三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾

著者 :
  • CCCメディアハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484202297

作品紹介・あらすじ

「朝日新聞」名物・名文記者の技巧25発!
「あの人の文章は、ちょっといい」と言われるわたしになれば、自分が変わる。

本書で身につく技術は、たとえば――
◎文章技術 ◎企画力 ◎時間・自己管理術 ◎読書術 ◎資料整理術 ◎思考法

読者対象は、書くことに苦手意識を持つ人から、これからなにかを表現してみたい初心者、そして、プロのライターや記者まで。「読者は、あなたに興味がない(謙虚たれ)」という冷厳な現実を見つめるところからスタートし、「いい文章」とはなにかを考え、そういうものが書けるレベルを目指す。文章術の実用書らしく、つかみ(冒頭)の三行、起承転結、常套句が害悪な理由、一人称、文体、リズム、といった必要十分なテクニックを網羅するが、単なる方法論にはとどまらず、なぜそうするのかを、自己や他者の心のありようにフォーカスしながら考える。文学作品から、新聞記事、詩歌、浪曲まで、豊富な例示を取り上げ、具体的に解説していく。

生まれたからには生きてみる。
書くとは、考えること。
書きたく、なる。わたしに〈なる〉ために。

また、同時に、本書は「書くという営為を通じて実存について考える」思想書でもある。読み進めるにしたがい、「私というもの」に向き合わざるを得なくなる。言葉とはなにか? 文章とはなんのためにあるのか? なぜ書くのか? 生きるとは? 思索が深まるほどに、世界の切り取り方が変わり、自分が変わる。

わたしにしか、書けないものは、ある――
・文章は、見えなかったものを見えるようにすること
・文章は、見えていたものを見えなくすること

感想・レビュー・書評

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  • 【まとめ】
    1 文章の書き方
    読者は、あなたに興味がない。読者にとって、あなたの書こうとするテーマは、どうでもいい。
    だから、その人の注目を集めなければならない。書き出しの三行は銃であり、伏線だ。その銃で相手をのけぞらせ、残りの文で、伏線を回収しなければならない。書き出しの一文の意味が、全体を読んだ後には、分かる。そうした文を書かなければならない。

    ・うまい文章を書くには
    ①文章は短くする。
    ②形容語と被形容語はなるべく近づける。
    ③一つの文に、主語と述語はひとつずつ。

    しかし、うまい文章=いい文章なわけではない。
    いい文章とは、人をいい心持ちにさせる文章。落ち着かせる文章。世の中を、ほんの少しでも住みいいものにする文章。風通しのいい文章。ギラギラしていない、いい鞘に入っている、切れすぎない、つまりは、徳のある文章。

    ・ストレスなく読める文章を作るには
    ①固有名詞と数詞を減らす。人名や数字を詰め込めば、摩擦係数を高めることになる。
    数字を入れるなら、その数字が、ストーリーを動かす決定的に重要な役割を果たさなければならない。人名や地名を入れるのは、そのデータがなければ、書いていることが理解できないからだ。固有名詞を書くのなら、厳選にも厳選を重ねるべきである。
    ②「など」「いろんな」「さまざま」を消す。曖昧に逃げない。

    ・常套句をなくす。「抜けるように青い空」「燃えるような紅葉」「胸を張る」「唇をかむ」「美しい海」……。
    今日の、この海が、どう美しいのか。別の日、別の場所の海と、どう違うのか。そこを、自分だけの言葉で描き出すのが、文章を書くことの最初であり、最後である。常套句という人の言葉を借りず、どこまでも自分が感じたままに忠実に書くことが、言葉を使うということだ。

    ・起承転結を意識する。
    起…冒頭のフック。
    承…起の説明。この原稿でなにを語ろうとしているのか、簡潔に説明する。だれが、いつ、どこで、なにをしたか。時、場所、登場人物、出来事の概要を説明してしまう。いわゆる5W1Hである。
    転…起で書き起こし、承でおおかたを説明した事象を、自分はどう見ているかを書く。そのことで、読者を転がす。読者の常識を覆す。読者が考えてもいなかった方向に、話をもっていく。飛び抜けた語彙、破綻した文章、ものの見方、なんでもいい。どちらかで、意表を突く。
    結…うまく転がることができれば、結論はおのずから浮かび上がってくる。

