- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784486019701
作品紹介・あらすじ
アリの巣の中に躍動する生命の物語。世界初、アリと共生する生物の図鑑。
感想・レビュー・書評
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ため息が出るほど美しい図鑑。すばらしい。
写真が美しい、レイアウトが美しい、そして何より、ひとつひとつの生きものに添えられた簡潔な説明文が美しい。
情け容赦なく専門用語を使ってすぱっと切り捨てているのに、なぜかあふれる詩情と愛情。
アリも含めたこの生きものたちと、研究と、あとたぶんぜったい写真撮影技術とに注がれている愛情がハンパない(写真撮影技術については、5人の著者がそれぞれ書いているコラムで何人かが触れている)。
添えられた英語タイトル「The Guests of Japanese Ants」は先行書名の踏襲とのことだが、この「日本のアリのお客」のほうが、「アリの巣の生きもの」よりもなんだか心にぐっとクる。
なんだこの多種多様さは! アリはどんだけお客好きなんだ!
「お客」の分をわきまえないヤカラもいっぱいいるぞ!
私の貧弱なイメージではアリヅカコオロギやアリスアブ、シジミチョウあたりの仲間の生態がわかる図鑑なのかと思っていたが、いやいやいやいや、なんかもう、チミモウリョウの百鬼夜行の図、なのであった。
写真はほんとうにきれいなんだけれども、被写体の大半が、その、喫茶店で広げて読むにはちょっとアレな感じ。
生物多様性(形態の)を実感いたしました。
おそろしいことに、そんな美麗な写真に添えられた文章の多くに「不明」だの「未詳」だのといった文言がつく。
体長数ミリの虫に生えてる毛の一本いっぽんが数えられるような写真を見せられてるのに、「これは何やらワカラン生きものなんですよ」という説明。やっぱりチミモウリョウ。
「何やらワカラン生きもの」の写真は、できればネス湖のネッシーのような、あるいはビッグフットのような、粒子ザラザラの薄ぼんやり写真にしてほしい気がする。ああ怖い。
この本は魔界の入り口なのか。
この本を読んでしまったいたいけな少年少女たちが、何人もアリの巣口の形をしたおそろしい深淵に吸い込まれていくのが見える気がする。
・・・たくさん吸い込まれて研究者が増えますように!
なお、「お客」には寄生種のアリも含まれているのがちょっと面白い。
「お客」たちのページが終わった後、映画の最後のスタッフロールのように「ホステス」のアリたちが説明文なしで淡々と羅列されてるのも面白い。
そしてその後におまけで「シロアリの巣の生きもの図鑑」までついてる過剰さがほんとうに面白い。
美しく、真摯な愛情にあふれた一冊。
絶版になったら、高値がついちゃうんだろうなー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アリノタカラにすごく驚いた。
こんな関係ってあるんだ。 -
アリの図鑑ではなく、アリの巣に棲んでアリに依存して生きる生物の図鑑。
アリとその巣は、他の小さな生物にとって利用価値があるのだろう。何らかの形でアリを利用している生物は好蟻性生物と呼ばれている。その生存戦略のなんと多様なことか。その生き方に、正しいも間違ってるもない。
甘い蜜をアリに提供することでアリからエサをもらう者がいる一方、その甘い蜜を出す虫を捕食して生きる者がいる。アリの幼虫に卵を産み付けて寄生する者もいるし、女王アリを殺して別種なのに女王アリになって巣を乗っ取る者もいる。もう書き出したらキリがない。共生だの寄生だのという言葉は人間のひねり出した概念に過ぎない。この本は、まさにアリの巣の生態系を描いている。多様性は目指すものではなく、ただそこにあるのだ。アリの巣に因果な宇宙を感じると言ったら大袈裟か?そして、その宇宙に取りつかれた人間もいて、それもまた因果か?
そもそもアリの巣に棲んでいる、アリに依存して生きる生物の図鑑を作ること自体がすごい。わずか1mmから1cmくらいの小さな虫が大量に収録されている。しかも写真付きで。その写真がまたすごい。鮮明。アリの幼虫に卵を産み付ける瞬間まで収録されている。その写真を撮るのにどれだけの労力があったのだろう。もちろん、その生態も記載されている。一体どうやってその生態を明らかにしたのか?恐るべき忍耐と観察力がそこに必要なはずだ。この本のおかげで、多くの人がクロサワヒゲブトアリヅカムシとオキナワコバネヒゲブトアリヅカムシを見分けることが可能になった。短い上翅によって容易に区別できるのだ。しかし私に見分ける自信はない。
著者ごとに1ページのコラムも割り振られていて、アリの巣の宇宙に囚われた人達の言葉が趣深い。とにかく人嫌いだったが、この本を作る過程で人と関わることができた、という言葉が印象に残った。何度職務質問にあったかわからない、という言葉もあった。さもありなん。アリの巣もすごいが、人間もすごい。頭おかしい(誉め言葉)。
この本はラディカルというかハードコアというか、素人を甘やかさない。そこが格好良い部分でもあるし、読む人を選ぶ部分でもある。ただ、末尾に載っている好蟻性生物の解説は冒頭に持ってきても良い気がした。好蟻性とは何か?がここには記してある。人間にとって視覚が最も重要な感覚であるように、アリは臭覚が最も大事で、好蟻性生物はそこを偽装してアリを利用する者が多い、というのは本書を読む上で肝になる部分ではないか。この解説を先に読むことで、各生物種の解説も飲み込みやすくなると思う。 -
好蟻性生物。いわゆる、ありと共生する生物(昆虫)たち。
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何が凄いって,こんなワケワカランちっこい生物に真面目に向き合っていること!そもそもアリを認識するに一般的な黒いアレで大中小くらいしかわかんないのに,そのありですら日本国内に何百種とおり,そのまたアリに寄生する種々雑多な好蟻性生物たちのめくるめくワンダーワールド。多分本人達は楽しくて仕方がないだろうなと思う。
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狂気を感じる。すごい。
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アリがいなければ、昆虫界はえらいことになるのだなということがわかった。
アリの巣のまわりに生きる生き物たちの図鑑です。
とくにアリに護衛させてるチョウの幼虫にびっくり
(まっきー) -
アリの巣の中に、ここまで多くの生き物がいるということにびっくり。
異種の生物が近接した写真はともするとSF的で素敵。とくに寄生ハエがアリを監視飛行する様子など、とてもよい。
円盤状のウジ虫、アリを吊るすクモ、アリの頭にのるシミ。どれもみな魅力的。 -
図鑑といっても同定を目的するものではなくて、蟻の巣と、その周りにいる「好蟻性生物」の写真集。ほとんどの生物は、実際の生活の様子が写真に収められていて素晴らしい。ムモンアカシジミの羽化を蟻が眺めている写真が大好きです。
我が家にも蟻がたくさんいるから好蟻性生物もたくさんいるんだろう。ワクワクする。巻末にほんのチョットだけ、「好蟻性生物学入門」がついている。これ、もっと読みたい。