なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484112244

作品紹介・あらすじ

気鋭の弁護士とFree論者が大放談!著作権を知れば、デジタルとコンテンツの未来が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 岡田氏の人となりはあまり好きになれないのだが、氏の提示するものはブレストレベルと斬って捨てるには惜しい魅力がある。
    どこかで聞いたような、現実味が無い、といってる間に気がついたら仕組みになっているかもしれない。

  •  本書は、著作権法に詳しい福井健策弁護士に対し、岡田斗司夫さんが様々な疑問をぶつけ、そこからやりとりがはじまるという対談本。福井弁護士が質問に答える中で、著作権というものの考え方があぶり出されている。著作権を原理的なレベルから考え直すだけでなく、更にこの先の著作権のあり方やコンテンツのあり方についてまで話が展開するという、かなりスリリングな内容となっている。

     一見すると、時に突拍子もないと思わせるくらい自由な岡田氏の発想に目が行く。
     確かに、著作権とは何かという問いを掘り下げるとき、岡田氏の発想は上手く機能している。反対に、岡田氏の疑問を受けて現行の著作権を説明する福井弁護士がやや苦しそうに見える部分もあった。
     ただ、質問や批判というのは構図として攻撃側に回るので痛快に見え、逆に質問や批判を受ける側というのは守勢に回るので冴えないように見えるものである。ここで大事なのは、現状に疑義を呈し、批判をする側がどれだけ魅力的な対案を示せるかである。しかし、問題点や疑問点をぶつけるレベルでは非常に面白かった岡田氏の言も、現状を踏まえた上でこれからどのような制度を構築するかという段になると、途端に説得力がなくなってくる。

     本書の最後の方で、福井弁護士は全メディアアーカイブ構想を提示している。詳しくは本書をお読みいただきたいが、これは利用者の利便性やクリエイターへの利益還元、コンテンツ収集に加えて、更には諸外国とのプラットフォーム競争まで全方位的に見据えた構想である。現行の著作権制度の機能不全を修正しつつ、著作権者にとっても利用者にとっても使いやすいシステムとして注目に値する。
     これに対して岡田氏は、全メディアアーカイブ構想にポイント制度を組み込んで税金がかかるのを回避すればどうだなどと細かい話に終始するようになる。福井弁護士の全方位的な構想に対し、クリエイターの食い扶持の話に終始するところは、やはり見劣りすると言わざるを得ない。
     著作権の究極目的は文化の興隆・発展・継承である。利用者の利便もクリエイターの権利も究極はここに還元される。せっかく福井弁護士がそれを見据えた大きな視点から構想を語っているのに、岡田氏から制度全体レベルの話が最後まで聞かれなかったのは、やはり残念という他ない。

     二人のやりとりを読んでいて思い出したものがある。以前、修辞学者の香西秀信教授の本を読んでいたときに出合った「逆説は通説を打ち負かさない」という指摘だ。
     逆説は通説を鮮やかにひっくり返すもので鮮やかな印象を与える。が、所詮は外連であり、逆説というのはあくまで通説に寄っかかる形でしか存立し得ない。また、通説を打ち負かした逆説は、その逆説が通説となることでやはり逆説としては存在し得ない。
     いずれにしても、逆説というものは寄生的な宿命を負った性質のものであり、それ単独では存在し得ないものなのである。

     岡田氏の言も、この逆説の域を出ない。
     現状の問題点の指摘というレベルにおいては見栄えがするが、現状の制度をどう変えるかという段になると途端に頼りなくなる。というより、明確な制度全体の枠組みが見えてこず、「クリエイターでは食えない」という辛い現実しか見えてこない。
     そもそも、岡田氏の想定にはベーシック・インカム(BI)など、著作権を遙かに超えた社会システムが前提とされているが、BI自体が賛否両論あるような不安定なものであることに鑑みれば、どうしても夢物語(それもディスとピア的な)という印象を受けてしまう。サブマネー導入の話にしても、その動機に租税回避目的がちらつくため、出来る出来ないは措くとしても(サブマネーを処理する諸々のコストが勘定にはいってない点で個人的には全く説得力を感じなかった)、どうしても矮小な印象を受けてしまう。