    ・転の5パターン
    ・古今に時間軸を広げる
    ・東西に世界を広げる
    ・逆張りしてみる(簡単だが知識がいる)
    ・順張りしてみる(難しい)
    ・脱線してみる(ユーモアがいる)

    ・感情を文章で説明してはならない。場面に語らせる。怒っている人を、「怒った」と書くんじゃない。悔しがっている人を、「悔しがった」と書くんじゃない。怒っていること、悔しいことが読者に分かるような、場面を見つける。エピソードで描く。そのためには、情景を正確に捉えられるよう、五感を磨く。


    2 ライターの道具箱
    一段目…語彙
    二段目…文体
    三段目…企画
    四段目…ナラティヴ

    ①語彙…本を読み、辞書をひく。辞書をひくのは、意味を確認するためにではなく、考え方のベクトルを変えるため。ある語→その類語→その類語→と辿るうちに、ものの見方がどんどん変わっていく。
    語彙を増やすには、言葉を制限してみる。〇〇的、〇〇化、〇〇性といった便利な言葉を排除すれば、その言い換えを考えるようになる。

    ②スタイル…誰が書いても同じものを書いてはいけない。事件や事故、事象をどう見たのか。なにを、どう書くか、そのスタイルを持っている者だけが、生き残る。
    スタイルを操る練習:主語を変える、主題を変える、主義を変える、キャラを変える

    ③企画…すでに世に出ていることを、総覧して、なにか新しい共通項、切り口があるのではないか。共通するキーワード、嫌なことばだが「時代の気分」があるのではないか。そうした目で「世の中を切る」。

    ④ナラティヴ…あるものに触れたとき、〈なに〉に感動したのか、〈なに〉がやばかったのか。その〈なに〉を、具体的に、飽きさせないナラティブで引きつけ、語る。
    自分のほんとうに好きなものから、ナラティブしてみる。自分がほんとうに愛しているものを、語る。
    映画でも絵画でもいい。①まずはつかみがあり、②状況やあらすじを簡単に説明して、③聞き手を引きつける謎をもたせ、④聞き手の予想を裏切る意外な方向へ話が伸びていって、⑤オチがつく。
    ストーリーは有限だが、ナラティヴ(語り口)は無限だ。


    3 読ませる文章
    スピード感を意識する。ダブりを排除する。二文に分けられるものは全て分け、テンポを良くする。
    しかし、短文が続くと単調になるため、短文と長文を出し入れして変化を作る。

    〈例〉
    ギターに引っ張られ、他の楽器もどんどんヒートアップしてくる。どんどんテンポが速まる。ドラムの手数が多くなる。(略)客の興奮も頂点に達する。と、ある臨界点にきて、演奏がバーンとはじける。このドライブ感、余人をもってかえがたい。経験があるからわかるのだが、こういう音楽を聴きながら、車を運転してはならない。人を轢く。
    (緩・急・急・急・緩・緩・緩・超速球)

    形容詞を避ける。いっそ、形容詞だけでなく、連体修飾語や連用修飾語を含めた、広義の形容語を、いっさいやめてみる。


    4 自己管理
    ・自分は世界で一番文章が下手と思っていなければならない。
    ・何かを書き続けることを決めた人は、「好きなとき、暇なときに書けばいい」わけにはいかない。時間帯はいつでもいい、都合のつく時間を、とにかく決める。○時から○時まで、どこそこにいて、原稿を書くと決める。その間は、ドアを閉める。部屋に閉じこもり、たとえ一行も書けなくても、とにかく机に座って、何かを書こうとする。
    ・とにかく読む。毎日二時間、どんなことがあっても必ず本を開ける。
    一時間は自分の好きなものを読み、半分の一時間は
    「課題図書」を読む。具体的には
    ①日本文学(明治から昭和の古典)
    ②海外文学(19世紀までの古典)→世界の見方を学ぶ
    ③社会科学あるいは自然科学→世界の見方を学ぶ
    ④詩集

