しくじり家族

著者 :
  • CCCメディアハウス
3.13
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本棚登録 : 238
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484202280

作品紹介・あらすじ

葬儀はカオス。
耳が聴こえない、父と母。宗教にハマる、祖母。暴力的な、祖父。
ややこしい家族との関係が愛しくなる。
不器用な一家の再構築エッセイ。

“ぼくの家族は誰も手話が使えなかった。聴こえない父と母の言語である手話を、誰も覚えようとしなかった。祖母も祖父も、ふたりの伯母も。唯一、家族のなかでぼくだけが下手くそなりにも手話を自然に取得し、両親と「会話」していた。(本文より)”

聴こえない両親に代わって、ほんの幼いころから「面倒を見る」立場になることが多かった。大人からの電話も、難しい手続きも、わからないなりにぼくが対応するしかなかった。家に祖母の友人などが集まり、楽しそうにしていても、母は微笑んでいるだけだった。社会から取りこぼされてしまう場面が多い母を見て、いつも胸が締め付けられた。どうしてみんな母のことを置き去りにするんだろう。“ふつう”を手に入れたかったぼくは、“ふつう”を擬態することを覚え、故郷を捨てるように東京に出た。それなりに忙しい日々を送っていたある日、滅多に帰省しないぼくの元に、叔母からの電話があった。「あのね、おじいちゃん、危篤なの」……。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読む作者 五十嵐大氏の本である。
    テレビで、「しくじり先生」というものと同じような感じなのかな?と、思いながら、本を手に取った。

    読んでいて、今話題になっているヤングケアラーとも、少し違っている。

    祖父は、元ヤクザ、祖母は、子供を3人成したのに、その一人、主人公の母親の耳が聞こえないという障害の為に、新興宗教にはまる。
    そして、その母は、やはり難聴の父と結ばれるのだが、・・・子供がもし、難聴だったらとの不安で、子供を作らなかったのに、授かった子供が、主人公あり、作者自身である。

    母親の耳の聞こえないというハンデを家族は、心配しながらも、手話も出来ないので、作者が、中心に、両親との対話を主としていたのだが、・・・・
    自分自身も、親から逃避していた。
    そんな時に、頑固で、恐かった祖父の訃報を聞き、実家に戻る事に・・・
    喪主をしてみて、今まで感じなかった事や、人の感情が、理解できるようになっていく。

    どこの家も、明るい家族で、わいわいと、過ごしている家族はどれだけいるのだろうか?と、この本を読んでいて感じてしまった。
    全て、何でもが、上手く行っている家族でも、家の中は、色々あるものだ。

    子供の成長、進学、友人関係、隣人関係、勤めている人は、縦横の社会の関係、金銭感覚、親戚づきあい、病気など、色々複雑さをどの家族も抱えている事だろう。

    全て、人生の終盤になって来て、今まで、色んな事があったのけど、その波をうまく越してきたと、思えるような人生が、幸せな家族だったと、感じるのでは・・・

    作者が、わだかまっていた事が、祖父の喪主をした事で、気持ちが、少しづつ氷解して行き、心が広がって行ったことは、素晴らしい事だと思う。

    ふつうという観念を捨てて、自分を大切、そして、家族を大切に 過ごして欲しいと思いながら、本を閉じた。

  • 一気読み。しくじってはいない気がするけどな。

  • “家族なのに、最後までわかり合えなかった。
    嫌厭し、寄り添わなかった。
    恐れずに近づいていけば、もっと理解できたかもしれないのに。ぼくはずっとそれを放棄し、諦めていた。やがて、取り返しのつかないところまで来てしまったのだ。
    祖父のことをすべて許せるわけではないけれど、それでも、なにかできたことはあったはずだろう。それをしてこなかったことに対して。”(p.106)


    “いなくなればいいと、何度も思った。でも、いざいなくなってしまうと、その気持ちのやり場も同時に失ってしまい、消化不良な想いが沈殿していくのを感じた。いま、祖父に対してなにを思っても、それが届くことはない。もうなにもできないのだ。(p.138)”

  • 著者は、家族関係が複雑で、家族が疎ましく、関わるのに尻込みしていましたが、祖父の喪主を務めることで、少しずつ自分を取り巻く家族への思いが変わっていきます。

    最初、家族をまるごと疎ましく思うなんて冷たいと少し思いました。でも結局は、そんな家族を受け入れる気持ちに至った著者は優しい人なんだなと思いました。

  • 両親が聴覚障害者でコーダの自分から見た家族との関係が軽快なリズムで描かれています。内容はハードなのに、友達に生い立ちを打ち明けるような語り口なので、つい吹き出してしまいそうになります。元ヤクザのおじいちゃんや、宗教にどハマりするおばあちゃん。叔母たちも強烈。そんな中、両親を理解しようとしていた大少年はすごいなと思いました。さまざまな家族の在り方の1つに触れられる作品なので、ぜひ読んでみてほしいです。

  • 5/100
    作者 2冊目を読み終えた。
    元ヤクザの祖父、宗教に浸かってる祖母、聾者である両親である家族のエッセイ
    絶対に許せない筈の祖父の葬儀を終えた作者に思うのは、やはり「人の優しさ」である。

  • ネット記事から知った本。
    ヤングケアラーについて触れた内容じゃなかったかな。
    祖父の臨終から葬儀までの流れを懐古した内容になってるけど、家族の理不尽。家族の不思議をどこか俯瞰しているような視点で書かれてる。
    「家族」って誰にとっても俯瞰した方が心を波立たせないものなのかもね

  • わたしの家はふつうじゃない。なのでふつうではない家族の話を読みたかった。でもなんだろう?読後
    モヤっとした。ふつうではない家族を受け入れることができた作者がうらやましいのかもしれない。

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著者プロフィール

1983年、宮城県生まれ。2015年よりフリーライターになる。著書に『しくじり家族』(CCCメディアハウス)、『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』(幻冬舎)など。2022年には初の小説作品『エフィラは泳ぎ出せない』(東京創元社)も手掛ける。

「2023年 『聴こえない母に訊きにいく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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