- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784480894106
感想・レビュー・書評
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筆者は武術家かと思ったら、大学教授だった。日本刀にまつわる日本人の精神性、宗教観と、室町時代に発祥・発展していった日本の剣術についてかなり細かく解説している。
私自身、柳生新陰流の流れを汲む殺陣道場にかれこれ20年通っており、道場で習った動作や言葉が出てきたりする。しかし本書では演劇要素の殺陣より実戦を想定した剣術の解説に終始している。ただ実戦的なだけでなく、そこにある精神性(武士道、ともちょっと違う)が述べられている。
動作がかなり細かく解説されているが、読んでも理解はできない。武術・武芸、さらには芸事などは書面や写真(動画含む)などで継承できるものではないと実感する。だからこそ伝統芸能が一子相伝で継承され、そして本書でも時折出てくるように、時代とともに変化していく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
剣術とは無関係な素人レビュー。
オビには「近世剣術「新陰流」の優れた術理を明快かつ詳細に説き、身体論、日本人論として秀逸な一書。」とある。
恐らく、そういう方面に聡い方であれば、第三章にある十の太刀筋についての記述は、非常に分かりやすいと感じるはず。
しかし、この本をただの剣術書としていない所は、その「日本人」論的な部分である。
日本人が鉄器を持ち始めたのは、殺戮の為ではない。
稲作文化の栄えたこの国において、鉄器は農耕と離せない豊穣の神具であった。
いつか読んだ文にも、例えば多く古典が残されている平安時代においてさえ、殺戮のシーンというのは描かれない。
それは芸術性を高め、日本刀と成る。
勿論、その後、剣は道となり、筆者が言うには法(のり)となるわけだが。
内田樹は合気道について「どのように身体を使えば、どのように動くか、ということを型を以て知ることは、自分自身の内面を、知らなかった部分を知ることに通じる」というような事を話していて、それは本書にも通じるように思う。
相手をどう動かし、どのタイミングで剣と身を一つとするのか。
人が剣と一体となる、とはどのようなことか。
結局、必勝に至るには、自身についてよくよく知らなくてはならない、そんな哲学が含まれているのだと感じた。
およそ自分から手に取ることのない分野の本を読んだことは、貴重だった。 -
この本は、新陰流の秘伝書と言ってもいいのではないかというくらい詳細に技の描写がされている。また、個々の技の解説にとどまらず、全体としての技の成り立ちや、刀身一如の意味など剣の道を俯瞰的に描かれており非常に面白かった。
著者プロフィール
前田英樹の作品





