格差と希望: 誰が損をしているか?

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480863836

作品紹介・あらすじ

真の問題とは?年金、ロスジェネ、企業の不祥事など、この国の重大事を取り上げ、処方箋を示す。気鋭の経済学者による明快な時代診断。

感想・レビュー・書評

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  • 大竹 文雄 (著)
    しかし、その副題は、日本が格差社会であることを否定したものではない。九〇年代までの所得格差の拡大は、高齢化の要因が大きいが、生涯所得の格差を表す消費の格差は九〇年代に既に拡大を始めていることを指摘した。もう一つ私が主張したかったことは、現在が格差社会であるというのなら七〇年代や八〇年代の日本も格差社会だったのであり、「一億総中流」こそ幻想だったということだ。日本の所得格差が低く見えたのは、まだ所得に差がついていない若者の人口比率が高かったことが原因だったのだ。
    目次 - 大竹文雄のブログ: 「格差と希望」本日発売より

    目次
    はしがき
    第1章 資本の論理を問う
    「若者二極化」の弊害―意欲を再生する政策を
    Column1 新規学卒偏重のデメリット
    「資本の論理」を問う―法制度の整備が急務
    Column2 解雇規制強化の皮肉な結果
    社会に広がる「不安感」―経済学的な思考法必要
    Column3 現在・将来の意思決定と脳科学
    改革阻む既得権の壁―弊害が多い「一律カット」
    Column4 もはや、「低所得者=貧困者」ではない
    戦後システムに変化の兆し―主体的判断が重要に
    Column5 軽い負担、重い負担館
    「二分法」の落とし穴―改革目的、再確認を
    Column6 市場競争とセーフティネット
    第2章 リスクと不安
    M&Aの背後に景気回復―ビジョン明確化、奏功
    Column7 プロ野球機構を株式化せよ
    少子化社会の虚実を問う―大国幻想との決別を
    Column8 年金未納は若者の逆襲
    予見困難な改革リスク―専門家の育成が焦点に
    Column9 「災害保険税」を創設せよ
    偏った情報化が不安増幅―冷静な対応を
    Column10 ウィキノミクスで経済政策
    「格差社会」をめぐり論争―市場原理の賢い利用を
    Column11 想定問答・格差社会
    若年層の格差問題をめぐって―打開の道は教育改革に
    Column12 「待ち組」は反省すべき?
    第3章 社会の中のグレーゾーン
    「格差」批判と既得権の維持―論争の吟味が課題
    Column13 格差解消に既得権者ができること
    政府の大きさを考える―国家像の議論が必要
    Column14 矛盾
    社会の中のグレーゾーン
    Column15 上限金利問題を考える
    「回復感」乏しい景気回復―今から将来の準備を
    Column16 悪玉論は心地よい
    「小さな政府」と満足度―支出の中身が重要に
    Column17 教育の充実こそ、格差対策の本流
    「働く貧困層」という問題の本質―教育訓練が急務に
    Column18 男女差別解消の思わぬ結果
    第4章 格差社会の行方
    「美しい国」を支える経済学―家計も知識武装を
    Column19 経済学は役に立つか
    「平時」こそセーフティネットの構築を―相次ぐ改革の提起
    Column20 地域格差をどう考えるか
    問題と対峙、脱パターンで―感情を排し、本質に迫る
    Column21 人事も経理も中国へ
    少子化時代の「教育改革」―世代間の連帯が重要に
    Column22 脳科学と経済学が教える格差対策
    「雇用の質」と格差問題―冷静な議論が必要に
    Column23 長時間労働を解決するには
    格差に影落とす「国際化」―地道な対策の実行を
    Column24 成長・格差論争の共通の罠
    格差論議―日米に隔たり
    米で深まる最低賃金論争
    あとがき

  • 古い
    古いくても良いものは良い、というほどではない

  • 思索

  • 日経のコラムなどをまとめた内容だが書籍化にあたって参考文献などが載ってないのはマイナス。
    人文系など色んな論者の意見を挙げ最後に冷静な考えが重要とまとめてるのが基本なので読んでいて物足りなさを感じた。
    色んな論者と書いたが経済学者はそれなりに常連の人が出てくるのであまり面白み、興味が増すことがなかったのが残念だった。
    経済学の必要性を説いているのにも関わらず筆者の意見、提言が弱い、少ないのも気になった。しかしここで挙げられている提言は日本の経済学(者)のコンセンサス得られる内容であろうし、読んでいて穏当なのも含まれていたのでそれが未だ政策実現せずに格差を生み、希望を無くしかねない財政支出削減、増税などが決まってしまう現実とのギャップは読んでいて暗くさせられた。

  • 経済学について素人なので少し難しかったが、お金や実態のない何かではなく、人間の感情の一つ一つで経済が動いているカラクリが分かり興味深かった。
    引用も多数あり、解決策の案も納得できるものが多かった。

