戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488003845

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦中、アメリカの図書館員たちは全国から寄付された書籍を兵士に送る図書運動を展開し、軍と出版界は新しい形態のペーパーバック「兵隊文庫」を発行して、あらゆるジャンルの本を世界の戦地に送り届けた。その数、およそ一億四千万冊。本のかたちを、そして社会を根底から変えた、史上最大の図書作戦の全貌とは? ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーの、絶賛を博したノンフィクション! 「兵隊文庫」の全作品リスト付。

感想・レビュー・書評

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  • フォロワーの方々のレビューを拝見して知った本です。
    ありがとうございます。

    先日、門井慶喜さんの『定価のない本』という戦後の日本の古本屋街の人たちの小説を拝読しました。ネタバレになりますが、その作品はフィクションではありますが、戦後、アメリカのGHQにより日本の古い歴史上重要な本をアメリカが全部買いとって、日本の歴史を奪おうとしたというような事件が描かれていました。
    それで、アメリカの思想というか、戦時中にやっていたことを知りたくなり、図書館からずっと借りっぱなしだった、この本をやっと、手に取りました。

    P97より
    「この戦争の現時点での最強の武器は飛行機でも爆弾でも凄まじい破壊力を持つ戦車でもないー『我が闘争』である。この一冊の本が高い教養を備えた国民を焚書へと向かわせ、人の心を自由にしてくれる偉大な本を灰にした。アメリカが勝利と世界平和を目指すなら私たち一人ひとりが、敵よりも多くのことを知り、敵よりも深く考えなければならない。この戦争には本が必要である。本は私たちの武器である」
    P135より
    「軍は兵隊文庫を極めて重視していたのだ。兵士が何より欲しかったものは兵隊文庫だった。兵士には気晴らしがどうしても必要だった。多くの兵士にとって読書が唯一の気晴らしだった」

    そして訳者あとがきにもよりますと、ヒトラーは無類の読書家だったからこそ本の力をよく知っており、一億冊もの本を燃やしたのではないか、そしてアメリカの図書館員もまた、本の力を知っていた。だからこそ、一億四千万冊もの本を戦場へ送ったのであると結んでおられます。

    これは、簡単に言うと、イソップ童話の『北風と太陽』のような話だと思いました。
    そして、先の話に戻るのですが、その本の力を知っているアメリカが戦後、日本から歴史の本をすべて取り上げようとしたという話は本当なのかと思いました。
    それ程、日本は酷いことを戦争でやってきたのか。日本人としては大変悲しく思います。
    日本史、特に近代史は高校の授業で時間が足りなくて、あまり深く学んできていないので、是非もう一度、日本のしたことや、当時の世界の情勢を学び直してみたいと思いました。

    • nejidonさん
      まことさん、こんにちは(^^♪
      だいぶ前にこの本を読みましたが、「それ程、日本は酷いことを戦争でやってきたのか」は、目からウロコの新解釈で...
      まことさん、こんにちは(^^♪
      だいぶ前にこの本を読みましたが、「それ程、日本は酷いことを戦争でやってきたのか」は、目からウロコの新解釈です。
      アメリカ人が書いた本ですからねぇ。
      日本がどうのよりも、戦争が始まるはるか前から、日本を攻撃し降伏させ、解体するのがアメリカの目的でした。
      そういった資料はたくさん出ています。
      メンタルから破壊させるには、歴史書を採りあげて「お前たちが悪いからこうなった」と教育するのが一番ですからね。
      つくづく戦争とは恐ろしいものです。
      2019/11/06
    • まことさん
      やまさん♪おはようございます。

      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      門井さんの小説は、どこまで本当で、どこまでフィクションなの...
      やまさん♪おはようございます。

      こちらこそ、いつもありがとうございます。
      門井さんの小説は、どこまで本当で、どこまでフィクションなのかわからないので、勉強してみたいと思っています。
      2019/11/06
    • まことさん
      nejidonさん♪こんにちは(*^^*)

      この本はnejidonさん他の方々のレビューを拝見して知りました。ありがとうございます。
      ...
      nejidonさん♪こんにちは(*^^*)