    15分✕4冊で1時間だ。

    ①〜③については、
    『必読書150』
    『私学的、あまりに私学的な』の巻末リスト
    がおすすめ。
    他にも、②の海外文学については、京都大学文学部が「西洋文学の百冊」をまとめてインターネットで公開している。また、桑原武夫 『文学入門』もおすすめ。

  • タイトル通り。

    目をとめてもらえる文章を書くテクニックが書かれています。
    なのでどちらかといえば、読むぞと意気込んでくれる読者が読む「小説」や「論文」など長編の文章よりは、フラッと来た読者に対する記事など、ライターの仕事向きでしょう。

    でも、文章は読んでもらいたい、伝えたいと思って書くはずと思うので結局どちらの方でも読んで損はないと思う。

    そして読了したわたしはこの感想を文章上達してない!と
    ガッカリしながら書いてますがタメになったとは思います。

    簡単なステージからアドバイスをくれるので読み進めやすい。

    再読でモノにしていきたいと思いました。

  • 文章そのものは書けるけれども、もう少し上手く言葉を選んで文章を書きたい。そう考えている方へお薦めする一冊。

    そもそも文が書けない、という人も読んでマイナスに振れることはないかもしれないけれど、きっと自信をなくしてしまうだろう。それほどに強烈な内容。

    TwitterなどのSNSを通じて、誰もが「物書き」になれる現代。AIが作成した文章の質はますます上がり、人間が書く文章の価値は下がる一方のような気がしてならない。

    そもそも、アマチュアとプロの違いはどこにあるのだろう、なんて気持ちで読んでみたが、アマチュアがここまでやるのには、厳しそう。

    読む側から読まれる側へのシフト。
    誰が読むのか。通りすがりの人間を、惹きつけるための広告として書く場合と、小説の始まりに書く場合は、大きく異なる。

    下手な鉄砲は当たらない、と著者は説く。
    良い文章とは、経験の積み重ねだけでなく、テクニックも兼ね備えていなければならない。

  • 良書、わかりやすかった
    ビジネス文書を書くにあたって不要と思われるものが多々あったが、いちばん印象に残ったのは、文章の熱量という話だ
    説得力のある文章には、熱い熱量がこもっている

    気になったのは、以下です。

    ■ 文章の基本
    ・最初の一文、長くても三行くらいでしょうか。そこで心を撃たないと、浮気な読者は逃げていきます
    ・仕事とは、結句、表現なんですよね
    ・自慢ではなく、一行目はのけぞらせろ
    ・読者はあなたに興味がない、読者にとって、あなたの書こうとするテーマはどうでもいい。冷厳な現実だ。しかし、この事実を認めるところからしか、始まらない

    ・うまいとはわかりやすいことである
    ・その原則は3つだけ。
     1 文章は短くする
     2 形容詞と被形容詞はなるべく近づける
     3 1つの文に、主語と述語はひとつづつ
    短く、近く、シンプルに、― すぐ「うまく」なる三原則
    ・わざわざ難しい言葉は使わない。短い文章でたたみかける
    ・読者は書き手の言いたいことなんてわかっていない。
    ・うまい文章を書く人は、人に対して、世界に対して謙虚です。

    ・めざすのは、ストレスなく読める文章
    ・など、いろんな、さまざまな は逃げ、つかわない

    ・押し売りの感情は響かない
    ・響く文章はエピソードで語る
    ・エピソードを書くために大切なたった一つのこと ― 五感を使う、五感で世界を切り取る、見て、そして、正確に書く

    ■ ライターの心得
    ・基礎トレーニング
     1つめは、感性の力を高める
     2つめは、質問する力を磨く 同じことを聞くのでも、質問の表現を変える
      質問しろ、同意を求めるな、疑問形で聞け―日本語の質問の多くは、疑問形になっていない

