、日露戦争で出来上がった。しかしあまりにも優れた?設計のため、未だに壊せない。一番病からの脱却。まだ間に合うと信じたい。

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著者プロフィール

1922年東京生まれ。哲学者。15歳で渡米、ハーヴァード大学でプラグマティズムを学ぶ。アナキスト容疑で逮捕されたが、留置場で論文を書きあげ卒業。交換船で帰国、海外バタビア在勤部官府に軍属として勤務。戦後、渡辺慧、都留重人、丸山眞男、武谷三男、武田清子、鶴見和子と『思想の科学』を創刊。アメリカ哲学の紹介や大衆文化研究などのサークル活動を行う。京都大学、東京工業大学、同志社大学で教鞭をとる。60年安保改定に反対、市民グループ「声なき声の会」をつくる。六五年、ベ平連に参加。アメリカの脱走兵を支援する運動に加わる。70年、警官隊導入に反対して同志社大学教授を辞任。著書に『鶴見俊輔集』(全17巻、筑摩書房)『鶴見俊輔座談』(全10巻、晶文社)『鶴見俊輔書評集成』(全3巻、みすず書房)『戦後日本の大衆文化史』『戦後日本の精神史』(岩波書店)『アメノウズメ伝』(平凡社)ほか。

「2015年 『昭和を語る 鶴見俊輔座談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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