前作に引き続き、第二弾を読破。
少々ポジティブ過ぎるきらいは前作と同様。必ずしも皆にあてはまるとは思えないが、色々と興味深い言葉や実験とその結果が書かれている。
P.11 アメリカの著名な発明家アラン・ケイの有名な言葉があります。「未来を予想する最前の方法は、未来を発明することである」。
P.24 イノベーション・エンジンの内部は、知識、想像力、姿勢の三つで構成されます。
・知識は、想像力の燃料です。
・想像力は、知識をアイデアに変える触媒です。
・姿勢は、イノベーション・エンジンを動かす起爆剤です。
イノベーション・エンジンの外部は、資源、環境、文化の三つで構成されます。
・資源とは、あなたが所属するコミュニティに存在するすべての資源です。
・環境とは、家庭や学校、職場など、あなたが過ごす場所を指します。
・文化とは、あなたが所属するコミュニティの集団的思考、価値観、行動様式を指します。
P.28 「五+五はいくつですか?」。この問いの答えはひとつしかありません。でも、「何と何を出せば一〇となりますか?」。この問いの答えは無限です。マイナスでもいいし、少数だっていいのです。
どちらも単純な足し算の問題ですが、問いの立て方ーーつまりフレームが違って居ます。じつは、質問というのはすべてフレームであり、答えはその枠のなかに収まります。そして、いま見たとおり、問いの立て方を変えることによって、答えの幅はがらりと変わってきます。アルベルト・アインシュタインは、こう言ったそうです。「生死のかかった問いを一時間で解かなくてはいけないとしたら、最初の五五ふんは、問いを考えるのに使う。適切な問いさえわかれば、五分もかからず解けるから」
P.34 グラミー賞も受賞した人気バイオリニストのジョシュア・ベルは、普段は何百ドルも払ってくれるファンで埋め尽くされた会場で演奏しています。そんなベルに、二〇〇七年、ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ジーン・ウェインガーテンから、ワシントンの地下鉄駅構内で演奏して欲しいとの依頼が舞い込みました。状況設定が変わった時の人々の反応を調べようというのです。ベルはカジュアルな服装に野球帽をかぶり、ストラディバリウスで名曲を演奏しました。その場に隠しカメラを設置し、通行人の反応を記録しました。その日、ベルの前を通った一〇九七人のうち、足を止めて演奏に耳を傾けたのは、たった七人でした。コンサートとおなじ曲を演奏したにもかかわらず、です。四五分間演奏してもらったチッブは、わずか三二ドル十七セント。そのうち二〇ドルは、ベルだと気づいたひとりの人からのものでした。ベルが演奏したのが舞台上ではなく、聞く方もコンサートホールに座っていたわけではないので、バイオリンの音色は美しくても、その存在に気づいてもらえなかったのです。フレームが変わったら、舞台でスポットライトを浴びている人と同一人物だとみられなかったわけです。
P.56 自然には結びつかないアイデアを結びつけることは、革新的な科学研究の特徴でもあります。それができる科学者は、大きな発見をします。スタンフォード大学グローバル・ヘルス・イノベーション・センターの責任者ミシェル・バリーは、途上国に長期滞在し、質病の根本的な原因の究明と根絶に取り組んでいます。バングラデシュには、命に関わるほどの高血圧症の妊婦が大勢います。原因について現地の調査官と議論しましたが、はっきりとした答えは出ませんでした。ただ現在、ミシェルらは、海面の上昇が関係するのではないかと考えています。バングラデシュでは、地盤が沈下しつつあり、海水が水田に流れこんでいます。このため、米の塩分含有量が高くなっているのです。妊婦は塩分を吸収しやすいことから、米の塩分量の増加が高血圧につながったのではないかとかんがえられるのです。この事例は、地球温暖化と公衆衛生という、別の二つの重要な問題が絡み合っていることを示す格好の例でもあります。
P.63 人はたいてい解決策を思いつくと、最善だと思えなくても、それにこだわるという落とし穴にはまってしまうのです。どんな問題であれ、最初に思いついた答えは、必ずしも最善の答えではなく、はるかにいい答えが見つけられるのを待って居るのですが、残念ながら、たいていの人は最初の答えで満足してしまい、努力しなければ見つけられない画期的な答えに気づくチャンスを逃してしまっています。
P.85 今は亡きアメリカの小説家、デヴィッド・フォスター・ウォレスの小説を読むことから始めます。
