戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

制作 : 松尾 恭子 
  • 東京創元社
3.87
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本棚登録 : 422
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488003845

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦中、アメリカの図書館員たちは全国から寄付された書籍を兵士に送る図書運動を展開し、軍と出版界は新しい形態のペーパーバック「兵隊文庫」を発行して、あらゆるジャンルの本を世界の戦地に送り届けた。その数、およそ一億四千万冊。本のかたちを、そして社会を根底から変えた、史上最大の図書作戦の全貌とは? ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーの、絶賛を博したノンフィクション! 「兵隊文庫」の全作品リスト付。

感想・レビュー・書評

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  • 久々に読み応えのあるノンフィクションだった。
    ただ、この本にはふたつのまるで違う見方が生じる。

    ひとつ目は、アメリカの優れた面に対する称賛。
    「戦時図書審議会」という兵隊文庫を製作し、それを戦場に供給する組織を設立して予算を与え、兵士たちの熱い要望に応えただけでなく、戦後とられた優遇措置のおかげで、除隊後も多数が大学に入学してアメリカ社会の高学歴化という結果を生んだということ。
    (兵士というのは、ヨーロッパ戦線と太平洋戦線の米兵のこと)

    ふたつ目は、これもまたプロパガンダであるという点。
    本書はナチス・ドイツが行った「焚書」から始まり、連合国側の人々の士気をくじき、戦意を喪失させるために思想戦をしかけたと激しく非難している。
    アメリカはそれに対抗し、「本は武器である」という考えの元、戦線に図書を贈る運動を展開していったという。
    だが、私はすでにこの段階でつまずいてしまう。
    アメリカは、占領期にもっとひどいことを日本にしたではないか。
    「自由」「平等」「正義」という表現が本の中に登場するたびに、激しい違和感を覚えた。

    また、こうも言う。
    人種差別はしない私たちだから、収容所にいる日系人にも図書を送ったとも。
    アメリカ国籍を持つ12万人以上にものぼる日系アメリカ人が、エネミー・エイリアンとして全米10か所の強制収容所に送り込まれたという事実はどうするのか。
    それまで汗水流して蓄えた財産をすべて没収され、身の回りの物だけ持つことを許されて、有刺鉄線を張り巡らされた馬小屋や豚小屋に閉じ込められたのだ。
    「自由・平等・正義」は、ホワイトアメリカンだけのものなのか。
    そもそも読書嫌いで有名だったルーズヴェルト大統領は、「皆さんの子どもを決して戦場に送りだしたりしない」という嘘を公言して大統領に当選していた。
    日本のみでなく、自国民さえ欺いていた。
    前提としてそれを考えると、「戦時図書審議会」を支援し、兵士たちの戦後補償をどれほど手厚くしても、単なる埋め合わせとしてしか捉えられない。

    別に反米を唱えているわけではない。
    情けないのは、戦争に関することを発言するとイデオロギーの問題になってしまうこと。
    事実を、正しく理解しておきたい。それだけだ。

    敗戦国だから話題にもならないのだろうが、日本にも兵隊文庫が存在した。
    江戸川乱歩などが読まれていたらしい。
    兵士の間で劇団も作られ、実話をもとにした『南の島に雪が降る』という映画まであった。

    だが、生死をかけた戦線でペーパーバックが兵士たちに生き抜く勇気を与えたことを思うとやはり感動する。
    何より、本を読むことでどんなに感動したかを伝える兵士たちの手紙が多数本書の中で公開され、その率直な文章が更に感動を呼ぶ。
    心わずらうことなく、重いハードカバーの本を自宅で静かに読める日々が続きますように。

    • nejidonさん
      杜のうさこさん、再訪してくださってありがとうございます!
      『国防女子が行く』は男前な(笑)女性たちが登場するので、読んでいて実に
      爽や...
      杜のうさこさん、再訪してくださってありがとうございます!
      『国防女子が行く』は男前な(笑)女性たちが登場するので、読んでいて実に
      爽やか&元気が出ます。
      読んだらレビュー載せなくちゃなんて、ぜーんぜん気にせずに、
      楽しんでお読みいただけたら嬉しいです。
      読んでもレビューを載せていない本、私もたくさんたくさんありますから!!

      そうですか、杜のうさこさんも持病がおありなのですね。
      季節によって辛いときなどありませんか?
      私の場合 完治するということはないので、せめて症状が穏やかであるようにと、
      毎日気を付けつつ(でも楽しみながら)暮らしておりまする。

      新しいアイコンの子は、真っ白でオッドアイです。
      野良ちゃん(我が家は全員そうですが)だったなんて信じられないくらい
      素直で無邪気な甘えん坊です。
      前のアイコンの子は、先々月20歳の誕生日を目前にして亡くなりました。
      あまりにも悲しくて悲しくて、それで画像を替えたのです。
      もしやこの本棚が探しにくかったかしら。そうだったらごめんなさいね。
      2017/06/18
    • 杜のうさこさん
      nejidonさん、つらいお話をさせてしまい本当にごめんなさい…
      ゆっくりと歩んでくれているとお聞きしていたので、まさかそんなこととは…
      ...
      nejidonさん、つらいお話をさせてしまい本当にごめんなさい…
      ゆっくりと歩んでくれているとお聞きしていたので、まさかそんなこととは…
      私は勝手に「みかんちゃん」と呼ばせてもらっていました。
      どれほどおつらいことか…

