じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路 (単行本)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480867254

感想・レビュー・書評

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  • 個人的にはなかなか面白く読めたけれど、ある程度の哲学または経済学の教養がないと読み進めるのが苦痛かもしれない。
    思想の解説も多く、歴史的な背景から解説してくれるので、そうゆう読み物だと思えば楽しめる。

  • 資本主義の初期、衣食住足りれば競争は穏やかになると予測されていた。しかし人は周りと比較しもっと多くを求めるようになり、環境に負荷をかけ弱者は貧しさから抜けられない構造が常態化してきた。貪欲になるのではなく足るを知ることで社会は成熟すると唱える本だが、今足りないからではなく、将来の不安にかられ、望む以上に働いている人たちの検証は、そこまで深くなかったと思う。ベーシックインカムの考え方は絵に描いた餅みたいだ。ケインズや、この本に対して書かれたものがあるだろうから、それらを読んでみたくなりました。

  • 経済学と同程度、世界史、哲学、宗教の知識が必要で学部生の私には難しかった。

  • 序論と第6章を読み他はざざっと。
    学者さんが書く本は説明のための説明が多くて、ちと読みにくいのが難点。

  • 必要なのは、一本の葡萄酒と死の本。
    ほんの少しの肉。
    そして誰もいないところで二人で座っている私たちは、
    スルタンの王国よりも豊かだ。

    ‐ウマル・ハイヤーム

  • ☆欲望の資本主義(greedy)

  • 経済学は哲学と倫理学を必要とする時代となったんだ。

  • お金
    経済

  • 【由来】
    ・東洋経済

    【期待したもの】
    ・資本主義のブレイク・スルーはどこにあるのか?

    【要約】
    ・ケインズはかつて社会が豊かになったら、労働時間は減ってゆき、所得は再分配され、豊かな社会が到来すると予言したが、それは実現していない。その理由は、目的のための手段が目的化してしまったこと、手段を制御するための規範が変容し、形骸化してしまったことによる。このため、新たな規範(目的)に準拠し、それを可能にする政策を進めていく必要がある。

    【ノート】
    ・ニーモシネ

    ・ かつてケインズは、経済活動の発展と共に富は社会に行き渡り、労働時間は短縮し、豊かな生き方に時間を使える社会が到来すると予言した。しかし、現実ではそうなっていないのはなぜか。著者らは、ケインズすら暗黙のうちに認めた、「一定のラインに到達するまでは金儲け主義でもいい」というパラダイム(「ファウストの取引」)が変質して目的化したことを理由に挙げる。これは、欲望、貪欲にも通じる。
     また、「幸福」という概念が曖昧模糊としており、豊かな生き方の基準たり得ないことも論証してみせる(あんまり論証された感がないけど)。そして「7つの基本的価値」が、その基準たり得ると主張する。いわく、1.健康、2.安定、3.尊敬、4.人格または自己確立、5.自然との調和、6.友情、7.余暇。
     また、それを実現するための政策として、ベーシック・インカム制度の実現と、広告が欲望を刺激するため広告税を導入することを提案している。

    ・著者はケインズ研究で有名らしいのだが、本書では、かつての資本主義が持ち合わせていた道徳感や倫理、そして「幸福」という概念についての検証を行っているため、古代ギリシャから現代のドイツ哲学まで議論の流れも視野に入れている。しかし、近現代以降の哲学に関する言及は付け焼き刃感が拭えないというのが率直な感想。また、文明批判のレトリックが、すこぶるアドルノを思わせるものだったこともあり、少しチグハグな印象を感じた。

    ・結局、これまでの「科学的」な態度では資本主義の肥大化・暴走を制御することはできないから、エイヤ!で、規範を立てましょうということか。「7つの基本的価値」について、「この種のリストはそもそも正確にはなり得ないものであり、誠実な不正確のほうが、偽りの正確性を追い求めるよりよいと信じる(P220)」との記述があるが、これは、従来の議論の作法では行き詰まってしまうから、その路線は採りませんという開き直りの表明だろう。言ってみれば、この開き直りに説得力を持たせるために、約200ページを割いて、これまでの経済学、社会学、哲学の議論を、検討してはダメ出し、ということをやってきたと言える。

    ・そんなわけだから、近代科学のパラダイムを脱構築しようとする力強い宣言の書と取ることもできるが、経済学の意匠をまとった「あいだみつを」と取ることもできる。

    ・ なお、「金だけは『これだけあれば十分』というのがない」というのが最初に提示されるテーゼなのだが、これは佐藤優も、色々な著作で述べている。例えば「人に強くなる極意(青春新書)」で「いくらあっても満足が得られないのがお金の本質(P144)」と言い、「資本主義がそのエゴをむき出しにしてくる(P153)」と記しているし、資本論を解題しながらもう少し丁寧に議論しているのが「はじめてのマルクス」だ。

    ・それにしても「強欲」などと言われてしまうと仮面ライダーオーズを思い出さないわけにはいかない。この連関については、いずれまた記したいと思う。

    【目次】
    第1章 ケインズの誤算
     ケインズの予言の結末
     平均の幻想
     なぜケインズの予想は外れたのか
     ・働くのが楽しい
     ・働かざるを得ない
     ・もっともっと働きたい
    第2章 ファウストの取引
     ユートピアという発想、夢から歴史へ
     経済学者〜強欲から自己利益へ
     文学における比喩としてのファウスト
     カール・マルクスの外れた黙示録
     報復の失敗〜マルクスからマルクーゼへ
    第3章 富とは-東西の思想を訪ねて
     ヨーロッパとアジアの経済観
     よい暮らしという観念の消滅
    第4章 幸福という幻想
     幸福感の歴史
     幸福経済学
     幸福経済学の誤り
     ・幸福度調査の問題点
     ・倫理的な問題点
    第5章 成長の限界
     成長の限界
     環境保護主義の倫理的ルーツ
     自然との調和
    第6章 よい暮らしを形成する七つの要素
     基本的価値の選択基準
     七つの基本的価値
     1.健康
     2.安定
     3.尊敬
     4.人格または自己の確立
     5.自然との調和
     6.友情
     7.余暇
     基本的価値の実現
    第7章 終わりなき競争からの脱却
     徳への回帰
     基本的価値を実現するための社会政策
     ベーシック・インカム
     消費に駆り立てる圧力を減らす
     広告を減らす
     富裕国と貧困国

  • 平均だけを見ても意味はない。分布も見る必要がある。

    ABEシンゾーは平均さえ上がれば良いと思っているのだろうが、いずれそのしっぺ返しにやられるはず。

    覚悟せよ

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著者プロフィール

ロバート・スキデルスキー (Robert Skidelsky)
経済史家。ウォーリック大学名誉教授、英国学士院会員、貴族院議員。ケインズ研究の世界的権威。著書に『ケインズ』(岩波モダンクラシックス)、『なにがケインズを復活させたのか?』(日本経済新聞出版社)などがある。

「2022年 『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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