    ・低所得者=貧困者ではない。(低所得者で資産を大量に持っている人もいる)
    ・日本は世界各国と比べて「自由な市場経済で多くの人がより良くなる」ということも「貧困者の手当をするのは国の責任である」ということにも賛成する人が少ない。日本では格差拡大への対策は、セーフティネットではなく、規制強化が議論される。
    ・地震や水害に弱い地域や住宅に住む人から、その弱さに応じた災害保険税を徴収するのは?→このような場所にお金がないからといって住む人が減る。今はこのような場所こそが安く住めるので、貧困者が住みやすいということになっている。
    ・ウィキノミクスの提案。データをネットで一般公開し、世界中の専門家から意見、解決策のアイデアをもらう。
    ・優秀な教師が減った理由で経済学者の意見に、「昔は優秀な女性は教師になったが、男女雇用の平等化により、教師より高い給与や待遇がある仕事へ女性が流れていったため」というのがある。
    ・本来助けたかった最低賃金で働いている人の最低賃金をあげると、企業は最低賃金よりも安く済むように機械を導入したり、より生産性の高い人を雇うことになる。

  • 格差と希望 誰が損をしているか?
    大竹文雄
    筑摩書房(2008年6月25日初版)

    大阪大学教授。専門は労働経済学。
    経済学者の書いた本です。
    著者が05年から07年にかけて書いた論説をまとめて紹介したあと
    個々の記事について08年時点で分かったことを基に追加で論じ、レビューしています。

    特に印象的だった点を2点抜粋。

    ・不安に対する対処法は2つ。
    第一の方法は、不安そのものをなくすためにさまざまな努力をすること。
    第二は、将来のことを考えるのを一切放棄して不安から逃げてしまうこと。

    ・経済学とは何か?
    経済学はお金儲けのための学問ではなく、経済政策や制度設計を考えるための基礎的研究を行うための学問である。
    経済学を身につけてできるようになることは、得られた情報のもとで、どのような制度設計や政策を行うと失敗するかがわかるようになることだ。

  • 格差論はいいけど、お金があっても幸せになれるかはわからない。よう、気持ちの持ちよう。もちらんは、整理的、安全性欲求は満たされていること前提。

  • この問題を解決するには世代間に愛が必要だと思いました。見て見ぬふりをしても、いずれは我が身と子孫にその災禍が降りかかってくるのです。一人一人これまでの生き方働き方を振り返り、まず自分から悪循環を断ち切る決意が求められているのではないでしょうか。

  •  年金問題、ロストジェネレーション、企業不祥事など、この国の重大事を取り上げ、処方箋を示す。不公平な仕組みを放置させないための、明快な時代診断の書。

    目次
    はしがき
    第1章 資本の論理を問う
    「若者二極化」の弊害―意欲を再生する政策を    
    Column1  新規学卒偏重のデメリット
    「資本の論理」を問う―法制度の整備が急務
    Column2  解雇規制強化の皮肉な結果
    社会に広がる「不安感」―経済学的な思考法必要
    Column3  現在・将来の意思決定と脳科学
    改革阻む既得権の壁―弊害が多い「一律カット」
    Column4  もはや、「低所得者=貧困者」ではない
    戦後システムに変化の兆し―主体的判断が重要に
    Column5 軽い負担、重い負担館
    「二分法」の落とし穴―改革目的、再確認を
    Column6 市場競争とセーフティネット
    第2章  リスクと不安
    M&Aの背後に景気回復―ビジョン明確化、奏功
    Column7 プロ野球機構を株式化せよ
    少子化社会の虚実を問う―大国幻想との決別を
    Column8 年金未納は若者の逆襲
    予見困難な改革リスク―専門家の育成が焦点に
    Column9 「災害保険税」を創設せよ
    偏った情報化が不安増幅―冷静な対応を
    Column10 ウィキノミクスで経済政策
    「格差社会」をめぐり論争―市場原理の賢い利用を
    Column11 想定問答・格差社会
    若年層の格差問題をめぐって―打開の道は教育改革に
    Column12 「待ち組」は反省すべき?
    第3章 社会の中のグレーゾーン
    「格差」批判と既得権の維持―論争の吟味が課題
    Column13 格差解消に既得権者ができること
    政府の大きさを考える―国家像の議論が必要
    Column14 矛盾
    社会の中のグレーゾーン
    Column15 上限金利問題を考える
    「回復感」乏しい景気回復―今から将来の準備を
    Column16 悪玉論は心地よい
    「小さな政府」と満足度―支出の中身が重要に
    Column17 教育の充実こそ、格差対策の本流
    「働く貧困層」という問題の本質―教育訓練が急務に
    Column18 男女差別解消の思わぬ結果
    第4章  格差社会の行方
    「美しい国」を支える経済学―家計も知識武装を
    Column19 経済学は役に立つか
    「平時」こそセーフティネットの構築を―相次ぐ改革の提起
    Column20 地域格差をどう考えるか
    問題と対峙、脱パターンで―感情を排し、本質に迫る
    Column21 人事も経理も中国へ
    少子化時代の「教育改革」―世代間の連帯が重要に
    Column22 脳科学と経済学が教える格差対策
    「雇用の質」と格差問題―冷静な議論が必要に
    Column23 長時間労働を解決するには
    格差に影落とす「国際化」―地道な対策の実行を
    Column24 成長・格差論争の共通の罠
    格差論議―日米に隔たり
    米で深まる最低賃金論争
    あとがき
    (大竹文雄ブログ:2008/6/25)

  • 時事問題を扱ったコラムを編んだものだが,経済学の基礎がない自分には難しかった。学者だからなんだろうけど,結構冷たい印象。経済学は万能ではなかろうが,経済学的には明らかに誤った政策が実現してしまうというのもどうかと思う。

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著者プロフィール

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授。

「2023年 『検証・コロナ期日本の働き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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