      二十歳のお誕生日目前…
      うちの子たちも生きていてくれれば同じ歳でした。
      3兄弟妹で14、15、16歳と立て続けに…
      同じくのらちゃんだったので、誕生日もとりあえずこどもの日でした。
      子どもがいない夫婦で、溺愛してしまって…
      その悲しみと喪失感、それはさまざまな後悔も伴って…
      そのつらさは口では言い表せないくらいです。
      大げさなようなんですが、持病のせいもあって、今生きているのが不思議なくらい(苦笑)
      nejidonさんもご存知だと思いますが、虹の橋の詩のネコちゃんバージョン、それを固く信じて頑張っています(*^-^*)。
      もしかしたら、虹の橋の草原でうちの子たちと遊んでいるかもしれませんね。

      持病があると、季節に左右されることあります。
      私も完治はないので、寛解の期間が少しでも長ければいいなぁと。
      こんな私が言うのもなんですが、くれぐれもお身体を大切になさってくださいね。

      素直で無邪気な甘えん坊の「オッドなましろちゃん」(また勝手に呼び名をつけて~笑)
      飼い主に似るといいますからね(*^-^*)

      なんかとりとめのないことを長々とごめんなさい。
      これに懲りずにまた仲良くさせて下さいね。
      それと本棚が探しにくいなんて、まったく無かったですよ~。
      2017/06/21
    • nejidonさん
      杜のうさこさん、こんにちは♪
      このところお話会が立て込んでいてレスが遅れてしまいました。
      丁寧なコメントをくださって、ありがとうございま...
      杜のうさこさん、こんにちは♪
      このところお話会が立て込んでいてレスが遅れてしまいました。
      丁寧なコメントをくださって、ありがとうございます!
      でもどうぞ、気になさらずに。
      どなたかにお話しようとしまいと、思い出さない日は一日とてありません。
      多頭飼いであるものの、私にとっては特別な子でした。
      そんなわけで、落胆の大きさがちょっと違うのです。そういうことです。
      杜のうさこさんにとって、その3人の子が特別であったのと同じくらいです、たぶん。

      ええと・・もしかしたら同じ病気かしら?なんて思ってます(笑)
      この季節は特に辛くなりますね。暑い夏も大変だし寒い冬も。
      お薬だけに頼りたくはないけど、でもお薬なしではとてもとても。
      暮らしの中に小さな楽しみを見つけては、なんとか日々を繋いでいます。
      高望みはしてないのです。普通に生活が出来ればそれで良いのです。
      でも、「普通」のレベルが年々落ちてます(涙)。
      まぁ、こういうものと受け入れていくしかないでしょうね。
      杜のうさこさんも、無理せずお大事にしてくださいませ。
      そしてオッドアイの子ともども、どうぞよろしくです。

      2017/06/24
  • 今まで、ペーパーバックの本は、本が安ければ良い、価値を見出さない合理化の結果なんだろうと思っていた。

    けれど、この話を読んで、ペーパーバックが、戦地においてどれほどの兵士に求められ、親しまれてきたのかを知って、非常に驚いた。
    そうか。そういう経緯で、ペーパーバックは愛されているのだな。

    人が紡いだ言葉に価値があるからこそ、焚書という形で、消してしまおうとする。
    『シュトヘル』という大好きな漫画の中でも、自国の文字を必死で守ろうとする主人公と、文字の伝える歴史そのものをなかったことにしようとする父の姿が描かれる。

    内容を統制し、不要な情報を与えまいとするということが当然の戦時中にあって、アメリカではそのことに抗う人々がいた。
    そして、その抗いが形を変える結果となった。
    それは、ものすごいことだと思う。

    多くの書物が持つ魅力は、生きることの確約さえない兵士たちに、想像も出来ない様々なことを与えたのだろう。
    ここには「読み」そのものよりも、描かれる世界との共感が重要視されているように思う。
    いかに、自身と重なり、また違う生活に連れ去り、懐かしく思わせるか。
    生きることの支えとなる物語の在り方に、考えさせられた。

  • 第二次世界大戦のアメリカ人兵士に届けられた
    膨大な数の書籍。
    戦前、読書家ではなかった兵士でさえ
    アメリカから書籍が届くの心待ちにしていた。

    本を読むことはただ、知識を取り入れるのだけ
    ではなく、目を背けたくなるような現実から
    読書をする事で、ここではない何処か、或いは
    自分ではない誰かにしてくれる大きな力を持っている。
    実際に、私も辛い事があった時も本を読む事で
    救われた事が今までに多々あった。
    ドイツは、ナチス指導の下にドイツ人作家ではない
    書籍や、思想に反するといった理由から
    また、多くの書籍を燃やしている。
    国民から、思考することを書籍を燃やす事で
    取り上げたかったのではないかと思った。
    結果的にドイツは、戦争に負け多くの罪なき
    ユダヤ人を虐殺する事になった。
    本を燃やす者は結果的に人間でさえも簡単に
    殺すことに繋がるのだろう。

