兄の終い

著者 :
  • CCCメディアハウス
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本棚登録 : 211
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484202082

作品紹介・あらすじ

一刻もはやく、兄を持ち運べるサイズにしてしまおう。

憎かった兄が死んだ。
残された元妻、息子、私(いもうと)
――怒り、泣き、ちょっと笑った5日間。

「わたくし、宮城県警塩釜警察署刑事第一課の山下と申します。実は、お兄様のご遺体が本日午後、多賀城市内にて発見されました」――寝るしたくをしていた「私」のところにかかってきた1本の電話。それは、唯一の肉親であり、もう何年も会っていなかった兄の訃報だった。第一発見者は、兄と二人きりで暮らしていた小学生の息子・良一君。いまは児童相談所に保護されているという。いつかこんな日が来る予感はあった。金銭的にも精神的にも、迷惑ばかりかける人だった。二度目の離婚をし、体を壊し、仕事を失い、困窮した兄は、底から這いがることなく、一人で死んだのだ。急なことに呆然としている私に刑事は言った。「ご遺体を引き取りに塩釜署にお越しいただきたいのです」

兄は確かに優しいところもある人だった。
わかり合えなくても、嫌いきることはできない。
どこにでもいる、そんな肉親の人生を終う意味を問う。

遺体を引き取り、火葬し、ゴミ屋敷と化している兄のアパートを整理し、引き払う。そして、何より、良一君の今後のことがある。兄の人生を終うため、私(いもうと)、元妻(加奈子ちゃん)、そして息子(良一君)の5日間の修羅場が幕を開ける。

「えっ!」と思わず声が出た私に、
加奈子ちゃんは、「ほら、そっち! 早く!」と促した。
まだ心の準備ができていないんだって!

感想・レビュー・書評

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  • 「ぎゅうぎゅう焼き」の村井さんの本。
    途中でやめられず一気に読了。

    読者の多くがお兄さん目線で読んでいるとどこかに書いてあった。が私は、最初から最後まで妹である著者目線で読んでいた。理子ちゃんはそのまま私、のような気さえしながら。

    妹からみた兄像と、母から見た息子像の違い。
    家族だからこそ、許せないこともある。
    いろんな家族の形がある。
    印象に残っているのは、お兄さんとの関係について。
    自分に置き換えて 考えてしまった。

    人間いつ何が起こるかわからない。
    私だって明日死ぬかもしれない。
    その時に備えて、できるだけ物は少なくしておこう。

    葬儀屋に、湯灌してお着物を着せて差し上げる代金が三万八千五百円になりますと言われたら
    「どうせ火葬するのでお着物はけっこうです」
    と言いそうな気がする、うちの夫なら。ガッツあるので^^
    別にいいけどね。

    あ、この本の補稿をちょくちょく村井理子さんがブログに載せてくれるのだけど、すごくいいです、こういうの。
    登場人物の「その後」ってけっこう気になるので!

    http://zazamusi.blog103.fc2.com/blog-entry-1722.html

  • 読みやすい文でさらっと読めてしまいます。内容が重いはずなのに。著者のからっとした文体のせいでしょうね。

    肉親との関わりというのは、好き嫌い愛憎に関わらず中々に切れないものです。切りたいと思っている縁ほど何故か。
    そして著者は最後まで哀しんではいない。と感じます。まだ日が浅い。
    文を読んでも「とにかく大変だったのよー」というどたばた感が強い。父母を送った経験が著者を「太く」させているのか、兄が嫌いだったから哀しいというところまで到達しきれていないのか…日が過ぎると別の感情が出てくるのかなと思いましたね。
    元奥さんからの方が悲しみややりきれなさを感じました。そのように客観的に描写できる著者の物書きとしての目を感じます。

    あとがきに「この世でたった一人であっても、兄を、その人生を、全面的に許し肯定する人がいたなら…(略)…そのたった一人の誰かに私がなろうと思う。」と決意表明(?)がありますが、それもこれからなんでしょうね、と感じました。いやまだ肯定しきれてないですよねと。
    でもそれも、一人残された最後の肉親だから出来ることかもしれないですね。

    日が過ぎてからまたお兄さんのことを書かれるときが来るのでは。時間を置いた著者の感情の変遷をいつかまた読みたいてすね。

  • とても読みやすい文であっという間に読了。
    『だめ女~』『ゼロからトースター~』等でファンになった翻訳家の、ある日不仲の兄の突然の死からの顛末は読むものを引き込ませてしまう。
    周りの人がとても良くて(でも多分それが日常)ラストにはほろっとさせられた。
    これを機に繋がってゆく人のとの縁に幸いを思う。