    ・うまいといわれる日本語を書くことは至難の業だ。そして、とびきり難しいからこそ、書ける人は有利です
    ・どの世界でもトップにいる人は、きわめて文章操縦力の高い人です
    ・うまいメールの書ける人こそ、出世する人です
    ・手紙でも、メールでも3手で相手玉を積まさなければならない
     ①自分はあなたをしっている
     ②自分はこういう者である
     ③したがって、自分にはあなたが必要だ―あなたにも、自分は有用だ
    ・メールもそうですが、初発の熱量がすべてなんです
    ・仕事を頼む相手は、つねに、世界で一番忙しい人だと思え
    ・最初からカネを話をするのは、無粋でもなんでもなく、必須事項、むしろ礼儀だ
    ・最後に人を甘くみるな
    ・一回限りの関係を求めて近づく人間になってはいけない。一生付き合いという覚悟をもって、仕事は申し込むべきだ
    ・だれも理解してくれなくても、だれに求められなくても、自分のために、世界のために書く。そういう文章は、熱量が途方もなく高ければ、どこかに読者は現れる

    ■ 書くための4つの道具
    ・習慣は、第二の天性。凡才は習慣で、天性を作り上げてしまう

    ①語彙
     語彙の豊かな人が、文章のうまい人
     本を読み、辞書を引く
     抜き書きこそが、語彙を増やす王道だ
    ②文体
     文体、流儀、くせ、ルーティン、約束、品格 つまり、生き方
     4つの主をかえる
      1)主語を変える
      2)主題を変える
      3)主義を変える
      4)主体を変える(=キャラを変える)
     場所を移す。他者からの影響を恐れない。まねる。自分の頭で考え、咀嚼し、消化し、吸収する。それが誤読でも構わない
    ③企画
     企画とは、wたしは、何を書くべきか
     言い換えれば、わたしには、なにが、書けるのか
     だれでもできるということは、あなたでなくてもいい
     なにが、わたしにしか、書けないか
     それは、感情です。エモーションです
     この世で信用できるのは、熱だけだ、何人の人間が真剣になって本気をつくっているのか
     汝、自身を知れ:自分自身を知ることがもっとも難しい
    ④ナラティブ
     なにに感動したのか、なにがやばかったのか、そのなにを具体的に、飽きさせないナラティブで惹きつけ語る
     ストーリー(物語)は有限だが、ナラティブ(語り口)は無限だ

    ■読ませるための3感
    ①スピード感
     2文に分けられるものは、すべて2文にする、原則として、そう考える
     短文がずっと続く文章は単調で、むしろスピード感をそぐ。短文と長文を出し入れする
     日本語も、主語をわざわざ書かなくてもわかるから、省略しているだけ
     適度に主語を省略するのは、文章にスピード感を出すためだけでなく、わかりやすくするために必須の文章術である
    ②リズム感
     話し言葉を、書き言葉に移植する
     間をつくる3つの方法
      1)句読点
      2)かっこ類
      3)改行、一行空き
     猫も杓子も五七調
    ③グルーヴ感
     とにかく簡潔で、事実だけを正確に書け、だから形容詞はつかうな、そのかわり、事実を書くんです
     グルーヴ感とはなにか、Goove 溝のことです

    ■自己管理の技術
    文章を書くとは、品格のある人間になることです
    自分は世界で一番文章が下手、そう思っていなければなりません
    各時間と書く場所を、きちんときめていなければならないんです
    読むと書くはセット

    本は安い買い物である
    紙の本、気に入った箇所にとにかく線を引きまくる、鉛筆でも、3色ボールペンでも何でも構わない、線を引きまくる、徹底的に汚す
    抜き書き帳、もっとも重要な道具

    ■生まれたからにはいきてみる
    勉強はすべてだ、そして勉強とは、言葉を鍛えること、表現を鍛えること、そして、感性を鍛えることである。
    おもしろきことを発見する力、それは結局、感性の鋭さなのだ

