洋食屋から歩いて5分

著者 :
  • 東京書籍
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487806447

作品紹介・あらすじ

街を歩き、街で食べる。美味しい「食」のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 美しい文章が、トマトや沢庵、コーヒーを媒介に世界に溶け込んでいく

    先日、麹町・赤坂見附エリアをお散歩していた際に
    COOK COOP BOOKさんに立ち寄って、
    食に関する本を眺めました。

    それで、気になったのがこの本です。

    申し訳ないのですが、お名前は伺うのですが読むのが初めての
    作家さんです。

    ごく短い、短編が続々と続く中、「トマトを追いかける旅」
    でトマトを追って世界中を旅する姿、絵が浮かびます。
    片岡さん本人も行ってない、空想の世界なのに、
    その空想世界に引っ張られる文章です。

    沢庵ひときれが冬になり、コーヒー一杯が短編小説になる。
    食べ物や飲み物を媒介に、世界に溶け込んでいく、
    その溶かし方が絶妙なんですね。

    文章に、
    「あ、この人こうやって読者を酔わせようとしている」
    という作為的な押しが見えないので、
    引き込まれてしまうのでしょうか。

    文章を書いて、発表してを数多繰り返し、短編小説の書き方、
    というのが体に染み付くとこのレベルに達するのだなと感じました。

    押しの強い自分の文章からどう引きのエッセンスを取り入れて、
    適切な単語を選べるのか、考えさせれる本でした。

    春夏秋冬、その間の季節にも、それぞれあう短編があるので、それを探して
    ゆっくり読んでいくのも楽しいかもしれません。

  • 街を歩き、街で食べる。美味しい「食」のエッセイ。

    食べ物が中心、というよりは食の周りにある記憶をたどっていくような内容だった。記憶をたどる、だけに著者が若かりし頃街をそぞろ歩いていた時代、つまり昭和の雰囲気が満ちたエッセイだった。食べ物エッセイとして期待して読み始めたが、バリエーション豊かな食べ物が登場するわけではなく、その点は少し期待外れだった。特にコーヒーにまつわる話が多かったように思う。それだけ著者の人生に外せない食べ物(飲み物)であるということだろう。そして最も印象に残った話もコーヒーに関するものだった。

    著者は毎朝必ず2杯のコーヒーを飲む。コーヒーの香りは覚醒の効果がある、それは著者にとって意識の開放、日常から非日常へ意識を移す効果をもたらす。著者は小説家であり、日常のなかの非日常である小説へ意識を移すトレーニング、条件付けをコーヒーによって行っていたのではないか、と自身で考察している。
    コーヒーが非日常への入り口、というのが意外で印象に残ったが、これは言わば、一日の始まりのコーヒーの芳ばしい香りで仕事のスイッチがONになるということである。コーヒーでなくても、毎朝のルーティンの中に何か、気持ちを切り替える習慣を持ちたいものである。

  • 創作ノート的なエッセイ集。タイトルどおり食に関するものから(歩いて5分になにがあるかが要だったりするけれど)俳句や旅の話まで。とくに著者が旅に出たくなる心情を掘りさげて分析したくだりが、それこそ普遍的に人が旅に出る理由なのではないかと思えてうなずいた。田中小実昌に飲み屋をひきずりまわされる話が、その次の吉行淳之介との緊張の対面と、なんというか正反対で、やたら可笑しい。そして装丁が素敵。この著者だったからというのもあるけれど、装丁に惹かれて手に取った本。

  • 片岡義男の食に関するエッセイ集。何かおしゃれ感が漂う。

  • 懐かしいなぁ、片岡義男。角川の赤い文庫何冊も持ってなぁ。古本屋の10円コーナーで大藪晴彦と片岡義男を大量に仕入れてきて読んでた若かりし頃…。

    もうずいぶんお歳だろうに、片岡義男は片岡義男のままに歳をとっていた。ツナサンドじゃなくてトゥナサンドやで、キザぁ。でも現在よりも過去(思い出)をたどった作品が多いとことか、やっぱり歳なりにこなれている感じも見受けられる。

    田中小実昌との邂逅を描いた「コーヒーに向けて真っ逆さま」が一番印象に残った。片岡義男の原点はコミさんやったんやね。二人の関係がとてもエエ感じだった。

  • うん、そっかそっか、やっぱりちょっとオシャレなんですね
    ふ~んという感じ
    色々な媒体に載ったエッセイをまとめたものでしたが
    そういう媒体の中で、ちょこっと見つけて読むのがいいなぁと思いました

  • つむじ風食堂みたいな話を期待したら、全然違いました。
    題のつけ方にかなり拘っているようですが、このエッセイにことタイトルはあっているのでしょうか。

    それから、言葉選びにも並々ならないこだわりを感じます。
    ・の入れ方やカタカナがくどい。

  • 片岡義男の名前を見ると、
    青春時代に思いが飛ぶ。
    彼の作品に感化され
    一度は本気でバイクの免許を取ろうかと、思った位。
    生きた英語の言い回しはおしゃれに感じたし、
    少し乾いた目線から見た人々の日常の
    切り取りかたが、特に好きだった。
    南佳孝の♪ウォンチュー。。。と、音楽まで聞こえてくる。
    ひとしきり何作も片岡義男の作品を読んだものだ。

    昔から、きらりと光る言葉づかいで
    特に短編に良いものが多かった。

    そんな片岡義男のわりと最近の作品集
    前は気がつかなかったが『俳句』が好きらしい。
    何遍も登場する。言葉の捉え方がうまいのだろう。
    本人は凡作と言い切るが、しゃれてる。

    久々に青春時代を思い出した読書のひとときでした。

  • 出だしで、片岡義男のイメージか変わったなぁと思い読み始めましたが…かわってなかった(笑)バブリーでした。

  • タイトルに惹かれる本は高確率でアタリだから、やっぱりかんばんって大事だと思う。



    http://www.horizon-t.net/?p=1086

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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