象徴としての女性像: ジェンダー史から見た家父長制社会における女性表像

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (513ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480873217

作品紹介・あらすじ

家庭内では出産・育児を引きうけ、また劣等であるがゆえ社会から遠ざけられ、さらに、男をたぶらかす悪者とされてきた、物言わぬ「女」たち。彼女らがどのようにとらえられ、表象されてきたか-その波瀾万丈な変遷を丹念にたどる新しい美術史。

感想・レビュー・書評

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  • フェミニズムの観点から西洋美術史を読み直していく大作。古代地母神系の女神がギリシャ神話やキリスト教に飲み込まれて低い地位に落とされていく様子や、キリスト教における女性の描かれ方、レイプという行為についての象徴性について…など、テーマごとに膨大な資料と引用を元にイメージの変遷を通時代的に見ることが出来る。美術史・西洋史の知識教養がろくに無い私でも分かるほど詳細かつ丹念に解説されていて非常に面白かった。また、自分が何となく「変だな?」と感じつつ知識教養的な裏付けが出来ずにモヤモヤさせていた物事をすっと言語化してくれていて快かった。たまに少し飛躍しすぎではと思う箇所もあるにはあるが、作者の研究とこの本にかける情熱というか執念みたいなものを感じて、そこもそこで好きだった。大変面白かったので図書館で借りるのではなく現物を買おうかな、と思ったらネットショップはおろか出版社在庫すらない…古本も軒並み全滅。いつかご縁があったら手にしてみたいです。

  • イタリアのテレビでは乳首と陰部を軽く隠した程度の「衣装」でクイズ番組の隅で番組進行に参加せずにニッコリ〜している女性多。(そういう番組に出たいとイタリア中から勝ち抜き選択戦に出場したりしてる少女達x何千人)

    一方、上から下まで隠れる仕立ての悪い外套とベールでノシノシ歩いている回教徒移民の女性あり。(家の外に出られるのはまだいい方で一人での外出、買い物ゆるされず幽閉されている女性x何千人)

    両方ともに忌々しい、不可解な、すっきりしない、不快感をずっと感じてる。

    なぜゆえ、21世紀におよんでまで女は自分を性的客体にするのか?
    なぜゆえ、21世紀におよんでまで女は家畜の扱いに甘んじるのか?

    そらそーだ、何千年も象徴、画、言葉、法律、伝統、なんでもかんでもを動員して女は劣等であり、男の性欲/支配欲の対象そして子孫繁栄の空の器としての存在理由しかない、と刷り込まれて来たのだからと若桑女史は唱える。

    そして
    ー(男性支配社会の原理である)暴力と恐怖を代行する女
      (JudithとかG.I.Jane)は英雄たりえない。
    ー男性原理に加担することでは男女両性の平等は構築されない。
    ー暴力にかわる原理によって平等を得るべきである。

    若桑女史はその先駆けとして男性が主体であった「美術」の歴史を女側から鋭く分析、ここにも、そこにも、あそこにも「女は劣等」「女は隷属するべし」という観念をううえつける象徴が暗示が、の500頁。
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    古典においてアマゾン征伐が繰り返し取り上げられたのは
    >アマゾンが男性に従属することを拒否した種族である。
    >彼女らは母性を拒否し、時々男性を襲って妊娠し、
    >女子だけを残して男子を捨てる。
    >これはまさしく「正常な」男性社会の「逆さま」の世界
    >正常な社会では、男が女を遅い、女の子を捨てるからである。
    それゆえ、このような女がいないようにするためであった。
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    拍手喝采!

    母権/女性中心社会になることは望まない。男性を撲滅するのではなく、性差が差別、階級でなくなる社会でこそ男性も幸せになれるというもの。

    折角の若桑先生の分析なんだが、21世紀におよんでまで喜んで性的客体になり男に従属することが幸せだと思っているらしい女性がまだまだ数多く、世界人口の過半数が父権家長思想の上に成り立つ回教とキリスト教信者。
    残念ながら性差なき社会はまだまだ遠いようだ。


    もっともっと若桑女史は長生きしてもらい歴史を「あばいて」もらいたかったのに!
    ご冥福を祈ります!


  • 女性像の変遷を数多くの図版と事細かな研究で読み解くジェンダー美術史。私は特に最終章にいたく感銘を受けた。表紙のクラナハのユディトも好み。

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著者プロフィール

若桑みどり (わかくわ・みどり):1935-2007年。東京藝術大学美術学部芸術学専攻科卒業。1961-63年、イタリア政府給費留学生としてローマ大学に留学。専門は西洋美術史、表象文化論、ジェンダー文化論。千葉大学名誉教授。『全集 美術のなかの裸婦 寓意と象徴の女性像』を中心とした業績でサントリー学芸賞、『薔薇のイコノロジー』で芸術選奨文部大臣賞、イタリア共和国カヴァリエレ賞、天正遣欧少年使節を描いた『クアトロ・ラガッツィ』で大佛次郎賞。著書に『戦争がつくる女性像』『イメージを読む』『象徴としての女性像』『お姫様とジェンダー』『イメージの歴史』『聖母像の到来』ほか多数。

「2022年 『絵画を読む イコノロジー入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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