混浴と日本史

著者 :
  • 筑摩書房
3.20
  • (2)
  • (4)
  • (6)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 109
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480858047

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本書は非常に良い着目点をもっており、日本人にとって馴染みのある温泉を通して、日本人の性、裸体観を読み解いた書籍である。

    過去の日本ではおそらく裸に対してそこまで抵抗感がなかったのだろう。明治政府は外人に迎合するため、混浴、裸を恥とする文化を輸入した。混浴に対する国家の烙印と庶民の反発には埋めがたい溝があるのだ。
    こう始まる本書は非常に興味深い内容を多分に含んでおり、現代の性、裸体観念の歴史の浅さに驚く。

    ある地方では祭の際にドブ川の泥をさらって体になすりつけると言う風習がある。これにより健康にめぐまれるという祭りらしいが、本来はこの地方では温泉が湧き出ており温泉につかることで健康になると言う概念のみが残って、温泉が枯れてしまったという小話も面白かった。

    1970年頃の日本では男湯の方に入っていく女性が非常に多かったという描写がある。その中では作家の津島佑子が寄せたエッセイで以下の記載がある。「考えてみれば私に限らず誰でも今の時代ではなかなか他人の特に異性の裸体を公然と見る機会などない。1年に1回ぐらいはこうして服を脱いだ男たちを見ておくのも人間というものを考え直す意味で良いものだなと思わずにいられなかった。」
    ヒトというモノは服や装飾により、着飾る事でヒトたらしめている部分がある。それを取り払った時に本当のただの庶民に戻れるのだ、それが混浴なのかもしれない。

    最後に筆者はこう締めている。「少なくともこの国の混浴と言う習慣は性に関する極めてユニークな、そして精神性の高い文化を作り上げてきた事は確かである。」

    と、ここまで絶賛したが、筆者の力量が及ばず、正直読むのが苦痛な部分が大半であった。極上のステーキ肉を電子レンジで加熱してケチャップを撒き散らすような酷い調理の仕方であった。

    特に酷いのが論が四方八方に飛んでしまう点である。編集者は上ってきた原稿に頭を抱えたのか、それともこれで良いと思ったのだろうか。
    湯の語源について諸説ある、と前置きして複数の学者の見解を披歴するのにはまいった。湯の語源は語られるものの、そこから本論に戻れず尻窄み。本書は初学者に向けて書かれてるのではなく、論文の延長線上にあるのかもしれない。

    筆力のある作家に新書にて再編して頂きたい内容であった。

  • 日本には昔から混浴の風俗があって、それはまあ、何と言うか大らかな姓やら遊女と結びつくところもあったのだけど、キリスト教的な大きなお世話な文化に入りたいよと言って、今に至る訳だ。
    それは良く判るしそんなに違和感ないのだけど、だからって、日本史と言う程、何も貫いてないような気がして。
    本としてはいまいちかな。
    なんてえか、日本て、幕末迄は男も尻からげだったし、女性も随分と胸を出すことを恥ずかしいとは思わなかった訳でしょ。寧ろ裾が乱れることをはしたないと思ってた訳で、もうちょっと色々突っ込んで欲しかった。

  • 昔はみなそうだった。

  • 2017.06.06 シミルボンより

  • 混浴を恥ずべきものと観るか否かは個人の裁断に委ねられるとして…

    個人的には、祭り(盆踊り)、田植え、葬式、その類の庶民の生業には大抵スケベェなモノが介在しており、それなしには一日たりとも庶民の社会は成り立たないと私は思っている。

    しかし昨今はそんなスケベェなものは悉く排除されている。
    まるで、排除すれば物事はシャンシャンと片付くとでも思っているような…。

    しかし現実にはスケベェなものであればあるこそ、そう簡単には片付かない。

    自然に還れば、自然に男と女は結ばれる。
    That's life

  • 面白かった

  • 混浴がこのように学問研究の対象になるとは!!古代の風土記の時代の混浴と歌垣に始まり、奈良、平安、鎌倉、江戸時代と当時の文書から日本における混浴がふつうであったことを裏付ける。江戸時代の丹前風呂で知られた絶世の美女・勝山の故事が「丹前」「勝山髷」。寛政の改革以降、相次いで混浴を禁止令を次々に出したが民衆が従わなかった!など明治初期まで残り、外国人にとっては日本の混浴が大きな関心事になり、破廉恥な劣等民族であるとの軽蔑的な評価から、米国の女性地理学者エリザ・シドモアの「大衆は子供のように天真爛漫で、妥当な新しい道徳通念を持っている」という好意的評価まで面白い。明治政府が躍起になって禁止していたものが、画学生の「日本婦人の醜い裸体蔑視」が混浴を避ける傾向になっていったという著者の説明は皮肉な話である。

  • ■2013.10 新聞

  • 下川耿史『混浴と日本史』筑摩書房、読了。古来より日本では混浴が基本とか。本書は歴史的変遷を辿る日本入浴文化史。入浴は庶民の日常であり娯楽であるから、そこには性と公序が交差する。混浴禁令は江戸時代から。性交の場の歌垣、為政の論理と民衆の情念の拮抗等、本書で初めて知ることは多い。


    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480858047/  「混浴が照らし出す、日本人の心性に大胆に迫る!」 図版も多く、日本混浴思想史を立体的に理解できる好著。おすすめです。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1042年福岡県生まれ。性風俗史研究家。早稲田大学卒業後、「週刊サンケイ」編集部勤務などをへて現在に至る。主な著書に「エロティック日本史」「日本残酷写真史」「盆踊り 乱交の民俗学」など多数。

「2020年 『性風俗50年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

下川耿史の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
シーナ・アイエン...
鵜飼 秀徳
池井戸 潤
三浦 しをん
佐々木 圭一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×