  • どんな暴言を吐かれても、金を無心されても、憎んでいたり徹底的に避けていても、優しくしてあげればよかったと思えるということは、結局ずっと相手を許していたのではないかと思える。迷惑なところや嫌いなところがたくさんあっても、そういうところのあるその人を総体としては許していたのかなと…(作中では許せないと書いてあったと思うけど) 死んだから言えることなのかもしれないが、死んでも許せないと全てを拒絶することもあると思う。何が許すと許さないとを分けるのだろう。でも死をきっかけに兄との過去を清算したと言えようし、ある意味で幸福な別れ方のようにも思える。
    父が変死し児相に引き取られ先行きが不確定であっても子供の表情を綻ばせる「ディズニーランド」の威力に感嘆した。

  • 今年1番読んで良かったかも

    この本はHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの花田菜々子さんのツイートで知ったんだが、なんか気になったので読み始めてみたがこれは凄かったぁ

    お兄さんが亡くなった。と疎遠だった妹(著者)に連絡が入り、色々な事を終いにさせるべく兄が住んでいた街へ向かう事にする。

    とてもストレートに著者の気持ちが入って来る文章で、困惑と哀しみの強さに引っ張られて自然と視界がぼやけてきて読むのを進められない程でもありつつ、同時にお兄さんの人となり(特にお母さんへの接し方)を知ると一気に嫌悪感が強くなり、違った感情で読み進めたくなくなりもした

    読み進めると胸の辺りが掻き乱されるような感覚になり、自分の体調が本当に悪くなる程でもありつつも亡くなったお兄さんの元奥さんと次々とミッションをクリアーしていくバディ物としては爽快さを感じさせアンビバレントさが逆にリアルさを増す

    登場人物は、本当に優しい人もたくさん登場するが、相手の気持ちを慮る事のできない人や、まるっきりデリカシーの無い言動をする人もいたりして、自分の田舎と重ね合わせてみてなんか納得したりもした

    この本に登場したたくさんの良い人達が登場し、彼らの心優しさが文字からでもガンガンに伝わってきて癒され、そして泣かされ(まく)った

  • 遠く離れ、ほぼ絶縁状態となっていた兄の訃報。
    その子は保護施設に預かってもらっているという。
    終いを託された妹と、兄の元妻とその娘の5日間。
    改めて知る兄の厳しい暮らし、遠く離れてしまっていた兄とその子はどの様な日々を生きていたのか。
    想像以上に良かった。

  • お話としては面白いが、面白いだけ。兄、父、前夫の顔を持つ兄はもちろん、前妻や娘も軽い。暇つぶし読書だったからいいけど。

  • ああもうダメ。読みながら一年前を思い出して漲ってきた。加奈子ちゃんが「もっともダーティーな作業を、猛スピードでやってのけた」あたりで、わたしもスイッチが入った。
    急死した伯父(独身)のゴミ屋敷を片付けていて、コタツに山積みされたエロビデオが崩れた瞬間に「ふざけんな!」、怒りで我を忘れながら1日で全部片付けたよね。偉かったよね、一年前のわたしたち。叔父はお金がなくて一人でどうやってこれから生活していくつもりだったんだろう…。
    村井さんのお兄さんは良一君がいたわけだし、いろんな不安があったんだろう。家族としての軋轢や感情の揺さぶり、思い出もひっくるめて怒濤の五日間、本当にお疲れさまでした。泣ける。

  • 面白い。何が面白いって、読む人によって多分、視点が違う読み方をする点が。

    村井さんなのか、加奈子さんなのか、良一くんなのかわからないけど、それぞれの経験や抱えてる心境によって近いものを選んで自分に重ねて読んでしまうんだろうなあ。

    あっという間に読める。村井さんのブログと同じノリで読める一冊。

  • 疎遠にしていたどうしようもない兄の突然の訃報に振り回される作者。
    混乱や葛藤の中、兄への複雑な思いを抱きながらも事後処理をテキパキと進めていく様子が、時にコミカルに時にシニカルに描かれ、臨場感がありました。一気読みです。
    人生って表裏あるよな~と。

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著者プロフィール

村井理子

翻訳家/エッセイスト。主な連載に、『村井さんちの生活』(新潮社「Webでも考える人」)『犬(きみ)がいるから』(亜紀書房「あき地」)。著書最新刊『兄の終い』(CCCメディアハウス)発売中。

訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(キャスリーン・フリン著、きこ書房)、『ゼロからトースターを作ってみた結果』(トーマス・トウェイツ著、新潮社)、『黄金州の殺人鬼』(ミシェル・マクナマラ著、亜紀書房)などがある。

「2020年 『メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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