  • 人は「本」を読む生き物である
    この言葉に象徴されてしまう以上のノンフィクションでした

    第二次世界大戦の最中に
    「戦場」から消されたナチスの焚書の事実
    それとは全く対照的に
    「戦場」に送り込まれ、切望されたペーパーバ゙ックスたち

    「生と死」の瀬戸際で読まれた「本」の尊さが
    ひしひしと伝わってくる
    「本を読むこと」が単なる「娯楽」を遥かに越えて
    「本を読むこと」が「生きること」になっていた
    そんな史実がここにある

  • ドイツ的ではないことを理由に、ナチス・ドイツは大量の書籍を
    焚書にした。

    禁書・焚書などと聞いたら、読書好きはそれだけで憤死してしま
    いそうだ。なんてことをしてくれたんだ。本に罪はないだろう。

    だが、戦争は思想の戦いでもある。思想を検閲したナチス・ドイツ
    に対し、アメリカは戦地の兵士が自由に本を読めるようにと、これ
    また大量の書籍を前線へ、基地へ、艦船へ、輸送船へと送り出した。

    「兵士に本を届けよう」。最初は国民へ呼びかけ、書籍の寄付を募った。
    それが大きな運動となり、戦時図書審議会が創設され、出版社、印刷
    会社をも巻き込んで兵士たちのポケットに収まる軽量化された小型版
    の書籍「兵隊文庫」が作られるようになった。

    輸送船の中で、塹壕で、野戦病院のベッドの上で。兵士たちは本を
    貪るように読んだ。それは唯一の娯楽だったから。軍隊に入るまで
    読書の習慣がなかった者でも、兵隊文庫には夢中になった。

    そして、少なくない兵士の復員後の生活に、戦争中に読んだ本が
    影響を与えている。

    過酷な戦場で、兵士たちは兵隊文庫に安らぎを、慰めを、本国と
    の繋がりを感じていたんだろうな。読書好きとして嬉しく思うし、
    このような「もう一つの戦争史」を発掘してくれ、作品として
    まとめてくれた著者に感謝したい。

    この兵隊文庫は日本の出版史にも大きな影響を与えている。進駐軍が
    日本に持ち込んだ兵隊文庫を入手した出版社などが翻訳版を発行して
    いるのだ。

    「私たちは皆、本が燃えることを知っている──しかし、燃えても
    本の命は絶えないということも良く知っている。人間の命は絶えるが、
    本は永久に生き続ける。いかなる人間もいかなる力も、記憶を消す
    ことはできない。いかなる人間もいかなる力も、思想を強制収容所
    に閉じ込めることはできない。いかなる人間もいかなる力も、あら
    ゆる圧政に対する人間の果てしなき戦いとともにある本を、この世
    から抹殺できない。私たちは、この戦いにおける武器は本である
    ことを知っている。」

    兵士に書籍を送ることに賛意を示したルーズヴェルト大統領の
    声明だ。

    そう、本は永遠に生きる。ナチス・ドイツが焚書にした作品さえ、
    兵隊文庫で復活し、それを携えた兵士たちがヨーロッパ戦線に
    向かったのだから。

    巻末には発行された兵隊文庫の一覧が掲載されている。翻訳大国
    日本であるが、翻訳書が出ていない作品が多いのが残念だ。

  • 書籍が持つ力を実感させられる話し。娯楽としての読書はもちろんよく分かるけど、戦場でそれほど本が読まれていたとは知らなかった。それをさせたアメリカってすごいなあ。旧日本軍にはそんな発想は微塵もなかったろうなあ。

  • これまではあまり知られていなかった第二次世界大戦の別の側面を示している良書だと思う。訳者の訳も読み易い。

    ドイツが行った焚書とアメリカが行った「本は武器」という思想に基づく戦時中の読書活動、コインの裏と表のようなものを感じる。何が正義なのか、自由とは何なのか、そもそもコイン(=戦争)そのものに正義を論じる余地があるのかどうか、色々な意味で考えさせられた。

    本が戦争の、ここでいう思想戦の一助になったことは複雑な気持ちにもなるが、思想の自由を守るうえで必要なことであったことは大いにわかる。「自由と民主主義」を標榜するアメリカらしい活動の展開だ。

    兵士に供給し続けた「兵隊文庫」により、兵士の教養は維持でき、戦後の学習意欲の喚起、職業選択など、社会復帰の支援につながったことは、まさに読書という行為の尊さ、本の持つ力を示す内容だと思う。

    本を読めば色々な思想に出会うことができる。幅広い考えを受容できなくなってくると国も人もいよいよ危険水域だと思う。偏狭的なナショナリズムに見舞われ、各国が置かれている情勢が厳しくなってきた。
    偏った意見をSNSでひたすら主張する人も目についてきた。こんなきな臭い世の中において、これからも読書が有用な作用を起こし続けることを期待したい。

  • 歴史
    ノンフィクション
    本の本

  • 2016.09.15 朝活読書サロン

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