湿地帯中毒: 身近な魚の自然史研究 (フィールドの生物学 18)

著者 :
  • 東海大学
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784486019992

作品紹介・あらすじ

幼い頃から身近な湿地帯とそこに棲む生物を愛した研究者が編む湿地帯研究の極意とカマツカ,ドジョウなど湿地帯生物の自然史。

感想・レビュー・書評

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  • 著者はtwitter上ではオイカワ丸という名で知られていて、その生物愛に満ちた発言は興味深く読んでいる。「日本のドジョウ」というマニアックな図鑑を出していたのが、オイカワ丸こと中島淳氏であることは後で知った。シマドジョウ類がやたらしつこく分類されていてあきれたのが個人的な記憶に新しい。そんな著者が研究者になるまでを描いた一冊。若き研究者の半生記ならぬ2/3生記というか、青春記とも言えそうだ。

    湿地帯という言葉にはいま一つ馴染みがないが、要は水辺ということらしい。私もいちおう水産学部出身であるし、水辺の生き物は好きだ。しかしこの本を読んで、その情熱、いや愛と呼ぶべきものの格が違うなと思い知らされた。著者やさかなクンを見ていると、あり得たかもしれないもう一人の自分を見ているような気になる。何が私と彼らを隔てたのだろう、みたいなことは時々考えてしまう。育った環境の違いかな?とか。私は修士中退というひょっとこな経歴だが、研究者になるかどうかの違いは、愛を注げる研究対象があるかどうかではないか?その愛があれば、延々と続く退屈なルーチン作業も乗り越えられるのかもしれない。私はいろんなことに目移りしがちで飽きっぽい。しかし著者も他のことに目移りしなかった訳じゃないところは共感した。それにしてもアンタ、黒魔術ってなんやねん?と思わなくはなかったが。

    この本を、カマツカやドジョウといった水産生物に興味ない人が読んでおもしろいかどうはよくわからない。しかし、適度にユーモアを交えた文章は読みやすいし、門外漢にもわかりやすく書いてあると思う。構成もわかりやすい。研究のデータ解析部分は流し読みしつつも、私はおもしろく読んだ。増水時のカマツカの様子を調べようとして溺れかけた話には声を出して笑ったし、本編の合間に挿入される箸休め的なコラムも楽しかった。いちゃもん付けるわけじゃないけど、結婚に至る恋愛話も書いて構成も見直したら、「バッタを倒しにアフリカへ」みたいな研究者のエンタメ本として売れたかもしれない。

    今調べたら著者は「日本の水生昆虫」という図鑑も出しているので、これも読んで眺めてみたい。

  • 2016年1月新着

  • 請求記号 487.51/N 34

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著者プロフィール

福岡県保健環境研究所 専門研究員。博士(農学)。1977年、静岡県生まれ(東京都育ち)。専門は淡水魚・水生昆虫の生態学と分類学。生き物の観察会や講演会の講師もしばしば行う。インターネット上では「オイカワ丸」として活動中

「2023年 『自宅で湿地帯ビオトープ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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