全員悪人

著者 :
  • CCCメディアハウス
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本棚登録 : 118
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484212159

作品紹介・あらすじ

《『兄の終い』で不仲の兄との別れを書いたエッセイストによる、新たな家族の実話》

「どちらさま? 誰かに似ているようですけれど」

私には居場所がない。知らない女に家に入り込まれ、今までずっと大切に使い、きれいに磨き上げてきたキッチンを牛耳られている。少し前まで、家事は完璧にこなしてきた。なんだってできました。ずっとずっと、お父さんのために、息子のために、なにからなにまで完璧に、私は家のなかを守ってきました。あなたはいつも、お母さんって本当にすごいですね、完璧な仕事ですよと言ってくれた。

あなたに一度聞いてみたことがある。なんなの、毎日代わる代わる家にやってくる例の女たちは? そしたらあなたは、「お母さん、あの人たちは、お父さんとお母さんの生活を支援してくださっている人たちなんです。介護のプロなんですよ」って言ったのだけど、こちらは家事のプロですから。――私は主婦を、もう六十年も立派に勤めてきたのです。

家族が認知症になった。
対話から見えた、当事者の恐れと苦しみを描く。

“老いるとは、想像していたよりもずっと複雑でやるせなく、絶望的な状況だ。そんななかで、過剰に複雑な感情を抱くことなく必要なものごとを手配し、ドライに手続きを重ねていくことが出来るのは私なのだろう。これは家族だからというよりも、人生の先達に対する敬意に近い感情だと考えている。(「あとがき」より)”

感想・レビュー・書評

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  • わかりみ
    やるせない

  • 介護保険法に謳われている「尊厳の保持」という理念を、書くという方法で守っているのだと感じた。

    「人生の先達に対する敬意に近い感情」と村井さんは書いている。
    嫁として、家族として、お義母さんの日常をサポートして寄り添う一方で、物書きとしての冷静な視線でお義母さんの見る世界を一緒に視ている。
    周囲が戸惑う「なんで?」の答えを、村井さんは理解し、代弁する。

    「実の親の介護を、同じような気持ちで出来ていただろうか。想像しただけで無理だとわかる」(よみタイ「犬と本とごはんがあれば」2020.7.27)
    嫁だからできること、実の子どもにしかできないことがある。ケアマネやヘルパーだからできることがある。隣近所の人にしかできないことがある。
    相手への「敬意」をもって、それぞれの立場でできることをする。
    老いていく親たちを抱え、自分の若さにも自信がなくなってきた私ができることは、そう覚悟をするための、心の準備を折に触れ繰り返すだけだ。

  • 家族が認知症患者であるというと、つい〝大変そう”と介護する目線で見てしまいがちだが、この本は認知症患者当事者からの目線で書かれていて新鮮だった。
    夫は冷たくなり物は盗まれ医者からは病人扱いされる事への理不尽さが怒りに変わり、怒る事でさらに周囲を幻滅させ孤立する家族にもし自分ならどうやって関わっていくだろう?
    あとがきにある「彼らの一番の味方であり続けたい」という著者の言葉が印象的だった。
    明るいとは言えないテーマなのに淡々とした文章の中にちょっと笑えてしまうところがあるのがとても好きだ。

  • とても読みやすいしおもしろくて、あっという間に読み終わった。
    来たる日、私も「あなた」のように冷静に家族を守れるかしら…。

  • 2021.05.05 別件でRTされてきた方の著書。認知症の義母目線の本とのこと。

  • 親が認知症になってからでは読むのが辛くなるかもと思いすぐに読んだ。1時間ほどで読める量だし、筆致も軽やかで読みやすい。それでもやはりつらく、あとがきの最後の言葉には涙が出た。

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著者プロフィール

翻訳家/エッセイスト
1970 年静岡県生まれ。琵琶湖のほとりで、夫、双子の息子、愛犬ハリーとともに暮らしながら、雑誌、ウェブ、新聞などに寄稿。著書に『兄の終い』(CCCメディアハウス)、『村井さんちの生活』(新潮社)、『犬ニモマケズ』『犬(きみ)がいるから』(亜紀書房)、『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』(KADOKAWA)、『ブッシュ妄言録』(二見書房)ほか。訳書に『エデュケーション』(タラ・ウェストーバー著、早川書房)、『サカナ・レッスン』(キャスリーン・フリン著、CCCメディアハウス)、『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(キャスリーン・フリン著、きこ書房)、『ゼロからトースターを作ってみた結果』『人間をお休みしてヤギになってみた結果』(共にトーマス・トウェイツ著、新潮社)、『黄金州の殺人鬼』(ミシェル・マクナマラ著、亜紀書房)ほか多数。

「2021年 『全員悪人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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