孤独なバッタが群れるとき: サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学 9)

  • 東海大学
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784486018483

作品紹介・あらすじ

その者、群れると黒い悪魔と化し、破滅をもたらす。愛する者の暴走を止めるため、一人の男がアフリカに旅立った。

感想・レビュー・書評

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  • 前から気になっていたものの、手を出していなかった本。香君のあとがきで紹介されていたのをきっかけに読んでみた。

    なんとも不思議、精巧なバッタの生態。大学を卒業してから10数年間、謎の解明に挑戦する筆者の記録。師匠の指導で成長する姿、先行する研究の検証や反証、自らのアイディアで新たな謎に取り組む姿など、興味深い。著者のミドルネームの秘密も明らかに!

    筆者が研究するのはサバクトビバッタ。大移動しながら農作物に壊滅的な被害を及ぼす害虫として知られている。なお、バッタの語源はラテン語の「焼け野原」!大発生のときに襲ってくる黒いバッタは、普段は緑色で、複数のバッタを一つの容器に閉じ込めて飼育すると、黒くなるという研究が1921年に発表された。

    隔離されて育った孤独相のバッタは周囲の環境に似た体色を発現するが、多数のバッタとともに育てられた群生相は黒い体色。そして、同じバッタが、環境などの変化により、孤独相と群生相の変化を起こす。顕著な相変化を示すのが、サバクトビバッタとトノサマバッタ。筆者は、この仕組みと謎に取組み続けている。

  • 一つの事象の研究から次々と新たな研究テーマが見つかっていく様子が面白い。

  • 時間的にはバッタを倒しにアフリカへの前の話。
    時間的流れが前後したが、この前段階があってアフリカなのねと大納得。昆虫の研究者の人が日々どのようにして実験をしたり課題を見つけたり、相談したりしているかがとてもわかりやすく書いてあり、面白かった。
    ところどころ名言が散りばめられているので、笑いだけでなくとてもためになる本だと思う。

  • おもろい。この表紙と中身のアンバランス(笑)

  • サイエンス

  • 生物図鑑を読んでいると、生態が明らかでない種の数に驚かされる。
    メジャーな生物ですら専門書が出版されていないことも多く、
    カニとワタリガニの生態の違い、タコとイカの進化系統、カバの亜種など、
    さほど専門的でないことですら詳しく調べようとすると苦労する。

    では、そもそも生物を理解するためには何が必要とされるのか。
    遺伝子やゲノム、分子生物学的な装置や手法に頼らずとも、出来ることは山とある。

    例えばバッタ。
    脱皮回数を記録し、体長を計測し、触覚の節を数え、数ミリの卵のサイズをノギスで測る。
    もちろん闇雲に繰り返すのではなく、飼育密度、エサ、部屋の明るさを変え。
    さらには卵黄を減らしたり、蛍光塗料を塗る場所を変えたり、触覚を色んなものでこすり続けたり。

    そういう数十万もの試行があってこそ、従来考えられていた『泡栓に含まれる物質の蓄積で群生相、孤独相は変化する』、
    『混み合いは後ろ足の接触頻度で判別される』といった定説は覆され、
    『親の成虫期の密度、孵化したときの大きさ、幼虫時の飼育密度の組み合わせにより成虫形態が決まる』、
    『混み合いは異性の触覚が触れあうことにより判定される』、『住環境の明るさが卵の大きさに影響する』といった新事実が明らかになる。

    たった一つの種を理解するのに、一体どれだけの人間と資金と時間が必要とされるというのか。
    しかも、それが理解されたとして人類に直接的なメリットがあるとは限らない。

    だが、そんな研究に人生をついやせる人間がいて、さらにその生活を支えることができる社会のなんと素晴らしいことか。
    本書では研究の苦労が余す所なく素直に述べられているというのに、
    学問の原点である「知らないことを明らかにすること」の楽しさを改めて思い出させてくれる。
    たくさんの人が役に立たない研究を成し遂げ、また、それを多くの人が楽しめる社会であることを願わずにはいられない。

  • ちょと難しいが、筆者が弘前大学の昆虫研出身で、その後の研究生活も同大の先輩方に弟子入りとのことで地元なので思わず読んでしまった。

  • 4.5

  • 『墨攻』に出てきた飛蝗の研究者の話題の本である。なにせ虫偏の皇帝だ。すごいのだ。
    ひたすらバッタの触覚をこするとか、やってる本人は大変だがつい笑ってしまうようなとんちのきいた実験が多数。単独で育つのと群生で育つのとで、こんなにも性質が違う。しかも形質は一世代で変わってしまうという。恐るべし。
    あと、イナゴってバッタの一種だと思ってたんだけど、相変異するのがバッタでしないのがイナゴで、違うものだそうだ。
    新書の方はアフリカのフィールドワークのようだが、こっちはその前段の日本での学生からポスドク時代の研究で、順序的にもこっちが先でよかった。

  •  『バッタを倒しにアフリカへ』という新書がけっこう売れているらしいです。それは,昆虫学者の研究物語なのに,まるで,冒険物語のように読めるからでしょう。
     新書版では,文字通りアフリカへ行ったときのことが書かれているわけですが,本書の方は,前野ウルド浩太郎氏が,昆虫学者として独り立ちしようともがいている期間のことが書かれています。もちろん,新書版とは違う専門的な研究の部分も詳しく書かれています。
     かといって,そんなに難しい内容ではありませんし,新書版で魅せた著者の軽快な文章の片鱗も感じられて,こういうタイプの本にしては,読みやすくなっていると思います。

     帯には「必読! 今話題の『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)の著者の処女作」とありました。

     同じバッタが,何をキッカケとして孤独相と群生相に分かれるのか,それを突き止める旅は,まだまだ続きそうです。

     それにしても,研究の楽しさが伝わってくる本でした。

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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