    テクストとは、書いた瞬間は、情報量のすくない、やせ細ったものだ、それが、時が経つにつれ、太くなっていく

    文章は、見えなかったものを見えるようにすること
    文章は、見えていたものを見えなくすること

    目次
    はじめに
    第1章 文章の基本
    ■第1発:三行で撃つ――書き出しを外すと、次はない。
    ■第2発:うまい文章――うまくなりたいというけれど。
    ■第3発:すべる文章――読みやすさはきめ細やかさ。
    第2章 禁じ手を知る
    ■第4発:常套句・「としたもんだ表現」――親のかたきでござります。
    ■第5発:擬音語・擬態語・流行語――エモいも、ほっこりも、マジ、やばい。
    ■第6発:起承転結――転を味方につければサバイブできる。
    ■第7発:共感させる技術――響く文章は、説明しない。
    第3章 ライターの心得
    ■第8発:ライターになる――誰にでもなれるが、なれないのはなぜか。
    ■第9発:説得する技術――メール上手は幸せな人生を送る。
    ■第10発:一人称・読者の設定――だれが書くか。だれに書くか。
    第4章 書くための四つの道具
    ■第11発:ライターの道具箱――メンテナンスし、持ち歩く。
    ■第12発:語彙【道具箱・一段目】――増やすには逆に制限する。
    ■第13発:文体【道具箱・二段目】――スタイルのない人間は、みじめだ。
    ■第14発:企画【道具箱・三段目】――なにが、わたしにしか、書けないか。
    ■第15発:ナラティブ【道具箱・四段目】――有限の物語を無限化する最強の武器。
    第5章 読ませるための3感
    ■第16発:スピード感【3感・其の一】――主語と語尾で走り出す。
    ■第17発:リズム感【3感・其の二】――静かな文章でも話芸から盗める。
    ■第18発:グルーヴ感【3感・其の三】――推敲でサウンドチェックする。
    第6章 自己管理の技術
    ■第19発:意見や助言――人の話は、聞いて、聞くな。
    ■第20発:時間管理・執筆環境――いつ書くか、どこで書くか。
    ■第21発:書棚整理術――抜き書き帳で脳内を可視化する。
    第7章 生まれたからには生きてみる
    ■第22発:文章、とは――良く生きる、善く生きる、好く生きる。
    ■第23発:言葉、とは――言葉は道具ではない。
    ■第24発:書く、とは――わたしは、書かなければならない。
    ■第25発:痕跡――わたしは書き残す。あなたが読み解く。
    おわりに
    出典一覧/参考文献・ウェブ

    ISBN:9784484202297
    。出版社:CCCメディアハウス
    。判型:4-6
    。ページ数:320ページ
    。定価:1500円(本体)
    。発行年月日:2020年12月
    。発売日:2020年12月14日

  • 三行で撃つ。31文字で仕留める。長編でも同じ。

    ちょっとでもうまく書けたらと思って買った本。心強い提案がいっぱい、役に立ちまっせ。

    ・三行で撃つ。書き出しが大事。

    ・常套句は使うな。・擬音語・擬態語・流行語に安易につかうな。・共感させる技術ー響く文章は説明しない。・一人称・読者の設定ーだれに書くのか。・書くための道具(語彙・文体・企画・ナラティブ)・読ませるための3感(スピード・リズム・グルーヴ感)。・自己管理の技術(時間管理・執筆環境・書棚整理術)

    これって、短歌を詠うにも大いに役に立つ教訓でおます。

    ・文章は、見えなかったものを見えるようにすること。

    ・文章は、見えていたものを見えなくすること。

    歩くこと。見ること。なんでもいい。小さなことでいい。なにか書いてみる。生きてみることだ。

  • ライター/ライター志望者にとっては大変役に立つ一級の文章読本であり、読み物(エッセイ)としても楽しめる。
    つまり、実用性と娯楽性をハイレベルで兼備する離れ業をやってのけているのだ。大したものである。

    全体がホップ・ステップ・ジャンプの3部に分かれている。
    最初の「ホップ」は初心者向きということになっているが、読んでみれば、その部分にもかなり高度なことが書いてある。
    全体にハイレベルな内容で、けっして初心者向けではない。

    初心者向けの文章読本なら、ほかにもっと好適なものがたくさんある。
    著者と同じく朝日出身の名文記者として知られた外岡秀俊が書いた、『「伝わる文章」が書ける作文の技術』あたりがよいと思う。