      この本はnejidonさん他の方々のレビューを拝見して知りました。ありがとうございます。
      高校では、私は世界史選択で、日本史は申し訳程度にしか学んでいないので、特に近代のことは無知なので、変なことを言っているかもしれません。
      少し、勉強してみたく思っています。
      でも、門井さんの本に書かれていることがおよそ本当のことであれば、本当に怖いと私も思いました。
      2019/11/06
  • 久々に読み応えのあるノンフィクションだった。
    ただ、この本にはふたつのまるで違う見方が生じる。

    ひとつ目は、アメリカの優れた面に対する称賛。
    「戦時図書審議会」という兵隊文庫を製作し、それを戦場に供給する組織を設立して予算を与え、兵士たちの熱い要望に応えただけでなく、戦後とられた優遇措置のおかげで、除隊後も多数が大学に入学してアメリカ社会の高学歴化という結果を生んだということ。
    (兵士というのは、ヨーロッパ戦線と太平洋戦線の米兵のこと)

    ふたつ目は、これもまたプロパガンダであるという点。
    本書はナチス・ドイツが行った「焚書」から始まり、連合国側の人々の士気をくじき、戦意を喪失させるために思想戦をしかけたと激しく非難している。
    アメリカはそれに対抗し、「本は武器である」という考えの元、戦線に図書を贈る運動を展開していったという。
    だが、私はすでにこの段階でつまずいてしまう。
    アメリカは、占領期にもっとひどいことを日本にしたではないか。
    「自由」「平等」「正義」という表現が本の中に登場するたびに、激しい違和感を覚えた。

    また、こうも言う。
    人種差別はしない私たちだから、収容所にいる日系人にも図書を送ったとも。
    アメリカ国籍を持つ12万人以上にものぼる日系アメリカ人が、エネミー・エイリアンとして全米10か所の強制収容所に送り込まれたという事実はどうするのか。
    それまで汗水流して蓄えた財産をすべて没収され、身の回りの物だけ持つことを許されて、有刺鉄線を張り巡らされた馬小屋や豚小屋に閉じ込められたのだ。
    「自由・平等・正義」は、ホワイトアメリカンだけのものなのか。
    そもそも読書嫌いで有名だったルーズヴェルト大統領は、「皆さんの子どもを決して戦場に送りだしたりしない」という嘘を公言して大統領に当選していた。
    日本のみでなく、自国民さえ欺いていた。
    前提としてそれを考えると、「戦時図書審議会」を支援し、兵士たちの戦後補償をどれほど手厚くしても、単なる埋め合わせとしてしか捉えられない。

    別に反米を唱えているわけではない。
    情けないのは、戦争に関することを発言するとイデオロギーの問題になってしまうこと。
    事実を、正しく理解しておきたい。それだけだ。

    敗戦国だから話題にもならないのだろうが、日本にも兵隊文庫が存在した。
    江戸川乱歩などが読まれていたらしい。
    兵士の間で劇団も作られ、実話をもとにした『南の島に雪が降る』という映画まであった。

    だが、生死をかけた戦線でペーパーバックが兵士たちに生き抜く勇気を与えたことを思うとやはり感動する。
    何より、本を読むことでどんなに感動したかを伝える兵士たちの手紙が多数本書の中で公開され、その率直な文章が更に感動を呼ぶ。
    心わずらうことなく、重いハードカバーの本を自宅で静かに読める日々が続きますように。

    • 杜のうさこさん
      nejidonさん、こんばんは~♪

      お久しぶりです。コメントありがとうございます!
      もう嬉しくて~♪
      諸事情でバタバタしていて、や...
      nejidonさん、こんばんは~♪

      お久しぶりです。コメントありがとうございます!
      もう嬉しくて~♪
      諸事情でバタバタしていて、やっとお邪魔できました。
      私たち、たぶん同じ時間帯に訪問し合ってましたね。ふふ、なんか嬉しいです。

      その後お身体の調子はいかがですか?
      お互い無理しないように、のんびりとですね。
      (そう言いながら、つい調子にのってしまい後悔するんですが…)

      この本、すごく読みたいと思ってたんですよ。
      nejidonさんのこのレビュー、男前な感じがして(失礼・笑)とても感動しました。
      私はこういう類の本を読むと、どうしても感傷的になってしまって…
      そうなんですよね。思想的なものではなく、真実を知りたいだけなんです。
      それを伝えることの難しさを改めて感じます。

      ロバくんとブタさん、スズメちゃんにだんごむしくん、読みたい本がまた増えて、困ってしまいます(*^-^*)。
      特に「侘び寂び」の解釈【生と死の自然のサイクルを受け入れ、不完全さの中にある美を見出すこと】
      これツボです。はい。
      そんな気になって来ました(笑)。

