- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784487812530
作品紹介・あらすじ
数論とアルゴリズムをテーマにした傑作ファンタジー!
人間一人ひとりに「運命の数」が与えられている世界。
メルセイン王国の王妃は、呪いで敵を殺しているという噂があった。
王妃の娘で13歳のナジャはある日、数年前に死んだ最愛の姉ビアンカが、実は王妃によって殺されたという話を耳にする。
数日後、ナジャはあるきっかけで、禁じられた計算を行う妖精たちと出会い、王妃の秘密を知ることになる――
<目次>
第1章 惨劇の記憶
第2章 数を喰らう者
第3章 女戦士と侍女
第4章 扉の向こうへ
第5章 約束の楽園
第6章 欺かれた日
第7章 運命の文様
第8章 巡る数
第9章 刃と宝玉
第10章 神と化す
第11章 影の正体
第12章 寛容で過酷な裁き
数学的解説、参考文献、あとがき
物語に関係する数学的テーマ:素因数分解/素数、疑似素数、カーマイケル数/フィボナッチ数列、リュカ数列/メルセンヌ素数/完全数/友愛数/三角数/巡回数、カプレカ数/フェルマーの小定理/コラッツ予想
感想・レビュー・書評
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剣と魔法の世界を舞台にしたファンタジー。
ファンタジー世界では「魔法の存在は所与のもの」であるが、川添氏の著作では「魔法等と学術的問題」のリンクが試みられている。
本作で取り上げられているのはずばり「数」。
現実のことは全て忘れて物語を楽しみたい、という人には向かないが、様々な「数」の性質を知り、感心したり、面白いと思ったりできる人にとっては、一冊で二度美味しい作品だ。
文庫化はされていないようだが、多くの人に読んでもらいたいと思った。
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本書の著者である川添愛の別の本が面白かったこともあり、こちらも読んでみました。
『数学ガール』と『博士の愛した数式』のような要素を持つファンタジー、というのが自分の印象です。
何よりも、数字の使い方がとてもうまく、また、数字の意味付けや、キャラクター設定も絶妙だと思いましたし、それらとこの本の世界観の設定がうまくマッチしていると思います。
ちなみに、ある程度、数学の素養がある自分は、楽しく読めたのですが、普通のファンタジーとして読めるのかどうかは疑問です。
また、この本に出てくるフィボナ草の設定についても疑問があります。
が、たとえ、それらの疑問があったとしても、それらを上回る面白さがありました。
基本的には、ファンタジーには興味がないのですが、自分の興味を惹く要素があれば、ファンタジーも楽しめることを実感した一冊です。 -
素数や完全数、友愛数、フィボナッチ数列など数字の、面白い性質を題材にしたファンタジー。
人間も妖精も、一つの数(運命数)を与えられて生まれ、運命数はその者の運命を左右する。例えば、大きな運命数を持つ人間は強靭で長生きする者が多いなど。
「大きく、強く、傷がなく、ひび割れることもな」い祝福された数(素数)を運命数に持つ邪悪な王妃は、自らの欲望のために娘や夫、そして一般市民を次々と呪い殺し、手がつけられない。養女ナジャは、難題(ある数の因数分解)を解いて何とか王妃の元を脱出するが…。
数論の面白さが物語にうまく採り入れられていて、面白かった。 -
数学ファンタジーって珍しいなって思って読みはじめたら、横書き!読みなれないな~って最初は感じたけど、なるほど横書きじゃないと数字並べるの大変よね。
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約数や素因数分解、完全数、友愛数、フィボナッチ数列といった数の理論をもりこんだファンタジー。
人間一人一人に「運命の数」があたえられている世界で、呪いで世界を支配しようとする王妃に養女である13歳のナジャがたちむかうことになる。孤独で自己肯定感が低かったナジャが、美しく賢かったのに行方不明になってしまった姉ビアンカへの思慕を胸に秘めつつ、いろいろな人や妖精との出会いを通じて少しずつ自分の力に気づき活かせるようになる成長物語でもあり、ナジャとビアンカ、そしてもう一組の姉妹の関係を重ね合わせながら、人の本当の強さとは、人の弱みとはなにかを考えさせる物語でもある。
はじめのうちは登場人物のキャラや舞台設定が飲み込めるまで、何度も冒頭に立ち返ってなかなか進まなかったが、第3章ぐらいからはぐっと物語の世界に引き込まれてあとはほぼ一気読みだった。数学のスパイスを効かせつつ、「祝福」は「呪詛」と表裏一体という人間の心理と真理をていねいに描いている秀作だと思う。 -
数論を元に、個々人に与えられた「運命数」が、能力や戦闘力に影響するという発想は面白いが、どうしてもまず数学ありきの世界観だと思ってしまい、特に序盤はかったるく感じてしまった。
後半からは登場人物に感情移入できるようになり、物語としてのメッセージ性や主人公の成長といった王道要素もしっかりしていたのは良かった。 -
一人一人が、与えられた「運命数」を持つという不思議な世界観に引き込まれるようにして読み終えました。
世界観はなんとも不思議だけど、自分の数値に傲り、人を持って生まれた数だけで判断しようとする姿勢は、なんだかよく知る世界のような、、、 -
人は生まれながらにして平等ではない。持っていないものを嘆いてもしかたがない。持っているもので何ができるか自分で考えて、そして行動するのだ。
そんな熱いメッセージが込められたのはたまたまだろうか?
たぶんそうではないだろう。それは著者の著作に一貫して流れているテーマなのだから。