    あと、著者の要求水準は少し高すぎると思う。
    〝ライターたる者、◯◯くらいはできないと、プロとは言えない〟式の挑発的言辞が頻出するが、その多くは、「いや、そんなこと、プロのライターでもできていない人は大勢いるだろう」と思うもの。

    つまり、著者は本書で、たんにライターとしてメシを食っていくだけではなく、抜きん出た文章家になるための心得を説いているのだ。

    本書のアドバイスにはおおむね同意するが、一部に首肯できないものもある。
    たとえば、常套句を「親のかたき」と思って文章から徹底排除しろと著者は言うのだが、私はそうは思わない。

    常套句・紋切り型は、多用は禁物だが、少しは使ったほうが文章がわかりやすくなる。文章のすべてが独創的表現であったら、かえって読みにくいしわかりにくい。

    あと、「ジャンプ」編の終盤(つまり本書全体の終盤)あたりは、抽象的でわかりにくく、蛇足だと思った。

    ……と、ケチをつけてしまったが、全体としてはとてもよい本だ。

  • 先日のビブリオバトルでは8冊の本の中から本書と同じく近藤康太郎さんの著書「百冊で耕す」が決選投票に残りました。本書はチャンプ本にはなりませんでしたが、面白そうなので読んでみました。

    結論を言えば、本書は読むべき1冊と思います。

    著者の近藤康太郎さんは朝日新聞編集委員で、現在は大分県日田市在住。文章を教える私塾を主催したり、漁師や百姓としても活動。新聞紙面では「多事奏論」、「アロハで田植えしてみました」、「アロハで漁師してみました」の連載を担当されていて、要は書くことのプロです。
    「はじめに」で「ちょっとうまく書けたら、と思う人へ文章の書き方、その実用書を書くことにしました」とある通り、本書は文章術の本。実用書らしく、つかみ(冒頭)の三行、起承転結、常套句が害悪な理由、一人称、文体、リズム、といった必要十分なテクニックをわかりやすく説明しています。しかし、本書の特徴は単なる技術論に終わらず、文章を書く心のありようにも言及している点です。

    「いい文章を書くには、いい人にならなければならない。それは、汗で書く良き生活者であり、自らを律し他者をこそ憐れむプライドの高い善人であり、好い人、つまり好人物である。だまされやすい。お人好し。少し、抜けている。
    まなじりを決するのではない。屈託がなくおおらかで、おっとりと、他を攻撃しない。つまり君子でなければならない。
    ライターは、君子たるべきだ。
    正気で言っている」

    ただし、好きか嫌いかで問われたら本書は決して好きな本ではありません。説教臭さと自慢話が少々鼻につきました。例えば「あれは、おれだ」の挿話は少し不快な気がしました。

    それでも、本書は読むべき1冊です。

    参考になった部分を引用すると

    「(書き手は)謙虚でなければならない。わたしたちは、読書エリートに向けて文章を書いているのではない。
    であるならば、三行以内で撃ってくれ。驚かせ、のけぞらせてくれ。(中略)
    最初に、銃を見せてくれ」

    「もしも世界が単色で、人生がつまらないのだとしたら、それは、あなたのせいだ。
    世界のせいではない。あなたが悪いのだ。あなたの感性が、鈍っているのだ。
    無理して、努力して、おもしろがる。ライターには、そういうむちゃな思い込みが、どこかで絶対に必要だ」

    「いい文章を書くとは、畢意、いい人になることだ」

    「言葉は、自分の考え、感情を表す道具ではない。むしろ言葉が、自分の思想や感情を生起させる。順番が逆なのだ。だから、世間で流行している言葉を使うということは、自分のマインドとハートとを、世間に売り渡すことなのだ」

    「塾生は以上四つの課題図書(日本文学/海外文学/社会科学あるいは自然科学/詩集)を、毎日十五分ずつ、必ず読む。(中略)
    一日わずか十五分。しかし必ず。そうすると、かの長大なブルーストの小説『失われた時を求めて』さえ、一年で読了している」