二匹の若い魚が、一匹の年老いた魚の横を通り過ぎた。年老いた魚は通りすがりに「おはよう、君たち。水はどうかな?」二匹の若い魚はしばらく泳いだ後、一匹がおもむろにこう言った。「ところで、水って何なんだ?」
この寓話が言わんとしているのは、何なのでしょうか?私たちは、生きていくうえでもっとも大切なものに気づいていない、ということです。「水」が見えていないのです。
P.107 人はある空間に足を踏み入れた途端、物語の世界にどっぷりつかり、その登場人物になります。自分の役割とは何か、自分に何が期待されているかを自覚します。たとえば、講演会の会場やホテルの一室、あるいは空港のターミナル、病院の診察室、コンサート会場、遊園地に足を踏み入れた時にどんな感じがするのか、どんなふるまいをしているのか、思い浮かべてみてください。それぞれの空間の影響を受けて、ふるまいが違ってくるはずです。おそらく、次のように感じているのではないでしょうか。講演会場ではおとなしく話を聴く人になり、ホテルではあとで誰かが掃除してくれて当然だと考えます。空港では自分がちっぽけに感じられ、病院では待たされても仕方ないと思っています。コンサートでは楽しませてくれることを期待し、遊園地では自分から楽しもうと意気込みます。このように、人はその場の影響を受けるのですから、職場や学校、家庭を豊かな発送ができる場所にしたいのであれば、空間デザインを吟味する必要があります。
P.132 ベンチャー・キャピタルのフラッドゲイト・ファンドのパートナー、アン・ミウラ・コーも、こうした見方に同意します。制約は、すべての企業に必要なものであり、とくにベンチャー企業には必要だと強調します。制約がなければ、間違った戦略を追い続けるばかりで、なんとか目標を達成する方法を見つけようとはしません。経営資源が限られて居るからこそ、創業者は何かを達成するために何かをあきらめるという痛みを伴う決断を下し、工夫して問題を解決しようとするのです。必要なことをするために、したいことをあきらめざるをえません。制約があるので、徹底的に考え抜くようになり、物事に優先順位をつけ、革新的にならざるをえないのです。
P.179 人は生まれた時から実験を続けているわけですが、残念ながら、従来の教育法や職場環境では、実験が支援されず、奨励もされません。教師は一方的に講義し、管理職は従業員にやるべきことを指示します。MITのラウル・シュルツの最新の研究では、自分で情報を見つけさせるのではなく、事実を教え、具体的な指示を与える場合には、もともとある実験の姿勢がなくなり、好奇心も鈍ることがあきらかになりました。この研究について書いたジョナ・レーラーの記事から引用しましょう。
この実験では、四歳児に四本のチューブのついた新しいオモチャを与える。このオモチャが面白いのは、チューブがそれぞれ違ったことをするところだ。一本のチューブからは鳴き声が出るが、別のチューブが小さな鏡に変わるといった具合だ。
第一のグループには、床で拾ったと言って、オモチャを見せる。オモチャを子供に見せながら、偶然一本のチューブを引っ張り、鳴き声を出す。そして驚いた顔をして、「ねえ、みんな見た?もう一回やってみるね」と言う。第二のグループにはまったく違う見せ方をする。知らなかったふりをするのではなく、典型的な教師の教え方を真似るのだ。「新しいオモチャを手に入れたので、その仕組みを教えましょう」と言い、わざと、鳴き声を出す。
こうして説明した後、どちらのグループにもおなじオモチャを渡して遊ばせると、当然、全員が一本目のチューブを引っ張り、鳴き声に笑い出す。だが、その後、興味深いことが起きた。第二グループのこどもは、すぐにオモチャに飽きたが、第一グループは、そのオモチャで遊び続けたのだ。鳴き声では飽き足らず、他のチューブも引っ張り、それぞれの隠された仕掛けを発見した。反応の違いを引き起こした原因は「指示」にあると、心理学者はいう。明確に指示され、知るべきことを教えられれば、自分で探ってみようとは思わなくなる。好奇心とは繊細なものなのだ。
P.216 マーク・トウェインに、こんな有名な言葉があります。「世界一の剣の達人は、世界で二番目の剣の達人を恐る必要はない。恐るべきは、剣を手にしたことがない無知の敵である。こうした輩は、やるはずのことをしないにので、達人は備えができない。そして、やるはずのないことをして、達人を捕え、その場でとどめを刺すのだ」