     対する福井弁護士は、一見すると岡田氏の現状"攻撃"に対して守勢に回り、"劣勢"に映る。
     しかし、いくらツッコミを受けても決定的な破綻を来さない。人類の歴史の中で築き上げられてきた著作権の概念・思想というのは、やはり時代の中で磨かれ、洗練されてきたものであり、「通説というのは骨太でタフだよなぁ」と思わされた。

    (ちなみに、私が通説のタフさを一番感じたのは、著作権法30条の私的利用を利用するため、コンテンツを共有したい人たちと1万人単位で養子になるという岡田氏の"思考実験"の下りだ。
     実はこれ、相続税回避で似たようなことが行われていた。かつて、相続人が死ぬ直前に養子を取って相続税の控除額を上げるということが横行した(酷いケースでは10人以上も養子がいたとか…)。
     相続税の場合は租税法律主義により法改正の手当がなされたが、著作権法に関しては本書で福井弁護士が解説されているとおり、解釈でそのような脱法行為は認められないことになっている。

     また、岡田氏は各種ポイント(サブマネー)や現物の送り合いで税負担を逃れようとする旨の発言をしている。
     しかし、把握の難易はあれど現金以外でも現行法下では所得に該当しうる。
     この辺の現行税制を踏まえないところも、岡田氏の発言が外連の域を出ない思いつきのように感じられた。)

     自由な発想で思考実験をするのは確かに楽しい。楽しいだけでなく、制度全体を視点を変えて見直すことにも資する。
     しかし、それだけだと論理パズルと同じ頭の体操で終わってしまう。この点、いくら制度疲労を起こしているとはいえ、歴史の中で培われ・磨かれてきた現行制度というのは、多少の批判や問題で息詰まるほどヤワではない。その現状を変えようと思ったら、現状と具体的データを十分に把握した上で、現行制度よりも魅力的で説得的な代案を出さねばならない。
     本書を読んでいると、ふとそんな「真のクリエイティブな批判・議論」について考えさせられた。

     やや否定的な表現が目立つ紹介になってしまったが、著作権についての議論を通じて「通説はタフだ!」というのを強く感じた。もちろん、一読の価値は充分ある一冊である。

  • 一般の人にも身近になりつつある「著作権」を中心に、オタキング岡田さんと弁護士福井さんが対談形式で議論します。

    「全メディアアーカイブ構想」はぜひ実現して欲しいと思います!!

    目次ベースですが、特にここら辺が面白かった。
    「電子書籍の自炊はいけないこと?」
    「法律で遊ぶのは大人の務め」
    「人はデジタルというパンドラの箱を開けてしまった」
    「マネタイズを諦めれば、奴隷から解放される」

  • 誰もが簡単に、デジタルでコンテンツを作れて、他人の著作物を簡単に複製できるようになった昨今。
    コンテンツに著作権はつきものですが、今の世の中の有りように、上手く対応しきれていないようです。
    そんな著作権について、色々な切り口で解説されています。

    面白かったのは、著作権についてよりも、これからのクリエイターの有り方や『全メディア・アーカイブ構想』などと言った、これからの新しい仕組みについての話でした。
    現行の制度に対して文句を言う前に、試行錯誤を繰り返して何かを作り上げて行く方が良い事を教えてくれました。
    デジタルはあくまでも道具であって、全てではないと、改めて思いました。

    対談として書かれているので、硬そうなイメージの著作権がやんわりと説明されています。その分、ちょっと読みづらかったです。
    入門編なのでコレくらいが丁度いいのかも知れません。

  • デジタル時代のぼくらの著作権入門』:岡田斗司夫・福井建策(11.12)
    ネットで簡単に同じものがコピーされていく時代の著作権。
    もはや誰にとっても身近な問題なのだと思った。
    プロにとって怖いのは、違法にコピーされることよりも
    多くのアマが無償で作品を発表することなのかもしれない。
    今ある著作権の形態を見直しつつ、
    どうクオリティを保つのかが最大のポイントだな。
    ネットを通じて膨大な量の作品が流れていく中で
    むしろライブの希少性が上がる、というのは確かにそうだと思う。