    「背表紙が見えない本、横積みになっている本、それは本ではない。ゴミだ」

    本書を読んだら、本を読みたくなり、文章を書きたくなりました。さらに、いい文章を書くために「いい人」になろうと少しだけ決心しました。それだけでも、本書は読むべき1冊です。

  • 自分の書いた原稿を人に見てもらう立場のときは無責任だったなあ、と今になって思う。とりあえず球を丸めて投げる。球をもう少しきれいにしてくださいとか、もっとまっすぐ投げてくださいとか言われて、はいはいと言ってその通り直す。その通りにはなかなか直らない。それでもそれなりの形に仕上げて、最終的には受け取った側で整えてもらう。それでどうにかなっていた。
    ところが人の書いた原稿を見る立場になったとたんものすごく不安になった。人が書いたものを直すというのはむずかしい。はたしてこの直し方で合っているんだろうか。責任を感じるにつれて自分の赤ペンにどんどん自信が持てなくなっていく。自分で書くほうがよっぽど楽だとすら思う。
    いい文章とはなんだろう、と迷路に迷い込んだような気持ちになって、何かヒントが得られればと思いこの本を手に取った。ヒントどころじゃなかった。ページは真っ赤になったし、角を折りすぎてずいぶんぶ厚くなってしまった。文章を書くとは何か、書いて生きるとはどういうことか、なぜ私たちは書かないと生きていけないのか、自分がこれまで言語化できていなかったそういう感覚がどばどばと押し寄せてきて、頭のなかを一掃されたような気分になった。書くことは生きることだ。自分になることだ。
    「三行で撃つ」は比喩かと思っていた。確かに比喩でもあるのだけど、著者は物理的に「撃つ」ことをしている人だった。だからこそ読んでいて「撃たれた」。しっかり狙われてしまった。書けなくなったとき、書き方がわからなくなったとき、書く力が伸び悩んでいるとき、折に触れて読み返したい。

    【読んだ目的・理由】メルマガで見かけて
    【入手経路】買った
    【詳細評価】☆4.9
    【一番好きな表現】言い換えるとは、考えることです。世界をよく観ることです。いままでと違う、他人の感覚ではない、自分自身の、ただひとつの世界の見方、切り取り方、考え方にたどり着く。(本文から引用)

  • 「本を読んだら散歩に行こう」村井 理子著のお勧め本、その5。

    書き方指南の本、初めてしっくりと真ん中に響く有り難い本でした。
    今までいろいろな系統本を読み漁ってしましたが、自己啓発本に近いのりのものもあり、どうにも参考にならなかったのでした。

    タイトルの「撃つ」
    なかなかこの域には程遠いですが、書くことをもっと楽しめればと少しだけ前向きになっています。

    何回も読みたい教法です。

  • 中身の大部分がおじさんの自慢話と説教にセクシズムをひとつまみ…♡という感じで、おれは何を読まされているんだ?と困惑しっぱなしでした。技術書としての実質的な厚みは20ページ分ぐらいしかありません。そんなにないかも?

    これを言ってしまうともう全部おしまいなんですが、「この人が理想とする文章ってなんか下品でおじさん臭くて嫌いだな」と思いました。ジャンクフード的というか、広告代理店的というか。巻末の著者プロフィールを見たら朝日新聞記者→AERA編集→朝日編集という来歴の方だそうで、「あ〜…ね(苦笑)」という妙な納得感がありました。

    飲みの席でしてる自慢話と説教を周りの若者たちが一生懸命聴いてよしよししてくれるから、それに本当に新規性と価値があると思いこんで300ページの本書いちゃったのかな?おじさんかわいいね。

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著者プロフィール

1963年東京都生まれ。朝日新聞社入社後、「AERA」編集部、文化部、長崎県諫早支局などを経て、現在大分県日田支局長。著書『朝日新聞記者が書いた「アメリカ人アホ・マヌケ」論』、『おいしい資本主義』他。

「2023年 『アロハで田植え、はじめました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

近藤康太郎の作品

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