      私の本棚の方にもお返事しておきますので、お時間のある時にまた読んで下さいね(*^-^*)。
      2017/06/13
    • 杜のうさこさん
      nejidonさん、こんばんニャ♪

      河添恵子さんの『国防女子が行く』ですね。
      早速メモしました。探して読んでみようと思います。
      ご...
      nejidonさん、こんばんニャ♪

      河添恵子さんの『国防女子が行く』ですね。
      早速メモしました。探して読んでみようと思います。
      ご紹介ありがとうございます。

      それと、私も長年持病持ちです。
      もう、これでもかというくらい(笑)。
      お薬とは縁の切れない人生ですが、何とか折り合いをつけて生きています(*^-^*)

      >本を読む楽しみがあって、救われています。
      同じく。
      その後のにゃんこも「同じく」と言いたいところなんですが、
      これはもう残念ながら…(>_<)。

      この前書き忘れたんですが、アイコンの猫ちゃん、変わりましたね。
      オッドちゃんかな?美猫ちゃんですね。
      私、まだオッドちゃんに出会えたことがないんですよ~。
      2017/06/17
    • 杜のうさこさん
      nejidonさん、つらいお話をさせてしまい本当にごめんなさい…
      ゆっくりと歩んでくれているとお聞きしていたので、まさかそんなこととは…
      ...
      nejidonさん、つらいお話をさせてしまい本当にごめんなさい…
      ゆっくりと歩んでくれているとお聞きしていたので、まさかそんなこととは…
      私は勝手に「みかんちゃん」と呼ばせてもらっていました。
      どれほどおつらいことか…

      二十歳のお誕生日目前…
      うちの子たちも生きていてくれれば同じ歳でした。
      3兄弟妹で14、15、16歳と立て続けに…
      同じくのらちゃんだったので、誕生日もとりあえずこどもの日でした。
      子どもがいない夫婦で、溺愛してしまって…
      その悲しみと喪失感、それはさまざまな後悔も伴って…
      そのつらさは口では言い表せないくらいです。
      大げさなようなんですが、持病のせいもあって、今生きているのが不思議なくらい(苦笑)
      nejidonさんもご存知だと思いますが、虹の橋の詩のネコちゃんバージョン、それを固く信じて頑張っています(*^-^*)。
      もしかしたら、虹の橋の草原でうちの子たちと遊んでいるかもしれませんね。

      持病があると、季節に左右されることあります。
      私も完治はないので、寛解の期間が少しでも長ければいいなぁと。
      こんな私が言うのもなんですが、くれぐれもお身体を大切になさってくださいね。

      素直で無邪気な甘えん坊の「オッドなましろちゃん」(また勝手に呼び名をつけて~笑)
      飼い主に似るといいますからね(*^-^*)

      なんかとりとめのないことを長々とごめんなさい。
      これに懲りずにまた仲良くさせて下さいね。
      それと本棚が探しにくいなんて、まったく無かったですよ~。
      2017/06/21
  • ナチスドイツは焚書をし、アメリカは兵隊に本を贈った。
    第二次世界大戦で大きな役割を果たした、本の力にまつわるノンフィクション。

    とても読み応えがあり、おもしろかった。

    最初は寄付された一般の書籍を。
    途中からは専用のペーパーバック〈兵隊文庫〉を、世界中のアメリカ兵へ届けていたとは。

    国を挙げてこのような取り組みが行われていたことが、まず驚き。
    しかも幅広いジャンルを扱い、不当な検閲に対してもしっかり戦うところが、民主主義のアメリカらしい。

    厳しい環境で、本がどれだけ兵士の心を慰めてきたか。
    実際の手紙の紹介では、ぐっとくるものがある。

    本のもつ力というものを、あらためて感じさせられる。

    日本でも、兵士用の本は制作されていたとのこと。
    日本の取り組みについても知りたくなった。

  • 非常に興味深い内容だった。
    「危険な読書」で荒俣宏さんが「ぶっ飛んだ」と言っていた本。

    ナチス・ドイツは、焚書により思想統制をおこなった。それに対して、アメリカは「本こそが思想戦の武器である」として、兵士のために無料で「兵隊文庫」として本を送った。娯楽が少ない戦場で非常に人気があったという 。

