コリーニ事件

  • 東京創元社
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本棚登録 : 604
レビュー : 95
  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010003

作品紹介・あらすじ

殺人事件と法廷で繰り広げられる緊迫の攻防戦を通して、事件をめぐる人々を見事に活写する。著名な刑事事件弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く、ヨーロッパ読書界を席巻した傑作。

感想・レビュー・書評

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  • "「人間に白も黒もない……灰色なものさ」"(p.65)

  • 2001年のベルリンが舞台。
    イタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕される、被害者は大金持ちの実業家。
    主人公のライアンは国選弁護士として名乗りを上げた、本案件が初仕事、気軽に引き受けた弁護だったが、何も語らない容疑者と、さらに被害者は少年時代の友人の祖父であったことから、ライアンの苦悩は始まる。
    容疑者は容疑を認め、裁判は早々に決着するかに見えたのだが、ライアンの調査で明らかになる驚くべき事実。
    コリーニを凶行に駆り立てた本当の動機とドイツで昔本当にあった法律の落とし穴。
    刑事事件専門の弁護士である著者ならではの臨場感あふれる法廷劇に圧倒される。
    また著者の出自や少年時代の学友たちの先祖たちにも触れられている通り、ドイツ独特の因縁めいたものを感じる。

  • 現代に起きた殺人事件から歴史の闇が浮かび上がる異色の法廷劇。登場人物の様々な視点から描くことで重厚な作品にすることもできただろうが、著者は潔くストレートに事件の持つ問題点に切り込んでいく。

  • 著者初の長編だが、長さからみると中編と言える。訳ありの被疑者の弁護についた新人弁護士が、その真実の迫ると意外な事実に突き当たる。書かれている言葉だけを捉えても、そこには冷静かつ落ち着き払った空気感しか伺えないが、背景に見え隠れする人間の感情は激動している。それをサラッと描き出す。読んでいて、読んだページより多く読んだ気がする。

  • 大金持ちの老実業家を射殺した男は、自分から警察を呼んでおきながらがんとして動機を語ろうとはしなかった。
    新米事件弁護士で被害者と親しかったライネンは公職と私情に挟まれながら事件の真相を探り当てる。

    シーラッハ初長編。
    相変わらず研ぎ澄まされた文章で濃密なものを書いてくださる。
    ページ数を遙かに凌駕した満足感。
    そして未だにドイツに深い影を落とす第三帝国に、日本の現状を考えたり。
    事件の真相もだけど、冒頭から深いことがさりげに書かれていて唸ること数多であったよ。

  • 殺人現場ー自首ー主人公の新人弁護士登場ー少年時代ー被害者との関係発覚、まで30ページ。何よりこの無駄のない筆運びを私は愛する。 それにこの手の、作者の出自に絡む、自分しか書けない題材を扱うのは好感度が高いと思う。置かれた場所で咲きなさい、の精神だな (≧∇≦)

  • 時間は待ってくれない
    フェルディナント・フォン・シーラッハの初の長編『コリーニ事件』の邦訳が刊行された。酒寄進一訳東京創元社。シーラッハは本職は刑事弁護士というドイツの作家だ。これまで訳出されている短編連作集『犯罪』『罪悪』も評判になったが、この新刊本はさらに話題を呼んでいる。
    この小説の冒頭はいきなりの殺人シーン。被疑者はドイツに長く滞在し働いてきたイタリア人元機械工コリーニ。殺害後の執拗な死体損壊の様子からして深い怨恨がありそうだ。
    そして2章では、新米弁護士が休日に国選事件担当の電話が入るのを待機している。私たちにとってはお馴染みといえる場面だ。では、この作品はこの新米弁護士ライネンの刑事弁護奮闘記なのか?否。
    ほどなく、被害者はライネンの友人の祖父だったことが分かる。彼は一度は弁護人を辞任しようとするのだが・・・。
    なるべくネタバレしないようにしながらも結論を書くと、この小説のテーマは171ページ以下十数ページの証人尋問手続きでのライネンと学者とのやりとりに尽きる。
    刑事弁護は初めてのライネンがその事実にどうやって行き着いたのかは明かされないし、親しくしていた友人の祖父の過去を知ったことをどんな風に受け止めたのかは、特に気になるところだけれど、作者のシーラッハはエモーショナルな表現を極力排しているので、行間を読むしかない。結末も、ある意味予想どおりだが、そうならざるを得ないのも理解できる。ドイツのみならず、日本でも、この事務所で扱った事件(民事だけど)でも、幾度となく立ちはだかってきたあの問題があるのだから・・・。
    公訴参加代理人(被害者家族側の弁護士)を務める大物弁護士は言う。「わたしは法を信じている。きみは社会を信じている。最後にどちらに軍配があがるか、見てみようじゃないか(略)この裁判はもううんざりだ」倫理と法律の規定が鋭く対立するかに思えるとき、人は、とりわけ法律家は、どうするべきだろうか?
    この小説はドイツ連邦共和国の刑法典の盲点をあぶりだした。この作品の中では動かしがたい法律上の壁であったそれは、この小説が世に出てから数ヵ月後の2012年1月に、法務省内の『再検討委員会』が設置されたことによって見直しの機運が出てきたとのことだ。
     繰り返すが、「これはドイツの話だ」で終わらせるわけにはいかない。日本では裁判上ではその法理論は崩せなかったし、再検討をうながすような法改正の動きも表立っては未だないのではないだろうか。

    「私は知っています。多くの方たちにとっては、金銭はまったく補償にならないことを。その方たちは、苦難が苦難として承認され、自らが被った不法を不法と名付けられることを望んでいます。(略)あなた方の苦難を私たちは決して忘れません。」(2000年にドイツ連邦共和国議会においてヨハネス・ラウ大統領(当時)が行った演説より)※小説とは直接関係はありません。

  • 半分まで(100ページ分くらい)は事件の動機がはっきりせず、「たぶんこういうことなんだろうな〜」という想像をしながらも読むスピードが上がらず……。

    ところが、動機解明の糸口が現れたあたりから、今までのうだうだは何だったんだというほどの転げ落ちるような速度で話が進み、「訳者あとがき」まであっという間に読み終えました。よくあるパターン。真ん中までは頑張って読もう。

    ドイツやフランスのミステリだと、「事件の背後に実は……」という今回のようなものは多いですね。でもこの本の場合、著者シーラッハの立場が独特なのでは(詳しくは「訳者あとがき」を)。

    フィクションのミステリを読んでいたはずが、現実の歴史や法律とリンクしてきて、後半はざわざわしました。ドイツで戦後生まれ(孫世代)が歴史に向き合うのは、しんどいことだなと、あらためて。では日本ではどうなのか、と、日本では、こんなふうに向き合うところまでたどり着ける人がどれほどいるのだろうかと。

    それにしても、訳者の酒寄さん、働きすぎじゃないですかね? あれもこれもドイツ語ミステリ、酒寄さんですよ。もう、独和翻訳を必要とするミステリ好きは酒寄さんに足向けて寝られないでしょう。

  • 「私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです。その下は冷たく、ひとたび落ちれば、すぐに死んでしまいます。多くの場合、氷は持ちこたえられず、割れてしまいます。私が関心をもっているのはその瞬間です」社会や秩序と無法は相容れない。淡々とした筆致の根元には魂の息遣いが感じられる。

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