文房具を買いに

著者 :
  • 東京書籍
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  • Amazon.co.jp ・本 (139ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487799138

作品紹介・あらすじ

なんということもない平凡な一枚の白い紙。きわめて普通の出来ばえをした一本の鉛筆。そして30センチほどの長さの、これまた平凡な一本の定規。この三点を机の上に並べると、そこには人間の文明のすべてがある。

感想・レビュー・書評

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  • さすが作家と唸ってしまう素晴らしい文章。文房具をテーマにこんな美しい描写ができるなんてさすがです。自分が持っている文房具もあったりすると嬉しくなってしまう。

  • 著者が持っている文房具を、その想いと共にカラー写真を交えて淡々と語っていくエッセーである。語るネタは、ノート・鉛筆・ボールペン・ホッチキス・消しゴム・メモパッド・輪ゴム・コンパス・切手・クリップなどなど。
    写真も自分で撮影しているようだ。

    とにかく、このおやじの文具愛は半端ではない。まず、その揃え方。一つの品で買う数量が多い。たとえば、メモパッドなどは1サイズ10冊は買わないと気が済まないと言っている。それを複数サイズで揃えるのだから、この人の家にはどれだけの文具が収納されているのだろうか。しかも、30年前に買ったものが未使用で取ってあったり、モールスキンは30年も前に外国で30冊も一気に買っているようだ。どんだけ、ものもちがいいんだ?

    写真の撮り方やお気に入りなどを見ていると、文具愛もすごいがセンスもかなり良いように思えた。まとめ買いはまねできないが、センスは見習いたいものである。

  • 文房具への愛と趣味が集められた本。

    本文とそれに関する写真が交互に見開きで展開される。
    撮り方にもひとかたならぬこだわりがあり、特に光の吸収については試行錯誤を重ねている。特に夕方の太陽光が多く用いられているようだ。
    ノート、ペンといった日用品から積み木やテープライターまで。よくここまで集めたな、という感心がページを繰るごとに増す。
    さらに、写真を撮るとなると構図を作り上げるために多数の同製品を並べる必要もある。・・・氏の現役中に使い切れるのか、と一般使用者の私は思ってしまう。そのような写真を撮るのも仕事の内と言ってしまえばそうなのだが。

    紹介される文房具のほとんどは外国製である。欲を言うならば、次回は国産、あるいは和用具についても紹介していただきたい。

    コレクターの心を揺さぶる一冊。

  • ジェームズ・ウォードの『最高に楽しい〜』の後で読んだせいか、ちょっと物足りない。並べて写真を撮りたいだけなんじゃないの?って感じる。写真は、フィルム時代の濃厚な色合いが心地よい。自然光のなかで、外国製の文房具の色合いは、ノスタルジックでいいね。

  • 私もたいがい文房具好きだと思っていたけれど、片岡義男には及びもつかないことを痛感させられました。
    外見の美しさや機能に惚れこむと、国内で、海外で、同じものを大量に買い込む彼は、その文房具を美しく写真にとどめるために、構図や光量やフィルムなどにこだわり、その写真にストーリーを与えるのだから。

    一目で気に入って30冊買ったモールスキンの手帳。
    銀座の伊東屋で一編に買った19個の消しゴム。
    好きなインクを持ち味のいい本体と組み合わせてカスタマイズするボールペン。
    色違いのステープラー(ホッチキス)。
    サイズ違いのメモパッド。

    そんなに大量に買っても使いきれないだろう。
    実際買ったまましまい込んでいるものがほとんどのようだ。
    だって今さらクレヨンとか、チョークとか、彼には必要ないだろう。

    余談だが、彼の持っているドイツのチョークは断面が四角い。
    しかもクレヨンのように持つ部分を紙で保護している。
    転がり落ちにくい、手が粉っぽくならないチョーク。
    日本のチョークはなぜ進化しないのだろう?

    美しい文房具の写真をうっとりと眺めながら、つくづく自分は実用文房具へのこだわりだけしかないなあと思う。
    消しゴムはステッドラーのものを10年くらいかけて使いつぶす。
    クロスワード用にはペンシル型のノック式消しゴムを愛用。
    ボールペンは、昔はZEBRAのジムニーが一番好きだったけど、グリーン購入法施行以来つくられなくなってしまったので、今は三菱のuni-ballかPentelのRollyが書きやすくて好き。

    そう、結構心狭く文房具に接しているくせに、文房具コーナーに行けばあれこれと吟味し、文房具についての本を見つければついつい読んでしまう。
    ああ、文房具って魔物だよねえ。

  • 読んでいると文房具を見に行きたくなる、

    こだわりの品の数々・・・

  • 片岡義男さんの本。この人のファンなので購入した。この人は、オタクですね。文房具をこよなく愛している人のようだ。私も好きな文房具はあるし、愛用している。でも、私の知らなかったものがいっぱい載っている。写真もあるので、わかりやすいし、ほしくなる。罪作りな本。

  • 工業製品である文房具と同様にシンプルで無駄のない文章/マクロレンズ的な観察視点/OM-4/文房具の造形美を捉えた写真/写真と自然光の親密な関係/アメリカ文化とモノの関係/正方形で文章と写真が見開きで交互に現れる本の体裁/すべてが素晴らしい

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    いきなりモールスキンだ。一冊のノートについてここまでのエッセイを書けるのがさすがに作家だ。モグラの皮という意味だとは知らなかった。モレスキンというのはしっくりこない。やはりモールスキンでなきゃ。

    文房具の美しさは大量生産される工業製品としての、そして機能的でシンプルであることだろう。片岡の文章もそのようであることに気がついた。簡潔、シンプルで余計なところや、変にエモーショナルなところがないすっきりとした美しさ。エモーショナルな文章を、例えば手捻りの陶芸のようなものと言えば、その対比ははっきりするだろう。

    p129 筆記具の一覧写真にWATERMANのブルーの万年筆があってちょっとうれしくなった。オレンジもある。

    文房具とともに写真に撮るときの光の具合にも細かく述べているのが作者らしい。

    p55上段 リーガルマインドの基本。すべて書き出して検討する。アメリカ社会に浸透している。

    よく知らない人が読んだら単に文房具について書かれたエッセイ。そうではなく片岡作品に慣れ親しんだ人なら、アメリカ文化、写真と光源の関係、物へのこだわり、フェティッシュな視線と、とても豊かな(うまい表現が見つからない)文章を味わえる。

    片岡が文房具を楽しむのと同じように読者は文章と写真を楽しむ。普通の人にはわからない。片岡作品を読む者にはいかにも作者らしい視線に感銘するはず。

    最後の2つに選んだのがこれかあ。普通ならこだわりの万年筆とかを持ってくるだろうに。そのあたりも変にエモーショナルというかありがちなまとめにならずにおもしろい。外してくるというか。

    あとがき読んで紙ってすごい、印刷ってすごいと思った。

  • 著者の作品は2冊目だが、前回も感じたのと同様、やはり読み難い。あくまで個人的な感想だが、こちらが全く何の知識もないことの話を延々と聞かされているような気持ちになって、とても全てに目を通す気になれない。今回も途中から文章は斜め読みしながら写真ばかり眺めていた。著者の文房具への思いは伝わってくるのだが、今の自分では、ちょっとついて行けない。

  • 出だしのエッセイを読んで、すごいなぁ、時代に合わせて作風変えたんだなぁ!と思ってましたが…気のせいでした(笑)作者は、限りなくダンディかつおしゃれなんですよ。ただ、読み手側としてちょっと辛くなるだけ。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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