    兵士は、人を殺す訓練を受け、残虐行為を目の当たりにする生活の中、兵隊文庫を読むことで、まだ人間なのだ、と思うことができた。

    読書は、凝り固まった脳を揉み解し、ストレスをどこか遠くへ投げ去ってくれる。そして再び困難を乗り越える勇気を与えてくれる。確かに、兵士にとってすごい武器だ。

    アメリカという国の強さの理由が垣間見えた気がした。
    「夏空白花」を読んだ直後だけに、なおさら感じた。

    兵隊文庫は、戦時の紙の供給制限もあり、ポケットに入れられるくらい小さなペーパーバック版になった。持ち歩けていつでも読めることは武器としてとても重要だった。厚くて重いハードカバーは文庫本と違って、どうしても積読本になってしまう率が高いもの。
    (まあ、「罪と罰」みたいに中身が厚くて重い本は、文庫本であってもなかなか読み進まないものではあるけれども…)

    ところで、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」は発売当初は失敗作とみなされていたが、兵隊文庫として改めて出版されて兵士の心をつかんだ。その評判が本土の人たちに伝わって広く読まれるようになり、アメリカを代表する文学作品になったのだという。

    • やまさん
      たけさん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      やま
      たけさん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      やま
      2019/12/02
  • 第二次世界大戦において、ドイツを率いるヒトラーは厳しい言論統制を行い、1億冊を超える書籍を燃やした。
    米軍が各地で任務にあたる兵士のために作成し、「兵隊文庫」としてヒトラーが燃やした以上の1億4千冊の書籍を戦地に送付した。

    本書で取り上げるのはいかに米国は言論の自由を重視し、いくらかの反発もありながら、兵隊文庫という試みを重要視して、そのために力を注いだか、そしてそれらが最前線の兵士たちにとってどれほど助けになったか。
    先の見えない苦しいときこそ、娯楽の存在は大きい。
    この兵隊文庫がペーパーバック本の普及につながった、というのは面白かった。小さい文庫本は便利ですもんね。

    もう一つ、これは有名なのかもしれませんが、個人的に知らなくて驚いたのが、1944年に米国大統領選挙をやっており、その際には戦場の兵士にも投票券が与えられた、とのこと。
    その際の投票方式の公平性やら、兵隊文庫の中身の公平性なども議論されていたというのが面白い。
    戦争という大きなうねりの中でも、兵士は一票の投票権を持った国民であり、(昨今失われかけているように見える)民主主義と知性主義への敬意を持った、米国の戦争での勝利、というのはシンボリックですね。

    正直、戦勝国ならではのアメリカ合衆国という国への礼讃も気になるし、日本人としては原爆投下があまりにあっさり書かれていることが残念。(まあ米国ではそういう論調なのかもしれないが、他の戦地を悲惨と描くのであれば、日本にとってあれほど悲惨なこともなかったよ、と思う。)
    いずれにしても知らない話も多く、面白い内容だった。巻末には戦地へと送られた千冊以上の本のリストがあります。
    フィッツジェラルド、スタインベック、ヘミングウェイ、チャンドラー、モーム、今日の我々も手に取る多くの作家の本は戦地でも読まれていたのだな、というのはなんというか不思議な思いがします。

  • 今まで、ペーパーバックの本は、本が安ければ良い、価値を見出さない合理化の結果なんだろうと思っていた。

    けれど、この話を読んで、ペーパーバックが、戦地においてどれほどの兵士に求められ、親しまれてきたのかを知って、非常に驚いた。
    そうか。そういう経緯で、ペーパーバックは愛されているのだな。

    人が紡いだ言葉に価値があるからこそ、焚書という形で、消してしまおうとする。
    『シュトヘル』という大好きな漫画の中でも、自国の文字を必死で守ろうとする主人公と、文字の伝える歴史そのものをなかったことにしようとする父の姿が描かれる。

    内容を統制し、不要な情報を与えまいとするということが当然の戦時中にあって、アメリカではそのことに抗う人々がいた。
    そして、その抗いが形を変える結果となった。
    それは、ものすごいことだと思う。

    多くの書物が持つ魅力は、生きることの確約さえない兵士たちに、想像も出来ない様々なことを与えたのだろう。
    ここには「読み」そのものよりも、描かれる世界との共感が重要視されているように思う。
    いかに、自身と重なり、また違う生活に連れ去り、懐かしく思わせるか。
    生きることの支えとなる物語の在り方に、考えさせられた。