    岡田斗司夫が言う「作品は趣味で、お金は仕事から」なんて
    まずちゃんと仕事がなければ成り立たないし。
    そしていくら作品が基本だとしても、
    発表の場を提供するプラットフォームが絶大な力を持っているのも確か。
    アカウントを取り消されたらなすすべはない。
    考えることはたくさんあるなあ。
    福井建策という人の本はもう少し読んでみたい。

  • 岡田斗司夫さんと、福井健策さんの著作権についての対談集。

    この本の面白いところは、法律の専門家である福井さんに、コンテンツビジネスのことを考えまくっている岡田さんが、かなりインサイドギリギリの危険球を投げまくっているところ。岡田さんの突飛だけれど本質を突く質問に、福井さんは法律の専門家として真摯に答えているところが面白かった。

    結論から言えば、コンテンツで稼げる人間は日本で10000人くらい、というのはかなり的を射た数字じゃないかと思う。現在はプロとアマの境目が限りなく薄くなり、素人が大人気になる一方、玄人はつねに厳しい目に晒されてオワコン化していく……

    そういうなかで、文化でご飯を食べていくための「著作権」や「それ以外のビジネスモデル」について、さらには国際的な競争力の維持について、物凄く細かく幅広く論じ合っているところが面白かった。結論は、やっぱり「クリエイティブは趣味でやったら?」に尽きるのかなぁ。それが歴史的に観ても伝統的な在り方だし、現在に至って吟遊詩人が復活する世界というのも、それはそれで面白い。

  • 203冊読了。
    10年前の本だけど今も問題は変わらない。
    自炊から代行業の是非、著作権問題とコンテンツ業だけで食えるのは1000人程度、オプトアウト、ビットコイン?などなど、どうすればコンテンツ業界、クリエイターが次々とコンテンツを紡いで生きやすい社会になるかを語り合う。
    一筋縄ではいかないだろうというのはわかったけど、うまくバランスを取るにはどうすればいいんだろう。日々変えながら最善策はないのかもしれない。

  • エヴァンゲリオンで有名なアニメ製作会社 GAINAX の元社長で現在は評論等で活躍している 岡田斗司夫 と著作権を専門に扱う弁護士 福井健策 が著作権とコンテンツの今と今後について語り合う対談本。「家族1万人いたら自由に私的複製してもいい?」「プロとして食えるのは日本で1000人」「救うべきは貧乏なクリエイターではない」などなどコンテンツビジネスの最前線を経験している 岡田斗司夫 の大胆で奇抜な発想に 福井健策 が次々に答える。本書を読めば著作権に対する考え方やイメージが変わるかもしれない。

  • 昨今の著作権がらみの議論から、評価経済の話にまで広がる。その辺りの前提知識がある人には面白く読める本かも。
    コンテンツに関わる人なら一読してみては。

  • 昨今、ネットの普及で今まで敷居が高かった作品の発表が容易にできるようになり、ネット上には素人、セミプロのさまざまな漫画、小説、映像、音楽等の作品が溢れていて、初音ミクなど独自のムーブメントを起こしているものもある。
    今後コンテンツで飯を食える人は非常に少なくなるので、一握りのプロ以外は兼業で作品を作っていけば良いというのが岡田斗司夫の考えである。確かにCDやDVDとか買わなくなったし、雑誌や本も売れてないもんなあと納得する部分が多かった。
    両名ともコンテンツを愛している人たちなので、著作権を守ろうとする利権者のちからが強くなり過ぎたら、面白いコンテンツが生まれなくなることを憂いていて、その部分はすごく共感できた。
    本が対談形式なので、堅い内容でもすごくわかりやすかった。

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。通称、オタキング。1984年にアニメ制作会社ガイナックス創業、社長をつとめた後、東京大学非常勤講師に就任、作家・評論家活動をはじめる。立教大学やマサチューセッツ工科大学講師、大阪芸術大学客員教授などを歴任。レコーディング・ダイエットを提唱した『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーに。その他、多岐にわたる著作の累計売り上げは250万部を超える。現在はYouTuberとして活動し、チャンネル登録者数は90万人を超える。

「2023年 『誰も知らないジブリアニメの世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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