  • 人は「本」を読む生き物である
    この言葉に象徴されてしまう以上のノンフィクションでした

    第二次世界大戦の最中に
    「戦場」から消されたナチスの焚書の事実
    それとは全く対照的に
    「戦場」に送り込まれ、切望されたペーパーバ゙ックスたち

    「生と死」の瀬戸際で読まれた「本」の尊さが
    ひしひしと伝わってくる
    「本を読むこと」が単なる「娯楽」を遥かに越えて
    「本を読むこと」が「生きること」になっていた
    そんな史実がここにある

  • ヒトラ-の『我が闘争』が、高い教養をもつ国民を“焚書”へと向かわせ、人の心を自由にする偉大な本を灰にした。欧州は戦場だけでなく、国家が信奉する思想も攻撃にさらされていた。思想戦における最強の武器と防具は書物であるとし、アメリカは戦時図書審議会のもとで「兵隊文庫」を創設した。本土から何千マイルも離れた前線の兵士のもとへ書籍や雑誌が届けられた。緊張感に晒された兵士たちは、故郷からの手紙と現実から逃れる唯一の気晴らしとなる“ペ-パ-バック”を大切に持ち歩いていた。届けられた本は1億4千万冊にのぼるという。

  • ドイツ的ではないことを理由に、ナチス・ドイツは大量の書籍を
    焚書にした。

    禁書・焚書などと聞いたら、読書好きはそれだけで憤死してしま
    いそうだ。なんてことをしてくれたんだ。本に罪はないだろう。

    だが、戦争は思想の戦いでもある。思想を検閲したナチス・ドイツ
    に対し、アメリカは戦地の兵士が自由に本を読めるようにと、これ
    また大量の書籍を前線へ、基地へ、艦船へ、輸送船へと送り出した。

    「兵士に本を届けよう」。最初は国民へ呼びかけ、書籍の寄付を募った。
    それが大きな運動となり、戦時図書審議会が創設され、出版社、印刷
    会社をも巻き込んで兵士たちのポケットに収まる軽量化された小型版
    の書籍「兵隊文庫」が作られるようになった。

    輸送船の中で、塹壕で、野戦病院のベッドの上で。兵士たちは本を
    貪るように読んだ。それは唯一の娯楽だったから。軍隊に入るまで
    読書の習慣がなかった者でも、兵隊文庫には夢中になった。

    そして、少なくない兵士の復員後の生活に、戦争中に読んだ本が
    影響を与えている。

    過酷な戦場で、兵士たちは兵隊文庫に安らぎを、慰めを、本国と
    の繋がりを感じていたんだろうな。読書好きとして嬉しく思うし、
    このような「もう一つの戦争史」を発掘してくれ、作品として
    まとめてくれた著者に感謝したい。

    この兵隊文庫は日本の出版史にも大きな影響を与えている。進駐軍が
    日本に持ち込んだ兵隊文庫を入手した出版社などが翻訳版を発行して
    いるのだ。

    「私たちは皆、本が燃えることを知っている──しかし、燃えても
    本の命は絶えないということも良く知っている。人間の命は絶えるが、
    本は永久に生き続ける。いかなる人間もいかなる力も、記憶を消す
    ことはできない。いかなる人間もいかなる力も、思想を強制収容所
    に閉じ込めることはできない。いかなる人間もいかなる力も、あら
    ゆる圧政に対する人間の果てしなき戦いとともにある本を、この世
    から抹殺できない。私たちは、この戦いにおける武器は本である
    ことを知っている。」

    兵士に書籍を送ることに賛意を示したルーズヴェルト大統領の
    声明だ。

    そう、本は永遠に生きる。ナチス・ドイツが焚書にした作品さえ、
    兵隊文庫で復活し、それを携えた兵士たちがヨーロッパ戦線に
    向かったのだから。

    巻末には発行された兵隊文庫の一覧が掲載されている。翻訳大国
    日本であるが、翻訳書が出ていない作品が多いのが残念だ。

  • 日本はどうだったのかな。
    後書きにちらっと書いてあったけど、
    日本はどうだったか知りたくなった。
    アメリカ兵の何%が読書していたのかな。
    暇だったということが一番びっくりした。
    読書する時間があったのか。

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